ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsメレシー?

数日後。メイスイタウン、そして二番道路を抜け、アズマ達はハクダンシティへと繋がる森……ハクダンの森へと足を踏み入れた

 

 その道中に、変わったことは特に無い。モノズと通じたのだからひょっとして……とモノズと共にヤヤコマ捕獲にリベンジし、見事に連敗記録を30連敗まで伸ばした程度だ。一応モンスターボールはメイスイで60個ほど買い足しておいたが、足りる気はしない

 

 日差しが遮られる。繁った森故当然ではあるが、昼間だというのに薄暗い

 アズマの横で、ヒトツキがくるくるとスピンする

 ヒトツキは地下室で出会っただけあって、割と薄暗い場所を好む。暗がりが嬉しいのだろう。『かげうち』も、公式戦では基本ルールとして十分な光源がある事、とされて封じられる程に使いやすくなるし

 自分の影が周りと溶け込み、巨大な影となる。そんな暗がりでは『かげうち』や『ゴーストダイブ』の天下だ。炎タイプの技等で暗がりを消さないとまともに対応等出来はしない

 

 30分程進んだ所で気が付く

 いつの間にか、近くを浮遊しているはずのヒトツキの姿が見えない

 「ギル?」

 探す

 見つからない

 更に探す

 見つからない……いや、ヒトツキの手らしき布が、東の木々の合間に消えた気がした

 

 「ギル、何処だー」

 更に探す。森深く……人々が通るように最低限整理された道筋を離れ、深みへと

 所々、刀身であったり、鞘であったりと見えた……気はするのだが、どこまでも追い付けない

 

 暫くして、少し開けた場所に出た

 「ギル?」

 まだ、探す

 居なくなる訳はない。ヒトツキがそんなポケモンでない事は、アズマは良く知っている

 だが……

 『(な、何ですの!)』

 其処に居たのは、ヒトツキでは無く、喋るポケモンだった

 

 「……喋る、ポケモン……?」

 『(あっ!……)』

 『メレーメレー』

 改めて、誤魔化しの下手なそのポケモンを見る

 鳴き声は……ほうせきポケモン、メレシーに似ている。外見も、メレシーに似てはいる

 だが、しかし……メレシーはダイヤ部分がピンク色してはいないし、勿論人の言葉を喋りもしない

 「何か聞いたことあるんだよな……メレシー……ピンク……特殊な個体……」

 アズマは考えるも、答えは出ない

 可愛いポケモンだとは思ったが、会えるとは思っていなかった故にそこまで調べていないポケモンの一種

 何らかのお伽噺に出てくるポケモンだっただろうか

 

 一歩、近づく

 『(ひっ!ま、ま、負けま……せんわ……)』

 謎のポケモンは、明らかに怯えた姿を見せる

 ひょっとしてだが、他のポケモンも、喋ることが出来たならばこんな事を言うのだろうか

 (理由は分からないが、おれを見ただけでここまで怯えられると……)

 ポケモンが捕まらない理由が、分かった気がした。ここまで怯える相手に捕まるなんて、認める訳がない

 

 思考を切り上げ、改めてポケモンを見る

 細かい傷が、体のあちこちに見えた。ポケモンバトルで付いた疵……だろうか。とりあえず珍しいポケモンというのは見たら分かる。弱らせて捕らえようとする人は居ても可笑しくない。というか普通に沢山居るだろう

 だが、捕まること無く逃げてきたならば、こうなっても可笑しくない

 

 更に一歩、近付く

 怯えるが、逃げない。ということは、恐らくは、逃げられない

 傷が見た以上に深かったりするのだろうか。野生のポケモンは、自分で野生のオレンの実等を取って傷ついた体を休めていると聞いたことがあるが、この辺りには生えていないし

 

 オレンポロックを一つ取りだし、ポケモンに投げる

 ポケモンはそれを受け、口を近付けて……

 『(……はっ。餌、餌付けなんて、されませんわ!わたくし、誇り高いんですの)』

 「……傷は治るぞ」

 『(……こんな程度かすり傷ですわ。施しなんて)』

 謎のポケモンが、目をぱちくりさせる

 『(ひょっとして、聞こえてるんですの?)』

 「……喋ってないつもりだったのか……」

 『(テレパシーですわ)』

 テレパシー。一部のポケモンが稀に持っているという特性だ。他のポケモンと鳴き声等によらず意志疎通し、全体攻撃等を巧みに当たらない位置取りで回避する……事が上手い、というものだったはずだ

 (まさかおれ、ポケモンからポケモン扱いでもされてるのか……)

 『(ポケモンじゃないんですの?)』

 「人間なんだが」

 『(信じませんわ!)』

 「何でだよ……」

 『(そんな黒くて怖いオーラを纏った人間なんて居ませんわ)』

 「……は?」

 オーラ、とこのポケモンはテレパシーしたのか?

 アズマに、そんな自覚は無い

 だが、ちょっと……アズマが居るだけで悪タイプの技の威力が少し何時もより強いとか何とか他のトレーナーになった子供達が言ってるのを聞いたことがあるような無いような……

 「いや、そういうんじゃなくて……」

 とりあえず、アズマは弁明に走る

 ポケモンが喋れたら意志疎通も楽だと思っていたし、大体分かるとはいえヒトツキが喋ってくれたらな……という心はアズマにもあった

 だが、実際に会話(テレパシー)してみると、案外噛み合わない

 

 「ディアンシーみーっけ」

 其処に、そんな声が響き渡った

 

 ディアンシー……。そうか、ディアンシーだったか

 アズマは一人納得する

 ほうせきポケモン、ディアンシー。極稀に産まれてくるというメレシーの王族。ピンク色のダイヤモンドを産み出すという、貴重な突然変異種だ。当然ながら、目撃報告があるとハンターが一斉に捕獲を目指す程の希少種であり、幻とされるレベルで目撃情報は少ない

 

 声の方に向き直る。草を掻き分けて、二人の男がやって来た

 服装は……何だろうか、Xのエンブレムを付けたジャケット?を羽織っている、それが共通点であった

 

 「んー?そこの少年、邪魔です」

 右の男が、アズマに向けて言い放つ。ジャケット以外はきっちりと白衣を着込んでいる。科学者か何かだろうか

 「先に見つけてたのはおれだし、優先権おれにない?」

 「無いぜぇ少年!」

 返すのは、左の男。上半身裸の筋肉であり、右の男との共通点はジャケットだけだ

 「それは酷いな」

 「邪魔だってんだよ!」

 突き飛ばされる

 

 だが、倒れることはない。倒れかけたアズマの手を、布の手が掴み支える

 何時しか、ヒトツキがアズマの横まで戻ってきていた

 「……ギル……」

 

 「さあ、ディアンシー。此方に……」

 『(怖く無いですわ怖く無いですわ怖く無いですわ……)』

 科学者風の男が、モンスターボールを取り出す

 そこから現れるのは、一匹のポケモン……ズバット

 怯えているのが、見てとれる。おれに対しても相当だったが、それ以上

 ……自分でもよか分からない謎のオーラ持ちよりも怯えられるとは、何なんだろうこいつらは

 

 「……サザ!」

 アズマも、モノズをボールから出す

 交戦の構え

 

 「ええい、我らラ・ヴィ団の邪魔を!」

 「痛くしなきゃ分かんないのかよ少年!」

 「知るか!怯えてるだろうが!」

 

 「ズルッグ、潰せ!」

 「ズバット、分からせてあげなさい!」

 「ギル、サザ、行くぞ!」

 

 ーラ・ヴィ団のしたっぱ達が、勝負を仕掛けてきた!ー


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