そうして、そんな期待はずれのポケウッド作品を見た翌朝、早朝7時
「さて、と。準備は良いか、ギル?」
アズマは、自分のポケモン達を連れてシャラシティに繰り出していた。ディアンシーはいないが
とりあえず、AZにマスタータワーへ行けと言われた以上、数日はシャラシティに滞在することをアズマは最初から決めていた。ポケモンセンターに初日は泊まるかと思ったのもたった一瞬、どうせなら最初から宿は決めておいた方が良いだろうしと決めた宿で数日分のチェックインは済ませた。シャラシティ、カロスの中でも大きめの街……ではあるのだが、ホテルが取れないなんて事はないのだ。大きなイベントでもあれば話は別なのだろうが、そういった事は特にないのだから
ということで、割と安全な拠点だからと、まだまだお眠なディアンシーは置いてきたのだ。メモは枕元(結局ポケウッド映画について話している間にベッド上で眠ってしまったのでそのまま)に置いてきたし、きっと大丈夫だろう、という算段で
アズマにとっても、正直言ってあまり見られたいものでは無かったのだから
調べてみた所、マスタータワーも入場制限を課している。正確には、登ることへの制限だが
マスタータワーは、求道者の為の塔だ。観光地となっている為一階のみは解放されているが、二階より上は強さを求めた者達の場。生半可なトレーナーが入れないように、とバッジ3個を持たぬトレーナーは上に行けないようになっているのだ。上の階で、挑まれるバトルを断り続けるのもまた失礼、だがバッジ3個はなければ、相手になどならないという話なのだろう
少しだけ、感じるのだ。マスタータワーの上から。何か、弾けるような力を。ほんの微かに
ならば、恐らくはAZの言っていた運命とはその力だとアズマは判断し、出会うにはマスタータワーを登れなければいけないと結論付けた。それならば、前提条件として、シャラシティジムを越えなければならないという話になる。シャラシティジムを越えることで、アズマの手持ちバッジは漸く3個になるのだから
だからアズマは早朝、此処に来た
そう、シャラシティジム。不可思議なルカリオに、完全に叩きのめされた事もある、その場所に
……きっと勝てない。そんな事はアズマだって分かっている。体験挑戦で使われた
ふと、その扉が開いている事に気が付いた。ちょっと前は閉じられていた。それはアズマがしっかりと見た
だから、これは誰かが開けたのだろう。7時はジム戦には早すぎる時間だ
何かあったんだろうか。ふと好奇心に駆られてアズマは開いた扉から顔を覗かせる
暗すぎて見えず、ヒトツキと一歩踏み込み……
そんなアズマの背後で、扉が閉まる
閉じ込められた!?
そう辺りを見回すアズマの眼前で、一つだけ、天井の電気が灯る
照らされたのは、少し歪な人影。いや、違う、これは……
二足歩行の、あのポケモンの影!
そう気が付いた瞬間、アズマの視界は蒼い光に焼かれる
次の瞬間、もうそのポケモンは眼前に居た
どこか目付きの鋭いキュウコンのような顔をした、短い尻尾を持つ二足歩行の獣。青いオーラ、波動を纏いし波導の勇者、ルカリオ。アズマも読んだことのある子供向けの絵本、はどうのゆうしゃルカリオ、及びその元ネタである伝説を小説化した波導の勇者の爆発的ヒットから、多くのトレーナー(特に男子)の憧れのポケモン
だが、その特長ともされる頭の黒い房は4つとも巨大化し、端二つは先端が赤く染まっている。更に、本来黒いはずの手足すらも赤く、胴に生える黄色い毛は伸びてワイルドさを増している。そうして、全身から吹き上がるように纏うのは濃く蒼い波動
「あのときの、
腰を落とし、右手を引き
そんなルカリオを前に、出しっぱなしのヒトツキがアズマの前に飛び出して
『クワンヌ!』
「ギル!?」
鉄拳一発、彗星のようなオーラを纏った右ストレートが、ヒトツキを殴り飛ばした
『フリャ!』
「ライまで」
更には、勝手にボールから、フライゴンまでもが飛び出す。有り得ない事ではない。一応、モンスターボールを壊す方法はボール内部に基本的に存在する。捕まりたくないポケモンは、その機能を使って出てきたりする訳だ。マスターボールには無いらしいが
だが、それは一度きりの方法。だってボールは壊れてしまうのだから。モンスターボールデータを別のボールに移し変える事が出来る装置はあるけれども、それまではこの形で出てきてしまったポケモンはボールに戻れない。つまり、だ。トレーナーが出てきて良いぞとスイッチを押して開けてもいないのに勝手にボールから出てくるというのは、それだけ切羽詰まった危機的状況という事になるはずなのだ
「まさか、ラ・ヴィ団!?」
このルカリオも、あのアブソルのように?
と、観察するが、そんな様子はない。元々赤いルカリオの瞳は透き通っている。寧ろ勇者とか、そういった言葉が相応しい様相だろう。深紅に染まったアブソルの眼とは全く違う。寧ろショウブのリザードンに近い。正式な絆のメガシンカ形態だろう、これは。ならば、ラ・ヴィ団ではない。きっと。アズマとしても、当然の権利のように普通にボーマンダをメガシンカしてきた首領の事があるので断定は出来ないけれども、きっとそうだと思った
「ギル、戻れ
サザ、お前は」
とりあえずゴージャスボールに扉に叩きつけられたヒトツキは戻し、モノズを出しておく
だが
「って、お前には無理か。無茶しなくてて良い、戻れ!」
モノズは丸くなったまま、一歩も動かずに居た。そういえば臆病だったなこのモノズ、ならあんなルカリオ相手に立ち向かうなんて無理か、相性は悪くないアブソルとは違い、天敵ってレベルなのだし。と、仕方ないなとアズマはモノズも戻す
……普通に、フライゴンに頼るしか手がなくなってしまった
そんなモノズの性格を覚えていれば予想はついた茶番劇をアズマが繰り広げている間にも、ルカリオはフライゴンと戦いを繰り広げていた
基本、ルカリオの攻め手は右ストレートのみ。時折アズマへも向けようとするそれを飛べるからと翼をはばたかせひらりとフライゴンがかわし続ける。だが、ルカリオの速度は早く、中々フライゴンも攻撃には転じられないといった戦況。防戦一方だが、悪くはない
「ライ、『じし』……って今の無し!」
つい、ならば適当に撃っても当たる技をと思い、アズマは思い直す
じしん。それはもう強い技だ。フライゴンも使える。でもだ、屋内で撃って良い技である筈もないのだ。だからだろう、フライゴンが上手く攻め方を掴めないのは
「なら、ライ!こちらは気にせず『ばくおんぱ』!
でも、地上近くでな!」
ならばと、アズマは指示を切り替える
手早くても当てられ、施設にはダメージの無い技に。いや、正確には音声機器等が稼働してると酷いことになるのだが、今は大丈夫。爆音波は割と近くにしか破壊力が無い、天井近くだとライトを破壊してしまう可能性はあるが、地上近くなら天井までは届かない
フライゴンが羽根を震わせ、空気を震わせる大振動を起こす。羽根のあるポケモンの中でも、羽音を歌声のように響かせたりするフライゴンだから使える、周囲全体を襲う音波の波。だがそれを、今までストレートのみで攻めてきたルカリオは、大きくバック宙帰り、それを繰り返して距離を離す事で回避
「離れた?」
『ライ?』
波動を纏った拳で攻めるルカリオにとっても、それは悪手なのでは?と、爆音対策に耳を塞ぎながらアズマは疑問に思い
『ルーカー』
妙に伸ばす鳴き声に、気圧された
右腰辺りで両の手を重ね、その合間に蒼く輝く波動
アニメ映画版波導の勇者でそれはもう何度も何度も見た光景
「『はどうだん』……」
思わず、アズマはその言葉を呟き
「ライ、攻めるな、『まもる』!」
『リーオー』
『フリャ?』
「良いから、間に合わない!」
溜める波動が膨れ上がる。それは良くある光景。だが、ちょっと膨れ上がりすぎやしないだろうか。身長越えてるぞ
なんてアズマが思う中
『ハァァァァ!』
波動弾が放たれる
「ってこれ『はどうだん』じゃねぇだろ!波動砲だろぉっ!」
思わず、アズマはそう叫んだ
はどうだん。言わずと知れた波動エネルギーの弾を打ち出す技だ。だが、今ルカリオがやっているのはそうではない。波動エネルギーの帯を放ち続けている。こんなもの弾じゃない、波とか嵐とか言うべきものだろう
そんな嵐は、当たり前のようにまもるの防壁にヒビを入れ
「ちょっと、ルカリオ!!」
だが、その言葉に、突如として荒れ狂う波動エネルギーの嵐は止んだ
ルカリオ➡メガルカリオ Lv45♂
おや コルニ
とくせい せいぎのこころ(悪タイプ技を受けると義憤で波動エネルギーを増幅させ攻撃が上がる。ダークオーラ下では常に悪タイプ技を受けていると判断し毎ターン攻撃が上がり続ける)➡てきおうりょく(波動エネルギーを最大化、最適化することでタイプ一致技の威力が上がる)
もちもの ルカリオナイト
わざ:コメットパンチ/とびひざげり/はどうだん/つめとぎ(/はどうのあらし)
はどうのあらし
PP:はどうだんと共有 威力:160 命中:必中 注意事項:特殊技、Z技扱い、敵全体攻撃
メガシンカしたルカリオのはどうだんが変化した技。波動技であるはどうだんは、限界を越えた波動を纏うメガルカリオ状態では、常にZ技となる
要はスマブラXの波動の力を見よ!ハァァァァ!のアレ。蒼い波動の極太ビーム。メガシンカさえしていれば、いちいちZリングを使う必要はなく、ルカリオのみで放つことが可能。曲がるしオーラの波だし4倍波導拳波動の嵐なんかもあるが、別に超波動の嵐とか10倍波動の嵐とかファイナル波動の嵐とか100倍ビッグバン波動の嵐とかは無い。特殊効果として、特殊技だが、波動の力依存なので攻撃と特攻のうち高い方のランクを参照する(例えば、特攻が0、攻撃が威嚇でマイナスならばランクは0、攻撃が正義の心で+2で特攻が0ならばランクは+2となる)。あくまでもランクのみの話であり、例え攻撃ランクを参照する場合でも、波動の嵐そのものは非接触特殊技である。尚、上記の○倍波導拳波動の嵐の○倍には3になる参照するランク+1が入る(つめとぎで攻撃+2を参照したならば、3倍波導拳波動の嵐というように。2倍となる+1は単なる波導拳波動の嵐)