ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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ハクダンシティへ

「……ここが、ハクダンシティ」

 二日後。町の中央にあるロゼリア噴水を遠くに確認し、アズマは呟いた

 

 ハクダンシティ。そこまで大きくはない、それ故にゆっくりとした感覚のある古式ゆかしい町。アサメ等と同じく、ロゼリア噴水以外にそこまで名所と呼べる場所は無い町だが、活気が絶える事はあまり無い。ポケモンリーグカロス支部へと続く22番道路、そしてカロス一の大都市ミアレシティへと向かう4番道路に繋がっている上公認のポケモンジムまでもが存在する事から、多くのポケモンリーグに憧れるトレーナーが此処を訪れる。それも、憧れの地に近い場所に来たかった新米トレーナー(ミアレの子供達はポケモン博士からポケモンを貰うと、多くはまずハクダンを訪れるという)から、バッジを集めきり、リーグ出場申請の為に強い野生ポケモン達が生息するというチャンピオンロードを抜け、カロス支部へと向かおうとするエリートまで様々

 

 「姫、離れないように」

 『(わたくしだって分かっていますわ)』

 足を踏み入れるに当たって、ディアンシーに注意する。人のポケモンを取ったら泥棒。それは多くのトレーナーにとっては常識であり、連れていれば、例えそれが実際には捕獲されたポケモンでは無くとも、手を出してくるトレーナーは少ない

 だが、離れてしまえばその限りでは無い。町に付いた解放感からポケモンをボールから出した後何らかの理由ではぐれてしまい、大切なポケモンを見つけた時には捕獲しようと他のトレーナーにバトルを仕掛けられている最中であった……というのは、割と良く聞く話だ。町にだってポケモンは居る。その中には当然野生のポケモンも居る。区別はリボンなり何なりを付けていない限り、ボールを投げてみないと分からない

 

 「とはいえ、目立つよな……」

 ボールからモノズを出し、アズマは呟く。他のポケモンも出すことで、誤認させていく方法。セコいといえばセコいが

 『(ボールは怖いですわ。入りませんわよ)』

 「分かってるから、どうするかって話」

 ディアンシーの姿を良く知らないトレーナーだって多く居るはずだ。単なる珍しいポケモン扱いも多いだろう。とはいえ、あまり目立つと困るのは当たり前。流石にあのジャケット……生命団だか何だかに不意を討たれる程に油断する気はないけれどもだ、珍しいから捕まえて売ろうなんてポケモンハンターが来ない保証は無い

 

 警戒しすぎるならば、ボールに入れてずっと出さなければ良い。というのは正論なので、どうにもしにくいが

 

 「まあ、良いか。まずはジムを」

 言いかけた所で、アズマは町の入り口の掲示板に張ってある張り紙を目にとめる

 曰く、本日のジム戦受付は終了しました

 「……とりあえず、今日は泊まりだな」

 格安の宿泊施設としては、ポケモンセンターがある。けれどもアズマの父は、金持ちの使命は金を使う事だ。旅先で金を惜しむなと良く言っていた

 「ホテルでも探すか」

 『モノッ!』

 応えるように、モノズが鳴いた

 

 『(……残念でしたわね)』

 30分後、アズマ達はロゼリア噴水近くにあった宿の一つに居た

 時間としては昼下がり、まだまだ日は高いのだが、既にジム受付は終了している。ジムを無視するというのもトレーナーとしてはやりたくなく、結果的に今日という日をどうするかは悩ましい

 「まあ、とりあえずポケモン出したままでも良いって良い宿が早めに見つかって良かった」

 ポケモンの毛の掃除が面倒だからと、ボールからポケモンを出すことを禁止している宿も当然ながら存在する。そんな宿ばかりだとディアンシーを連れたまま……というのは難しく、それこそハクダンの森でもやったように町の外で泊まるというのも考えなければならかったのだが、そこは流石リーグに近い町という所だろうか

 

 『(それで、どうするんですの?)』

 「少し外でってのもアリではあるんだけどな」

 当然ながら、こんな町だ。ジムに挑戦しようというトレーナーも挑戦したというトレーナーも沢山居る。話しかけてジムの事を聞きつつ、ハクダンジムを越えたというショウブに敵わなかった自分が、どれだけ通用するようになったのかを知る意味も込めてバトルする、というのは手だ

 

 ……だが、初めてのジムだ。正確には、アズマにとってはかつて父に連れられて旅した時のシャラジムが初めてなのだが、あの不思議なルカリオよる一方的なフルボッコは挑戦回数に含めたくはない。他のジムリーダーもあのレベルだとすれば、勝てるかどうかは怪しいのだ。ゆっくり休んで、万全の体制で行きたいとも思う

 「なあ」

 言いかけて、アズマは気が付く

 部屋内だからと出していたヒトツキが、机の上に置かれた一枚のシートを布で指し示していた。それは……

 

 「えっと……『ポケウッド映画レンタル、やってます』、か」

 ふと、部屋のテレビを見ると確かに映画のディスクを入れられそうな場所がある。シートによると、かなりの数の作品のディスクが置いてあるらしい。レンタル料は一晩2作品で100円と中々に良心的なもの

 

 「見るか?」

 『(ポケ……ウッド?どういうものなのですの?)』

 「有名なポケモン映画のスタジオだよ。本社はイッシュ地方だっけな

 確かカロスポケウッドってのがミアレに作られたとか何とか聞いたこともある」

 『(面白いんですの?)』

 「『そのポケモンふゆうにつき』や『サンのみを盗んだ男』とか幾つか家で見たけれども、面白いぞ」

 『モノッ!』

 「……サザ、見るか?」

 アズマの問いに、モノズは頷く

 『(わたくしも、興味ありますわ)』

 

 「……分かった。今日はポケウッド作品借りてきて見ることにして、ジムへ行くのは明日朝だな」

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