『シ……カ……リ』
思わず、アズマは手を引く
既に傷だらけで、大分脆かったのだろう。爪はあっさりと砕け、アズマの手に突き刺さったまま、本体から剥離する
『シ……シ……シカリ……シカリ……』
けれども、黒いポケモンは止まらない。そのまま、腕を……今度こそ、アズマの全身を狙うように水晶の腕を伸ばす
それが、地面スレスレを走り、アズマの落とした水晶、ヒャッコクの日時計の欠片に触れるや否や、即座に吸収
僅かだけ、その腕に生えた角ばった水晶が光を、白さを取り戻し
そして放たれるはレーザー。プリズムから放たれる、分裂した無数の光
それを受け、モノズが吹き飛ぶ。壁を別のレーザーが突き破った事もあり、弾き飛ばされた小さな体は、そのまま外へと飛ばされ……
「サザァッ!」
駆ける。ただ、地を蹴って
失うわけにいくものか。二度と、目の前で自分のポケモンを失うものか。何も考えず、ただアズマは空中に身を踊らせた
塔の中程から飛び降りる。何もなしに
そのままモノズをキャッチ
して、後先考えてないままに飛び出したという事実に思い至る。そう、下はよくわからない世界の地面で。此処は地上数百mはあるだろう場所で
飛び降りて無事なようなパラシュートなんて持ってないということを
『(全くもう!無茶ですわ!無茶苦茶ですわ!)』
そう、背中にしがみついてディアンシーが叫ぶ
抱えたモノズ、急いで寄ってきたヒトツキ、しがみつくディアンシー
全てと共に、成すすべなく落ちる
いや、違う
「ギル!」
言葉と共に、ヒトツキをつかむ
そのまま、タワーの壁にその刀身突き立てて……
弾かれた
「ぐわっぷ!」
そのまま、足を強打。落ち始めだから何とかなったが、塔から離れた所まで弾き出され……
『シカ……リ』
その横を、レーザーが駆け抜ける
解き放たれた漆黒のポケモンが、塔から出てきていた
どうしようもないのか、と一瞬アズマは目を瞑り……
その体は、一瞬後に、水面に叩きつけられた
「こ、ここは……」
ふるふると、急に明るくなった視界に首を振りつつ目をしばたかせる
「おーい、大丈夫かい少年」
そんなアズマの近くには、釣糸を垂らす、ラプラスに乗ったおじさんが居た
「急に落ちてきたからびっくりしたぜ少年」
「自分もです」
ゆっくりと、ラプラスの背に乗って、地面に向かう。アズマの平衡感覚はボロボロで、酔いそうで、甲羅の突起にしがみつくしかなかったけれども
「どうしたんだあんなこと」
「自分にも何がなんだか……」
ホロキャスターは復帰していた。此処は何でも……シャラシティとヒヨクシティの間の道路。アズマを拾ってくれた彼は、ヒヨク側で釣りをやっている人だという
「それでも、助かりました」
「おう、気を付けてな」
落ちたのは、ヒヨクに程近い場所。すぐに地面のある場所まで付く
さて、どうするかだな
色々と分からない事は多い
とりあえず、疲れたろうポケモン達を休めようとポケモンセンターを目指すことにして……
アズマはふと人だかりに気がついた