緑の光が、全てを塗り潰した
「……ギル……」
アズマは、目を覚ます
どうやら、数秒、意識を失っていたようだ
背中が、とても重い。立ち上がろうとすると押し退けられ、崩れて周りに落ちる
瓦礫だ。謎のポケモンの放った緑の光……あるいは、無数の緑の矢は、屋敷全体を吹き飛ばし、細かい瓦礫に変えたのだ
寧ろ、威力が高くて助かったといえるかもしれない。細かい瓦礫にならず、一部にヒビが入る程度の半端な威力であったならば、崩れる家に潰されて死んでいたかもしれない
「ギル!じい、ウィン、ルリ、ゲン!」
叫んでみる。返事はすぐにはない
大丈夫なのだろうか
近くの瓦礫をはね除け、ウインディが立ち上がる。何とか耐えてくれたようだ。横で、ゆらゆらとヒトツキも浮き上がる。ギリギリで『まもる』が間に合ったのだろう。その防壁が、何とか二匹をこらえさせた
だが、立てるのはその二匹だけ。巻き込まれた老執事やそのポケモン達がどうなったかは分からない
「お前……」
言ってみても、何にもならない。相手はポケモン。人間の言葉を喋らないのだから
気を引く為に、腹いせも兼ねてモンスターボールを投げつける
一瞬吸い込まれるも、すぐにボールは破壊された
トレーナーのポケモンは、そもそもボールに入らない。ボールに入ってから捕獲を拒否したという事は、即ち……野生ポケモン。誰かの指示ではないのだろう
謎のポケモンの体が、再び輝き出す
また、あの謎の技を使う気なのだろう。『まもる』をしてもダメージは二匹共に残った。本来は一部の技以外を完全にシャットアウトする『まもる』の防壁を強引に打ち破る圧倒的な技の威力。次は守ろうが、恐らくどちらも耐えられない
ならば、此処に賭けるしかない
「ギル、おれを吸え!」
指令を受け、ヒトツキが自身の手……剣の柄部分に付いた青い布、をアズマの腕に巻き付ける
ヒトツキの特徴……手を人に巻き付けて、命を吸う。だが、それで良い。命を吸えば、吸った命を使って、本来の力を越える力が出せる
当然吸いきられれば死ぬが、昔から一緒に居るポケモンすら信じられない何て事はあり得ない。だから問題ない
「ウィン……『フレアドライブ』!」
ヒトツキが生命力を吸っている間に、ウインディに指示を出す
『ディ!』
わかっているとばかりに、ウインディは全身を覆うほどの炎を纏い、瓦礫の中を駆けた
そのまま、堂々と立っている謎のポケモンへと突撃……頭に受け止められる。だが、それでもウインディは止まらない。ジリジリと、本の少しずつ、相手の頭を押し込んでいき……
悪寒が走った
(何かが、何者かが、とてつもない数の何かが……目の前のハニカム目のポケモンが、おれをじっと見ている!)
だが、止まる訳にはいかない
何故暴れているのか、どうして屋敷を壊しているのかなんて分からない。けれども、少なくとも穏便には終わらない
「ギル……行けるな?」
アズマの意識は朦朧としてくる。生命力を吸われたのだから当然だ
ヒトツキが揺れる。問題ないの合図
「聖なる……剣!」
声と共に、ヒトツキが飛び出す
アズマから吸った生命力を使い、身に余る力を振るう。刀身である体全体に力を巡らせ、相手を切り裂く……本来はイッシュ地方の伝説のポケモンが使うという技
すなわち、『せいなるつるぎ』。生命力を多量に吸って初めて打てる、ギルの切り札
体全体で描く剣閃は、しっかりと『フレアドライブ』を受け止めている謎のポケモンの頭部に突き刺さり……
沢山の気配を感じる……
緑の光が膨れ上がる。二匹を吹き飛ばし、謎のポケモンの全てが光に包まれる
……進化?
一瞬、その光はZを思わせる、巨大なポケモンの姿を取り……
飛散した。後には、何も居ない。唐突に、謎のポケモンの姿はかき消えていた
謎のポケモン(ジガルデ・10%フォルム)
Lv:20 とくせい:オーラブレイク E:無し
サウザンアロー/しんそく/りゅうのまい/げきりん
ギル(ヒトツキ)
Lv:20 とくせい:ノーガード E:無し
かげうち/おいうち/つるぎのまい/まもる/(せいなるつるぎ)
ウィン(ウインディ)
Lv:50 とくせい:いかく E:ラムのみ
フレアドライブ/ワイルドボルト/しんそく/おにび