ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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ポケモンセンター

「ヘルガーを、お願いします」

 「何て怪我!急いで!」

 『ラッキッキー!』

 ヘルガーはこの中の誰のポケモンでもない。その為、ボールな戻すことなんて不可能で

 コルニに抱えてもらい、アサメへとひとっとび。女の子に抱えてもらうのかという話ではあるけれど、他に抱えられそうなルカリオも大分疲れているようで。トレーナー内で一番腕力と体力があるのは、やはりというか格闘タイプジムリーダーのコルニであったのだ

 

 そうして今、トレーナー4人とそのポケモン達は、新しく作られたアサメタウンポケモンセンター、まだ本格開業していない其処に集まっていた

 「……プロだ……」

 傷だらけのヘルガーを台に乗せ、ピンクで丸くて優しいポケモンであるラッキーと共に奥へと急ぐ女性を見て、アズマはしみじみと呟いた

 「いや、そりゃプロだよ」

 「いきなりイベルタルとサンダーとゼクロムで押し掛けて自然に対応出来るって、それでも凄いですよ」

 皆を屋敷から運ぶには、やはり空を飛べる大きなポケモンに手を借りるのが早い。その為、伝説のポケモンが三匹首を揃えてポケモンセンター前に降り立ったのだ。正直、アズマ自身がそれに遭遇したらは?と口を空けるだろう。暫くフリーズする自信がある

 それをせず、即座に傷だらけのヘルガーを保護することを選べるジョーイは、やはりというか凄い人なのだ

 

 「お疲れ様ボクのトモダチ」

 「戻ってくれ、サンダー。良く頑張ってくれた」

 赤い光が走り、二体のポケモンがその姿を消す。ボールに戻ったのだ

 「あ、じゃあおれも」

 アズマもボールを取り出して……

 今度は、大人しく巨鳥は姿を消した

 「怒ってごめんな、お疲れ、有り難う」

 そのポケモンの戻ったボールを撫でて、アズマもポケモンセンターの中へと歩みを進めた

 

 「君達のところにも、やっぱり」

 「はい。かつてショウブ……あ、おれとアサメの外で戦ったことがあったりするトレーナーの少年と共に戦ったラ・ヴィ団の少女、そしてディアンシーを拐おうとしていた二人。恐らく……ではありますが、少女と共に居た兄かもしれない男もまた、あの場に居たかもしれません」

 ポケモンセンターの大きなテーブル。開店したら人々のいこいの広場になるであろうそこを囲み、事態を訪ねるカルムにそうアズマは告げる

 その横では木の実を傷の浅いゾロアが齧っていて。残りは傷ひとつ無いが大きさ的に出てこれないイベルタル以外を預けてきたため、一匹だけ

 

 「1vs4か。大変だったね

 というか、良く勝てたね」

 「一人じゃありませんでしたから

 ゲン、は何か用事があったのか居なくなってしまいましたけど、おれは一人じゃない。みんなが居てくれて、だから

 

 あと、4人多分居た、って言いましたけど、ゴースト使いである一人に関しては、別のトレーナーが止めていてくれました」

 「別の?」

 「はい。はっきりと確認した訳ではないのですが、ガブリアスを扱うトレーナーが、メガゲンガーを止めていてくれたようです

 あとは、途中から……ゲンが呼んできてくれたのかな、父さん、ナンテン博士のポケモン達も加勢してくれました」

 「それは、本当に?」

 「はい。ヴォーダみたいな特徴的な傷なんかは無かったので確定とは言えませんが、おれの呼び掛けに少し反応してくれるドラパルトは、父のルトくらいです。恐らく」

 「ガブリアスの方には何か心当たり無いの」

 お茶を一杯。この中では元気なジムリーダーの少女に問われ、アズマは首を横に振った

 「残念ながら全く」

 「あ、ひょっとして!」

 「何か心当たりがあるんですかコルニさん!

 例えば、有名なガブリアス使いであるあのシロナさんがカロスに来てるとか」

 言いつつ、無いなとアズマは心の中で否定する

 そんな有名人が来ているならば、アズマだって知っているはずだ。現に、3日後にガラル地方の伝説ともされるあの男、チャンピオン・ダンデが来カロスする事は知っている。エキシビションマッチのチケットが、あの謎の暗い世界にアズマが居る間に発売され8分で完売していた。シロナだって、そうなるはずだ

 

 「そうじゃなくて

 ほら、君が話してくれたじゃん、フカマルと一緒にシンオウに越していった子

 あの子だったり」

 「チナ、ですか?」

 「そう。フカマル連れて行ったんだよね?

 なら、ひょっとして……」

 けれど、アズマはその言葉を遮る

 「きっと違います。チナ自身、女性トレーナーの中では、正直此処のチャンピオンのカルネさんよりも有名なシンオウのシロナさんには憧れていましたし、だからこそ頑張ってフカマルを捕まえにいったって事情はありますけど、バトル自体そんなに好きじゃないんですよ

 ワイルドエリアキャンプに一緒に行ったときだって、心配ばっかりしてましたし。名前も種族も分からないシアン色の犬ポケモンのお陰で、何だかんだ安全ではありましたけどね」

 だから、きっと違います。バトル好きじゃないんでガブリアスになるほどまで鍛えてないかもしれませんし

 と、アズマは締めくくる

 

 「でも、何でいきなりチナが?」

 「え?大切な友達の危機に駆け付けるって、燃えない?」

 「燃えるね、それ

 でも、セレナと突入したフレア団秘密基地じゃ、セレナを助けなきゃって感じの事は起こらなかったし……」

 「あ、そうなんですか。ってか、おれだって小説は好きですけど、本当に小説みたいな事に巻き込まれても困りますよ」

 『(もう巻き込まれてますわよ)』

 木の実を齧りながら、鋭くディアンシーが突っ込む

 「ま、そうなんだけどさ

 大切な友達だから。危険な目にはあんまり逢って欲しくない

 それに、ですよ。もしもチナなら、連絡が……」

 と、ホロキャスターを起動しようとして、アズマは気が付く

 

 「どうしたの?」

 「ライボルトの電撃、まともに受けちゃったからかな。壊れてる」

 電源をいれても、うんともすんともいわなくなったそれ。軽く黒煙が出てる気もするし、中の基盤はもうどうしようもなく破壊されているのだろう

 「チップのデータだけは、無事だと良いんですけど

 って、それだけじゃなくて。チナ、前に話した時にはジョウトに居たそうなんですよ。アルフの遺跡をシロナさんと調べるです、って。そして此処はカロスです。ガラルやホウエンならまだ近いから何とかなるかもしれませんけど、流石にジョウトからじゃ間に合いませんよ

 時間空間辺りを超越する伝説でも手を貸してくれればまた別かもしれませんが」

 とはいえ、アズマだって聞いたことはない。一年前くらいにギンガ団という組織が時間の神と呼ばれるディアルガ、そして空間の神と呼ばれるパルキアをテンガン山の山頂にあるという古代遺跡、槍の柱に呼び出すことに成功した……という噂は聞いたことがあるものの、その際に現れた伝説の二体は突如現れたというギラティナによって元居た場所に帰っていったらしい

 その後、その二体はギンガ団によって干上がったリッシ湖という場所にパルキアの姿を確認し、次の日にはリッシ湖は元の穏やかな湖の姿を取り戻していたという目撃証言があるくらいで、どこかのトレーナーと居るとかそういった話は聞かない。だから、有り得ないだろう

 流石に、あの距離を超えて此処まで駆け付けるには、神とされるポケモンの力が必要だから。伝説のポケモンは何体も居る。けれどもだ、人を連れて何地方も超えて超高速で移動できるのはアズマが知る限りではシンオウ神話の3神だけだ

 カントーの三鳥はそんな速くない。地方を跨ぐには数日かかるだろう

 ジョウトの焼けた塔の伝説にもなっている三匹は海を渡れない。いやスイクンは渡れるが海水は苦手らしい。二体の鳥ポケモンは渡れるが、速度はカントーの三鳥とそう変わらないとか

 ホウエンに伝わる伝説ならばどうだろう。アルトマーレ他で見かける夢幻ポケモン達は三鳥より速いが、体が小さく人を乗せて高速で飛べない。超古代ポケモン等……特にレックウザであれば間に合うだろうが、彼等は居るだけで天候を支配する。レックウザであれば雲ひとつなく日差しが強すぎない凪いだ空に固定される。その為目立ちすぎるので噂が出てくるはずだ

 イッシュ伝説……白と黒の竜ならば間に合うかもしれない。けれど、その竜は今片割れが此処に居る。もう片割れは、ガブリアスを持っていないトレーナーの手の中だ

 アローラ伝説のソルガレオとルナアーラ。異次元への扉を開くという獣であれば……駄目だろう。黒水晶のポケモンを見る限り、異次元に突入して戻ってくるだけで、かなりの時間が経過する

 ガラル地方……は、伝説不毛の地だ。ブラックナイトを止めたのは人間の騎士姉妹だというし、伝説ポケモンの話すら残ってないから語りようもない

 

 閑話休題。何でそんな事考えてるんだろとアズマは自分に苦笑して、会話を続けた




ブラックナイトを止めたのは人間の騎士姉妹であると言われている
ザマゼンタ「!?」

まあ、ザシアンは姉と言われてますが、ザマゼンタが弟という記述は何処にも在りませんからね
ザマゼンタ妹説を提唱する次第である

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