「そうなの
いえ、本人が知らないというのに、詮索しても無駄ね」
さほど残念そうではなく頭を振り、その女性はあっさりと話題を変える
「ならば、こういった言葉に覚えはないかしら
アローラの黒き竜。或いは、ガラルの黒き竜」
「残念ながら。おれの知ってる黒き竜はNさんのゼクロムと……」
ボールを開き、肩にモノズを乗せる
「こいつくらいです」
『ズーッ!』
「あ、後はメガリザードンX……って言っても分かりませんか
ショウブ、あっちで体操している少年のリザードンの特殊?だろうメガシンカ形態も一応黒い竜ですね
ですが、後は……あとは……
ああ、ガラルの黒き竜といえば、ガラル巨人伝説にその名がありましたね。人々に畏れられ原初の巨人に体を作られず朽ち果てた黒き竜のアギトの巨人、その名を
……レジドラゴ」
「あ、そのポケモンなら調査したです」
と、アズマの横で少女があっけらかんと言った
「あれ、そうなの?」
「といっても、遺跡は開かなかったんで、扉の前までなんですけど」
「巨人を奉る遺跡は赤と黄色に彩られていた。恐らく、封じられた巨人は黒よりも赤か或いは黄色が目立つポケモンのよう。あれは黒き竜とは呼ばれないでしょう」
シロナが付け加える
「そうなんですか
後は……って、そもそもルトも黒い竜でしたね」
「あのドラパルトさんは違うです」
「じゃあ本当に分かりません」
「……そう、ナンテン博士は、貴方にもあまり多くを話してはいないのね」
「あの、父さんが何か?」
残念そうに呟く女性に、そうアズマは問い掛けた
「アローラとガラルの黒き竜。その当時はまだまだ駆け出しで参加できなかった伝説のポケモンに関するナックルシティでのシンポジウムで、彼が話していたという仮説」
「……それなら、議事録を漁れば出てくるのではありませんか?」
「普通はそうなんだけど、ほら、彼って色々と過激な発表をしてるじゃない?
グラードンがホウエンを当の昔に離れ、何処かで目覚めを待っている……だとか」
「父さんはグラードンはカロスで眠りに就いているって言ってましたね」
「そうなんです?」
「3000年前の最終戦争。定説ではイベルタルによって最終兵器は起動し、それによって多くのポケモンが死んだとされています
けれども、だとすれば他にイベルタルに関する記述が何一つ無いのが気掛かりだって言ってました。ゼルネアスは出てくるのに」
「そういう観点だけ?」
「いえ、後は……ゲンシの力を発揮して暴れまわった二体の超古代ポケモンがレックウザによって静められた3000年前、その頃のホウエンの民の記述が一部残されているんです。ナンテンの家に来た渡りの民とか」
「そうなの」
興味深げに頷くシロナ
気をよくして、アズマはそのまま言葉を続けていく
「だから、あの最終兵器にはホウエン地方の民の手が加わっているはずです。ゲンシの戦いを終え、グラードンとカイオーガを離れた場所に封印しようとしていた時代の
あとは、オーラですね。最終戦争に関して多分聞いても当人は語ってくれませんが……
AZさんから感じたオーラは、間違いなくイベルタルのものでは無かった
3000年の間、最終兵器によって不死となり彷徨ってきた御先祖様の兄。あの当人から感じた力は、恐らくですが……
グラードンのものなんだと思います」
「つまり、貴方は……」
「3000年前、ゲンシの力をレックウザにより封じられ紅色のクリスタルの中で眠りについたグラードンを使って最終兵器は起動した
そして……最終兵器の下の大地の底で、力を吸い付くされたグラードンは今も多分ずっと眠り続けています。地殻の力をその身に蓄えながら」
「当時発表してたら大混乱ね」
「はい。ぼかして言っていたのは、恐らくあんなカイオーガ事件の直後にグラードンがカロスの此処で寝てるぞなんて言われたら大混乱が起きると思ったからなんでしょう
って、今はグラードン関係ないですね」
頭を軽く振って、アズマは思考を正す
「そんなこんなで、父さんの資料って案外残ってないんですか?」
「そうなの。徒に不安を煽る嘘だと廃棄されたものが多くて」
「……残念ですね
それはそれとして、あまり力にはなれない気がします。父さんの資料は良く読んでましたが」
「じゃあ、この言葉に聞き覚えはない?
『光を奪うネクロズマ』『無限大の力ムゲンダイナ』」
「光を奪う……ネクロズマ」
一瞬、アズマの心に一匹のポケモンの姿が浮かぶ
微かなプリズム光を湛えた、黒水晶のポケモン
だが、その想像をアズマは有り得ないと振り切る
『(光を奪う!あのポケモンですわ!)』
「姫、分かるの?」
キーンと脳内に響くテレパシーに、アズマはそう返す
『(わたくしのナイトなのに分かりませんの!?
二度も襲ってきた邪悪なあいつですわ!)』
「え、ジャケットの」
『(違いますわ!あの真っ黒のこわーいポケモンですの!)』
そのディアンシーのテレパシーを遮り、アズマは違うよと首を振る
「姫、あいつは……あのポケモンは、光を奪うなんて呼ばれる存在じゃない。第一さ、覚えてるかな、姫
あのポケモンに最初に出会う前に言われた言葉を
『かがやきさまを取り戻してくれ』って。だからさ、今は光を喪っていても、あいつは違う。あいつはかがやきさまだ、光の側のポケモンだ
『かがやきさま』と『光を奪う』だなんて、矛盾も良いところじゃないか」
『(そうかも、しれませんわね……)』
「すいません。ということでやっぱり何も分かりません
ムゲンダイナについては、そもそもおれ、ガラル伝説って全然知りませんしね
ガラルだと……豊穣の王バドレックスくらいですかね、知ってるの」
ガラルシンポジウムから半年後。チナと二人、父のフィールドワークに連れられて行ってきたフリーズ村で語られていた、像すら壊れていて悲しげだったヨを思い出しながら、アズマは呟く
「ヨさん……お元気でしょうか」
「ヨだし大丈夫じゃないかな。今頃きっと馬と美味しいニンジンを食べてるよ」
名産品として最近注目を集めはじめたものの中に、フリーズ村の人参があったはずだ
一時期は痩せ細りどうしようもなくなっていたあの村が、たった5年で人参を出荷出来る程に回復した。それはやはり、豊穣の王を皆が思い出したからなのだろう
アズマは、骨董品屋で見付けた変な二束三文で売られていた古い木彫りの置物が外で雪被っていた像に元々付いていたのでは?と思いつつ、填めてみたら元は填まったろうけど経年劣化で壊れていたのでポケモン達の力を借りてそれっぽいものを作り直しただけなのだが
今のフリーズ村の写真には、明らかに下の馬と王の像に比べて歪で彫りが甘くて不格好なでこぼこしたカボチャに見えなくもない王冠を被った王の像が大体映っており、見るたびに吹き出してしまう
そんな事を思い出しつつ、アズマはそう会話を締めた
メインヒロイン曰く、『とれーなーさんは、くろいどろぼーねこをよろこばせるのによねんがないひと?』
メガロポリス民から裏切られて封印されていたネクロズマの奴が遠くから見守ってるなかであいつは光を奪う奴じゃないとか言ってたら勝手にガンガンなつき度が上がっていく……捕まってすらいないのに……
話に出てきた豊穣の王バドレックスですが、今どうしてると思いますか?(アンケート結果によって出てきかたが変わります)
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ヨはフリーズ村振興V
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ヨはマント白ニーソの豊穣の王女
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ヨは白馬の豊穣の王子様である
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ヨはありのままのヨである
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村の人参ウメェー!外とか行かない