ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsアブソル

「何だよ、あれ……」

 ショウブが、アズマの横で絶句する

 

 ……アズマには、見覚えがあった

 いや、実際には無いが、似たようなポケモンであれば、見たことがあった。数年前、父親に連れられてシャラシティを訪れたアズマを、完膚なきまでに一方的に叩きのめした、不可思議な姿のルカリオ

 当然、ルカリオとアブソルは別種のポケモンだ。同じなんて事はない。けれども、似ているのだ。すらりとした姿のまま、一部部位が発達し変貌するという形式が

 『ソルッ!』

 背に生えた、ふさふさとした白い毛……が生やした翼のような部位を震わせ、アブソルが吠える。そんなものは、普通のアブソルには無い。そして、アブソルの進化は、どの地方でも報告されてなど居ない、有り得ない変化である

 

 僅かに、アブソルが前足を折ったように見えた

 アズマに見えたのは、それだけだった

 『(きゃっ!)』

 アズマの背後で、ディアンシーが悲鳴をあげる。それを、舗装された土の道路の味を確かめながら、アズマはぼうっと聞いていた

 背中から突き倒され、背負うバッグに首を突っ込まれたのだ、と。数秒たってから、漸くそうアズマは認識した

 抑えに使われた爪が、肩に食い込む。首を捻り、真紅に染まったアブソルの瞳を見るも、其所には何の意味も無い。いや、元々アブソル種の瞳は綺麗な赤なのだが、全体が一色に染まりきっているのはただ事ではない。普通より伸びた毛により隠された左目も、ぼんやりと体毛を透けて見えるほどに爛々と輝いている

 その口には、縮こまったディアンシーのダイヤの房をくわえていて

 そのまま、用済みとばかりに、アズマの脇腹をその後ろ足で蹴飛ばした

 

 「ふぐっ!」

 「兄ちゃん!」

 「大丈夫だ、ショウブ……」

 近くの木に叩きつけられ、ふらふらとアズマは立ち上がる。立ち眩みはお越しかけたが、起こしたら終わりだなんて分かりきっているから、奥歯を噛んで立ち上がる

 「行くぞ、ギル、サザ」

 ヒトツキに関しては信頼している、きっと、勝つための手を打っていてくれるだろうと

 ちらりと目配せをすると、ヒトツキはその鞘を振った。何時も通り、『つるぎのまい』を積んだというサイン

 それに頷く

 

 ……相手がどんなものなのかは未知数。耐久性は?火力は?アブソルは素早く攻撃力もあるが、攻められると弱いポケモンではあるが、変貌している以上そのままの耐久性とも限らない。毛も増量されているのだし、トリミアンのようにそれなりに耐えられる体になっていても可笑しくはない。とりあえず、分からない事ばかり。けれども、分かることがある

 とりあえず、元々がアブソルなのだから、悪タイプだということ。ならば、アズマとヒトツキのやるべき事なんて一つ。例え羽根見たいな体毛が生えもしも飛行タイプの性質を得ていたとしても、とりあえず格闘は通る。ならば、叩き込むだけだ。生命エネルギーを吸うか、力を貯めて放つ一撃……『せいなるつるぎ』を。例えアズマ荷だって見えるほどに強烈な黒いオーラが、その力を上げていたとしても。聖なる剣、イッシュ地方の伝説のポケモンが振るう伝説の技は、波動の刃でそれを切り裂く。オーラでどんなに守りを固め(防御を上げ)ようと、幾多の分身を生も(回避を上げよ)うとも、それを無意味と貫く力故に『せいなるつるぎ』は伝説ポケモンの象徴的な技なのだから

 ならば、隙を産んでそれをぶちかますだけだ

 

 「ゲッコウガ、行くぜ!」

 「ギル、何時もの方針で、サザは……」

 一瞬、アズマは迷う。最大火力と言えば、明らかに『あくのはどう』だろう。だが、悪タイプのアブソルには効き目が薄いはずなので指示から除外。エネルギーを封じたジュエルを毛の中に隠しておいたならば一考するが、今は持たせていない

 ならば、となると取りたい戦法は二つあるのだ。麻痺か、火傷。どちらもアブソルの脅威となる速度か攻撃を抑えられる有用な行動。すなわち、炎の牙か、竜の息吹か

 「サザ、『りゅうのいぶき』だ、良いな?」

 結局、選んだのは動きを鈍らせる道。少しでも遠方から撃ち逃げ出来る、臆病なモノズにとってはやりやすいだろう戦法

 

 だが、その瞬間、モノズ横に不意に現れたアブソルが、上からその顔横の肥大化した角を叩き付けた

 地面が割れる

 

 「『ふいうち』か!」

 自分を、そしてモノズを襲った一撃に思い至り、アズマは一人ごちる

 不意討ち。その名の通りの不意の一撃だ。悪タイプエネルギーを軽く纏って攻撃を待ち、相手が攻撃に集中した一瞬の隙をついて、予め貯めた力をもって後の先を仕掛ける技。強いポケモントレーナーの使う悪タイプであればまず最初に警戒されるほどの優秀な技……ではあるのだが、瞬間移動なんて流石にしないはず

 「いや、瞬間移動はおかしーだろダッセー兄ちゃん」

 「ショウブ。おれの回りでは悪タイプの技が強くなるのは……一度見たな?

 多分それが敵味方関係ないせいで、不意討ちの一瞬、身体能力が跳ね上がっているんだ

 認識出来ない、『しんそく』の領域まで」

 「つまり、ダッセー兄ちゃんが足引っ張ってるって事かよ」

 「……そう、なるのかもな」

 「んじゃダッセー兄ちゃん、ダッセー事の埋め合わせ、頼むぜ」

 

 「ああ、分かった」

 言って、アズマは残された一つのボールを取り出す

 「悪いな。手を貸してくれよ、ライ」

 呼び出すのは当然、フライゴン。そもそもアズマのポケモンで残っているのは、頼りきってしまうからあまり頼りたくはなかったその一体だけ

 「……」

 アブソルを前に、ただ言葉少なく立っているのは少女のみ。ディアンシーを拐った男の方は、既に戦線をアブソルと少女に任せて離脱している

 

 アズマが居ても邪魔になるならば、やるべき事は一つ。ショウブに任せ、ディアンシーを追うこと

 「ライ、此処は任せる。ギル、サザ、付いてこい!」

 アズマの言葉に、フライゴンは羽音で応えた




アブソル(メガアブソル)♀ Lv32

だいもんじ/れいとうビーム/ストーンエッジ/ふいうち
状態:メガウェーブ(アブソル):全能力(攻撃、防御、特攻、特防、素早さ、命中、回避、急所率)が一段階上昇し悪タイプ技の優先度を+1しメガシンカするが、補助技が使えなくなり、毎ターン最大HPの1/16のダメージを受ける
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