ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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鬼 vs ダークオーラ

「スグリ君、遅かったね。配信に来たら良かったのに

 いや、御免。君なりに頑張ってくれた筈なのに無神経だったね」

 イリュージョンで扇(最カワ↓と書いてある)を作ってアズマの頭の上に乗り、オーガポンを持ち上げるとか分かってねーなのとばかりに大きく欠伸をしていたゾロアをボールに回収しながら、アズマは配信を切ったところで漸く姿を見せた少年に話しかけた

 

 『ぽっに』

 「あ、良く頑張ったねオーガポン。はい、御褒美」

 配信を切って色々と作業しているナンジャモを見て、アズマの方へととてとて走り寄って来る鬼を撫で、目線を合わせてアズマは手持ちのモーもーミルクキャラメルを一粒ぽけっと空いた口へと放り込んだ

 「はい、姫にも。踊って頑張ってたもんね」

 『(わたくし、仮にも一国の姫としてあの野良鬼に負ける気にはなれませんでしたわ

 ですが、これで……ご迷惑とか)』

 「配信の邪魔になりえるなら、ナンジャモさんは先に止めてたよ」

 「そうそう、アズマ氏がサンドバッグになる代わり、ボクの配信はバズる!」

 『ぽにおー!』

 眼を輝かせてキャラメルを舐める鬼が、ぽにっと吠えた

 

 ディアンシーのテレパシーは聞こえてるだろうが、何も言わない。ということは、野良鬼と呼ばれても良いのだろう

 

 「……おれ、独りぼっ、わぶっ!?」

 疎外感からポツリと呟く少年が、突然のフラッシュに顔を庇って眼を瞑る

 「な、何!?」

 「スグリ氏ー、落ち込んだ顔してたら本当に独りぼっちになるぞー?」

 「そうだよスグリ君。君は君に出来ることをしてるんだから、もっと胸を張って」

 「アズマ氏、ボクの胸を見て言うなよー、うりうり」

 「別にナンジャモさんは綺麗な女性だと思ってますしそんな訳は」

 少し早口に、アズマは答えた

 

 ちなみにだが、アズマの少女の胸の基準は年相応から少し小さめのチナ。正直なところ、ナンジャモの方が見たところほんの少し、ある。なので本音だ

 

 「ま、ボク実はそんなに胸とか気にしてないけどね。でも、気にしてるってやると皆の者が喜ぶんだよねー」

 そんな話に、女性に耐性が無さすぎるのか黒髪の少年は顔を赤くして更に俯いてしまった

 

 「と、計算出たけど……」

 と、ナンジャモが終わった配信の画面を覗き……その眼を見開いた

 「高っ!?」

 「どうしましたナンジャモさん?」

 「え、えーとアズマ氏アズマ氏?普段の配信に比べて、投げ銭が凄い事に……」

 「ああ、呼ばれて結構来てましたね、皆」 

 と、アズマは配信中ちらちらと見ていた画面を思い出す。フリーズチャンネルがコメントして以降、その辺りのチャンネルの登録者がガンガン見に来ていた

 

 「ってかアズマ氏、何か言ってたけど本当にあのチャンネルととか」

 「いや、フリーズチャンネルならナンジャモさんの配信を参考に立ち上げ手伝いましたしね?」

 「いやいやいや、あれ伝説のポケモンがやって……

 あイベルタル」

 「ベルは無関係。単に、父を手伝って豊穣の王伝説の復活に立ち会ったから縁があるだけです

 結果、おれが出てるからって見に来て宣伝してくれたみたいですね」

 「あわわ、どーしよアズマ氏、ボクのチャンネルまた見てくれるかな」

 「きっと見てくれますよ、ナンジャモさんですから」

 「いやー、バズる人としかコラボしないよーって言って、ジムチャレンジの時は応援してるぞーをやってるけど、本当に有名人引き連れてきてバズらせられる人初めて見た」

 あははと笑って手を出す少女の萌え袖に、小さくアズマは拳を合わせた

 

 「じゃ、これからもキタカミでのやることが終わるまで、お願いしますねナンジャモさん」

 「キミに電気の誓い!ってそんな技ないかー!」

 「じゃあ、おれは悪の誓いでも作りましょうか?」

 『ぽにおー!』

 ちょん、とどてら風のオーガポンの手が、下から袖に触れた

 

 「じゃあ、戻り……」

 と、人気を感じる。戻る道、林檎農園の付近には沢山の人影があり、いくつものバルーンを置き始めていた

 

 バルーンは4種。赤、青、灰色、そして緑。緑は少なくともオーガポンのお面を模していて……

 「何だろう、あれ」

 「皆の者に聞こうか?」

 パシャっと撮影しながら少女も横で首をかしげる

 

 「鬼退治フェス」 

 『が、がお!?』

 鬼退治、の一言にオーガポンがアズマの背に隠れて外していたお面を被った

 「鬼さま、おれはやってない……

 鬼さまの風船、割るの嫌で……」

 「あ、あのフェスの為の用意なんだ」

 うんうんと名前をごまかして、アズマは頷いた

 鬼退治フェスという名前は聞いていても、アズマ自身それが何なのかは正直知らなかったのだ

 

 「ライドポケモンとかでバルーン割って木の実を回収して、出来る限り早く指定の数を揃える遊び……。鬼さまは、名前だけで」

 『がおーっ!』

 完全に怯えたオーガポンが、お面の下で吠えた

 

 「おれ、違うのに」

 「大丈夫だよオーガポン。退治なんてされないし、させないから」

 しょんぼりするスグリの横で、アズマは背中に隠れる鬼のポケモンの頭を撫でる

 

 『ぽに?』

 しばらく撫でてやれば、落ち着いたようにポケモンはお面を外した

 「……おれ、なんで」

 『ぽにお!』

 そして、怖かったから落ち着くかなとキャラメルをもう一粒やれば、オーガポンはそれを口にせず、落ち込む少年へと差し出した

 

 「お、鬼さま……」

 潤む瞳で受けとると、少年はキャラメルを口に含む

 「甘い……」

 「いやまあ、惜しむものでもないから」

 これじゃオーガポンの分が無いなと、アズマは更に取り出す

 

 「ボク貰って良い?

 だけどアズマ氏アズマ氏ー、感動の絵面が台無しだよこれー」

 「オーガポンがキャラメルをスグリ君にあげた、で話として完結してますし、キャラメル沢山あっても良いでしょあれ」

 「話的にはそうだけど、バズが足りなくなる!」

 「確かに、でもまあ、オーガポンは食べていいんだよ」

 と、ナンジャモを無視してキャラメルの包みを開けつつアズマは呟いた

 

 「んで、こっからどうするのアズマ氏?」

 キャラメルを舐めつつ、美味しいーと値段を検索して一箱4桁に届く価格に撃沈したナンジャモが一歩引いて問いかけてくる

 「あの祭りの用意ってことはもうオモテ祭は始まるわけですし、お面は今作って貰ってるけど流石に注文日納品とか間に合わない」

 んー、とアズマはバッグに入ったディアンシーを本ポケモンが望むから背負ってやりながら悩む

 「で、普通に帰るとあのお祭りを用意する人々に当たる、と

 なら、やっぱりベルを出してやって」

 この時点でカタカタ揺れるモンスターボール。イベルタルが頼られボール内で喜びの舞いでも踊ってそうだ

 それをもうちょっと待ってなと揺らし返して、アズマは続ける

 

 「山側からぐるっと回って祭の始まった後にキタカミセンターへ行くべきかな、って」

 「おー、オッケー!」

 と、人から見えない場所に移れば、早く早くとばかりにイベルタルが勝手に飛び出してくる

 『ぽに!?が、がお……』

 びくっとしたオーガポンが、今度は遂に溢れ出す本物のダークオーラに怯えてか、今度はナンジャモの袖に頭を突っ込んで隠れようとして……

 角がつっかえる。流石に大きい作りとはいえ、人の着る上着の袖に入り込めるほどオーガポンは小柄ではなかった

 

 『ぽにおぉ……』

 憐れっぽく鳴く鬼。最早これまでという哀愁すら漂わせて踞るが……

 当の黒紅の鳥は、事態が分からないというようにきょとんとそれを眺めていた

 『ギュレッカ?』

 「オーガポンを虐めちゃ駄目だよ、ベル」

 『イグレ!』

 『ぽにお……』

 分かったとばかりに返事するイベルタル、こてんと倒れるオーガポン。鋭い嘴……ではないのだが、嘴状の口が仰向けになって死んだふりするポケモンへと向けられる。そして、イベルタルがアズマを一瞥した直後、それが閃いたかと思うと、緑鬼の姿は巨鳥の頭の上にあった

 

 『ぽ、ぽに?』

 『ガルレッカ!』

 『ぽにぽに、ぽにお』

 『イガレ?』

 『ぽにおーん!』

 イベルタルが翼を大きく拡げて何かやり取りをしているが、正直アズマには分からない。アズマの事を気にしてくれているイベルタル的に思うところとか、語ってそうではあるが……

 

 「姫、分かる?」

 『(わ、分かりませんわ……)』

 と、話がついたのかイベルタルが一声鳴いた

 『ぽっにおー!』

 ぽにっと笑って、その頭の上で角?を片手で掴んだオーガポンが、空いた左手をまるでしゅっぱーつ!とでも言いたげに前へ向ける

 

 「仲良くなれたのかな

 行きましょうかナンジャモさん、スグリ君」

おうさまのおうまは

  • 冷たいニンジンぱっくぱく
  • 黒いニンジンむっしゃむしゃ
  • ダイ木の実を鍋でコットコト
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