ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsラプラス

それから、2日後。アズマは、少し前に溺れかけた所をラプラスに乗った釣り人に助けられた12番どうろの海岸まで戻ってきていた。ジュンサーさんのポケモンやフライゴン、或いはバイク等に乗ればすぐに着くことだって出来ただろう。だが、それではアズマの目的はちょっと果たせない

 謎のハニカムのポケモンも、そしてゼルネアスも、自らの足で探さなければ手懸かりも見つからないだろう。そういったものについて知っているのは、博士か或いは小さな村の老人と相場が決まっているのだ。実際、カロス伝説に関してアズマの父ナンテン博士が発表した論文、『破壊の繭と荒地の関係性の無さについて』。荒れ地にイベルタルが眠っているに違いないとした最近のカロス伝説学会に一石を投じた論文に関しては大元の話はセキタイタウンから徒歩一日くらいの所にある小さく外との交流も少ない村で聞いた話だったらしいのだし

 そんな事は置いておくにしても、バスなりに乗ったままでは近くにゼルネアスが居てもその存在を見落とすかもしれない。アズマのオーラが見えるようにディアンシーはたぶんゼルネアスのオーラも関知出来るのだろうが、どこまで分かるのかは、本ポケモンにも分からないのだ

 

 向かう先は、シャラシティに決めた。ミアレに行っても良かったのだが、ひとつ問題があった。ミアレシティは大きな街だ。それはもうカロス地方の中心であるのだから大きいに決まっている

 大きすぎるのだ。あまりにも

 結果、ミアレジムに挑もうとする者は、あまりにも多すぎる。全員受けていたら一日が100時間あったとしても足りないだろう。それだけ、ポケモンと旅に出た子供達にとってミアレシティは憧れの街なのだ。憧れの街で記念にバッジを取りたいというのもよくある話

 だから、アズマがホロキャスターで調べた所、現在ミアレシティジムは制限付きで機能している状態だ。人が多すぎるため、一次選考を越えたものだけが挑戦を許される。その条件は……バッジ4個。そもそもジムバッジが4つなければ、ジム挑戦すら許されない訳である。そして、アズマの持つバッジは2個。実は13番道路を通る間、カロス発電所の辺りに小さな公認ジムのある発電所勤務の人々の暮らす街はあるのだが、それでも3個。ミアレに着いてもジム戦は出来ない。だから、アズマはシャラシティを目指す道を選んだ。シャラ、セキタイとぐるりと回っていってミアレに行けば、その時にはまあ、5個はバッジを集められる。3つはジムがある。その昔記念挑戦の際に不思議なルカリオ(謎の鳴き声に教えられた今のアズマになら分かる、あれは間違いなくセレナも使っていたメガルカリオだった)シャラシティジムを諦めてスルーしても4つに辿り着ける訳だ

 

 そうして、海岸で佇んでいたアズマは、暫く待っても遠くに見えるラプラスやタマンタが寄ってくることは無く。いや、寧ろ露骨に避けられているので寄ってきたラプラス捕まえて、話にも良くあるラプラスに乗っての海旅は諦め。此処はフライゴンに頼って渡るしかないかなと思い立ち

 「……きけ 光に魅入られし もの」

 突如、後ろからそんな声を掛けられた

 

 『(ひっ!?)』

 思わず前に歩みを進め、海に落ちかけるディアンシーの手を何とか手を伸ばしてキャッチ

 『(お、オーラ……)』

 嫌な予感にそのままディアンシーは抱き上げ、アズマは抱えたまま振り返る

 そこには、人の数倍はあるかと思う大きさの、服を着たポケモンがぬっと立っていた

 「なんだこのポケ……ポ……

 ん?」

 その怪獣かと思うほど大きなポケモンは、服を着て、白く長い髪をトリミアンのように顔の両脇から垂らし、緑のマフラーをして、凄く人間の老人みたいな顔立ちをしていた。その肩には、ちょこんと花の妖精のような一輪の花を持ったポケモンが座っている。フラエッテだろう。ちょっと色が違うが、フラエッテ自体花の色は色々とあるのでアズマの知らないタイプも居るのだろう

 

 「昔むかし 本当に 遠い昔」

 男は、アズマが向き直ったのを見ると静かに語り始める

 「オトコと ポケモンが いた

 とても 愛していた」

 男の言葉に、照れたようにフラエッテが持った花をぶんぶんと振り回す。その動きが可愛らしくて、アズマは警戒を解いてディアンシーをゆっくりと地面に降ろした。大丈夫だ、このポケモン?とポケモンは敵じゃない

 「姫、大丈夫だ。彼等は敵じゃない」

 『(……でも、輝き燃えるオーラが……)』

 「大丈夫だよ姫。彼は、人間だ」

 いや、こんなデカイ人間居るわけないと思うが、居るらしいのだ。セレナさんのリーグ優勝後の中継で見た

 それに、この男の語る話は、アズマにとってはあまりにも馴染み深いものであった

 続きはアズマにも分かる。諳じることだって多分出来る

 「戦争が 起きた

 オトコの 愛した ポケモンも 戦争に 使われた」

 一言一言腹の底から絞り出すように、男が言葉を紡ぐ

 「数年が たった

 小さな箱を 渡された」

 と、アズマは続ける。この話は知っている

 幼い頃、何度と無く聞かされたのだからまだ耳に残っている。そんな、幼い日の、父親の語る昔話

 「オトコは 生き返らせたかった

 どうしても どうしても!」

 ぐっと、男は手を握り締める

 それをまあまあというようにフラエッテが花でつついて宥めていた

 「オトコは 命を 与える キカイを つくった

 愛した ポケモンを 取り戻した」

 

 『(そんな、事が……)』

 「古い、古い話だよ。姫」

 聞き入るディアンシーにそんな補足を入れながら、アズマは語り終わった後どう切り出すかを悩んでいた

 男の正体については、アズマは良く理解した。だが、何故現れたのかは良く分からなかった

 「オトコは あまりに悲しんだため イカリが おさまらなかった

 愛している ポケモンを キズつけた 世界が 許せなかった

 キカイを 最強の 最終兵器に した」

 『(最終、兵器……)』

 「一年前にゼルネアスを動力に使われかけたのも、それだよ」

 『(この、人が……)』

 アズマの足の後ろに、小さなポケモンが隠れる。壁にはならないだろうし、怖いとも常日頃から言っていて。それでも、眼前の男よりましだと

 「オトコは 破壊の 神となった

 神により 戦争は 閉じられた」

 此処まで聞いて、アズマはちょっとだけ自分の聞いてたお伽噺と違うところに気が付いた

 大筋は同じ。ただ、アズマが聞いていたものはもうちょっとだけ長かったのだ。それが脚色なのか、補足なのかはアズマにも判別つかなかったが。確か、アズマの知る話では、ホウエンの者と協力して最終兵器を起動させたくだりとかあったような……

 

 「永遠の 命を 与えられた

 ポケモンは 知っていたのだろう

 命の エネルギーは 多くの ポケモンを 犠牲と していたことを

 生き返った ポケモンは オトコの もとを 去った」

 「そうして 3000年 ポケモンと オトコは 再び 戻った

 愛していた あの頃に」

 と、アズマは男の語り終えに続けた

 「……そうですよね、ご先祖様?」

 『(ご先祖様!?)』

 

 「……AZ」

 「AZMA(アズマ)。アズマ・ナンテンです

 この名前は貴方から取ったと、父は昔話の際に笑っていました」

 すっと、アズマは握手のために右手を差し出す

 一瞬眼を細め、男も手を出し返した

 3mはあるだろう。高すぎて、握手というか幼い子供と大人が手をつなぐような形になってしまったが、握手する

 大きな手は、酷く熱かった

 

 そんな二人を、ディアンシーは何か凄く怯えながら、フラエッテは凄くご機嫌に、見守っていた




AZのフラエッテ
フラエッテ(えいえんのはな)
Lv100 とくせい:きょうせい 性別:♀
はめつのひかり/ムーンフォース/メロメロ/はなびらのまい

ナンテン博士版ポケモン図鑑解説文
フラエッテ(えいえんのはな) 一輪ポケモン
古代カロス王が愛したという、古代に咲いていた花を持った太古のフラエッテ。王が作ったキカイは、蘇らせようとした愛するポケモンの花を模して作られたという

フラエッテ(えいえんのはな)のLvが可笑しいことになっていますが、仕様です。そりゃ3000年も愛するAZから逃げ回ってたらレベル100にもなるわという話ですね。能力としては、割と伝説ともやりあえます。古代では普通のフラエッテの一種だったはずなんですけどね(AZエッテが古代では一般的な姿というのは独自設定)。年月と愛ゆえの逃避行の力は恐ろしい
因みに、アズマくんがディアンシー連れてるのはAZがマスコット枠にもなる可愛いフェアリーなフラエッテ連れてるからです。AZっぽさ加えようとした後付けだからメインヒロインではありません。メインヒロインの器なんですけどねディアンシーって

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