ポケットモンスター &Z   作:雨在新人

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vsときのほうこう

アズマは、何処か小さいその青い巨獣……青い運命と言われた時に、シアン色のポケモンをすぐに出さないために口にしたが、実際に目にすることは一生無いと思っていた時の神と呼ばれるポケモンを見上げる

 

 『Guryyy』

 悠然と低く唸るその四足歩行の獣の胸元には、青く五角形にカットされ……最高級を越える輝きを秘めたブルーダイヤが煌めいている

 

 「ディアルガダイヤ……」

 家にある家宝の名を、ぽつりとアズマは呟く

 一般的に、ダイヤモンドとは何処と無く白っぽい色をしているという認識が一般的。但し、それを越える価値を持つダイヤモンドが二つある

 ブルーダイヤとピンクダイヤだ。そしてそれは……

 

 「姫」

 『(?どうしましたの?)』

 ぴょこんと何時でも顔を出せるように……虐待ではなくポケモンの意志でバッグに入れているという事を強調する為に開けてあるカバーを押し上げて、ディアンシーが顔を出す

 少しだけ身震いをしながら、小さなダイヤモンドの姫はアズマの膝の上に乗った

 

 『(そろそろゼルネアスが見れるんですの?)』

 「感じるんだ」

 『(近くに居る気がしますわね。方向が分かりませんけど……

 あと、もっと怖いものが横に……)』

 アズマの膝に落ち着くピンクダイヤのポケモンをじーっと見下ろし、嘴を数度カチカチと打ち鳴らすイベルタル

 ゼルネアスと対を成す破壊の伝説、新しく始まるための終わりを司る赤き闇。確かに、ゼルネアスの存在を関知できるディアンシーからしてみれば怖いだろう

 

 (ベルは別にそんな恐ろしいポケモンじゃない、筈なんだけど……)

 なんて、アズマは思うが……こればっかりは、アズマも持つらしいダークオーラの影響。如何ともしがたい生態の問題だ

 

 「ベルは……後で一緒に空飛ぼうか

 だから、今は大人しく、な」

 そのアズマの声に、紅の伝説はトレーナーの耳をその舌でぺろっと舐める事で返した

 

 「あ、Nさん。一人と一体で飛ぶより楽しい筈なんで、一緒に飛んで貰っても大丈夫ですか?ゼクロムも」

 ニャオニクス師匠と共にZ技の修行の際、何度となく強大な電撃をぶつけて技の威力を確かめてくれた黒き竜は、その後頭部の一角を光らせて応える

 「……急ぐ必要がないなら、見付からない場所で頼むわね」

 「あ、それは流石に分かってますシロナさん」

 「あと、この子もね」

 と、金髪の女性は己の助手の肩に手を置き、言って……

 

 『レック!』 

 「嫌だってベルが言ってます」

 「……何でですか!?」

 ゼクロムの時はスルーしたのに拒絶するように鳴いたポケモンに、チナが愕然とした

 

 「……こほん

 というか、話逸れてる逸れてる」

 『(お、置いてけぼりでしたの……)』

 改めてアズマは、そんなあれこれの話の中図太く完全無視を決め込んで堂々と立っていた時の神と呼ばれるポケモンの方を見直す

 

 「ということで、姫に出てきて貰ったのは、このポケモンと会わせるため」

 『(どんなポケモンなんですの?)』

 「姫は、自分が何て呼ばれてるか知ってる?」

 『(姫ですわね。渾名を付けられるなら……)』

 と、ディアンシーはそこで止まる

 

 『(えっと、わたくし、あのジャケットから何て言われてました?)』

 その言葉にちょっとだけ笑って、アズマは箱入り姫に説明する

 「人間達は、姫の事をディアンシーって呼んでる

 メレシーの姫、ダイヤモンドの姫。ダイヤモンドのメレシーということで、ディアンシーって」

 『(ディアンシー……)』

 「そして彼は……ん?彼で合ってるよね、チナ?」

 「あ、Dia様は彼で合ってる筈です」

 少女に確認を取って、アズマは続けた

 「彼の名はDia様?だけど、種族としては……ディアルガ

 時間ポケモン、ディアルガ。資料が存在する、実在すると言われているポケモンの中で姫と並んでたった2種類のダイヤモンドのポケモン」

 『(わたくしと、同じ?)』

 「まあ、可愛くてダイヤモンドが作れるからって理由で狙われがちな姫と違って、時を司る神とシンオウ神話に語られるっていう文字通りの伝説、なんだけど……」

 ちらりとアズマは幼馴染の方を見た

 

 「何処でこんな伝説そのものと出会ったの、チナ?

 大丈夫だった?怪我は?というか、ギンガ団ってディアルガとパルキアを追ってたらしいけど、狙われなかった?」

 「アズマさん、そんな一気に聞かれても答えられないですよ

 でも、だいじょぶです。Dia様は、ギンガ団事件が解決した後に出会ったですから」

 「そうなの?」

 「はい。Dia様と出会ったのは、実はかなり最近です」

 こくりと頷くシロナ、臆せずディアルガの前に立って何か話しているN

 ポケモンの声がテレパシーも何もなくとも全部分かるというNは恐らく、ディアルガから事情を聞いているのだろう。ポケモン視点での、話を

 

 「えっと、シロナさんのシント遺跡……ってところの調査の為に着いていったって話はしましたよね?」

 「うん、聞いてる」

 「アズマさん、シント遺跡ってどういう場所かは知ってます?」

 その言葉にもアズマは頷く

 

 父が十年前に調査した場所だ。資料ならばアズマも読んだことがある

 「みつぶたいの場所だよね

 ジョウトとシンオウの間にあるという、雪に常に閉ざされたアルセウス遺跡の一つ」

 「はいです

 わたしはシロナさんとそこに行ったですけど……」

 「でも、あの遺跡は単なる遺物。歴史的価値こそあれ……って父さんは結論付けてた気が」

 「それがね。ギンガ団は湖のポケモン達を使い、時と空間の神とされるポケモンを呼び出した

 その事で……シンオウの空は一度大きく歪んだの」

 金髪の女性の語りにこくりと頷きを返すアズマ

 

 「そのせいか、わたしが来た時には……不思議な歪みが舞台の上に有ったです」

 「この子の前で、歪みは白い卵の形に変わって……」

 『Guryyy』

 「えっと、そこから産まれたのがDia様なんです

 ……思わずボールを落としちゃったら、転がっていったそれが脚に当たって……そのまま捕まっちゃったです」

 「それは……ぽかーんだね」

 「ぽかーんです」

 こくこくとアズマの言葉に同意を返す女の子の銀の髪がふわりと揺れて、花の香りが拡がる

 

 「えっと、その時シロナさんは?」

 「この子に来てもらったら孵ったから、きっと最初から着いていく気だったのねと思ったわね」

 「新しく産まれた身で良いトレーナーを待っていたそうだよ」

 「通訳有り難う御座いますNさん

 

 それでも……うん、暫く呆けるね、それは」

 「アズマさんの方こそだいじょぶでしたか?」

 「ベルは自分からボールに飛び込んでいったし、何より……」

 とん、とアズマは自分の胸を右手で叩く

 「チナには話した事があるよね。家の家が護る桃色水晶の話。あの中にずっと繭として眠ってたんだ、ベル

 だからさ、何となく最初からおれとベルの中には繋がりがあって……結構すぐ、受け入れられたよ」

 『(ところで、わたくしとこの恐ろしいポケモンの間には、何があるんですの?)』

 「唯二の"ディア"。ダイヤモンドの伝説同士、何か通じ合うものとかあるのかなーって」

 『(あまりありませんわ)』

 

 そっか、とアズマは小さなダイヤモンドの姫に頷いた

 「ところで、エキシビション……始まらないね

 結構長く話しすぎた気がするんだけど」

 

 『GubaGuryyy』

 ディアルガが吠える

 「『そして時は動き出す……』らしいね」

 「え!?時間止まってたの!?」




スタープラチナ・ザ・ワールドちゃん(略してチナ)

……な、訳はないです。ポケモンプラチナのチナです

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