ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsハクダンジム

「ようこそチャレンジャー・アズマ!」

 次の日。ジム戦の挑戦予約を取り(とはいえ、挑戦出来るのは昼前、約11時頃となる程には順番待ちすることになった)、アズマは遂にハクダンシティジムへと足を踏み入れていた

 

 見る限りは、あまり大きくもない部屋だ。幾らかの写真が貼られており、写真展のようになっている。花や虫ポケモン達の写真、中々綺麗に撮られており、見るものを惹き付ける感じがする

 「君は今、ポケモンリーグを目指す一歩目を踏み出した。グッドラック、チャレンジャー!」

 入り口に居る男の声と共に、床の一部が動き、地下への穴が現れた

 

 なるほど、どうにもポケモンバトルをするには小さいと思ったけれども、本体は地下か

 「姫、大丈夫だな?」

 『(ええ、問題ありませんわ)』

 どうやら、地下へは糸を伝って降りるらしい。頑丈そうな糸とはいえ、少し勇気が居るので訪ねたが、どうやら手助けなしでも降りられるようだ

 

 「……これは」

 感心したように、アズマが呟く

 地下は、何匹かの虫ポケモンが飛び回る広々とした空間になっていた。蜘蛛の巣のように張り巡らされた頑丈な糸。とても広く、そうそう足を踏み外す事はないだろう。それに、その下には柔らかそうなクッションが敷かれているのが見える。万一落ちても大ケガはしないだろう。そして、アズマ達が降りてきたのはその中心部。幾つかの地点には少し狭いながらポケモンバトルが出来そうな広い板の場所があり、蜘蛛の巣の一番果てに、リーダーが居るだろう大きなテントが見える

 「なるほど、幾つかの板はジムトレーナーの居場所、上手くルートを決めればリーダーまで消耗無しで行けるって感じか」

 全体を見渡して、自分でもしっかりと理解するべく声を出し、アズマは呟く

 ジムの基本的なルールとして、一度挑戦を始めた場合、リーダーに勝つか負けるか諦めるまで出ることは出来ず、リーダーに勝たずに諦めた場合、最初からやり直しとなる

 

 つまりだ、あの板辺りに近付けばジムトレーナーと戦闘となり消耗するだろうが、回復に戻ることは許されない。如何にルート取りをしっかりして、消耗を抑えるかというのもこのジムが見ている事なのだろう

 アズマのバッグには、それなりの量の薬類は入っている。金は家から十分持ってきたし、その気になれば買い足せば良い。なので、強引に突っ切るという手は、決して無しではない。流石に、そういったものの使用を禁じてはいなかったはずだ。ジムの仕掛けがトレーナーの対応力を見るものでもある以上、いざという時に薬なりなんなりでポケモンを助ける事を禁じる訳がない

 だが、アズマはそれを選ぶ気は無かった。真っ向から、意図された通りに全ての板、つまり全てのジムトレーナーを避けてジムリーダーまで辿り着く

 その気概を胸に、アズマは糸を渡り始めた

 

 10分後

 「見事に切れてるな……」

 意図したかのように、蜘蛛の糸が切られている場所に辿り着いた。流石に完全無視で最初の場所から真っ直ぐジムリーダーへ向かう道程大きな欠落では無いが、軽く飛び越えるのは不可能だろうくらいの間。巣の外周であり、反時計回りにやって来た以上左に避けるのは不可能。右にならば活路はあるが、其処には板が敷かれている、つまりはトレーナーが待ち構えている

 『(どうするんですの?)』

 周囲をアズマは見回す。やはりというか、虫ポケモン達はずっと飛び回っているだけ、此方に何も仕掛けて来ない。恐らくは、トレーナーのポケモン達が放されていて、いざという時に糸を吐く等で救援に入り、板に近付いた場合はポケモンバトルになるのだろう

 ならば、邪魔は入らないはずだ

 

 危機はポケモンと乗り越える。越えられない距離じゃない

 「ギル!」

 アズマが取る行動は簡単。飛び越えられない距離だというならば、途中に掴まる場所があれば良い。そして、ヒトツキは宙に浮かぶことが出来る。ならば、全力のジャンプからヒトツキに掴まり、腕の力で更に跳ぶ事で向こうへと移るという手が使える

 「行けるか?」

 ボールから出したヒトツキに問う

 okというように、ヒトツキはアズマから離れ、空中で揺れた

 『(あ、あの)』

 「大丈夫だ、姫の重さならばギルが運べる」

 ディアンシーの重さは10kg無い。抱えるには少し重いが、アズマより大分軽いのだ、ヒトツキならば十分に乗せて飛べる

 「ギル、頼む!」

 軽く助走を付けての跳躍。そのまま空中のヒトツキへと右手を伸ばす

 僅かに足りない距離は、ヒトツキが詰めてくれてカバー。ヒトツキの柄を掴み、振り子の要領で更に跳ぶ

 「っとっ」

 着地時にバランスを崩しかけるも、何とか下に落ちずにしっかりと糸を踏む

 「よし、ギル、ディアンシーを」

 言いきる前に、ヒトツキが布で抑えてバランスを取りながら、ディアンシーを乗せて此方側へ

 「よし、渡れたな」

 『(恐らく、方法が違いますわ……)』

 「そうなのか?」

 ディアンシーが小さな手で指差す方を見上げる

 天井に、何本かの糸が見えた。いや、何本かでなく、束ねられた一本の糸だ。垂らせば、下まで届くだろう

 

 「……飛べるポケモンであの糸を落とせば良かったのか……」

 完全な注意力不足。行けると思う方法があったから、それ以外のより楽な方法を考えることを忘れていた

 『(行けたのならば構いませんわ。あんな方法とは思いませんでしたけど)』

 「まあ、一般的じゃないよな多分」

 十分飛べる大きさの飛行ポケモンを連れているトレーナーならば飛んで直行、も恐らくは考慮されているだろうが……糸があるのに使わずより危険な道というのは流石に、だろう

 「まあ、良いや。突破は出来たんだし」

 言って、アズマはテントを目指す。道は7割以上は来た。最初にルートを考えるのにある程度の時間を使ったのだし、ジムリーダーまではもうすぐだ


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