「ダメだ、完全に破壊されてる……」
紫の煙がほんの少し漂う背の低い社であった部分を見て、アズマは首を振った
『ぽに……』
「大丈夫だ、鬼さまはつぇぇから」
そんな言葉に、びしっとナンジャモが突っ込みを入れてくれる
「見てて分かるだろスグリ君。オーガポンはそこまで戦いたいポケモンじゃないんだから、最初から頼ろうとしちゃダメだよ」
「てアズマ氏アズマ氏?つまりどういうこと?」
何となく状況は理解しているだろう。が、周囲というか撮影している以上ナンジャモ以外にも知りたい人々は居るだろう。だから問い掛けている
それを理解して、アズマは頬を掻いて続けた
「ともっこさま……お面職人の伝承によれば欲深い三匹が、復活した。ということだろうね」
「え、それ本気?墓荒らしとかじゃなくて?」
「うん。謎のポケモンが飛び去ったような気配が残ってる」
けほっと咳き込んで、アズマはそう頷いた
「毒性が強い。おれ、これでもベルの加護か大概の毒性って殺せるし、お陰で風邪も病気も最近は縁がないんだけど、それを貫通する力だ。そんなものが残ってるってことは、何かが起こったんだ」
「アズマ氏、人間止めてない?」
「まあ、映画にはそういうの良く居るから……
兎に角、墓荒らしならそんな毒は撒かないよ」
そして、とアズマは山を振り返る
『ぽにお?』
「ともっこが復活したとなると……何をするだろう?」
「オーガポンへの復讐?」
「けど、鬼さまは此処に居るべ?」
「そもそも、あの三匹について、どうしてオーガポンは怒ったかっていうと」
はっ、とアズマの脳裏に一つの考えが閃いた
「キタカミセンターだ。復活した三匹、きっとあの時奪った仮面を回収しに行ってる」
『がお!?』
びっくりしたようなオーガポン。が、多分あんぐり開けているだろう口も眼も狂暴な赤黒の仮面の下で見えない
「大変だー!即座に追い掛けようアズマ氏!」
『イガレッカ!』
人気がないのでそのまま後ろで控えていたイベルタルが、任せろとばかりに翼を打ち振るった
そうして、ともっこプラザから即座に飛び立ち、オモテ祭りが行われているだろうキタカミセンターへ。流石にイベルタルで突撃する程無神経で行くべき案件かは分からない為道中で降りて、そこから駆け出す
祭りの最中だからか、元々そこまで人通りは無いだろう道だが人っこ一人居ない。オオタチやポチエナ等、ポケモン達だけが怯えて道を空けてくれる中、一気に走り出して……
『デェェェスカンカンカァァァン』
『(危険ですわよ!)』
ぐいっとバッグの肩掛けを引く力にバランスを崩し、片足で跳ねてバランスを取るアズマ。その眼前を、ほの暗い霧のような腕が横切っていった
「っ!」
『デスカァァァ』
ドシン!という音と共に、道路の真ん中に降って来たのは、青い装飾の入った黄金の棺桶。古代の偉い人を埋葬したものにも似た棺のポケモン、デスカーンだ
「デスカーン!?」
デスマスはこの辺りで見掛けない。当然、野生のデスカーンも生息していないだろう。ということは
「こ、こんなポケモンさ見たことねぇ」
「ともっこが突然復活した。けど、タイミング完璧だったとはいえそれは流石にオーガポンが仮面を貰った事に反応した訳じゃない」
それならば、元々持ってたはずの碧の仮面に反応して復活するだろう
「なら、誰かが復活させたの!?死んじゃったポケモンだよ?」
「ナンジャモさん。今では他の個体も沢山居ますけど……エンテイ等ジョウトに伝わる焼けた塔の伝説は、焼け死んだポケモンをホウオウが蘇らせた結果産まれたポケモンとされています。ゼルネアスも命を与えられるとされています
ならば!ともっこを蘇らせる手段がその誰かに無いとは限らない!」
言ってて底冷えする
つまり、アズマの知識の中で推測するならば、敵はホウオウかゼルネアスを従えているという事になるのだから
『カァァデス』
更に、デスカーンが四本の霊腕を天に掲げると、空……いや道の先から何かが滝を下るように降ってくる
『ビルッ!ド!』
巨大な前腕、それに反してコアルヒーの足のようにぺたんとして小さな後ろ足。そして竜頭蛇尾と言いたくなるような段々細くなる長い体躯を持った、黒いウナギのようなポケモン
「シビルドンまで」
『デスデスデス、カァン』
『シッビレル!』
野生に居たらかなりの強者だろう二体、生息域がほぼ被らないだろうそのポケモン達が、道を塞ぐ
「完全に、復活の犯人がおれ達の足を止めさせる気みたいだね」
言いつつ、アズマはボールを取り出す
「行けるか、ギル、サザ、アーク?」
ボールから飛び出してくるのは二本の剣、ニダンギル。そして
『デスカァァン!なの!』
デスカーンにイリュージョンで化けたゾロアだ
「いや紛らわしいよアーク」
『ロァ』
本ポケモンとしては同士討ちを誘いたかったのかもしれない。が、此方も同士討ちしかねない。諦めたようにゾロアがイリュージョンを解き、四本の脚で踏ん張る
「サザは……分かった」
完全な格上。アズマ達を止めようとしに来た二体のポケモンの威圧感はかなりのものだ
「アズマさん、そんな事しなくても」
「流石にベルで薙ぎ払えとは、言えないよ。まだ、どうしようもない相手とまでは言えないから」
イベルタルは最後の切り札だ。アズマが頼めば幾らでも戦ってくれるだろうが、だからこそ、軽々しく命を奪うだけの力を持つ伝説を解き放ってはいけない
「さぁ、ジムリーダーナンジャモが、オーガポンの為に頑張ってみた!行くよハラバリー」
「はい、助かりますナンジャモさん!」