ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsヤヤコマ

「それじゃあ、行ってきます、じい」

 謎のポケモンの襲来から一日後

 

 アズマは、瓦礫と化した屋敷から、使えそうなものを持ち出して、旅支度を整えていた

 「坊っちゃん……大丈夫ですか?」

 老執事が話しかけてくる。結局、小さな瓦礫が頭に当たって昏倒していただけ、危険な瓦礫はゲン(じいのゲンガー)が払い除けてくれ、命に別状は無かったらしい

 「大丈夫だよ、じい。もう病気がちだった昔のおれじゃないし、ギルだって居る」

 「けれども坊っちゃん。野生のポケモンは」

 「大丈夫。もう怖くない。前とは違って、おれはあの謎のポケモンの手掛かりを探したくて旅に出るんだから」

 4年前、10歳になると子供はポケモンを貰って旅に出る。そのしきたりに従って旅に出たアズマは、2番道路でもう無理と逃げ帰ってきた。貰ったポケモンとの信頼も築けず、野生ポケモンからも敵意を向けられて、そんなんなら外に出たくない、昔から知ってるポケモン達だけで良い、と

 

 「だから、行ってきます、じい。謎のポケモンを探して、父さんにもあって、それから立派になって帰ってくるよ」

 アズマの横で、ヒトツキが揺れた

 

 旅立つ前、最後にとアズマは地下室へと降りた

 そこにあるのは……薄桃色の水晶に彩られた、卵のようなオブジェ。家宝であり、命の恩人……いや、恩石?でもある、欠片が痛みを伴うも万病に効くという、謎のオブジェ。

 「お前にも、行ってきます」

 僅かな暖かさを感じた事もあった。ポケモンではないかと思ったこともあった、ヒャッコクシティにあるという日時計の親戚みたいなものではないかと思うオブジェ

 けじめのように挨拶し、アズマは壊れた家を旅立つ。謎のポケモン、Zを探して

 

 

 

 30分後。アサメタウン近く

 「駄目か……」

 モンスターボールを拒み続けるヤヤコマを前に、ぼんやりとアズマは呟いた

 何時か10歳の時のリベンジをする為に、と意気込んでポケモン捕獲に乗り出したのは良いのだが、成果はゼロ。捕獲のハウツー本の通り、ヒトツキに戦ってもらい、強さを見せた所でモンスターボールを投げているのだが、10個投げてもヤヤコマ一匹捕まらない

 「やっぱり嫌われてるのかな……」

 逃げて行くヤヤコマを見て、そう呟く

 そういえば、10歳の時もそうだった。あの時は……最初のポケモンとして貰ったフォッコは言うことを聞いてくれず、結局一人でボールを投げていたっけ。だが、ヒトツキは違う。きちんとおれの為に戦ってくれている。いるのだが……

 結局捕まらないのは同じだった。やっぱり才能無いんだろうか

 「よし、もう一度」

 アズマのバッグには、家から持ってきたモンスターボールがまだ20個はある。それなりに貴重だからとあまり持ってこなかったが、スーパーボール等もある。あと5回挑戦してみよう、と心に決め

 「お前、ポケモンの捕まえかたもわかんねぇの?ダッサ」

 「なんだと!」

 モンスターボールを持った少年と眼があった

 「だっせーなって言ったんだよ!」

 少年はボールを投げる。あっさりと、近くに居たヤヤコマは収まり、ボールが地面に落ちる。ヤヤコマが出てくる気配は無い。捕獲成功だ

 「凄い……」

 「これくらい出来て当然だろ?」

 「いや、おれは全然出来ないよ。凄い」

 少年は……アズマの一つか二つ下だろうか。12歳程に見える

 「へっへーん!凄いだろ!何たってオレサマは、あのセレナさんと同じアサメタウン出身で、ハクダンジムのジムリーダーすら倒したサイキョートレーナーなんだからな!」

 「凄いな、それは」

 ジムリーダー、それはカロス地方にも幾つか……確か20個くらいあるリーグ公認のバトル施設、ポケモンジムの……文字通りリーダーだ。各ジムのジムリーダーにポケモンバトルで勝つ事によってジムバッジが貰え、それを8つ集める事で年に一度のバトルの祭典、ポケモンリーグに出場出来る。リーダーを倒したというのは、バッジを手にしたということ。有望なトレーナーの証とも言える

 一方アズマはといえば、昔父に連れられてシャラシティに行った際、執事からポケモンを借り、挑戦しはしたのだが……不思議なルカリオに一方的に良いようにされて負けた記憶しかない

 他のジムもそのような感じならば……間違いなく、強い

 「へっ!見せてやるよ、ダッセー兄ちゃん!」

 「アズマだ」

 ヒトツキが揺れる。カシャカシャと、鞘からわずかに刀身を抜いては納める。やる気十分という合図であり、挑発

 「未来のチャンピオン、ショウブ様の実力をな!」

 

 ーポケモントレーナーのショウブが、勝負を仕掛けてきた!ー

 「ギル!」

 アズマの声に、ヒトツキが飛び出す

 一方、少年は……

 「いくぜ、ゲコガシラ!」


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