「……コードさん!」
戦おうとした。が、あまりにも不安げなオーガポンを放置しておけず、2体のポケモンを隙を見てナンジャモに任せて離脱。そのまま山登りは苦手だろうオーガポンを背に抱えて、ニダンギルに岩肌に剣を突き立てて足場になってもらってショートカット。イベルタルの手を借りずに、アズマはキタカミセンターにまで辿り着いていた
「わ、わやじゃ……」
手には戻したニダンギルのボール、背にはディアンシーの入ったリュックと重ねてオーガポン。横にスグリを従えて
祭りの屋台の立ち並ぶ道を歩く
が、周囲の疎らに隙間のある人混みは、アズマ達の方を見やしない。キタカミセンター本体、その社と社前に立った太鼓の置かれた櫓の方を見てわいわいとずっと騒いでいる
その隙間をぬって、少年等は社へと辿り着いた
「ああ、君達。特にスグリ君、良かった何処に行っていたんだい?」
「トリオさん」
と、親しげに、そして嬉しげに話しかけてくるのは白いプラズマ団の男、鳥尾
「どうしたんですか?」
「実はね、あのともっこさま達が祭りに現れたんだ。いやー、ちゃんと実在していたんだ
スグリ君は特に、気になるだろう?」
何処までも善意に満ちた言葉だった。が、それは……今のアズマにとっては、悪い知らせでしか無かった
ディアンシーのリュックに更に強く掴まるオーガポン
「ん、その子は……?」
「すみませんトリオさん、今は!」
それだけ告げると、アズマは男の体を押して更に前へ
「どうしたのですかな、旅の方。今取込み中なのです」
眼前には、3匹のポケモン。ガオガエンのような犬、賢しく小柄な猿、素子で優雅な何処となくネイティオを思わせるフォームの雉。ともっこと呼ばれる3匹である
そして……そんな彼等に、センターの管理人は今正に、センターに保管されていた仮面を手渡すところであった
「その行動、少し待って下さい!」
「わやじゃ!それは鬼さまの仮面」
「ほら、聞きましたか皆の者」
かつん、と杖をつく音が響く。包帯を巻いたローブのプラズマ団が、大仰にふぁさぁっとローブをはためかせてお辞儀をした
「ええ、彼等こそ悪しき鬼に心を犯された悪。聞いてはなりません」
『ぽに!?』
思わずといったように、オーガポンがアズマの背から飛び降りる
『ぽにに!』
「やはり。あれが鬼です。今、洗脳した彼等に指示を出した」
「何を言うんですか、コードさん!」
「鬼さまは悪くないべ!」
「ほぅら、鬼に洗脳されている」
得意げにカツンと杖を鳴らし、プラズマ団幹部の男は告げる
まるで、そうであると最初から決めていた……とでもいうように
「違うべ、鬼さまはあの看板みたいに」
「……スグリ君、言っても無駄だ」
聞く気はない。それを理解して、アズマは静かに眼前の仮面の人を見詰めた。どこまでも、計画通りというように動揺一つ見せない男を
きゅっと、けれどまだ早いと揺れるボールを強く握り締めて
『ぽにがおー!』
御霊の面を着けて吠えるオーガポン。それではひょっとして聞こえないのか?と一瞬首を傾げると、躊躇を挟んで仮面を取り、今一度叫ぶ
が、誰も反応しない。外見は可愛らしいが、今の鬼とともっこさまの逸話の再現に近い状態では、誰だって味方してくれない
「何がしたいんですか、コードさん。ミライドンを治してやるんじゃ」
横に控えた機械竜のモニターの瞳が見てられないとばかりにブラックアウトした
「……何のことでしょう。言葉を弄して、仮面の強奪を
『がお!ぽにおー!』
再度仮面を着け、オーガポンが威嚇する。が、それをすればするほどに、周囲の目線は厳しくなっていく
「……とりあえず、その3匹は時には危険です。そして、その仮面は……」
「ワタクシが預かるのが良いのです」
3匹が恭しく、持っていた仮面を差し出した
理解する。話など……彼相手には最初から通じなかったのだ、と
「鬼は退治されるべき、打破しなさい、サザンドラ!」
その瞬間、空から大きな影が飛来して……
「……ベルぅぅっ!」
右腕にある小さな頭がアズマの肩を打ち据えた瞬間、アズマは大きく叫んでいた
同時、待ってましたとばかりにボールから飛び出すのは深紅の巨影。飛んできた三ツ首の黒竜の短めの尻尾をその足の鉤爪で掴んだ紅の巨大な鳥は、圧倒的な脚力で天へとその体を放り投げ……
「ベル、命までは!」
『ガルレッカ!』
一閃。全身を輝かせ、禍々しい光がイベルタルの口から迸ったかと思うと……
『ガレ』
嫌そうに、落ちてくる体を足の鉤爪で再度掴むと地面に軽く叩き付けるイベルタル。既にサザンドラの全身は尻尾の先から半分以上が石と化してまともに動くことすら不可能になっていた
そのまま、生身のままの上半身も力尽きて首ががくりと落ちる
「コードさん。話をしましょう」
『イ、グレック!』
優雅に舞う紅の伝説。アズマを護るように強く羽ばたき、天に舞う
あまり、気乗りはしない。ある種、アズマの嫌いな悪の組織のやり方だ
フラダリの想いは尊敬しても、やり方は間違えたと言いたいアズマには、同じように力で押し通すやり方は好ましくない
けれど、と凄めば、困ったように男は肩をすくめた
「分かりました少年。矛を収めて、話をしましょう。ミライドン、リラックスを」
『アギャス!』
ミライドンにも吠えられ、頷くとアズマは天のイベルタルへとボールを向けた
「交渉だ。一旦戻って、ベル。もしもどうしても平行線ならまたお願い」
一瞬だけ解放されたが故に、ほんの少し不満げに首を振るも、大人しく紅の伝説はボールへと帰る
「……では、コードさん。今一度、話を」
「……やはり、馬鹿ですね。所詮は子供」
「っ!」
すっと、男のローブの下から取り出されたのはアズマが何度も見た事のある形状の仮面
が、アズマが持っていたし縁日屋台で売っているものとは異なり、各所には特別な石が煌めく、大きな仮面
「っ、それは」
『ぽに!?』
「鬼さまの仮面!?」
それは……オーガポンの身振りから少し前に何者かに奪われたと語られた碧の仮面であった
『キュルル、アギャ!』
『ぽ、ぽにお……』
覚えたように、オーガポンがアズマの背に再度隠れる。つまり、それだけの事をした相手がそこに居る
「コードさん。いえ、プラズマ団のコード
それはいったい、何処で手に入れたんですか!」
ほぼ、答えは分かりきっている。彼とミライドンと呼ばれる謎のポケモンが、オーガポンを襲って仮面を奪ったのだ
怒りと共に、アズマは再度ボールを掲げる
「今度こそ、どうしようもない!叩き潰せ、ベル!」
が……ボールは、うんともすんとも言わなかった
「……ベル?」
返事はない。何時も揺れるボールは、欠片も動かない
「ギル、サザ、アーク?」
返事はない。ボールが、機能しない
「ああ、素晴らしい。これが四つの仮面の……テラス結晶の力!
妨害電波を増幅し、ボールの機能を総て停止させるとは!」
『……ぽにおーん!?』
そして、困惑するアズマの手のボールを、横から何者かが引ったくった
「すまね、アズマさん……けんど、強くならなきゃ……」