1週間も経ってた、辛み。
夏は艦こ〇イベントとかグランドでオーダーなスマホゲーとか羽川運極とかやらないといけないこといっぱいあって辛い、更新頑張ろ。
スパンダムが出ると途端にシリアスになるンゴ…
その日、列車は海を走った。
苦節十年、ある男が提案した机上の空論。〝海列車〟
島と島を繋ぐ線路を作り
そこへ列車を走らせる
生まれる経済効果や街に与える影響は未知数、廃れきった水の都ウォーターセブンは1人の男が語った〝夢〟に掛けた。
海賊王の船を作った男、魚人の船大工トムとトムズ・ワーカーズに
衝撃の法廷から10年後、見事彼等は海列車を完成させた。
セントポプラ、サンファルド、エニエス・ロビーを結ぶ画期的大発明〝海列車〟は瞬く間に近隣の島々に知れ渡り、大きな利益をウォーターセブンにもたらした。
そして約束の法廷にて、彼の罪は海列車の功績によって帳消しになる…筈だった。
◆
ズドォンッ!!!ドカァン!!!
耳触りな砲撃音と爆発音が俺の耳に響く、逃げ惑う人々、沿岸の建物は破壊されて俺の乗ってきた司法船も火の海だ。
「おい、街のヤツらの避難誘導だ、急げ急げ!」
街の人々がパニックに陥る中、部下達に指示を出す。
俺は政府諜報機関CP5の長官として、海賊王ゴールド・ロジャーの船を作った船大工、トムをエニエス・ロビーに護送するため司法船に乗り部下達と共にやって来た。
海賊王に関わる者は誰だって大罪人だ、重かれ軽かれ何かしら罰せられる。
聞けばこの裁判は10年前に特別に執行猶予が付き、その間に海列車と呼ばれる新発明をトムは完成させたらしい。その功績によってトムの罪は帳消しになり、今日が晴れて無罪放免の日になる筈だった。
裁判長の護衛も兼ねて乗船し、正直面倒な護送任務が無くなってせいせいしてる…と思った矢先に大量の兵器を積んだ船団が沖からやって来て司法船と沿岸部を襲撃したときたもんだ。
船体にはB・Fのロゴと番号がふってある、それに加えて各船に大量に搭載された砲台含む武器の数…明らかに戦闘する為に作られた船だった。
「一体誰だ、あんな船を作りやがった馬鹿野郎は…」
悪態をつき、俺は避難誘導のため部下と共に住民達の下へ急ぐ。
アイツなら海賊程度ものの数分で全滅させられるだろう、トムも協力しているようだし。
………
程なくして、海列車を建造した張本人トムとその仲間達、トムズワーカーズの活躍により海賊共は御用となった。
襲撃したのはウォーターセブンに恨みを持つ海賊団。船を失い、新しく造船してもらおうにも金がなく断られ、腹いせに船捨て場にあった船を使い街を襲ったそうだ。
ここまではいい、船を作ってもらえなかった海賊共の逆恨みだ。
だがあの武器満載の戦艦は一体誰が作ったのか?
「実行犯はあの
あの武器の搭載数、ウォーターセブンは戦争でも始める気だったのか?」
事態を究明すべく、俺はトムズワーカーズ同伴のもと縛り上げた生き残りの海賊達を監獄船に放り込んだ後の法廷にて、裁判長に問いただす。
「船は乗り手によって〝正義〟にも〝悪〟にもなる、だから俺は作り手に責任はあるとは言わねェ。
ただ一つ、海賊王の船を作った奴を除いてな。」
自身も海賊殲滅に加担し、軽く傷ついたトムは真剣な眼差しでこちらを見てる。
「だが今回ばかりは例外だ、話じゃあの小型戦艦の大船団、廃船島に投棄してあったそうじゃねえか。砲も銛も手入れの行き届いた状態でな。
おかしくねえか?そんな都合のいい戦艦が何故廃船島に都合よく置いてある?
ウワサじゃトムズ・ワーカーズの社員の1人が廃船島に入り浸ってたって話もある。
なあトムさんよ、お前達があの船団を海賊に手引きしたのか?」
法廷が静まり返った、突然叫んだのはトムの隣のアイスバーグって若造だ。
「違うっ!!!トムさんはそんな事しない!
海列車を完成させて、今日で罪が帳消しになる日になんでわざわざそんな事しなけりゃいけないんだ!」
「気持ちは分かるがよォ、お前ん所の社長は1度罪を認めてる。
一度消えた信用を取り戻すにはどれだけの時間と苦労が必要か、そしてそれも簡単に崩れちまう事くらい分かるだろ?」
そう、議事録によれば10年前にトムは一度「海賊王の船を作った罪を認め、誇りに思っている」とさえ言った。
海賊王に加担するのは大罪だ、当時あの男に関わる誰もが政府によって罰を受けた。
それを誇りに思っているなんて言ったらどう思われるか…
海列車の完成で失われた信用が一時的に取り戻せたとして、他の事件で少しでも疑いが掛けられれば「やはり海賊王の船を作った犯罪者」というレッテルが貼られちまう。こうなっちまったら覆すのは相当難しい。
元罪人は何かあったら真っ先に疑われるご時世だ
「ぐっ…それでも…トムさんはやって無い!
街が襲われた時、真っ先に止めようとしてくれたじゃないか!」
「……………」
アイスバーグの必死の弁明にも関わらず当の本人は黙りを決め込んでいる。
「じゃあもう1人の社員に聞こうか、カティ・フラムだったか?
お前、あの船団について何か知ってる事はあるのか。どうなんだ。」
「…………………」
明らかに顔色が悪く息遣いも荒い、こりゃクロだろう。
餓鬼でも今回やったことの責任は取らなきゃいけない、残念だがコイツは…
「………俺は…あんな船知ら(ドゴォッ!!!)!?!?」
突然の出来事だった、さっきまで黙りを決め込んでいたトムはいきなり立ち上がり、弁明していたカティ・フラムを思いっきり殴り飛ばしたのだ。
傍観していた連中の中から悲鳴があがる、俺はすぐさま非殺傷用の銃を部下達に構えさせいつでも撃てるように待機させた。
「トムが急に暴れ出したぞ!」
「やっぱり彼は粗暴な魚人だったんだわ!」
「海列車には感謝していたのに…」
外野がザワザワと騒ぎ立てる、ええい喧しい。
「トム、何のつもりだ!
今ここで暴れても意味は無ェぞ!」
「……その言葉だけは船大工は言っちゃならねえ! 自分が作った船がどう使われようが、作ったヤツだけはその船を愛するべきだ! 自分の作った船に、男はドンと胸を張れ!!」
カティ・フラムに向けたトムの叫びは法廷内に響き渡った。だがその言葉は同時に改めて自分が海賊に加担したと改めて認める様なもの、オーディエンスの連中の見つめる視線は厳しいものだった。
「…今の台詞は、トムズワーカーズは海賊共に協力した。と認める発言だがそれでいいんだな?」
「構わねえ、俺は海賊に加担した罪を認める。
だがひとつだけ、海列車を作った事で罪がひとつ消えるなら……
今日の事件をアンタ達の手で不問にして欲しい。」
「だがそれだとテメェには海賊王の船を作った罪が残る、10年前の振り出しに戻るだけだぜ。」
「振り出しじゃ無ェさ、海列車は走ってる。俺の夢はこれから走り続けるんだ。」
「……裁判長!閉廷だ。
トムズワーカーズ社長トムを海賊王の船『オーロ・ジャクソン号』を製造した罪でエニエス・ロビーへ連行する。
トムズ・ワーカーズの社員達は無罪放免。
これで文句は無ェな?」
「あァ、それで構わねえ。」
誰もが唖然とする中、裁判長の木槌の音でこの裁判は閉廷を迎えた。
トムズワーカーズ社長トム、海賊王ゴールド・ロジャーの海賊船『オーロ・ジャクソン号』建造の罪でエニエス・ロビーに連行決定。
……………
海列車『パッフィング・トム』車内
司法の島エニエス・ロビー行きの便を貸し切り、俺は部下達と鎖に繋がれたトムを連れ列車に乗り込んだ。
連行中のトムには目立った反抗もなくスムーズに列車は出発、俺達の乗る先頭車両は嫌な沈黙に包まれていた。
「……ウォーターセブンの見納めだ、しっかり目に焼き付けとけよ。」
「……ああ、そうだなァ…」
「……実はな、今回の任務の
……正直に答えろトム、『古代兵器プルトン』この言葉に聞き覚えがあるか?いやある筈だ。」
「…ッ!?そいつは…」
どいつもこいつも分かりやすい反応してくれるぜ。
「質問に答えろ、『知っている』のか『知らない』のか。」
「…………知らねェ、聞いた事もねぇな。」
はいダウト。やれやれ…古代兵器の設計図、五老星と話はしたがそんなものが本当に存在しているとは…世界がひっくり返る様な代物だぞ?
だがあると分かった以上対処しなきゃなァ…。
コイツを尋問して場所を吐かせるのも手だが
アイスバーグかカティ・フラム、そのどちらかだろう。
もっと俺が偉かったら工作員を潜入させたりするんだが…この件の昇進に期待だな。
「……そうか、ならもうこの話は終わりだ。
最期の時まで大人しくしてな。」
「詳しく問い詰め無ェんだな、役人さんよ。」
「古代兵器についちゃ興味は絶えねぇが、そりゃまた別の仕事だ。
今はお前を護送するのが優先、大人しく連行されな。」
「……………」
◆
俺のせいだ
俺のせいでトムさんはまた捕まっちまった
俺があんな船を作ったばっかりに
「俺はお前を許さねえからな……ッ!」
「……………」
「お前のせいでトムさんは連れていかれた!オレは何度も忠告したぞ!
こんな危険な船は悪巧みに使われる前に捨てちまえと!」
「……………」
「お前みたいなバカがいるから…」
「止めなアイスバーグッ!
あのままだったらトムズワーカーズは終わってた、だからあの人は既に罪を背負ってる自分を使ったんだ。誰のせいでもないよ…」
「でも…でもッ…俺は……もうこいつが許せねえ……!」
「………………アイスバーグ…」
俺はフラフラと岸へ向けて歩き出した。
バカバーグとココロバーさんさんが後ろからなんか言ってるようだったが耳に入ってこない。
罪が晴れるはずだったトムさんは俺のせいで死刑台に連れていかれる。
俺が船なんか作らなければこんなことにはならなかった。
『自分が作った船がどう使われようが、作ったヤツだけはその船を愛するべきだ! 自分の作った船に、男はドンと胸を張れ!!』
頭の中でトムさんの言葉が響く
自分の作った船で誰かを傷つけてしまうのなら、大好きだった人を殺してしまうのなら
ごめん、トムさん…俺…
「もう、船作らねえよ…」
ごめんなさい、トムさん
ーーーーーーーーー
その夜、カティ・フラムはトムズワーカーズから忽然と姿を消した。
アイスバーグとココロはウォーターセブン中を捜索したが手掛かりはゼロ、廃船島からは解体処分予定だった小型のボートが一隻、少量の木材と共に消えていた。
カティ・フラムは失踪扱いとされ、程なくして治安部隊による捜索も打ち切られた。
アイスバーグはその後、ウォーターセブン内に六つあった造船会社を統合し巨大造船会社『ガレーラカンパニー』を設立する。
海列車による運搬効率の上昇によりウォーターセブンの財政は潤いを見せ、更にアイスバーグの海賊、海軍、果ては政府の船まで分け隔てなく造船する懐の深さに街の人々は感心し、尊敬の念を抱くようになった。
巨大会社の激務をこなす中アイスバーグは海列車建造の前日、トムから託されたある設計図の事を気にかけている。そして消えた相棒の事も片時も忘れる事は無かった。
そしてウォーターセブンから消息を絶ったカティ・フラムは宛のない旅を続け、航海の途中奇しくも嘗て自分が作った船で仕留め損ねた海王類の襲撃に会い瀕死の重傷を負った後、鋼材を大量に積んだ廃船に辿り着く…
時が流れ、彼らの運命が再び動き出すまであと十余年。
◆
海列車から司法の島エニエス・ロビーへ到着し、施設内でバスカビル裁判長による一方的な有罪判決を受けたトムは長い長い地下廊下を歩き、『ためらいの橋』まで辿り着く。
此処は罪を背負った者が最期の日の光を浴びる事ができる場所、この橋を渡りきり護送船に乗ってしまえばその先には大監獄インペルダウンという地獄が待っている。罪人は自らの未来に絶望し此処で必ず立ち止まる、それ故に『ためらいの橋』。
トムは目の前で口を開ける『正義の門』を眺めながらためらいの橋を一歩一歩踏み締めていた。
「橋の向こうでお前を護送船に明け渡す、そうしたら俺の仕事は終わりだ。達者でやれよジイさん。」
「ああ、すまねえなお役人さん。
……ありがとうよ。」
「んだよ急に…」
「俺が海賊をとっ捕まえに行ってる間、街のみんなを避難誘導してくれてたろ?それの礼だよ。
それに…『船の作り手に罪は無ェ』と言ってくれた。10年前の役人からはロジャーの船を作った犯罪者扱いだったからな。たっはっはっ………」
「…………さっさと行くぞ、人を待たせちまってんだ。」
ためらいの橋を渡りきる。橋の脇には銃を持つ海兵と政府の役人達が並び、その向こうには帆にカモメのマークの入った海軍の軍艦の姿が見えた。
しかしトムはその軍艦がいつものものと違うことに気づく。
「蒸気船…パドルシップか…?随分豪華な護送船だな。」
「ああ、海軍の戦艦の中でもとりわけ珍しい型だ。
試作品の在庫処分を引き取ったらしい。」
「軍艦が蒸気船じゃ戦闘に向かねえだろうに、引き取った奴はかなりの物好きだな。」
「物好きで悪かったな。」
トムに悪態を付きながら現れたのは2人のメイドを引き連れた白髪の麗人だった。
長い髪を纏め右肩に流し、紅色の瞳、ほかの海兵とは一風変わった白に赤い線の入ったスーツを着込んだ女性。
その背中には『正義』の二文字が入ったコートが風ではためいている。
魚人であるトムの目から見てもかなりの美人だと分かった。まるで御伽噺の世界からそのまま飛び出てきたような美しい女性だ。
「スパンダム長官、ご苦労。
これより先は我々が引き継ごう。」
「はッ!ミラ総督閣下!」
「閣下は要らんと言ってるだろ、そんなに畏まるなよスパンダム。」
急に畏まるスパンダムに砕けた口調でミラは笑う。
「お望み通りトムは引き渡すぜ。書類の方もバッチリさ。」
「デキる弟子を持つと楽でいいなあ。ご苦労、後はこっちで処理しよう。約束通りジジイ共に推薦しといてやるから安心しろ。」
「おう…!」
嬉しそうにするスパンダムをよそにミラはトムの方へと向き直る。
「まあ立ち話もなんだ、詳しい話は船内でしよう。もう枷も要らんだろ、鍵を寄越せ。」
「オイオイ一応司法の島を出るまでは………あーもう分かったよ。」
ミラはスパンダムから半ば強引に手錠の鍵をふんだくると何の躊躇いも無くトムの手枷を外した。
大犯罪者トム、自由になる
「!?!?!?」
「よーし諸君。堅苦しいの終了!」
「「「お疲れ様でぇーっス!!!」」」
さっきまでの荘厳な雰囲気は何処へやら、周りの海兵と役人達も「お疲れ〜」などと互いに言い合いながら伸びをする等、すっかり緊張感を無くしてしまった。
「10分休憩したら直ぐに出航だ。
各自準備の出来た者から乗船し所定の位置に着け。駆け足っ!」
「「「「「ハッ!!!」」」」」
パンパンと手を叩きながらミラの放った一喝で再び背筋を伸ばした海兵達はキビキビと蒸気船へ向けて走り出す。
対するトムは突然枷を外されて半ばパニック状態だ。
「しかし大きい魚人だな、ガスパーデくらいあるんじゃないか?」
「うん、おっきい人…」
ミラの隣に佇む狼の耳と尻尾が生えたメイドの少女は目をキラキラ輝かせながらトムの方を見ている。
これから監獄に護送されるにしてはあまりも緩い雰囲気だ。
「お前さん達は一体……」
「……さあトム、船に案内しよう。
此処は君の新たな
私の期待に応えてくれるかな…?」
未だ戸惑うトムに向かって笑いかけるミラ、その表情はまるで悪戯を計画する子供のようだった。
次回、魚人島にの話にする?ロシナンテの話にする?それとも…ジェ・ル・マ?(つまり不明)