ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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劇場版ポケットモンスター&Z ヨと豊穣の帝王 LANDORUS part3

『「申し訳ないのである……」』

 それから数分後。アズマのもってきたミツハニー印の蜂蜜タップリのホットモーモーミルクを口に、何とか平静を取り戻したバドレックスは、小さなマグカップを手にぺこりと頭を下げた

 

 「大丈夫です?」

 『「愛馬さえ戻ってくれば、何とかなるかもしれないのである。ヨは豊穣の王、人々がヨを忘れたなら人々の信仰になど頼らないのである」』

 「じゃあ、その愛馬を見付けないといけないのか

 ……でも、おれ達は外に出るわけにもいかないし、父さんに頼むしかないよなぁ……

 探してきて貰うしかないから、どんな特徴だったか教えてくれないか?」

 『「……それが、なにぶん昔の事故、よく覚えていないのである

 ヨの力が弱まり、道を違えてからは会うこともなく……何かの野菜を見ると抑えるのが大変であった事は覚えておるのだが……」』

 「つまり、野菜が好物なんです?」

 「その野菜が分かれば……呼び寄せられるかも

 あ、でも……次の電車って12日後とかだったよね、そうすればおれ達も帰っちゃうし、間に合うかな……」

 『「そこは心配無用である

 種さえあれば、ヨが育ててみせるである」』

 「よし、じゃあチナ、一緒に王様の馬の好物を聞いてみよう」

 そう言って、アズマは再び小屋を出て、フリーズ村の畑へと向かうのであった

 

 「分かったです!」

 それは、アズマの勘……というか、こういうものは基本まとめ役の家にあるという伝承探しの大前提で村長を尋ねればあっさりと見付かった

 豊穣の王と愛馬の記述。それによると、愛馬はニンジンを好んで食べたというのである

 『「ほう、にんじん!

 あれはにんじんという作物であったか。さすがであるぞ

 して、そのにんじんは?村の者は育てているであろうか」』

 「……種なら貰ってきたよ。今の時期は人参の季節じゃないから」

 『「でかしたのである

 む?その奇怪な袋が種であるか?」』

 アズマの手にした人参の種の袋を見て、多くのイラストに描かれたゼルネアスを多少可愛くデフォルメしたような顔のポケモンは眼をしばたかせる

 「えっと、この中に沢山の種が入ってるです」

 『「人の進化は凄いのであるな……

 ヨは敬服するばかりである。思えば、ポケモン達を出し入れする奇怪な球に、瞬く間に家を建てるテントなるものに、人は様々なものを産み出しているのである

 

 して……」』

 ちらり、と窓からバドレックスは遠くの畑を見る

 『「村の畑の力ではあやつの好物となるほどのにんじんを育てるのに不足であるな……

 豊かな畑であれば、ヨの力で作物を育むことも可能であるが!」』

 「じゃあ、その畑って何処なんでしす?」

 『「……むむむ

 

 見えたである。清らかな雪深い地の畑」』

 「……後は、オレが巨人の遺跡を探る最中に見付けた古い墓地の横の畑なんかはどうだろうな」

 『カムクラゥ!?』

 突然光が消え、ふよふよと何とも言えぬ表情で浮かんでいた父が普段通りの表情に戻って口をはさみだし、アズマはへ?と声をあげた

 

 「あ、あれ?ヨさんが操ってたり……したのでは?」

 「あれか?オレはこれでもリーグに挑んだこともあるトレーナーだぞ?その気になればはね除けられる」

 「……あれ?バッジってそういうものだっけ」

 首を傾げながら、アズマはそれでも言葉を続ける

 

 「墓地の横の畑に、雪深い地の畑か……」

 「オレはどちらでも良いが、このままではオレが付いていかずに二人で行きかねないのでな。こうして話に絡ませて貰っている

 ……良いな、豊穣の王。その畑に行く間、オレを素直に連れていけ」

 『カム!カンムル』

 少しだけ怯えの色を眼に残しながら、かくかくとバドレックスは頷き、再びアズマの父を操って言葉を交わし直す

 

 『「……それで、畑であるが……

 そも、ヨの愛馬は2頭いて、その両方に逃げられているのである

 あの者の挙げた墓標横の畑であれば黒く輝く愛馬が、ヨの告げた雪深い地の畑であれば白く輝く愛馬が、それぞれ好んで食べたにんじんが作れるであろう」』

 「……あれ?じゃあ両方の畑に種を蒔けば?」

 『「今のヨの力では、片方のにんじんを実らせるだけで限界である

 ゆえ、人の子らよ

 どちらの愛馬であれば、今のヨでも乗りこなせそうか考えて欲しいのである」』

 ああ、そういう……

 頷いて、アズマは一息吐き、外で老婆が孫らしい子供(ちなみに、聞いてみると王様なんていなーいと言っていた。世知辛い話だ)に歌っていた王様の馬の歌を草笛で吹く

 

 それに合わせ、チナが歌詞を歌い、ボールから出ていたフカマルと、窓の外で大きなポケモンが遠吠えを合いの手のように合わせ

 一曲終えて、話を纏める

 「白い愛馬は氷の色。黒い愛馬はゴーストの色、か

 おれだったら多分黒い愛馬は悪タイプだなと思っていたところなんで、この情報は有りがたいな……」

 言いつつ、出会った時の初心を忘れずに握り拳を意識しながら、アズマは持ってきた道具の中から、一つの手持ちの測定器を取り出す

 

 『「それは何であるか?」』

 「タイプスキャナーって言って、ポケモンの体内のエネルギーから、そのポケモンが何タイプに分類されるのかを測ってくれる機械」

 言いつつ、はいとバドレックスに向けて、トリガーを引く

 

 「……くさ/エスパータイプか……」

 あれ?とアズマは首を捻る

 「タイプ相性的に、氷にもゴーストにも完全に不利じゃない?」

 「で、ですね……」

 横で、チナも苦笑いする

 草は氷に弱く、エスパーはゴーストに弱く、逆に草がゴーストに有利な訳でも、エスパーが氷に有利な訳でもない

 歌に歌われていたタイプが本当ならば……

 「バドレックス……タイプ的には、挑むのは止めとけと言いたくなる結果だったんだけど

 ……だからって、ランドロスは……あ、ダメだ、あいつ飛行タイプだ」

 今のバドレックスがランドロスにヨの土地を返せと言ったとして、なす術なくやられる未来しか見えない。例え力が同じくらいでも草は飛行に弱いのだ

 

 「……いや、飛行タイプ?

 そうだ、バドレックス。雪深い地の畑だよ」

 『「……ヨが随分とバカにされた気がしたのであるが、そこは良いのである

 その畑に行くべきなのであるか」』

 「ああ、ランドロスはじめん/ひこうだって聞いたことがある

 だとすれば……ゴーストに強くはなくて、氷にとても弱い。白い愛馬を取り戻せば、きっとあいつを追い払えるはずだ」

 『「うむ。ヨではそれが正しいのか分からぬが、でかした

 では早速、雪深い畑に向かうのである」』

 

 『カンムル』

 「……此処は、昨日来た辺りだな

 確かに畑はあった気がするが……」

 ボーマンダやドラパルトが周囲を見張る中、操られぬナンテン博士に連れられて、雪に覆われた山を登る

 「……あった!」

 そうして、夜になろうかという頃。漸くそれらしき捨てられた畑に辿り着いた

 そこは、雪に覆われたふかふかの土地。多くのポケモンが踏み固め、氷の覆った山肌にあって残された、草木の芽吹く場所

 人参の種を……勿体無いので少しだけ家に帰ったら記念に家の庭の畑で蒔こうと残して畑全体に蒔き、ヒトツキらの力も借りて埋める

 『「カラ カラ カラ

 うむ、小気味良い手捌き、天晴れであった」』

 力を振るうこの間だけと博士を操り、バドレックスはアズマ達を誉める

 そして、

 『「次はヨの出番であるな……

 今こそ力を見せようぞ」』

 言うや、バドレックスはその細い手足を器用に動かし、珍妙なダンスを始めた

 

 『カム カムクラゥ カムカムーイ!』

 そして、大きくY字(バドレックスは手が短く頭が大きいので両手を上げてもi字だが)を作り、躍り終えるや……その右の手から光が放たれ、畑が青く輝く

 そして……3本の、大きく太くそして雪のように白い人参が、畑から顔を出した

 

 『「幾多の種子を蒔き、実らせたのはたった3つ……

 落ちぶれし我が力、ああ嘆かわしい嘆かわしい……

 

 だが、その嘆きとも別れの時よ」』

 言われるまでもなく、その為にアズマ達は此処に来た

 大きなポケモンがその葉を咥え、アズマも葉に手を添えて

 一気にその人参を畑から引き抜く

 手にした人参は、寒さにかなり慣れてきたアズマにとってすら、あまりにもひんやりした冷たい感触であった

 「冷たいです……」

 『ルォード』

 「よし、引き抜けた。あとは待っていたら……来るかな?」

 『「三本ともあやつにくれてやるのは贅沢である

 ヨと人の子等で一本は鍋を囲むと……」』

 『バシロォース!』

 轟く嘶きに、バドレックスの声が遮られる

 

 「……あ、あれ」

 銀髪の少女が指差した先には、此方へ向けて駆けてくる白く輝く毛を、凍りついた鬣を持つ白馬のポケモンの姿があって

 『「あやつは我が愛馬 ブリザポス!?

 あの白く輝く毛並みと乱暴狼藉に走る姿

 間違いない」』

 ……そして

 

 『どろるるるるるるるるるるぅっ!』

 もう一つの轟きと共に、白馬の上に雲を浮かべ並走する姿があった

 オレンジの大地を思わせる肌、筋骨粒々の体

 だが、槌のような白髪を湛えたその顔は……ぱっと見髭のおっさんに良く似たもの。凄い存在の筈なのに、どうにもその絵に人気がないという理由に一発で納得が行くインパクト抜群のそのポケモンこそが、ランドロス

 イッシュの誇る?伝説の豊穣の王である

 

 「ら、ランドロス……」

 『「あやつ、にんじんを狙ってきたのであるか!」』

 折角の人参を!とバドレックスが意気込み、並べた人参の前に立つ

 「ダメだ、バドレックス!」

 止まる気配はない。相性的に勝てない

 ボーマンダがその事に気が付いてランドロスに噛み付き、ドラパルトが仔竜を飛ばしてそれを援護する

 だが、一般的に姿を確認されるポケモンの中では最高峰であるその2種に絡まれてもランドロスの歩み(飛んでいるが)は少し遅れるだけで止まることはなく

 『シロォース!』

 ブリザポスと呼ばれた白馬も、当然止まることはない

 立ちふさがっても無駄だ。勝てる筈はない

 思わず、アズマは人参を守ろうとするバドレックスを庇うように後ろから抱き締めて地面に転がり……

 「かはっ!」

 その背を、容赦なく凍った蹄に蹴り飛ばされた

 『ウルォード!』

 その光景に、三匹がかりでランドロスの動きを封じに掛かろうとしていた巨大狼がアズマを振り返り、口に淡く青い光の剣を咥えてブリザポスへと走る

 ……だが、それを意にも止めずにブリザポスは人参を咥え上げ、そして……

 その人参を、器用に首を振ってランドロスへと投げ渡した

 『どるるるぅ』

 浮上しつつ、それを受け止めるランドロス

 最後の一本はボーマンダが空中で咥えることで阻止するが、二本がランドロスの手に渡る

 そして……

 『ウルゥ!』

 大きなポケモンがアズマを庇うようにブリザポスとアズマの間に入り吠えるが、それを意にも止めず、人参さえ得れば用はないとばかりに踵を返し、その白馬はランドロスが向かう山頂の方向へと走り去っていったのであった




ランドロス(はくばじょうのすがた)爆誕である
なお、原作冠の雪原の豊穣の王イベントにランドロスは乱入しませんし、ランドロス(はくばじょうのすがた)なんてものは存在しません

ちなみにですが、本作での性能はこんな感じ
ランドロス(けしんフォルムはくばじょうのすがた)
じめん/こおりタイプ(189/260/220/180/190/131) 特性:しんばがったい(ランドロスのちからづくとブリザポスのしろのいななきの両方の効果を持ち、特性を無効にされず特性を書き換えられない)

話に出てきた豊穣の王バドレックスですが、今どうしてると思いますか?(アンケート結果によって出てきかたが変わります)

  • ヨはフリーズ村振興V
  • ヨはマント白ニーソの豊穣の王女
  • ヨは白馬の豊穣の王子様である
  • ヨはありのままのヨである
  • 村の人参ウメェー!外とか行かない
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