ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vs 看板

ん?とアズマが振り返れば、其処に立っていたのは少し暗い雰囲気の少年であった。黒くて眼を隠しかねないくらい長い前髪に、黄色のピカチュウっぽいバンダナ。色合い的には何処かナンジャモファンの着るそれを思わせるが、多分こんな田舎には"なん民"は居ない。アズマだって観光客みたいなものだ

 

 怪訝そうに、けれども可能な限り愛想良く、アズマは少年の方を向く

 「君は?」

 「あ、あの……スグリ、です……」が、話しかければすぐに少年はおどおどしてしまう。きゅっとボールを握る辺り、バトルが好きそうだなとアズマは思った

 

 「おー、スグリ氏。スグリ氏はこのボク達に何用かな?

 残念ながらボクはバズりそ……もとい熱意ある人としかコラボ配信とか出来ないけど」

 「熱意ならあるっぺ!」

 突然の大声に、少女の頭の機材がびくんと跳ねた

 「スグリ君」

 「おれ……ブルーベリー学園に通ってるけんど、何時も弱いって言われてるだ」

 ぽつり、少年が自己語りするのをアズマはゆっくりと聞く。退屈そうに背中のバッグの中でディアンシーは丸まってしまうが、お構い無く

 

 「けんど、情熱は負けねぇ」

 「そっか。熱意は分かるけど……どんな用かな?」

 「そうそう、マネージャーも何も通さないと困っちゃうよねー」 

 「おれ、鬼さまに認められるような強いトレーナーになりたい!」

 うーん、と、アズマは内心で頭を抱えた

 

 少年は強く言葉を告げているが……鬼さまというのも、だからってアズマ達に声をかけてくる理由も正直なところ不明だ

 「鬼さま」

 そんな伝承あったろうか、アズマは脳内で読み込んだキタカミ伝説の資料を整理する

 

 が、出てこない。四つの鬼面を使う怖い鬼の伝承はあるが、あれはともっこ伝説の敵役。村を破壊しに来る化物、だ。伝承の中ではともっこ三匹が命を懸けて三つの仮面を封印。大きく力を削がれた鬼は村を破壊するのを諦めて何処かへと去っていったとされる

 

 「鬼さまっていうのは、何?」

 「ヨソ者は知らねぇんだな。キタカミには」

 「ともっこ伝説の鬼の事?いや、あれは伝説の通りならば鬼さまと呼ばれるようなポケモンじゃ」

 言いかけて、違うなってアズマは言葉を切ると額に手を当て、頭を振った

 

 「そうだね。キタカミともっこ伝説には鬼のポケモンが出てくる。君は、ともっこじゃなくて鬼に興味があるの?」

 「んだ!」

 強く頷かれ、へぇとアズマは感心した。ともっこ伝説と呼ばれるだけあって、完全に三匹がヒーローで鬼が邪悪。ゼルネアスとイベルタルのように片割れ(といっても鬼は四つの面を持つ一匹なので、仮面毎に別としてもしなくても対にするには厳密には数が合わないが)が純粋悪とされる形式なのだ

 つまり、基本的にイベルタルが恐れられ嫌われがちなように、鬼の側を信じるってのもかなり珍しい話

 

 「スグリ君!」

 「あ、アズマ氏!?」

 「君の話、詳しく聞かせてくれないか!」

 興奮気味にアズマは少年の手を取った

 

 カロス伝説が真実そのままでない事をアズマは良く知っている。イベルタルと繋がっているからこそ、邪悪なだけではないと心の底から信じられる

 

 それと同じように、何か理由があるのならば知りたい!その気持ちに突き動かされ、思わずアズマの口は動いていた

 「あ、……んだ」

 びくりと震える少年に、ごめんとアズマは謝る

 

 「とりあえず、道の中で話してても日差しにやられちゃうし、ともっこプラザまで行こうか」

 「長時間の日差しは乙女のお肌の天敵だよー」

 

 そうして、暫く歩けばともっこプラザが見えてくる。プラザと言っても……実質は単なる公園だ。しかも、遊具とかそういったので溢れたり自然公園というよりは、広い平野という方向の

 そんな中に唯一異彩を放つのは、石造りで屋根の低い建物。人が入るには背が低すぎるそれの入り口には、犬っぽいポケモン、猿っぽいポケモン、そして鳥っぽいポケモン。三匹のポケモン像が安置されている。造形は荒くてどんな姿のポケモンとは言えないが、全匹スカーフを身に付けているのが特徴だ

 

 そうそう、こういう像なんだよなとアズマは頷く。父の資料に書いてあった。そして近くを見回せば赤い看板も立っている

 内容はともっこ様と呼ばれる三匹が山に入ると人を脅かす鬼が村を襲いに現れた時に村を護ったっていう逸話だ

 それらを確認し、近くの木の下にシートを拡げてアズマは座り込む

 そして、手持ちのボール(イベルタル以外)を投げた

 ぼん!と出てくるポケモン達。お昼寝中のゾロアを膝に乗せて、モノズと起き出したニダンギルには広い場所で遊んでおいでと小さな良く跳ねるゴムボールを投げ渡してやるとアズマは皆を読んだ

 

 「ほらスグリ君もナンジャモさんもどうぞ。ゆったりポケモンと寝転がれる大きさなんで余裕はありますよ」

 「おっとアズマ氏、ボクはちょーっと色々とやることがあるのでお邪魔します」

 「おれ、寧ろ次の看板に……」

 返ってくるのはそれぞれ真逆の答え

 

 「まあまあスグリ氏、スグリ氏にもちょっと手伝って欲しい!これは視聴者の期待もシビルドン登り!って」

 「……期待?」

 あ、反応したと思いながらアズマは少し息を吐いて像を見上げた

 

 「それでナンジャモさん、どうしたんですか?」

 「トップからちゃんと監視しててくださいと御叱りが来てボクの査定ピンチ!」

 少し顔を青くして機材を弄る少女に、すみませんとアズマは頭を下げる

 

 「しかも、キタカミトレーナー相手だと多分もうバズる絵面は撮れない

 ということで、みょーに伝承に造形ありそうなアズマ氏や現地の案内役のスグリ氏に手を借りて、動画シリーズ『ナンジャモ探検隊!キタカミの謎の巻』の撮影と投稿を行えば、皆目立つしハッピー!って訳」

 「スグリ君、大丈夫?」

 「お、おれ……ド、動画に出る!?

 是非!」

 おおぅ、とあまりの勢いにアズマは少しだけ引いた

 

 「おれも大丈夫です。けれど、一部についてはカットお願いすることになりそうですがその点は協力してください

 下手に全てを明かせば、問題になる事もありますから」

 父が、カロスで多くの人からバッシングされたように。少しの不安を覚えながら、アズマは協力許可を得た少女が早速予告編撮ろう!と看板へと駆けていくのを眺めていた




強い鬼の力を求めてオーガポン自身を見ず闇落ち方面に行く本編と違って覚醒するスグリ君は求められていない。けれども、「失礼な、純愛だべさ」する鬼さまを理解してるスグリ君は求められている……
フトゥー博士これは一体?

スグリ君の性癖とか色々なものが性癖搭載過多のナンジャモに破壊されるのは……

  • ぽにお~ん♪(Go)
  • ……が、がお(No)
  • スグリ君を守護らねばならぬ……
  • スグリ君は鬼さまへの純愛だから……
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