大海原の祖なる龍   作:残骸の獣

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待たせたなァ…(Cv大塚明夫)


ミニオン島の変、完結
なんか一部海賊が小者っぽいので注意



24 番人、海賊、海兵

 

 

 

………

 

此処は俺の船の船長室、おつるさんの船を後ろに曳航しながら全速力でミニオン島へ移動している最中だ。

 

さっきまでは全くの音信不通だったガスパーデの盗聴用電伝虫から突如信号が入り、大至急おつるさんを呼び寄せた。

そしてその内容は…

 

「…と、ガスパーデから傍受した盗聴用電伝虫の内容はこんな感じだ。おつるさん。」

 

 

「スパイだなんて胸糞悪い事するじゃないかドンキホーテ海賊団は…。

お手柄だねガスパーデ、この様だとG5の方も一度洗いざらい調べる必要があるかもしれない。」

 

 

まさかヴェルゴ君、ドンキホーテ海賊団のスパイだったなんてなあ。意外。

あんなに礼儀正しい子だったのに…

こういうことしてくる海賊もいるんだな、ウチも気を付けないといつ足下を掬われるか分かったもんじゃない。疑い過ぎて疑心暗鬼になるのもアレだがそのへん折り合いが難しいよネ。

 

まあガスパーデの安否が確認出来たことには安心した、ああ言った手前俺の大事な部下である。生きていてくれて素直に嬉しい。

 

そんで残った次の問題はドンキホーテ海賊団だ。

おつるさんに聞いてみるとセンゴクさん情報でキャプテンや他の構成メンバーの事まで事細かに知っていた。キャプテンのドンキホーテ・ドフラミンゴは〝イトイトの実〟の糸人間、その他にも岩石同化人間、粘着人間、破裂人間などなど一筋縄ではいかない猛者達が揃ってる。

 

悪魔の実はその能力を理解し、鍛錬を重ねればいっそう体に馴染み、強力になっていく。ウチでもテリジアやイルミーナなんかは自分の悪魔の実を充分に把握し、弱点を隠し利点を伸ばす事でよりスキのない戦闘ができてる。

ただし逆もしかり、最強クラスの自然系だからって使い方がなってないと痛い目を見る事になるのだ。能力に頼り切りになっては覇気を持つ相手と戦った時大きく苦戦を強いられることになるだろう。

 

ボルサリーノ中将聞いてるかー?アンタの事だぞー(ボソッ)

 

海兵が能力理解して強くなってくれるのなら全然構わないんだけどコイツら海賊だからなあ、厄介な敵になりそうだ…

 

 

 

「アンタは行かせちまったが、そのレムって娘は大丈夫なのかい?

聞けばインペルダウンから連れ出して来そうじゃないか。」

 

 

「レムなら問題無いでしょう、あの子は強い。加減を覚えないと味方にまで被害が出るほどにね。

少しばかり頭が固いのが難ですが…」

 

 

そうなんだよなあ…付き合い始めてから判明したけどレムの奴、頭が固いというか、融通が利かないというか…

送り出したのはいいものの、〝初めてのおつかい〟の親の気分だ。

でもこっちの世界で人間と向き合うと決めた以上、過度な破壊や殺生は極力控えさせないといけない。俺らは理性ある〝龍〟で〝獣〟じゃないからネ。

破壊衝動で動いてるどっかの金猿なんかと一緒にされると困りますよ、ええ。

 

金剛角寄越して消えて下さい(^^)

 

 

 

「ミラが送り出したんだ、あたしゃアンタの決定を信じるよ。」

 

 

知らん間におつるさんからの信頼厚くなりスギィ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴェルゴとガスパーデが戦闘し始める少し前

ミニオン島、バレルズアジト

 

 

 

「…貴方達、そこで何をしている?」

 

 

透き通るような声がアジトに響いた。

ドンキホーテ海賊団、及び傷付きボロボロの海軍本部中佐ロシナンテの前に立つのは雪のように真っ白な髪と肌をもつ背の高い美女。

 

 

「なんだ、バレルズの野郎。こんな上玉の女を隠してやがったのか?」

 

 

ドンキホーテ海賊団の1人、グラディウスがボヤく。

鳥カゴの中で現れたということは最初からアジトの中にいたのだろう、これからロシナンテを処刑するタイミングで出てくるとは間の悪い女だ。

 

 

「バレルズの野郎は死んだ。今取り込み中なんだ、見逃してやるから命が惜しけりゃさっさと消えな。」

 

 

「……?」

 

 

キョトンと無表情のまま首を傾げ動かない女を見てグラディウスの苛立ちは募っていった。

 

 

「今取り込み中だって言ってるだろ。

言葉が分からねえほど壊されちまったのか?」

 

 

「……再質問、貴方達は此処で何をしている?」

 

 

「おい無視すんなこの女…「止めろグラディウス。」若!?」

 

 

苛立ちが最高潮に達したグラディウスをドフラミンゴはなだめ、一旦銃を下ろしレムの方へと向き直った。

 

 

「これは処刑さ、俺達を裏切った罪を死を持って償ってもらうためのな。」

 

 

「死が贖罪…?理解しかねる。『死』とは『無』、死ぬ事で罪が償われるなどというのは貴方のエゴ…自己満足」

 

 

相変わらず無表情で述べるレムにグラディウス達は食ってかかるがドフラミンゴは再びそれを制し、尚も不敵な笑みを浮かべながら諭すように言った

 

 

「ああそうさ、これは俺なりのケジメって奴だ。

誰にも縛られず、己が自由の赴くまま、まさに海賊らしいだろ?」

 

 

「海…賊?」

 

海賊、その言葉にレムはピクリと反応する。

 

ミラ()から伝えられた司令は2つ、一つはガスパーデ及びミラの部下達の安全の確保。もう一つは可能な限り生存者の救出。

だがもう一つ、レムはミラに大監獄から連れ出された時大前提として言われたある言葉を思い出した

 

『海賊は出会ったらまず敵だと思え』

 

そう、目の前のこの男達は海賊。

 

つまり、敵

 

 

「海賊…了承。主の命令を全うする。

許容もなく、慈悲もなく、ワタシは海賊と名乗る者を撃滅しなくてはならない。」

 

 

「フッフッフ、撃滅なあ…デカイ口を叩くじゃねえか。」クイッ

 

 

「…?身体が…」

 

 

ドフラミンゴの立てる指と共にレムの身体がピタリと止まり、指一本動かせなくなった。

不敵に笑うドフラミンゴだがその額には青筋が立っている。

 

 

「今俺ァ急いでるんだ。

弟に裏切られ、欲しかった悪魔の実は盗られてて、挙句そいつにトドメを刺そうって時にお前が現れた。

撃滅って言ったな?どんな自信があるかは知らねえがお前1人でファミリー全員を一度に相手すりゃ五秒も持たねえぞ。

……相手を見てから喧嘩を売るんだな。お前は「三秒」…あ''?」

 

 

「訂正。戦闘になった場合、貴方以下10名を物理的に拘束及び殺害に要する時間は三秒未満。

ワタシとしては三秒未満の行為が〝戦闘〟のカテゴリに属するのかは甚だ疑問。」

 

 

「……とことんデケェ口を叩く女だ。

もっと違うカタチで会ってりゃ仲間に引き込むんだがなァ…!

……死んどけ」

 

 

この時点でドフラミンゴの怒りも頂点に達しており、冷静な判断を下すことができなかった。

目の前の邪魔な女の首を切り落とすだけ、そう思い鋭い斬れ味を持つ糸をムチのようにしならせレムの首を狙う

 

 

その瞬間

 

 

「……戦闘を、開始する。」

 

 

 

時が凍った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘終了。

更に訂正、貴方達如きでは一秒も持たなかった。」

 

 

体の髄まで一瞬で凍らせた海賊達を見つめながら言う。

 

私が使ったのは空気中の水分を瞬時に凍らせる『絶凍』、本来は咆哮の際に生ずる只の〝余波〟だ。

約3回程で昔居たあの部屋は完全に凍結する。今のはそれを更に抑えた簡易版。

それでも辺りの木々は瞬間冷却され根まで凍り付き、辺りは白銀の世界へと姿を変えた。

 

きちんと加減出来ただろうか、先ほどの経験を活かしなんとか殺害してしまわないように配慮したつもりだが…。

 

それにしても、ハンターならばこの程度の冷気などものともしないのだが…主の言う通りこちらでは勝手が違うらしい。

無駄口を叩く前にさっさと攻撃してくればいいものの…海賊には〝学〟の無い者が多いようだ。

 

 

物言わぬ氷像になった海賊達を眺める。男女様々、子供に老人、大男、個性豊かな面々だ、そして最後に目に止めたのは全身ボロボロの男性だった。

 

『救える命は救う』、主は救う対象を指定しなかった。なので自己判断でそれが例え海賊だろうと例外はないと結論付けたワタシはボロボロのこの男を助ける事にした。

かなり痛めつけられていたのか所々骨は折れ、内蔵に刺さっていないのが不思議な位だが瞬間冷凍したおかげか身体は固定されている。このぶんなら命に別状は無いだろう。

 

鱗を持たない人間は脆くて大変だな

 

空を見上げると厄介だった〝檻〟が消えている、意識を失ったことによって悪魔の実の効力が切れたのだろうか?この海賊達のうちの誰が張っていたのかは今となっては分からないが…

 

 

「来た方向は…向こう。

なら彼を連れて戻ればミラが来るはず。」

 

 

とりあえずはその男を抱え、山を降りた。

 

 

……正直初任務でこの働きはなかなかの成果ではないだろうか。命令通り救える命を救ったし、要らぬ殺生も極力避けた。(当社比)

柄にもなく得意な気分なり、鼻歌などを歌いながらワタシはゆっくりと雪原を歩く。

 

主に褒めてもらえるかな…♪

 

 

 

 

この時のワタシはうかれるばかり凍らせていた海賊をその場に放り出したままだった事をすっかりと忘れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見えた、おつるさん。

ドフラミンゴの船だ。」

 

 

フラミンゴの艦首かよ、わっかりやす

 

 

やっとこさミニオン島に到着した俺とおつるさんは海岸付近にドンキホーテ海賊団の船らしき海賊船を発見、拿捕してガスパーデとレムを捜索する事にした。

捜索が始まってすぐ、レムの方から船へと戻ってきてくれてガスパーデもそれから少しして片腕を失った状態で帰ってきた。

 

めっちゃ心配したんだけどぶっきらぼうに俺の腕を振り切って「メシ食えば戻る」とか強がり言っちゃうガスパーデ。

こ や つ め

まあその通りなんだけどさ。

アメアメの実は水飴人間、例え四肢が切断されても身体が残っていれば時間がかかるが再生する便利な能力だ。超人系だから実体はあるはずなのに不思議よね。因みに飴の味はゲロマズらしい、舐めたイルミーナが言ってた。

 

 

それからレムの連れてきた海賊の男、全身ボロボロで今にも死にそうなくらい弱ってた所をレムに瞬間冷凍(コールドスリープ)させられたらしい。

解凍しても身体の損傷が激しくてかなり危ない状態だった、しばらくは安静にさせて様子見だ。というのをおつるさんがセンゴクさんにその海賊の写真付きで報告するとセンゴクさん電話越しに泣いてるみたいだった、詳しい事は後できこう。

取り敢えず今しないといけないことは…

 

 

「それでは私の部隊、そしてつる中将の部隊は二手に分かれて島中を捜索!

ドンキホーテ海賊団が見つかったら直ぐに報告しろ、行け!」

 

 

「「「「ハッ!」」」」

 

 

部下達は島内を散り散りに捜索しに行った。

ひとまずレムが遭遇して凍らせたらしい海賊たちの所へ行きますかね。

そーいや監視船に子供が1人保護されたって聞いたけど…今はドンキホーテ海賊団の処理が先かナ。

 

 

……………

 

 

 

「レム、本当に此処で氷漬けにしたのか?」

 

 

「肯定」

 

 

バレルズのアジト前、レムが海賊達を氷漬けにしたと言っていた辺りには何も無かった。

バレルズのものらしい宝石の入った宝箱が散乱しているくらい、あとはアジトの中で銃に撃たれて死んでるバレルズとその仲間達、身内同士で争ったような痕跡が幾つかあった。

 

 

「イルミーナ、お前の鼻は…」

 

 

「あぅ…だめ、血のにおいがつよすぎてうまく鼻がきかない……っくちゅんッ!!!」

 

 

「あーあー寒かったか?コート着てなさい。」

 

 

イルミーナの鼻もアテになんないかー

取り敢えず風邪を引くと不味いのでコートを着せてっと

 

 

 

「コイツらは仲間同士で殺し合いでもしたのか?」

 

 

「レムの報告からしてドンキホーテ海賊団の仕業だろうね、『糸で出来た檻』も恐らくドフラミンゴの仕業だろう。

バレルズは死んじまってるし、オペオペの実も行方不明、オマケにドンキホーテファミリーの姿は見えないときた。こりゃ完全に無駄足だったね。」

 

 

おつるさんと共にはぁ…とため息を吐く、オペオペの実も行方不明じゃ取引も無しか。と、思っていた矢先

 

 

「お姉様、お爺様方からお電話が入っておりますわ。」

 

 

ジジイ共から電話すっか、タイミングバッチリですな。

 

 

「んー、どうした五老星。

オペオペの実なら行方不明だぞ。」

 

 

『……なんと、そうか……残念だ。』

 

 

先手打ってやったら電話越しにちょっとショボンとする爺さん達。愉悦

 

 

「ドンキホーテ海賊団が持ち去ったのか、それともこの島の誰かが食べて無くなったのかは分からんが…如何せんこの島には能力者が多すぎて私の目でも把握しきれん。」

 

 

祖龍の霊眼、能力者が近くにいれば『コイツ能力者やで!』ってビンビン教えてくれるんだけど、海兵達で島中を捜索してるせいで見聞色使っても気配がごっちゃごちゃしてて詳しい位置がわからん。大規模捜索は失策だったかね。

 

 

『いや、無いのならそれでいい。

オペオペの実を食べた者は有能な医者になる、そうすれば否が応でも有名になるものだ。北の海を中心にアンテナを張っていればそのうち尻尾を掴むことができるだろう。

問題なのは仮にドンキホーテ海賊団が実を持ち去った場合だが…』

 

 

何故か言い淀む五老星

 

 

「連中がオペオペの実を持っていると何か問題でも?」

 

 

『…ドフラミンゴと言う名には聞き覚えがあってな、悪い予感が当たらねば良いのだが…。

とにかくご苦労だった。センゴク越しにこの任務の完了を伝えておく。

そのままつる中将と共に海軍本部へ帰投してくれ。』

 

 

しってる?それフラグって言うんやで

 

 

「あいわかった。で?

新しい七武海候補の目処は付いたのか?いつまでも3人じゃ流石に格好がつかんぞ。」

 

 

『何人か目星を立てている、またセンゴク越しに資料を送るよ。

伝書バットで承諾するならよし、駄目なら…君の交渉術に任せよう。』

 

 

「私の勧誘は少々強引かもしれんぞ?」

 

 

『構わん、龍の試練を乗り越えてこその七武海ならその方が格好がつく。』

 

 

「まあ、期待はするなよ。」

 

 

お互い軽く笑いあって受話器を下ろす。

 

 

七武海、新メンバー揃えないとなあ。

やっぱ真面目な奴がいいよな、そして強いヤツ。いっそ今暴れ回ってるフィッシャー・タイガーに勧誘かけてみるか?

でもあいつ人間嫌いだからなあ…普通なら接触も困難な相手だし、取り敢えず保留で。

 

 

その後、入念な捜索とは裏腹にドンキホーテ海賊団は死体も上がらず行方不明のまま。海賊船を押さえていたのにも関わらずどうやって島から姿を消したのかは疑問だけど逃がしてしまったものは仕方ない、引き続きおつるさんはドフラミンゴを追うそうだ。

追跡のカギを握ってるのはレムが保護したあの男かな…

 

オペオペの実も結局見つけられぬまま俺達はミニオン島を後にした。

俺とおつるさんの船はそのまま海軍本部へ、監視船は一旦支部へ寄って補給をするそうだ。バレルズのアジトに蓄えられていた財宝は興味ねーから換金して海賊被害を受けた街の復興支援に使うように命令しておいたので後腐れは無し。

 

祖龍は金銀財宝より強者との戦いを求めるのです。

 

例の男はおつるさんの船に乗せている、一命は取り留めたが衰弱が激しくて目を覚ますのは時間が掛かるとの事だ。

 

 

ていうか今回俺氏なんもしとらんですね、完全にレムの保護者ですやん。

偶には暴れたいなあ…誰か世界政府の旗撃ち抜くとかバカやってくれないかなあ。

 

 

 

そしたら俺も遠慮無しに暴れられるのに、原作にそんな展開なかったっけ?

 

 

 

「どうした中将総督、浮かない顔をしているな。

そんな時は……俺と一戦手合わせ願おうか。」

 

 

お前まだ居たんかミホ君

 

 

船を壊さない程度にその辺にあったデッキブラシでボコボコにしてやった。

甲板に転がるミホ君は終始笑顔だった、もしかしてコイツはドMなのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミニオン島沖、ミラ達の拿捕した海賊船とそっくりの海賊船にて

 

 

「追手は……無ェみたいだ、撒いたぜドフィ。」

 

 

「…今話し掛けんなピーカ、俺は機嫌が悪い。」

 

 

「んべへへ…気持ちは分かるがドフィ、アレはどーしようもなかったもんね。んね~…」

 

 

閑散とした船長室でドンキホーテファミリー最高幹部達は言葉を交わす。

 

時は少し遡る。レムによって一瞬で氷漬けにされたドフラミンゴ一行、そのうちレムから一番遠い位置におり、尚且つ冷気の影響を他の者より受けなかったディアマンテは辛うじて意識を取り戻し、自力で氷の呪縛を解くことが出来た。彼は残りのファミリーを船を接舷させた場所とは反対側の沿岸へと運びだし、そして自身の能力〝ヒラヒラの実〟で万が一に備えてコンパクトに収納していた予備の海賊船を取り出し海へ脱出したのだった。

 

 

「…そうだな、ディアマンテの機転が無かったら俺達はあのまま氷像になってた。ありがとうよ。」

 

 

「おいよせドフィ、俺はファミリーとして当たり前の事をしたまでさ…」

 

 

「いや、お前のおかげだよ…感謝してる」

 

 

「いやいや俺は別に…」

 

 

「じゃあ感謝するのは止めに…「そこまで言うなら仕方ない!そうさ、この状況から脱出出来たのは全て俺のおかげだとも!」………まァ脱出出来たのは良しとして、これからどうするかだ。」

 

 

「ヴェルゴとも連絡が取れねー、さっき奴のビブルカードを見ようとしたら燃え尽きてた。

んねー、アイツ死んじまったよ。」

 

 

考えうる限り最悪の事態だ。海軍へ入隊させ、スパイとして活動させるつもりだったヴェルゴは死んだ。

そしてオペオペの実もローに食われ海軍に保護された、そして俺達の秘密を知るコラソン…ロシナンテは恐らく生きている。

 

 

「コラソンはあの傷だ、もう助からねえよ…それよりローだ。

今からでも遅くねぇ、監視船を襲撃してローを奪い返そう。」

 

 

「駄目だ、監視船ならおつるが護ってるハズだ。

今の俺たちじゃそう簡単に落とせん。…それに、俺達を氷漬けにしやがったクソ女も乗ってるかもしれない。」

 

 

ドフラミンゴの言葉に3人は表情を固くする。

自分達は強い、そこらの海兵に遅れをとる気は毛頭なかった。しかし不意をつかれたとはいえ手も足も出なかったのだ、気が付いたら氷漬けにされていた。

明らかに自然系の実の能力者、そして自分達より圧倒的に格上の存在…そうドフラミンゴは結論づけていた。

それに手強いおつる中将も居るはずだ、2人を今の戦力で相手するには分が悪い。

 

それに思い出すだけで身の毛がよだつ、何より自分の中の本能が、血が、全力で『あいつとは戦うな』と悲鳴を上げているのがわかった。圧倒的な敗北感に身体の力が抜けていく。

 

あの女が何者か分かった瞬間、全ての手段を用いて逃走を選ぶ。

 

頭では分かっていても自分の中に流れる()()()()が全力で『逃げろ』と叫んでいた。

 

あれは人ではない、化け物だ。と

 

あの感覚は一体何なのか、少し考えてドフラミンゴはそんな弱気を振り払う。

 

 

「おいドフィ、汗スゲエぞ…?」

 

 

「アレは駄目だ…絶対に敵に回すな…

ヴェルゴが使えなくなった以上別の方法で国盗りを行う必要がある、まずは…自力で天上金の輸送ルートを見つけねえとな。幾つか心当たりはあるが…」

 

 

気を取り直し、ドフラミンゴは今後のファミリーの方針を考える事にした。

 

彼は知る由もない。監視船にはつる中将もミラ中将も付いておらず、更に輸送中のバレルズの宝物がすべて乗っている状況で、更にそこにはオペオペの実を使って忍び込んだローが乗っていたことに。

 

彼は知らず知らずして、最後のチャンスがあったにも関わらず望むものを全て取り逃していた。

 

この時、警戒したドフラミンゴがローを見逃したのは『偶然』か、もしくはロシナンテの言うように『運命に生かされている』のか、今はまだ誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息を殺して樽の中で身を潜める。

ここは多分海軍の船の中、コラさんの言っていた監視船ってやつに財宝と一緒に上手いこと乗り込んだ俺は食わされた悪魔の実、『オペオペの実』を使い宝箱の中の自分と壁の向こうにあった樽の中身を入れ替えた。

朝には街の港へ着くと言っていたからスキを見て脱出しよう。

 

 

コラさん……俺の大好きな人は死んじまった、でも俺は代わりに心も、命も、大事なもんは全部貰った。だから俺は生きないと…血反吐吐いても生き延びていつかきっと、必ず……ドフラミンゴに復讐するんだ。

 

決意を胸に秘め、樽の隙間から夜空を見上げる。海兵達も今は落ち着いているようで足音もないから波の音がよく聞こえる。

 

『安眠に関して俺の右に出る者は居ねえ!』

 

よく俺に〝魔法〟をかけて寝付けるようにしてくれたっけ。

もっと一緒に海を旅していたかったなあ…コラさん。

ベビー5のブキブキも正直かっこよくて羨ましかったけど、おれはコラさんの魔法が一番好きだったよ。

途端に寂しさがこみ上げてきた…

 

ちょっとだけ蓋を開け、周りに誰も居ないことを確認した後、おれはひっそりと樽の中で泣き続けた。

 

 

 

コラさん。おれ、生きてるよ

 

おれを生かしてくれてありがとう

 

おれを愛してくれてありがとう

 

もう少しだけ頑張ってみます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深い深い微睡みの中、何かを手繰り寄せるような感覚を覚え俺は目を覚ます。

見上げるのは知らない天井、揺れる部屋、耳を澄ませば聞こえる波の音。どうやらここは船の医務室のようだ。

起き上がろうとして全身に激しい痛みが走り、それに加えて頭もズキズキ痛み意識を持っていかれそうになる、堪らず頭を抑えた。

 

少しだけマシになったのでそばに置いてあったお茶を一気に飲み干し、一息ついていたその時

 

 

「……意識が戻った?」

 

 

澄んだ声がした、レースのカーテンを開いて1人の女がサンドイッチを乗せたトレーを持ってやってくる。

そして徐に俺の手首を優しく掴み、手元のペンライトで俺の両目に光を当てる。眩しい

 

 

「脈拍…正常、瞳孔…開いていない。

取り敢えずは生きている。気分はどう?」

 

 

「此処は一体…」

 

 

「回答、此処は海軍本部中将つるの軍艦医務室。

貴方は瀕死の重傷だった所を運び込まれた。治療の結果、命に別状はない。折れた骨が内蔵に刺さる可能性があるから動かないで大人しくして。」

 

 

無表情の女はつらつらと述べるとサンドイッチを一つ手に取り俺の口へと差し出してくる。卵ハムサンドだった

 

 

「栄養を摂取して」

 

 

「ああ…ありがとよ…」

 

 

「………あ〜ん」

 

 

「そんな事されんでも自分で食える…」

 

 

「貴方は動かないで、絶対安静。

その間の世話は全て私が代行する。

あ〜ん……」

 

 

「だからあ〜んは止めてくれ、自分で食えるから。ガキか俺は!?」

 

 

「ワタシからすれば貴方達は等しく子供。観念して、あ〜…」

 

 

「いや納得するかァ!?

俺の中の大切な何かが損なわれる!」

 

 

尚も口元へ『あ〜ん』させようとしてくる、この女見かけによらず強情だな!?

食うか食わされるかの攻防を繰り広げていたその時、医務室の扉が開いて白いコートを着た別の女が二人現れた。1人は若い女でもう1人は気の強そうな婆さんだ。

 

 

「目が覚めた様だねコラソン……いや、ロシナンテ中佐。

センゴクから話は聞いたよ、スパイとして潜入していたんだってね。

詳しく聞かせてもらうよ。」

 

 

 

ッ!?

 

その言葉を聞いて様々な記憶がフラッシュバックする

 

燃える屋敷、張り付けにされる自分と家族

 

実の父親を撃ち殺した兄

 

潜入任務

 

 

「おお…ォォォォォォ…ッッ!?」

 

 

また頭がズキズキと悲鳴をあげる、断片的な記憶が頭の中で駆け回り、情報を処理しきれない。

 

 

「おい大丈夫か!?

レム、どうなってる!」

 

 

「推測、一時的な記憶障害の可能性。

物理的、又は精神的に強いショックを受けた場合、脳が情報を処理しきれずエラーを起こす。

彼の身に起きているのはそれ、暫くは安静にしているのが肝要。」

 

 

「記憶が飛んじまってるのかい?じゃあ聞きたいことも聞けないね…まあ、アンタは言われた通りセンゴクに引き渡すとしようか、今はゆっくり休みな。」

 

 

「ゥゥゥ…すまねえ…」

 

 

「お前が謝る事じゃないさ、任務ご苦労さん。

レム、後は任せたぞ。」

 

 

「了承」

 

 

そう言って婆さん達は出ていった、部屋には俺とレムと呼ばれた女が残る。

 

 

記憶…?

俺は…ーーーーーがーーーをしようとしているのを止めるためにーーーーーーへ潜入して…

駄目だ思い出せない、頭に靄がかかったみたいだ。

何かとても大事な事を忘れているような気がする。大切な何かを…

 

 

「………あ〜ん」グイグイ

 

 

「だから自分で食べるわあッッ!!

尋常じゃねぇ力でサンドイッチを口に押し付けるのはヤメロォ!」

 

 

そんな考えもレムの『あ〜ん』攻撃を受けるうちにどこかに行ってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大将センゴク 著

 

『ドフラミンゴ捕縛作戦』

報告:〇〇日未明、政府主導で行われる世界政府とバレルズ海賊団によるオペオペの実の取り引きに介入しようとするドンキホーテ海賊団の情報を独自のルートで入手。取引の三日前にスワロー島に到着するとの報告を受け中将つる、及び()()()()を島へ派遣。

 

しかし予定時刻になってもドンキホーテ海賊団は現れず、バレルズ海賊団を監視していた監視船から異常が報告される。

中将2名は現場に急行、先行した協力者の働きによりドンキホーテ海賊団一名を捕縛するも船長ドフラミンゴ及び主要乗組員は逃走、バレルズ海賊団は仲間割れにより全滅。取り引きに使われる筈だった『オペオペの実』は現在行方不明。

並びに監視船にて現地の青年を一名保護、本人の希望により海軍にて雑用として雇用を予定。

なお捕縛したドンキホーテ海賊団船員、コードネーム『コラソン』の身柄は大将センゴクの預りとする。






獣ただいま帰還致しました…
感想による沢山の励ましのお言葉、本当にありがとうございます。獣はもう大丈夫です!
相も変わらず投稿日も時間も不安定ですが当作品に末永くお付き合い頂ければ幸いでございます…(土下座)


次回、三武海…いや七武海だもん!

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