ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vs黒きポケモン

『……リノ!』

 アズマの眼前に立つ、巨大な黒水晶のポケモン

 「姫!」

 『(助け……て……)』

 響くテレパシーは弱くなり続け、途切れる

 アズマの目に映る、左爪に引っ掛けられた小さな宝石はひどくくすんで見えて。ぐったりとして気を失ったその体を、ポケモンは尚も抱えたまま。その体は微かにだが光を放ち、光を呑み込む闇に覆われ、仮面を付けなければ輝くタワー付近以外何も見えないそのメガロポリスで、唯二となった光源と化している。だが、それはあまりにも淡く頼りない星明かりのような光。煌めくプリズムの目が、アズマを捉え

 

 「サザ!」

 『「みーも居るの!」』

 当たり前のようにアズマの頭に乗っていたゾロアと、そしてモノズがその前に立ち塞がった

 「……姫を返してくれないか」

 言葉が通じるかと、一言アズマは問い掛けてみる

 『シカリ……シカリ!』

 返答は、光。分裂するプリズム光が、アズマの周囲に降り注いだ

 『シ……シ……シカリ!』

 更には、そのポケモンは右手を伸ばし……

 『バリッシュ!』

 その爪は、同じく黒く、そして輝く巨体によって払われた

 「ゼクロム、Nさん!」

 

 『リノ!』

 『バリバリダー!』

 そうして、一対の黒く輝くポケモンはにらみ合い対峙する

 プリズムの光は、黒水晶のポケモン。あまりにも細い足や肥大化した腕など、どうにも不完全な印象を受ける巨体は、されども薄桃の光を纏い、辺りを照らしている

 蒼い雷光は、黒き竜。イッシュ伝説に記されるその竜は、巨大な円錐型の尻尾に存在するエンジンを回し、アズマが見る限り初めて全身に蒼雷を纏っている

 対するプリズム光は、黒水晶。何処かの伝説には記されているのかもしれないそのポケモンは、いびつな腕を振り回し、頭をかきむしる

 「Nさん、あのポケモンは……」

 「分かっているともさ別に倒そうという訳じゃない」

 「でも、何とも出来なくて」

 青い雷光に照らされる漆黒の巨体。鉤爪等にはそこはかとなく竜を思わせる形が見て取れるものの、あまりにもアンバランスな異形には、未だに幾つもの古傷が見て取れる。細かな抉れた跡、大量の白い引っ掻き傷。とりあえず薬はぶちまけたけれども、意味の無かった傷跡。それらのせいかは分からないけれども、ちょっとくらいならばポケモンの気持ちも分からないかなと思うアズマに、黒いポケモンの心は欠片も想像がつかない

 

 「……なあ、ゾロア。お前分かったりしないか?」

 『「何も言ってないの」』

 『……シカ、リ』

 「いや、確かに何か訴えている……と、思うんだ」

 そんな言葉を交わしながら、アズマは横目で対峙する一対のポケモンの方を見て……

 「今だ、ギル!」

 そう、叫んだ

 

 瞬間、背後からそろりと忍び寄っていたヒトツキが加速、巨大な爪の間をすり抜けるように腕裏から飛び出しつつ、その手でもある柄の布でもってぐったりした小柄な体をくるんで持ち上げる

 『ババリ!』

 ゼクロムが右腕甲を割り込ませて、ヒトツキへ向けて伸ばそうとする巨腕をガード

 その支援を受け、レーザーに撃たれることもなく、ヒトツキはアズマの横へと戻ってきた

 「姫、大丈夫か」

 答えはない。けれども、微かに息は聞こえる

 ぐったりとしたままのディアンシーを両の腕で抱え、アズマは改めて黒い水晶のポケモンに向き直る

 「どうして、こんなことをするんだ」

 『……リノ!』

 音こそすれども、理解は及ばない

 

 「そうだ、Nさん!」

 ポケモンの声が聞こえるというのは、何も人間の声も扱えるポケモンに限らない。人間ではあるはずだがしっかりとその心を理解でき、それ故にプラズマ団に御輿として祭り上げられた青年もいま此処に居る

 それを思い出してアズマは問い掛け

 だが、青年は静かに首を振った

 

 「キミの運命もうひとつの運命

 それはキミにしか分からないことだよ」

 「ちょっ、重要なところで」

 『バリッ!』

 「いやすみません、別に責める訳じゃないんですけど、ちょっとおれが勝手に期待しすぎてて」

 おいこらとゼクロムに吠えられ、慌ててフォロー

 

 「シカリ……光

 お前は、おれに何を求めているんだ?」

 Nさん、お願いしますとディアンシーの体は一時青年に預け。身一つで一歩前へ。他のポケモンでは相手にされないかもしれないが、イッシュの黒き竜に牽制されていてはそこから下手な動きもないだろう。その安心感に支えられてアズマは右手を伸ばし

 「光の石か?ひょっとして進化するのか?」

 そういえばそんな特別な石もあったな、なんて思ってバッグのポケットに入っているソレを取り出してみる。若しも光の石で進化するポケモンを捕まえられた時に、と思って家から持ち出していた、進化するか否かの研究用の父の買い置きのものだ。進化する伝説ポケモンの存在を確かめようと置いてあった。進化の石は特に光の石と闇の石は珍しいが、それでも光の石は在庫があったので貰ってきたのだ

 だが、反応はない。桃色の水晶を取り出したときのような、奪おうとする動きもない

 

 「光の石ではないのか。じゃあ他の……」

 と、色々と石を取り出してみるアズマだが、どれも反応はない。そんなアズマを、静かにNやポケモン達は見守っていた

 『シ……シカリ……』




補足
アズマくんでは気が付くことはありませんが、正解は任意のモンスターボールです。光を求めている為、光に溢れた世界に連れ出してくれる事を求めている訳ですね。今の復活度合いでは自身が世界を渡れない為、連れ出してくれないかと呼び込んだと言うのが答えです

まあ、このタイミングではそんな事アズマくんは知らないわけですが。入るわけないだろしてないでボール投げろ(無責任な作者並の感想)
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