ポケモントレーナーのショウブが、勝負をしかけてきた!
「行くぜ、にぃちゃん!」
此処はフラダリカフェの地下。かつてはフラダリラボと呼ばれた場所であり、今ではカフェの利用者の為にバトル用の場所として入り口近くが解放されている
流石に、いくら機材は運び出された後だといっても、ラボ深部まではカフェ店員の監督が届かないので通常は行くことは出来ない
実際、バトルに使われることも多いのだろう、バトル用に整えられたその場所の近くには、観戦しながらコーヒーなど飲めるようにテーブルと椅子まで完備されている
お、バトルか?とその椅子にカップを持ってきて座る観客おじさんに軽く会釈して、アズマは改めて年下の正念に向き直る
「バトルは1vs1、軽くで良いよな?」
「良いぜ、始めよう!」
言いつつ、少年はくるりとターンし、ビシッ!と音が出た気がする程にしっかりと手を上に上げたポーズを決める
リザードンポーズだ。それに合わせ、アズマもホロキャスターを左手に構え、自撮りっぽく腕を伸ばして……
「今回は任せた、サザ!」
「未来のチャンピオンタイムだ、リザードン!」
ダンデ最大の好敵手の真似事をしながら、アズマも今回ちょうど良いだろうドラゴンポケモンを繰り出す
ボールエフェクト機能は、あくまでもあの時フライゴンのボール(スーパーボール)とモノズのボール(ゴージャスボール)とゾロアのボール(ダークボール)とヒトツキのボール(モンスターボール)が全部違う種類のボールであるが故に、繰り出すタイミングでボールの種類からゾロアがイリュージョンしている事がバレないようにするための工作。一応数日とはいえ知り合いであるコルニ相手であるから、きっと気がついても正々堂々来てくれると信じてはいたが、出来ることはしようとアズマはその工作を行った。今回はその必要がない為、モノズのボールからは外してある
前と違ってキラキラしくないエフェクトと共に、小柄な竜が地面に降り立つ
対するは、炎のごときオレンジの巨竜。絶対的にはそんなに大きいわけではないが、モノズからすれば数倍の巨体だ
更に、変化は続く
少年が、腕のリングを翳す
そこに取り付けられた桃色のダイヤを外し、自身のポケモンへと投げる。そのダイヤの下から現れるのは、もうひとつのダイヤモンド
投げられたダイヤを、体の割には小さな竜の鉤爪がしっかりと掴み……
「今こそ必殺の、メガシンカァァァッ!」
『ヴァッフ!』
一人と一頭の声が重なりあい、一つの絆を産み出す
二つのダイヤモンドの間を走る光が、虹色の二重螺旋を走らせ、竜の姿を変えて行く
「進化の光!メガリザードンッ!エェェェックス!」
『ルゥゥッ!ヴァァァァッ!』
口の端から青い炎を吹き出し、黒く染まった竜が天を(といってもあるのは天井だが)向いて咆哮する。メガリザードンX、黒きメガシンカ。あの日一人と一頭が見せた奇跡の姿は、確かに彼等の血肉となり、眼前にその偉姿を見せる
だが
「行けるな、サザ」
『ノッ!』
アズマとて、あの日から大きく変わった。ほぼ奇跡のメガシンカに頼りきりで、ショウブのリザードンなくしてメガアブソルに立ち向かえなかった時とは違う
命のオーラを、イベルタルの存在を認識してから、更に扱いやすくなったそれを繰り、モノズと共に眼前の竜を見据える
モノズにも震えはない。分かっているのだ。これはジャケットの者達との戦いとは違う。楽しいバトルなのだと。だから怯えず、逃げず
アズマは、腕の黒水晶に触れる
微かに輝く、プリズム光。色の定まらぬそれが、濃い紫へと変わり
「行くぜ!リザードン!超必殺!」
言葉に合わせ、奇跡の竜は巨大な炎を空へ向けて放つ
炸裂する大の字。『だいもんじ』のようにも見えるが、だがしかし、明らかに見当外れの場所への炎。実際に、モノズがいるはずもない場所で大の文字を作り出して赤い炎が燃えている
だが、それを馬鹿にする気はアズマには無く
寧ろそれこそが、彼の言う超必殺の布石だろうと注意し、一度上げたその手を前に構える
「スーパー!フ、レ、アァッ!ドラァァァァァァイブ!」
「解き放て、全力を越えて!『アルティメットドラゴンバーン』!」
少年のその宣言と共に、
それに対するモノズも、大の字の炎へ顔を向け
全身を燃やして燃え盛る蒼き炎そのもので出来た竜と化し、奇跡のメガシンカを遂げた竜が、大地に立つ仔竜へと突貫する
それを、アズマが竜のアギトのように手を広げた瞬間、モノズの口から放たれた同じく炎を思わせる紫の竜の姿のエネルギーが迎え撃った
「いっけぇぇぇぇっ!リザードン!」
相手トレーナーの叫び
無意味なんて事はなく、ポケモンにとって励みとなるそれを、アズマはしない
何故ならば、何よりも強く、Z技の最中のトレーナーとポケモンは結び付いているのだから。叫ぶ必要はほぼ無い
ただ、信じて待つ
そして、二つの竜の姿が消えたとき
メガリザードンは、その鉤爪をモノズの眼前30cm程の場所に振り下ろした姿で、地面に降りていた
「……ふう」
『モノッ!』
「うん、良くやってくれた、サザ」
息を吐き、アズマはモノズをボールへと戻す
「思ってたよりすげぇなにぃちゃん。まさか、あのスーパー『フレアドライブ』が受け止めきられるなんて。ジムリーダーにだって通用したんだぜアレ」
『ヴァッ!』
自慢げに、炎を軽く吐くリザードン
「ま、オレサマとリザードンはまだまだやれるし、ラクショーなんだけどな」
けらけらと、少年は軽く笑い
突然陰った電気の明かりに、へ?とすっとんきょうな声を上げた
『ヴァッ!?』
「リザードン!?っ!うわっ!」
桃色のダイヤの光が点滅し、赤黒い光を得て怪しく輝く
黒きメガシンカが解け、もう一度螺旋が走り……あの日見たもうひとつの姿、大きな一角を持つ巨翼のリザードンへと姿を変える
「ななな、何が……」
なんとなく、アズマには予想が付いていた。何故ならば、あの瞬間、とあるボールが揺れたのだから
ことん、と見ていた観客の頭がテーブルに落ちる。そのポケモンが居る、ただそれだけの事が、意識を奪う
紅の凶鳥イベルタル。変化したリザードンが産み出す燃え盛る局所的に全てを晴らすがタイプエネルギーが少ない為当たってもダメージは少ない火球も、天井のライトも覆い、カロスの伝説がその翼を広げていた
「……いいぃぃいいいいイベルタルぅっ!?」
焦ったように少年が叫び
「にぃちゃん!一緒にこいつを……止め……」
アズマを振り向いてそう言ってくるショウブに、心配ないよ、とアズマは首を振り
『イガレッ!』
「大丈夫、ベル
ショウブだって、悪気がある訳じゃないし、おれを馬鹿にした訳でもないんだ。だから、怒ってくれなくても良いよ
それにさ、もうラクショーじゃないって、分かったはずだしな」
ボールを翳す
此処に自分が居るにも関わらずラクショーと言われてキレたのであろう伝説は、ならまあ良いよとばかりに素直にその姿をボールの中に消した
「はへ?」
『(こ、殺されるかと思いましたわ……)』
イベルタルが現れた瞬間にバッグの中に顔を引っ込めて震えていたディアンシーも顔を覗かせる
「あれ、イベルタル……だよな?」
「ああ、ベルだな」
「……にぃちゃん、イベルタル、何処行ったの?」
「勝手に出てきたからボールに戻したな」
「にぃちゃん、ボールって自分のポケモンしか戻せなかった……よな?あとは、ポケモンの登録とか……」
「マスターボールに入れて誰も手が出せない何処かに二度と甦らないように封印しろと言ってきたカロス協会には、コルニさんとカルムさんがひたすら頭を下げてくれたよ
『あんな風に神話では世界を終わらせるとか言われてますけど大丈夫なんです!街中で大虐殺とか起こさないです!大丈夫です安全です伝説はあくまでも伝説であって彼女は優しいポケモンなんです!寧ろ引き離したら暴走するんでおれの手元に置いてやって下さい!』って
あの二人には頭が上がらないよ、本当」
『(最後の一言に欠片も安心出来る要素がありませんわ!?)』
「……イベルタルが手持ちって、マジ?
「セレナさんがゼルネアス連れてるくらいの信憑性のマジ」
「何で、それでバッジ3個なのにぃちゃん……」
驚愕の眼で、少年はアズマを見る
「いや、ベルなら正直勝てると思うけどさぁ……流石に反則、ズルだろ」
イベルタルのボールを撫でながら、アズマは言う
「ん?今年冷酷仮面様だけで全バッジ取った凄い人来たよ?」
「冷酷仮面……ってああ、ガラルで確認されているあのガラルでは何故かフリーザーと呼ばれてる謎のポケモ……」
その言葉に、アズマは教えてくれた金髪の少女に父の資料で見た知識を返し
「ってコルニさん!?」
数秒して、その少女と暫く別行動していた事に気がついた
おまけ、トレーナー紹介
冷酷仮面ニキ
今年のカロスリーグに挑戦するモブトレーナー。手持ちはフリーザー(ガラル)以外ジムで一切使わなかった為不明
フリーザーに合わせて仮面を付けており、高笑いする謎の仮面タキシードとして、カルト的な人気が出ているとか。因みにタキシードの色がフリーザー(原種)に合わせて水色であり変態仮面の名を恣にしているが、別に犯罪などは犯していないし幼子に優しい正義の仮面である
ファンの間ではフリーザー正義の味方説とフリーザー幼子のカッコいいの基準をねじ曲げて歪んだ道に進ませる冷酷な悪説の相容れぬ二つの論者達が日々戦っている
人間ヒロインや擬人化ポケモンヒロインなどは正直な話要ります?
-
人間だけ必要なの!
-
擬人化だけ良いと思いますわ
-
いる(てっていこうせん【威力140】)
-
両方いらない、どろぼーねこ!
-
ギゴガゴーゴーッ!!