ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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エターナル半年

こらからも超不定期です


vsビビヨン・後編

そして、裁きは下った

 

 「『かげうち』ぃぃっ!」

 無罪、と

 

 吹き上がる煙の中から、漆黒の影が伸びる。ヒトツキの影が、不思議な形へと歪み、襲い掛かる

 その一撃は、確かにビビヨンへと当たり、その羽根の動きを乱した

 

 「おっ、運良いねー」

 「信頼に答えてくれた結果、とそこは言って欲しい」

 行けるな、とヒトツキを見る

 傷はある。光の束は目覚めて即座に避けたが、それでもかすったのだろう。けれども、闘志も力も折れてはいない。気合十分

 目は合わせずとも、後ろ姿だけでも分かる

 「それにしても、ライトが強いな、ギル

 雲が欲しくなる」

 「ゴメン、フラッシュ焚くみたいにピカピカのライトが無いとさ」

 「……良いですよ、ビオラさん。それがジムの特徴だというなら、無駄に文句つけてる此方が悪い」

 互いに呼吸を整えるための一時(ひととき)の会話

 それを許すのも、挑戦者を見極めるジムリーダー故、だろうか

 

 「……行くぞ、ギル」

 「ビビヨン、もう一度やるわよ、『ねむりごな』!」

 「『おいうち』!地面を叩いて視界を乱せ!」

 アズマの叫びを受け、ヒトツキがその身を……鞘に入った刀身を地面に叩き付ける。板が細かく割れて剥がれ、視界に対する盾であり即席の目眩ましとなる

 

 ……だが

 「勝負あったね」

 カラン、と軽い音を立てて、ヒトツキの鞘が地面に落ちる

 こうかくレンズを通し、しっかりと見据えたビビヨンの放った鱗粉は、目眩ましの上からでもヒトツキを捉えたのだ

 そう、皆思った

 

 「舞え」

 「聞いてないみたいね」

 「舞え、ギル。勝つために」

 ヒトツキは、半分砕けた板に埋もれ、動かない

 「二度目は無いわ。『ソーラービーム』」

 ビオラの言葉を受け、ビビヨンの二本の触角の間に、二度目の光が集まって行く

 ソーラービーム。溜め込んで莫大な太陽光のようなビームを放つ、草タイプエネルギーの大技。ヒトツ相手のタイプ相性はイマイチとはいえ、そんなものを受けては無事で済むはずがない

 もう一度、目覚めてくれなければ負け。そして、眠り作用を持った鱗粉による眠りは、衝撃を受けなければあんなに早く目覚めるなんてそうはない事

 

 『(……笑うん、ですの?)』

 「姫、当たり前だ」

 笑みと共に、アズマは小さくそう言葉を溢す

 「……なぁ、そうだろうギル?」

 

 その言葉に、はっと気が付いたビオラは上を向く

 「まさか!」

 「気が付くのが遅い!『おいうち』!」

 アズマの声による合図と共に、天井から鞘を捨てた抜き身の剣が急降下した

 そう、目眩ましの本当の目的は催眠作用を持つ鱗粉を避けることではない。鞘だけを残すことで当たったと思わせる、即席の身代わり作戦こそが狙い

 ビビヨンとビオラは、見事に願望の入った狙い通りの動きをしてくれた

 「『ソーラービーム』には溜めがある。今更避けられは」

 「甘いね!発射!」

 「なっ」

 突如として、ビビヨンの触角に集まっていた光が膨れ上がる

 そうして光の束は、チャージ無く天へと向けて放たれた

 

 「……そうか、強いライト」

 「そう、陽射しが強い状態と同じ

 気が付くのが遅かったのは、そっち」

 黒いオーラを纏う剣と、眩い光の線が真正面から激突する

 幾らつるぎのまいを使ったとはいえ、ヒトツキでは恐らくはソーラービームを耐えきれない。押し負ける

 「それでも、負けられない。そうだろう、ギル!」

 言葉に、ヒトツキは応えた。纏う力が膨れ上がるという形で

 幼い頃から幾度と無く発動した、悪タイプエネルギーの増幅。ジュエルと似た効能を持ち、けれども理屈不明の力

 

 ヒトツキの剣が、光を切り裂く。だが、ソーラービームの光は溢れ続け、近付けない

 「これで、終わり!」

 『(もう駄目ですわ!)』

 「大丈夫……強い光は、強い影を産む」

 アズマは、少しの罪悪感と共に部屋を見る

 莫大な光は、四方八方に影を産む。黒々とした、太いものを

 「終わりだ、『かげうち』ぃっ!」

 そして、無数の影の槍が、光を放つ蝶へと突き刺さった

 ソーラービームが、制御を失い爆発する

 

 そして、その煙が晴れた時

 「……有り難う、ギル」

 立っているポケモンは居なかった

 「ヒトツキ、ビビヨン、両者戦闘不能!よって、勝者、チャレンジャー!」

 その宣言と共に、ほっと息を吐く

 「お疲れ、ギル」

 手にしたゴージャスボールに、倒れたヒトツキを回収

 

 「あなたは……

 ううん、あなたとポケモン、サイコーのコンビね!」

 「無茶は、させましたけどね。正直、昨日考えた策とはいえ、雲が欲しいで上に隠れて不意を突け、だなんて意図、伝わる自信は無かった」

 「でも、それが出来た

 いいんじゃない!いいんじゃないの!」

 女性はポケットから取り出した一つの輝く金属をアズマへと投げ渡す

 

 それは、偽造防止の為に少し特殊な方法で作られたバッジ。両の羽根に一つ星のレディバのような体に、カイロスにしてはトゲの無い角を組み合わせた、模様が黄緑の透けた素材で、地が茶色の金属なバッジ……バグバッジ

 「初めて見た時は悪の組織感溢れてて少しきつい事やってしまったけど

 ハクダンジムジムリーダー、ビオラが保証する

 うん、あなた達、そのバッジを持つのに相応しいトレーナーね」

 「……きついこと?」

 言葉の意味が分からず、アズマは目をぱちくりさせる

 「ちょっと、使うポケモン強すぎたかなー、なんて」

 「……こんなものでは?」

 「ん?どうして」

 「昔、父やじいのポケモンを借りて記念にとシャラジムに挑んだことがあるのですが」

 「うんうん」

 「その時のシャラジムリーダーはもっと強かったので、バッジ0個でのジムリーダーの強さは、タイプによって差こそあれあんなものかと」

 「あー、纏う空気が悪の組織のボスみたいだしね、警戒されたんだ。それで、本来の基準で言えばもっとバッジを持ってきたトレーナー向けのポケモンで戦った

 話は本部に通しておくけど、これからも大変かもよ」

 「慣れてますよ、ポケモンにも良く警戒されて逃げられますしね

 

 上等、勝って見せますよ。苦難を乗り越えてリーグへ挑戦する、カッコいいじゃないですか。ギル達とおれなら、きっとやりとげられると思いますしね」

 その言葉に、ビオラはうんうんと頷いた

 

 「その心意気、いいんじゃない!いいんじゃないの!

 その気持ちを称え、これもプレゼント!」

 そう言って取り出されたのは、一つの水晶

 「まとわりつくの技マシン、皆に配ってるけどたぶん使わないでしょ?」

 「……たぶん、おれに寄ってきてくれるポケモンの中に使える種族はいませんね」

 「だから、幸運の御守り

 ヒャッコクシティに写真取りに行った時の日時計の欠片」

 「良いんですか?」

 「いいんじゃない!いいんじゃないの!」

 「なら、遠慮無く」

 そうして、アズマはその拳くらいの桃色の水晶を手に取り……

 

 『シカリ……シ……シ、シカリ……』

 「……は?」

 気が付いた瞬間には、暗闇の中に立っていた

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