握手と共に、アズマはバッジを受け取る
拳を付き合わせたような形状の赤いバッジ……ファイトバッジを。それを共に喜んでくれるようなポケモンは……
『にゃおにっ!』
『(やりましたわね!)』
居た。共に戦った彼等ではなく、見守ってたポケモン達だが
「ああ、ありがとうなニャオニクス師匠」
『にゃ!』
片耳を上げ、その青い猫ポケモンは挨拶をするとふっとテレポートで姿を消した。まるで、もう大丈夫だなとでも言いたげに
「し、師匠?」
「あの技……Z技の訓練、師匠とNさんにつけて貰いましたからね
あれがなかったら二回目なんてきっと撃てなかった。せめて一太刀がそもそも届かなかった。それはもう、師匠でしょう」
ニャオニクスが居た辺りを見ながら、アズマは呟く
「Nさんも、有り難う御座いました」
「立ち向かうのがキミとトモダチの運命であるならば」
「うん。君達……凄いじゃん!
それなら……って思ったけど、マスタータワーを登る必要ないかな」
「どうしたんですかコルニさん」
「継承者として、見込みのあるトレーナーにメガリングをって思ったけど、要らないかなって」
「……多分」
右の腕を、其所にある黒水晶の腕輪を見つめながらアズマは頷く
確かに、必要ないだろう。きっとこの水晶は、メガリングとしても機能する。持っていても仕方がないといえば仕方がない
「うんうん、そうだよね」
と、いうところで、アズマのホロキャスターが鳴った
「あ、すいませんコルニさん、Nさん」
鳴り響くのはアズマが設定している映画の主題歌……ではなく、デフォルト音。未登録の誰かからの通信
迷惑電話ならば切ろうかな、と思いつつアズマは受け……
「繋がった!」
映し出されたのは、一人の青年の姿
「……カルムさん?」
「カルムくん?」
知り合いらしいコルニと二人、目をぱちくりさせる。ホログラムで投影されたのはアサメに居るはずの有名人の姿であった
「カルムさん、どうかしたんですか?」
「えーっとそっちは……」
「やっほー、で良いのかな?」
「コルニ!
ってことは、今はシャラシティなのかな?」
「面白い機械だね」
「ということで、Nさんも居ます」
「ジム戦の……後かな?おめでとう」
目敏くアズマの手のバッジに気がついたのか、青年は一言告げて
「ちょうど良かった、アズマくん。そして二人も聞いて欲しいんだ
……今すぐ、アサメに戻ってこれる?」
「どうかしたんですか。わざわざホロキャスターの番号まで探して」
「あの君が会ったっていうジャケットの集団が……アサメの近くでまた目撃されたらしい」
その言葉に、アズマは固まる
『(あの集団って……)』
「姫を狙って、ポケモンを傷付ける……ラ・ヴィ団だろう」
「トモダチを?」
「はい、Nさん
おれが会った彼等は……自分のポケモンを強引にメガシンカさせる装置を持っていました」
「その持ち主はゲンガーを連れた青年とアブソルを連れた少女だったね?それらしき人物が目撃されてる」
「……分かりました。向かいます」
迷いはなく。けれども、ヒトツキ達にはゆっくり休める時がなくて少しだけ辛い事になるな、何か用意しないとと思いつつ。アズマは頷く
「わざわざメガシンカの話をするってことは……」
「コルニ、君も来て欲しい」
「りょーかい!やっぱり継承者として見逃せないもんね」
カルムの言葉に、コルニも頷く
「ってことで、継承者としてやらなきゃいけない用事が入ったから、シャラシティジムに関してはしばらくまた代理リーダーで宜しく!」
…雑だった
『ババリバシッシュ!』
「これが伝説のポケモンの背中…」
『(わ、わたくしはこっちで良いですわ)』
そうして始まる空の旅。それを駆使すれば基本的に一日で大きな街から大きな街へ行けない事など無いのだが風情とかそういったものが特にないのであまりアズマはやらないものだが、今回ばかりは仕方の無い事
バトルではゾロアに化けさせる以外の出番が無かった為元気一杯のフライゴンと、Nが連れているゼクロムの背に分かれて空を駆ける。といっても、フライゴンより大きなゼクロムの背に格闘ポケモン使いだけあって人を乗せて空を飛ぶポケモンを持っていないコルニを乗せて貰っているだけなのだが
「……大丈夫そう?」
「体調的には
ゆっくり休んで貰った方が良いのは確かですけど」
元気の塊というエネルギー塊をモノズ達に与えつつ、アズマは返す
語るのは他愛もない話。そして、アズマが出会ってきた彼等の話
「彼等は……傷付いた姫を捕らえようと狙って……また別の所で襲ってきて……
良くは分からないけどゼルネアスを探す集団です。目的そのものは知りません」
「悪の組織だし?」
「はい。ジャケットで統一していたり、何となくフラダリさん式の美学は感じますが…多分フラダリさんは関係ありません
…いや、そもそも行方不明ですしね」
「死んだって聞いたけど?」
「死んでませんよ、多分
3000年前に最終兵器を使った人に会いました。彼と同じようにフラダリさんも最終兵器を使ったのならば。きっと、どこかで生きています
特に、あの時使われたのはゼルネアスの力。生命のオーラです。死とは真逆のオーラを受けて、死んだなんて多分有り得ないですよ」
「信じてるんだ、そんなこと」
「やったことは、確かに酷いことだと思います。でも、フラダリさんを……単純な悪だって、どうしても言えないんですよ。おれ、フラダリさんに憧れてるところ、ありましたから」
そうして、アサメが見えてこようかという時
空に雷鳴が走っているのを、アズマの眼が捉えた
『バリッ!』
「……あれは!」
眼を凝らすと、二つの影が見えてくる。一体はアズマでも知っている有名な鳥ポケモンの姿。そしてもう一体はアズマには見覚えの無い鳥ポケモンの姿
「ピジョ……ット?
と、サンダァァァッ!?」
アズマは思わず叫ぶ
そう、そのうち見覚えのある方は……カントー地方伝説の鳥ポケモンの一種、サンダー。カロスでも目撃例は割とあり、伝説とされる中ではよく知られたポケモンではある
「サンダー?カルムくんがサンダーを出さなきゃいけなくなってるなんて」
「あ、あのサンダーって別に野生じゃないんですね」
ぽん、と手を打つ
「そうそう、セレナに負けてられないって、最近何とか捕まえたんだって」
「カルムさんなら……有り得るのかな」
「でも、基本的にはあんまり出さないはずなんだけどね
そして、あっちは……メガピジョット。酷い」
「……酷い、ですか」
「命の光が不協和音を奏でているようだ」
「うん。正しいメガシンカの在り方じゃないよ、あんなの!」
憤るコルニ。本人の闘志を反映するかのように、そのトリプルテールが跳ねた。本人も跳ねた
「お願いします、Nさん、コルニさん!」
サンダーとメガピジョットの戦いは、流石伝説のポケモンというか、或いは単純にサンダーが電気タイプであり有利だから当然というかサンダー優勢。寧ろメガピジョット側が何とかくらいついている感じなので任せておいて
アサメの街に変な光が見える。幾つかの炎と、そしてポケモンの技同士のぶつかる輝き
それへの救援は二人に任せ
「行こう、ライ!」
『フリャ!』
アズマは、自分の家を目指す……