ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsボーマンダ

「……ふぅ」

 ショウブが息を吐くと共に、黒火竜の姿が元に戻る

 すでに桃色水晶は砕け、腕輪も機能を停止している。今度こそ、地面に倒れたアブソルは立ち上がってくる事は無かった

 

 「今度こそお疲れ、ショウブ、リザードン」

 リュックの中から飲むタイプの薬を二本取り出して、アズマは一人と一匹に投げる。割と安物の良い傷薬である。又の名をブレンドきのみジュース。高い割に効果はいいきずぐすりと変わらないという欠陥品だが、飲んで美味しいという利点がある。その点が重要だ

 「ん、サンキューなにぃちゃん」

 『ザッ!』

 きゅっと栓を回し、二人が傷薬を空ける

 「うん、イケるじゃん。にぃちゃん何処で買ったんだよこれ」

 「自販機で売ってるぞ」

 「たけぇの?」

 「ミックスオレなんかを買った方がコスパ良いかもな」

 と、言いながらアズマも一本取り出して栓を空ける

 そうして、解放された左手に紙コップを出して、そこに注いだ

 「んでも、ヒトツキこれが好みなんだよ。だから買いこんだ」

 

 言いながら、アズマは倒れた少女とアブソルに近付く

 とりあえず、息は……ある。死んでた、なんてオチは無い

 『(大丈夫、ですの?)』

 「後遺症が残らないかは、分からない」

 肉体的には、治る……とは思うけれども。ポケモンの医者ならぬアズマには、実はからだの深い所が傷付いていて二度と立てない状況だったとしても、それを見抜けたりしない。だから、たぶんと希望的観測を言うしかない

 

 そんな事を話している中。陽射しが、消えた。多分、あのリザードンが作り出したものが消えたのだろう。そう、アズマは思い

 「ショウブ、まだ凍ってるライ……フライゴン達も頼む」

 と、言いながら……頬についた砂利に、違和感を感じた

 

 「……違う。陽射しが消えたんじゃない」

 「……にぃちゃん?」

 「ショウブ!敵だ!」

 

 『バン、ギ!』

 その声と共に、地面の中から飛び出したのは、巨大な緑の怪獣。バンギラスと呼ばれるポケモン

 戦闘になると砂嵐を起こすという強力なポケモンが、突如として現れていた

 「何っ!?けど、今のオレサマとリザードンなら……」

 『(まだ居ますわ!)』

 更に、砂嵐が突如突風と共に一時、晴れる

 快晴の中、舞い降りるのは巨大な青い竜。その背の、扇形の紅の翼が鮮やかに映える

 「ボーマンダだって!?けど、やってやるぜリザードン!メガシンカだ!」

 「止めとけ、ショウブ!ぶっ倒れるぞ!」

 「けどよにぃちゃん!」

 「まだ居るかもしれないだろ!様子を見ろ!」

 そうして、アズマはゆっくりと降りてくるボーマンダを見上げる

 その背に、特別な刺繍が施されたジャケット……というかそれに良く似たコートを羽織った男の姿を発見した

 その顔は分からない。顔全体を覆う仮面が、その正体を覆い隠している

 「……何をしているか、同志フォイユ、フルル」

 「ボス……」

 降り注ぐ声は、機械的。ボイスチェンジャー丸出しの声であった。とことん、正体は隠すようだ

 だが、それよりもアズマ達にとっては、その次の言葉の方が重要だった

 ボス、と。つまりは、仮面にコートの男。彼こそが……

 「ラ・ヴィ団のボスって事か」

 

 「如何にも、だ、アズマ・ナンテンよ」

 「そりゃどうも。おれの名前も知ってるなんてな」

 「知っているさ。ディアンシーを奪った少年。あの辺りではそれなりの有名人なのだろう、ナンテン博士の息子よ。調べはあっさりとついたぞ」

 「そっちだけ、知ってるってのは卑怯じゃないか?」

 『(理屈になってませんわ)』

 「私の名はノンディア。君の言う通り、ラ・ヴィ団の同志を束ね、ゼルネアスを求める者。……それ以上を知りたければ、私を倒して自力で知ることだ」

 「そうなのか。とりあえず、姫は渡さない」

 ディアンシーを後ろに庇いながら、アズマは叫ぶ。ジュースを何処からか体に取り込んでいたヒトツキも戻ってきて、アズマの右手に布が絡み付く

 

 「……同志フォイユ。何をしていた」

 「海神の穴調査の任務中にディアンシーを発見、ならばと」

 「ああ、分かった。ならば、良し

 ディアンシーは君達に任せよう同志フォイユとフルル

 

 そういうことだ、若きトレーナー達よ。この度の私は、若き同志がジュンサー等により囚われるのを防ぎに来ただけの事」

 「みすみす逃がすと思うのか?」

 「そうそう。逃がす訳ねーじゃん?」

 「……逃がすさ」

 「ボーマンダ一匹で、三人も運べるか!」

 「一匹ではない

 来い、 Blaster」

 瞬間、今一度空を切り裂いて。流れ星が降ってきた

 いや、流れ星ではない。寧ろ……ロケット?

 

 これは、ポケモンなのか?とアズマは砂が入りかけた目をしばたかせる

 生き物であることは、確かだ。だが、あまりにも大きい。そして、不思議な姿をしている。あれは……竹、だろうか。そのような腕……なのか何なのか分からないものが二本。けれども、見えるのはそれだけ。いや、砂嵐の先に、それ以外のなにか、本体のようなものが居るようにも見えて……

 「何だ、こいつ……」

 「知らねぇけど、竹っぽいなら多分草タイプだろ!『だいもんじ』!」

 「……バンギラス、防げ」

 だがそれは、前に出たバンギラスによって散らされる。砂嵐によって減衰していく中、バンギラスにそうそう有効なダメージは通らない

 

 「なら、狙いはボーマンダ!リザードン、『ドラゴンクロー』だ!」

 「……メガシンカ。『おんがえし』」

 だが、ショウブのその動きを読んでいたかのように、男はボーマンダの背から飛び降りる。その瞬間、ボーマンダは虹色の光に包まれ、巨大な三日月の翼を広げた姿へと変わる。そのまま突撃。風を纏った一撃は、爪を振りかざした疲れたリザードンを、ただの一撃で地面に叩き落とすのにはあまりにも充分すぎた

 

 「リザードン!」

 「……まだ、やるか?」

 『ダァァァッ!』

 勝ち誇るように、ボーマンダが吼える

 そのまま倒れているアブソルと、その傍らの少女をボスは回収。ボーマンダの牙により荒々しくだがジャケット男を縛る縄も引き裂かれ

 その間、アズマは動けなかった。バンギラスという野放しのポケモンが居るから。下手に動けばどうなるか、分かったものではないから。目が砂嵐で良く見えないから動きにくかったのもあるけれども、何も出来ない

 そのまま、二人の男が掴まり、謎の竹は地上を飛び立つ。一拍遅れて、背にアブソルと少女を器用にくわえて乗せ、アズマを一瞥だけしてボーマンダも地面を蹴った

 アズマ達には、バンギラスをボールに戻して去って行く彼等を、見守ることしか出来なかった




第一章レポート
トレーナー アズマ・ナンテン
ばしょ 12番どうろ
手に入れたバッジ 1こ
捕まえたポケモン 8匹(???[悪/飛行]【事実上】、ヒトツキ、フォッコ【逃亡済】、モノズ、???、ディアンシー【実質】、???[エスパー]【実質】、フライゴン【借り物】)
おこづかい 725600円

ポケモンなつき度
フォッコ 0(怖いから大嫌い、トレーナーとして認めない、だから逃げた)
ヒトツキ 255(全幅の信頼を置いている)
モノズ  180(信用している。彼ならきっと自分を強くしてくれると)
ディアンシー 128(信頼してない訳じゃない。でもやっぱり時折凄く怖いから素直になれない)
???(悪タイプの方) 300(限界突破。ちょっと病んでる)
???(エスパーの方) 199(一目惚れしたおきにいり。恋愛的な意味ではないが。赤いのは邪魔)
???(10%の方) -70(敵。文句無しの敵)
フライゴン 220(とても大切だけど、本来のトレーナーの方がもっと大切)

アズマはにっきに(なつき度以外)しっかりと書き残した!

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