『(ひ、酷いですわ……)』
アズマの膝で、ぷるぷると震えるディアンシー。あまり興味無さげにふさっとした尻尾をゆらゆらして欠伸をする肩のゾロア
ニダンギルは何かを訴えるようにアズマの周囲を旋回し、イベルタルのボールがカタカタと揺れる。モノズは……ボールの中で反応を見せない
が、大体皆言いたいことは同じだろう
「やっぱり、鬼さまが正しかったんだ」
拳を握り、机の上で震わせるスグリ。きっと目線を上げ、長い前髪の下から爛々と光る眼を覗かせる
「仮面を奪った三匹に対して反撃したのを、ああ勘違いされる……うう、ボクそれ聞いちゃうと涙出てくるよ」
そう、お面職人が語ってくれた彼等一族に伝わる昔話は、ともっこ伝説の否定と、アズマの推測の肯定であった
昔、男とポケモンがキタカミの里にやって来た。人々は余所者を受け入れなかったが、二人お互いが居れば生きていけると、彼等は鬼が山で暮らし始めた。が、其処は元々鬼の伝承の残る地。仮面を付ける伝統や、仮面さえあればある程度は無礼講という空気があった
だから、かつてお面職人の先祖は男が持ち込んだという輝く結晶を使い、彼等が皆が仮面をする祭の時期くらいは人々に紛れられるように四つの仮面を作り、贈った。その仮面を被り、男とポケモンは人々と祭の間くらいは交流するようになった
しかし、輝くお面は有名となり、遠くから何匹かの欲深いポケモンが仮面を欲してやって来た。男はその欲深いポケモン達から仮面を守ろうとして行方知れずとなり……
出掛けていたポケモン……いやオーガポンが住処に戻ってきた時、其処には争った痕跡と、男が付けていた仮面だけが遺されていた。オーガポンはその仮面を被り、残り三つのお面を手に村ではしゃいでいた欲深いポケモンを倒した。その際の戦いぶりがあまりにも鬼気迫っていた為、人々はオーガポンを恐ろしい鬼と恐れ、あの三匹が村を鬼から守ろうとしたと考えて今のともっこ伝説が出来たのだ、と
要約すれば、そんな話である
「っ!アズマさん!」
力強く話しかけられ、アズマはん?と少年の方を見る
「鬼さまと会ったって、本当ですよね!?」
「うん、きっとこの辺りに今も居るんだよ」
「なら、仮面返してやんないと!鬼さまは孤独で……何にも悪くなくて……」
ぶつぶつと、自分なりに結論を出そうとするスグリ。そのまま飛び出して行こうとして
「ナンジャモさん」
「オッケー!」
扉に飛び付こうとしたスグリは、自分より背の低い少女に衝突して止まった
「あぶっ!?っ!何で!」
「落ち着くんだよ、スグリ君」
「全部あいつらが悪いって分かったのに!鬼さまは何も悪くないのに!」
「だから、落ち着け」
ほんの少し、アズマは凄む
自覚的に放つダークオーラ、ディアンシーがびくっと震えてバッグに顔を突っ込み、スグリがひっ!と一歩後退りする
「これから折角のオモテ祭りって時にね、いきなり今の祭を否定してどうこう言い出しても、聞いちゃくれないよ
確かに機会を見て、キタカミセンターに封じられた仮面を返してやるのは必要だと思う。元々オーガポンのものだからね
でも、今じゃない」
「けんど」
「そもそも、人々があまりにも恐れる程に怒りで暴れてたから、元々オーガポンのものって分かってる仮面を三匹のともっこが封じて恐ろしい鬼の力を削いだなんて逸話が出来ちゃうんだよ。オーガポン側も、きっとやり過ぎてる、何も悪くないとまでは言えないよ」
まあ勿論、今の話だとより悪いのはともっこに決まってはいるのだが
「第一ナンジャモさん、どう思った?」
「鬼さま可哀想!」
「じゃあ、看板を読んだ時はどう感じてた?」
「ともっこさまカッコいい!」
ノリ良く突っ込んでくれる少女に、流石配信者とアズマは満足げに頷いた
「そう。スグリ君、君が今聞いたのは『お伽噺』だよ。最初に今の話聞いてて、実はともっこさまは悪い鬼から仮面を奪って力を削いでくれた英雄だったって表向きのキタカミ伝承を後から聞いたらさ、感想逆になるだろ?」
「……でも、でも!」
ぎゅっと拳を握り、扉を叩いて少年は唸る
「君の気持ちは良く分かるし、おれも同じだよ。でも、今やるべき事は祭を目茶苦茶にすることじゃなく……オーガポンに会ってやること
仮面を返せってセンターに言うのはさ、村の皆を説得できるだけの要素を用意してからだろう?」
「アズマ氏、アズマ氏の感想って?」
「オーガポンの事は信じてるよ。けれど、おれ自身はともっこがさっきの伝聞通りの輝く仮面を欲しただけの欲深いポケモンだとは信じきれない
人間で言えば噂に聞くゲーチスみたいな畜生、そんなポケモン達とは思えないんだ」
遠く、ともっこプラザの方を……(壁で見えないけれど)見ながら、アズマはそう告げた
「アズマさん……」
「さてスグリ君。今日はオーガポンに会いに行く事にするけれど」
と、立ち上がりながら自分は一歩引いた態度のお面職人に対して、アズマは振り返った
「すみません職人さん。少し頼み事をしても?」
「出来ることであれば、じゃが」
「出来ることです。金はお支払しますので、仮面を作ってはくれませんか?」
「仮面?アズマ氏、いきなりの注文どうした?」
二人して首をかしげられ、ほらとアズマはゾロアを撫でる
『「つまりぽになの!」』
ぽん!と黒狐がオーガポンへとイリュージョン。けれども今回はさっきと違って仮面を被っていない出会ったままの姿だ
「実はおれが出会った時、オーガポンは話では手元に残っているはずの男のしていたお面……碧の仮面すら無くしていました
思い出のお面は返してやれるように動きます、碧の仮面も探します。でも、それ以外に……寂しくないように、新しい仮面を作ってやりたいんです
スグリ君と共にてらす池で結晶取ってきますから、作ってはいただけませんか?」
『作るなら歴戦の仮面とか良いと思いますよ。フェアリー付与、A+40S+10、特性が不撓の剣になりテラスが鋼。面影宿しでSが1段階上がりますよ。今なら巨獣斬も教えましょうか?』
『出禁不可避なのである。して、偉大な王を模した豊穣の仮面とかどうであろう?』
『プリズムの……仮面……。普段はエスパー、特性はファントムガード。テラスタルでドラゴンになり面影宿しで全能力を……上げる……』
なお、全部冗談です、出てきません。アズマ君に謎テレパシー送ってるだけです。
スグリ君に求める未来は
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クロスグリ君
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待っててなおれだけの鬼さま……
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ナンジャモ…エレキン越えっから…
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鬼さま鬼さま鬼さま鬼さま鬼さま
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覚醒