大海原の祖なる龍   作:残骸の獣

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ちょっとアレな表現ありますのでご注意を

原作沿いに話合わせるの難しい…


31 祖龍(モドキ)、原作を感じる

 この世界には色んな〝常識〟がある

 

 働くのは民衆の常識

 

 勉強するのは貴族の常識

 

 戦うのは戦士の常識

 

 海によって閉ざされた島一つ一つにその島でしかない〝常識〟は有り、囲われた枠の中で人は一生を終えるのだ。

 

 

 

 以前の私の国もそうだった。

 王家の教え、国のしきたり、鎖のような〝常識〟にがんじがらめにされる人生。そんなものはもう飽きた。

 

 能力(チカラ)には選ばれなかったけど、別の(チカラ)で私は自由を手に入れた。

 

 

 故郷(くに)を飛び出してからおおよそ120年、毎日眺める海はこんなにも綺麗で世界は輝きに満ちているというのに……

 

 

 「なーんで誰も彼も意味の無い殺し合いを仕掛けているのかねえ…」

 

 

 死体の山を築き上げ、そのてっぺんで私は呟く。

 此処はかつて国だった場所、血に染まり、異臭漂う王座の間。

 本来その座に着くべき国王の首から下は今では私の座布団がわりに尻に敷いている。座り心地の悪い椅子だね。

 片手で()()の国王を掴み、滴る血は吸い込まれるように私の口元へと運ばれた。

 

 うわまっず、栄養偏り過ぎだよこの国王

 

 

 プルプルプルプル……プルプルプルプル…

 

 

 懐の小型電伝虫が鳴り出した、この子が鳴る時は大体決まってあの男からだ。

 

 

 「はぁーいドラちゃん、お元気ぃ?」

 

 

『……ドラちゃんは止めてくれ、頼んでいた制圧はどうなった?』

 

 

 「ドラちゃんのお望み通り、勝利の女神になってあげましたとも。

 なんなら()()()()()()()()()こくおーさまとお話するぅ?首しか無いけど。」

 

 

『すまない、助かった。

 直接会って話したいことがある、一度我々と合流してくれ。日傘を忘れるなよ。』

 

 

 「こくおーさまに対するレスポンスは無しなのぉ?つまんなーい。」

 

 

 せっかくお姉さんが殺伐とした定時連絡に爽やかな笑いを届けてあげようと思ったのに、真面目なボスだこと。

 

 

『勝利に喜んでもいられない、この勝利が〝我々〟によるものだと世間に知らしめなければな。

 戦後処理は今いる同志達に任せておけ。』

 

 

 「ハイハイ、ボスの仰せのままに〜。

 んで?どうしたのさ、イワちゃんの顔がまたおっきくなったの?」

 

 

『……くまが機会を与えてくれた。』

 

 

 「……ッッ!!」

 

 

『場所は東の海、ゴア王国で落ち合おう。

 くまの弁が確かなら彼女もそこへやってくる筈だ。』

 

 

 「ウン、分かった。遂に会えるんだね。」

 

 

『君が我々に協力してくれている対価がやっと払えるよ()()()()()()()、ではまた後で。』

 

 

 そう言い残し電伝虫は切られた。

 

 

 流石に気分が高揚するね、まさかこんなにも早く会えるなんて。これも〝運命を創る龍〟のお力なのかな?

 

 

 「ふふ…うっふふふふ…!」

 

 

 久しぶりに心から笑った、こんなに嬉しくなったのは愛する二人の孫娘を抱いた時くらい。

 これもあの御方の選んだ運命、我が家の死体なんかじゃなくて本物の伝説に私は会える!

 

 

 「ミュゼさん!国民達が革命の英雄に一目会いたいと城下に詰め寄って…」

 

 

 随分慌てた表情で銃を持った同志君が現れた、この惨状を見ても動じないなんて中々肝っ玉座ってんね〜。

 

 

 「てきとーにあしらっといて、ドラちゃんに呼ばれちゃったからぁ…私お暇するね!バイバーイ♪」

 

 

 首をその辺に放り投げ、城の窓から飛び降りた私は月夜を飛んだ。

 

 

 「ちょ…ちょっとミュゼさん!?ミュゼさぁ〜んッ!!!」

 

 

 楽しみだな〜…ゴア王国!

 

 

 

 

 

 ………

 次の日、偉大なる航路のとある島にて勃発していた永きに渡る戦争が反乱軍側の勝利というカタチで集結した。後に国王による民衆への理不尽な重税や様々な不正の証拠が発覚し各社新聞の一面を飾る事になる。

 国王は首を切断された状態で、更にその衛兵達は血液を全て抜かれミイラと化した遺体となって発見されたと記事は語る。

 世界政府はこの不審死を反乱軍以外の第三者による犯行だと推測し原因究明に当たるとの事だ。

 反乱軍の勝利の裏に潜む〝何者か〟について政府は()()発表を控えている…

 ………

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 「本日は遠路はるばる御足労頂き誠に有難うございます。

 いやー天下の海軍本部から中将殿を派遣して頂けるとは、国王陛下もお喜びになられますよ。」

 

 

 「御託はいいから、当日天竜人の通る海路と予定表を見せて頂けませんかね。

 万一の事が無いよう厳重に〝掃除〟しておかないといけませんので。」

 

 

 精一杯の作り笑顔で対応するも心で泣いてる俺氏。

 明鏡止水明鏡止水明鏡止水…心を無にしろ、俺は我慢のできる龍だ。これもくまとの約束だ……

 

 さっさと帰りてぇ…

 

 

 ……ここは東の海(イーストブルー)、ドーン島はゴア王国。

 今俺は国王の住む城の応接室で城の警備兵長と数週間後に控える天竜人の謁見、その警備と下準備に向けて会議をしている。

 本来ならボルサリーノ中将の仕事なんだけど、アンの事件で連れ回してたし本来追いかけてた『タイヨウの海賊団』の動きが活発化してきたからそちらを追いかけに行くんだそうだ。

 この島でくまとの()()もあるし、素直に回ってきた仕事を受けることにした。

 隣には差し出された当日の予定表を黙々と眺めるレムと椅子に寄りかかって興味無さそうにぐでーっと天井を眺めているアン、そして後ろには数名の部下と共にロシナンテ大佐、ガスパーデを連れている。

 

 

 ゴア王国は世界でも有数の『完全隔離社会』だ。王族、貴族、平民の階級は勿論の事、国中のゴミだって纏めて街の外へ捨てっぱなしにして『隔離』しているらしい。

 ここへ来た時イルミーナが鼻を抑えながら嫌そうな顔をしてた。鼻が利くから余計ね、キツイよね。

 

 …そうそう、いつも居るはずのイルミーナとテリジアが不在の理由だが、彼女達にはガープ中将に頼まれた〝お使い〟をお願いしている。

 ある山賊に手紙を渡して欲しいそうだ、この島はあの爺さんにもゆかりのある場所らしい。

 

 

 んで、前述したがそんなゴア王国には数日後、天竜人がやってくる。

 面倒臭いがこれも仕事だ、正直な所あんなクズ共どうなったって構わないがお給料が発生してる限りいくら嫌でも守ってやらなきゃいけない。〝最弱の海〟とまで揶揄される東の海なので目立って凶悪な海賊は居ないんだけどこの辺りの海域には割と悪名高い『ブルージャム海賊団』が出没するとの事でいっそう警備を緩める訳にはいかなくなった。

 という訳ですり合わせも兼ねて先程から話し合いをしてる訳なんだが、どーもこの警備兵長は集中してない。

 隙あらばチラッチラとこっちの胸を見てるし…すり合わせて欲しいのはお前の棒か?お?

 ……なんかオッサンみたいだな俺

 

 

 良くも悪くも人の姿をとった俺達龍はかなり目立つ、俺達はワンピースの世間一般でいう美人のカテゴリに分類されるらしい。

 レムは真珠の様な白肌に整った顔立ちをしているし無表情なのが逆にイイ!と評判だ。アンは言わずもがな、某女英雄王似のボンキュッボン金髪美女で黙っていれば国だって傾くだろう。

 俺氏自身も約束された勝利のアルトリア顔。下っ端海兵だった頃、同期の奴や先輩将校、果ては派遣先の島にいた見ず知らずの貴族にまで告白された事もある。まあ感性が人のそれとは違う為、人間に興味は湧くけど恋をしないしそもそも元男な俺氏は全部バッサリ断ったが。

 

 そんな美人が三人も揃っているのだから邪な目で見ないという方が無理だ、それは前世が男であったものとして納得しておいてやる。だがしかし、仕事くらいビシッと集中してやってくれませんかねえ!?

 あっ、もしかして結構話してたから集中力切れちゃったのかな?(名推理)

 

 

 「根を詰め過ぎてもアレですので、ここらで少し休憩しましょうか。昼食を挟んで一時間後にまた。」

 

 

 「そ、それでしたら城内の方でご用意致しますので!」

 

 

 「ご心配なく、部下達と適当に露店で済ませますよ。

 街の様子も確認しないといけませんしね。」

 

 

 「はあ、そうですか…」

 

 

 露骨に残念そうなカオされた、愉悦。

 

 

 ………

 

 

 

 

 「さて、出てきたのはいいが…この昼時に12人も入れてくれる店はあるものか。」

 

 

 「なあボス、城内で済ませば良かったんじゃねえの?」

 

 

 「正直衛兵の視線が限界だった」

 

 

 「アンタもそういうの気にするんだな…」

 

 

 「お?まるで私が女らしくないと言っているように聞こえるんだが?」

 

 

 「…………フューフュー」

 

 

 「おいこっち見ろガスパーデ、露骨に目を逸らすな。」ギリギリ

 

 

 「があああ首が折れる首が折れるッッ!!

 覇気は卑怯だぞ!」

 

 

 「ち、中将殿!とにかく手近な店を探して昼食を済ませましょう!」

 

 

 ロシナンテ君何を慌ててるん?

 

 といっても、海兵12人がゾロゾロと街を歩いていたら超目立つ。

 道行く人みんなから視線を浴びるな…

 貴族達の住む高町の料理は値段ばかりが高く量が少ない(これ重要)のでそこから更に城下町まで降りる事にした、そこでいい所にラーメン屋を見つけたので入る事に。

 

 

 「すまない、大人12人で予約無しなんだが席はあるか……て、どういう状態だこれは。」

 

 

 なんか店内がガヤガヤしてて窓ガラスは1枚割れてるし、席の一つには空の丼が山のように積まれてた。

 

 

 「まったくもう…あ!いらっしゃいませ!」

 

 

 「窓が割れてるが、この店で一体何があったんだ。」

 

 

 「聞いてくださいよ海兵さん!さっき子供3人に食い逃げされたんです!

 聞けばあの子達は食い逃げ常習犯だと言うし…まったくいい迷惑ですよ!」

 

 

 どうやらこの惨状は食い逃げの後だったようだ、此処4階なのに食い逃げ犯は窓から飛び降りたの?流石ワンピースの世界は頑丈な奴が多いネー。

 

 

 「そりゃ災難だったな…タイミングが悪かったようだ。店を変えるよ。」

 

 

 「いえいえ、直ぐに片付けますので少々お待ちください!

 店長、新規さま12名入ります〜!」

 

 

 んー元気な店員さんだね〜、サービス業者の鏡。

 基本的に海軍は世界政府直属の組織の為、国ごとに設置されている自警団や警備隊を押しのけてまで犯罪者を捕まえることは無い。

 

 「ミラ中将、犯人を捜索しなくて宜しいのですか?」

 

 

 「ほっとけ、そりゃこの国の警察の仕事だ。

 今私達は客なんだから座って昼飯を待っていよう。」

 

 

 「はあ…了解しました。」

 

 

 正義感強いネーロシナンテ君は、流石センゴクさんとこの秘蔵っ子。

 でもね、海賊絡みの被害や今日みたいに天竜人案件なら話は別だが基本自分の国で起きた犯罪は自国の警備隊が片をつけるのが筋だからここは客として振舞っとこ。な?

 

 

 因みに、食い逃げ犯が食べていたらしい跡の残った席には「たからばらい」と殴り書きしたメモが放ってあったよ。

 

 子供の癖になかなか豪胆な事するねえ

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 ドーン島には『フーシャ村』という小さな町がある。

 その村はゴア王国から島の反対側に位置し、人々で賑わう王国とは違い少数の村人達が暮らす静かな海沿いの村だ。

 そこにお使いを任された二人の来訪者がやって来ていた。ミラ直属のメイド、テリジアとイルミーナである。

 

 彼女達は差し当たり村唯一の酒場である『Partys Bar』で山賊達の情報を集める事にしたのだった。

 

 

 「じゃあテリジアさんとイルミーナちゃんはガープさんの手紙を届ける為に此処へ?」

 

 

 「左様でございますわ。

 この手紙をコルボ山に住むダダンという山賊へ届けて欲しい、と頼まれましたの。

 まったく、人使いの荒い中将ですわ…」

 

 

 「おれんじじゅーす、おかわりー」

 

 

 「はーいどうぞ。」

 

 

 「うまー」

 

 

 最初は突然の来訪者に少々訝しんでいた村の人々だったがテリジアがガープ中将の名を出し安心したのかこの酒場まで案内してもらい、マキノを紹介された。

 少ししたら彼女は村の者達には内緒で山賊達の下へ酒を届けに行くそうだ、それに2人も同行する事になった。

 

 

 「マキノ様、お1人で山賊の所まで行くつもりでしたの?

 それってかなり危険ですわよ?」

 

 

 「確かに悪い山賊もいるけど…ダダンさん達は悪い人じゃないから大丈夫よ。」

 

 

 少しだけ暗い顔をするマキノ、テリジアは知らないがつい先日フーシャ村は山賊達によって一悶着あったのだ。

 その場に居合わせた海賊達の手によって鎮圧されたが彼等がいなければ今頃どうなっていたか…

 

 

 

 「……うずうず」

 

 

 「あら?どうしたのイルミーナちゃん、おトイレ?」

 

 

 「ああ、久しぶりの大自然ですものね。

 お姉様からは手紙を届けろと仰せつかっただけですし、少しお外で遊んでいらっしゃいな。

 ちゃんと私のビブルカードを使って帰ってくるんですよ。」

 

 

 「うん…!ごちそーさまでした。」

 

 

 イルミーナは残っていたオレンジジュースを一気に飲み干すと酒場を駆け出しコルボ山の中へと走って行ってしまった。

 

 

 「イルミーナちゃん大丈夫なの?

 コルボ山の奥には危険な猛獣も彷徨いてるのに…」

 

 

 「ふふふ、ご心配痛み入ります。

 ですがたかが()()()()ならイルミたんに傷一つ付けることは出来ませんのでご安心下さいまし。

 こう見えて私とイルミたん、強いんですのよ?お姉様には到底敵いませんが。」

 

 

 「そうなんだ…

 テリジアさんは本当に〝お姉様〟の事が好きなのね。」

 

 

 「ええそれはもう、私の『運命の人』ですから♡」

 

 

 うへへへ…と想像以上に緩んだ顔をしながら笑うテリジア。

 フーシャ村は今日も平和である。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 エースside

 

 

 

 「ぷはー美味かったなーあのラーメン!」

 

 

 「だろ?次はあの2倍は食おうぜ。」

 

 

 「サボ、ルフィ、急げよ。

 ゴミ山は越えたけど最近の警備の奴らしつこいからさ。」

 

 

 ゴア王国と不確かな物の終着駅(グレイターミナル)を隔てる壁を越え、まんまと食い逃げした俺達はコルボ山を登り、隠れ家へと駆けていた。

 物売りに紛れて中心街へ侵入し、昼飯を()()()になってからお暇するのは最近の俺達の日常だ。

 でも今日の帰り道は何かが違った。

 なんだろう、妙に静かだ。いつもわらわらと湧き出てくる筈の猛獣達はすっかりなりを潜めている。

 

 

 「でもこんなに走ったらまた腹減っちまったな〜、熊探そうぜ!」

 

 

 「ドンだけ食うんだよルフィ!?」

 

 そんな事にも気づかないのかルフィとサボは呑気に笑っていた。

 コイツら危機感とかねえのか…

 

 「待てよ二人共、森の様子がおかしい。気を付けろ…」

 

 

 

 ガサリ、物音がしたそのとき。

 

 俺達の目の前に巨大な狼が飛び出してきた

 

 毛並みは綺麗な銀色で4本の脚には鎖が巻き付いている、向こうもこちらに気付いたのかその鋭い眼光に射止められ思わず足が竦んだ。

 コルボ山で過ごしてかなりの時間が経つがこんなヤツは見たことが無い、サボも動揺しているようだ。

 

 

 「な…なんだコイツ…」

 

 

 gruuuuu…

 

 

 低い唸り声…落ち着け、まだコイツは俺達を敵だと認識してないはずだ。

 〝野生の勘〟という奴だろうか、この狼はマズい。今の俺たちじゃ絶対に敵にしちゃいけないと本能が叫んでた。

 決して目を逸らすな、振り返って逃げ出せば必ず後ろから狙われる。

 猛獣達が妙に静かだったのはコイツが原因か…!

 

 「エース、エースどうする…?

 コイツはヤベェぞ(ボソボソ)」

 

 

 「ああ、絶対アイツから目ぇ逸らすなよ。

 アイツの方を向きながらゆっくり、下がるんだ。いいな…?」

 

 

 「ああ、分かっ…「おいエース、サボ!でっかい狼がいるぞ!晩メシは狼鍋にしようぜ!」ルフィ!?この馬鹿!!」

 

 危機感の無い愚弟が狼を指さしながら大声で叫んだ。ヤバイ!狼を刺激しちまう!

 

 先にコイツらだけでも逃がして…

 

 

『…わたしは食べてもおいしくないよ…』

 

 

 「「「!!!???」」」

 

 

 狼からすげぇ可愛い声が聞こえた

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 「へぇーおめえイルミーナって言うのか、俺はルフィ!宜しくな!」

 

 

 「「いや普通に挨拶してんじゃねえよ!!」」

 

 

 ゴム製の頭をサボと2人で叩く。

 目の前にはメイド服を着た少女が立っていた。

 この女の子、さっきまで狼だったヤツだ。ルフィと同じ悪魔の実の能力者らしい。

 動物系の能力者なのか、頭にはピコピコと震える耳と尻には尻尾が生えていた。

 

 「さっきは食うとか言って悪かったな!

 こいつらはエースとサボ、俺の兄ちゃん達だ。」

 

 

 「そうなんだ…あなたたち、何でこんなやまにいるの?けっこう危ないやまなのに。」

 

 

 「俺達はずっとこの山で過ごしてきたんだ、だから平気さ。オマエこそなんでコルボ山に?」

 

 なんの警戒もなくフツーに会話してるルフィにはちょっと尊敬しちまうな…

 

 「この山にすむ〝さんぞく〟にてがみを渡すようじいじに言われたの。」

 

 

 「山賊…?ダダンの事か?」

 

 

 「知ってるの?たしかそんななまえのひとだったとおもう。

 島にきたのはいいけどばしょが分からなくて…」

 

 

 どうやらイルミーナはダダンに手紙を渡す為にこの島へやって来たようだ。

 …じいじ?じいじって…誰だ?

 

 

 「よし分かった!俺達がダダンのトコまで案内してやるよ!エースもサボもいいよな?」

 

 

 「ああいいぜ、任せてくれ!」

 

 

 「ダダンに用があるヤツなんて珍しいな…」

 

 景気よく答えるルフィとサボにイルミーナは尻尾をぶんぶん振って喜んでいる、こいつ狼ってよか犬みたいだな。

 

 「ありがと…

 ……3人ともわたしを怖がらないんだね、わたしはばけものなのに…」

 

 

 「ん?悪魔の実の事か?

 んなこと全然気にしねえよ。

 俺だって悪魔の実の能力者だからな!」

 

 

 そう言って自分の頬をグイッと引っ張って見せるルフィ、全身ゴムなんて損しかしねえと思うんだけどな。

 自分は化け物だと言った時のイルミーナは暗い表情をしてた。

 他人とほんの少し違うだけ、ただそれだけで世間から疎まれてきたんだろう。俺と境遇が似てて少し気持ちが沈んでしまう。

 

 

 「まあこんなヤツもいるんだ、今更悪魔の実程度で驚きゃしねえさ。」

 

 

 「……うん、ありがと。

 ねえ、さんぞくのいえってここからとおい?」

 

 

 「んー、ここから四十分位かな。」

 

 

 「だったらわたしの背中にのって、五分でおくってあげる。」

 

 

 そう言ったイルミーナの身体がどんどん大きくなり、再び狼の姿になった。

 案内する代わりに俺達を乗せて走ってくれるらしい。

 

 「おー!いいのか!!」

 

 

 頷きイルミーナが屈むと大喜びでルフィが乗り込み、連られてサボと俺も乗り込んだ。

 すげえ、温かくてフワフワだ。

 

 

『じゃあとばすよ、しっかり捕まって…!!』

 

 

 ゴウッ!と風を切る音がしたと思ったら凄い勢いで景色が後ろに吹き飛んでく、でも揺れは殆ど感じなかった。猛スピードで山道を駆け抜けていく様子に俺達は大盛り上がりだ。

 

 「おおー!すげぇはえー!!!」

 

 

 「イルミーナお前凄いな!こんな事が出来るのか!」

 

 

『空もとんでみる?』

 

 

 「空ァ!?お前空飛べんのか?」

 

 

『ちょっとだけなら…ふりおとされないでね』

 

 

 更に急加速したイルミーナはそのまま側にあった大木を垂直に駆け上がり、真上に飛び上がった!

 

 「ひゃああああああ!高ェ!」

 

 

 俺もサボもルフィも、こんな高さから島を見るのは初めてだったから大興奮だ。見下ろせばゴミ山の向こうのゴア王国から、反対側のマキノ達がいるフーシャ村までよく見渡せる。

 まるで空気の足場を蹴るようにイルミーナはジグザグに空を闊歩してコルボ山を見下ろしつつ移動した。

 程なくして、ダダン達山賊の住む隠れ家が見える。

 

 「あ、アレだぞイルミーナ。ダダンの家だ!」

 

 

『ん、りょーかい』

 

 

 一瞬ふわりとした浮遊感が体を包み、家の側まで急降下する俺達。

 あっという間にダダンの家に着いてしまった。

 まだ興奮冷めやらぬままイルミーナから降りる。

 

 「すげえ、本当にあっという間に着いちまった…。ありがとなイルミーナ!」

 

 

 「ん」

 

 人間の姿に戻ったイルミーナは短く頷く。

 その時、隠れ家からドカドカと音がして扉が勢いよく開きダダンが飛び出してきた。

 

 

 「なんだなんだ騒がしいよガキ共……あ?

 なんだい1人増えてるじゃないか!

 まーたガープの奴がガキを送ってきたのか!?」

 

 

 「はじめまして、いるみぃなです。」

 

 

 イルミーナがぺこりとお辞儀をする姿を見て少したじろぐダダン、予想外の反応だったんだろうか。

 

 「お、おう…これはご丁寧に…

 ていうかなんだいアンタ、またガープの差し金かい!?」

 

 

 「ガープじぃじからてがみを〝だだん〟って人にわたすようにたのまれました。」

 

 

 ガープ!?あのクソジジイがイルミーナをここへ連れて来たのか!?

 ジジイの名前を聞いて思わず表情が引き攣る、ルフィ、サボも同様だ。あのジジイは来る度に俺達に物理的な恐怖を植え付けてきたんだ、無理もない。

 

 

 「でもてがみは一緒にきたもうひとりがもってて…ちょっと待ってほしいです。」

 

 

 「アンタは手紙を持ってないんだね?

 はぁ〜…アイツからの手紙なんてどうせろくなモンじゃないだろまったく…」

 

 

 「じゃあもう1回背中に乗せてくれよイルミーナ、また空飛んでくれ!」

 

 

 「いいなそれ、今度はもっと山奥まで行こうぜ!」

 

 

 どうやらイルミーナには付き添いがもう1人いて、そいつがダダンに渡す手紙を持ってるようだ。

 時間が余っているようだったのでルフィとサボはまた背中に乗せて走るようにせがんでる。晩メシ用の食材も調達したかったし丁度いい、結局また俺達はイルミーナの背中に乗ってコルボ山を走り回って帰ってきたのは日が暮れてからだった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 時刻は夕刻、もうだいぶ日も傾いて街の様子も人が疎らになってきた頃。

 難航していた警備の打ち合わせもなんとかまとまって、部下達とレム、アンを連れて港に停泊した軍艦に帰ってきた。

 それから自室で私服に着替えて、もう一度街へと赴き、待ち合わせの場所へ行く。

 

 少し薄暗い街の路地裏、そこの椅子に腰掛けていたバーソロミュー・くまと落ち合った。

 

 「…待っていた」

 

 

 「よう、約束を果たしに来た。

 こんな暗がりに呼び出して…私を襲うつもりか?コワいなー。」

 

 

 「少し実力のある者ならお前を襲おうなどと馬鹿な考えは起こさない。

 付いてこい、〝彼等〟の下へ案内する。」

 

 

 くまに導かれるまま路地裏を行く、暫く歩くうちに視界が開けてゴミのキツイ臭いと共に外の光が見えだした。

 ここは街の外だ。あの馬鹿でかい城門以外にゴミ山まで行けるぬけ道があったとは…

 その向こうには艦首に龍の巻きついた黒塗りの帆船が停泊している、そして黒のローブで顔を隠した二人の姿も。

 

 

 「()()()()、望み通り彼女を連れてきた。」

 

 

 「ああ、御苦労だったなくま。

 ……すまない」

 

 

 「いや、いい。ミュゼの願いでもある。俺は先に船へ戻っているぞ。」

 

 

 意味深なやり取りをした後、くまは黒塗りの船へ乗り込んでいった。

 

 

 「お初にお目にかかる、海軍中将総督ミラ…いや、〝祖龍〟と言った方が正しいか。」

 

 

 「…ほう、我が真名を知るか。名を明かせ人間。」

 

 

 どうやら祖龍扱いされると謎のスイッチ入るらしい、喋り方に若干祖龍補正(フィルター)が…

 パサリ…とフードを外し、男の顔が顕になる。顔の半分に赤い刺青が入ったごつい顔の男だ。

 

 

 「私はモンキー・D・ドラゴン。

 今はまだ無名の革命家だ…」

 

 

 モンキー・D・ドラゴン…?ガープ爺さんと同じ性か。

 てことはこの人主人公の家系やん!

 

 

 「そして私がっ!真祖様の忠実なる下僕っ!

 ミュゼリコルデと申しますっ!

 つきましては真祖様、靴を舐めても宜しいですか!?いえ失礼しました、脚を舐めても宜しいですか!!宜しいですね!?」

 

 

 ばあっとフードを振り払い、ヤバめの笑顔でヤバイ事を口走ってるこの女性は…

 

 

 「…テリジア?」

 

 

 思わず口走ってしまった。

 

 白金色の長髪にツリ目で…あ、瞳の色が違うか。紫ではなく金色の瞳をしている。

 俺の呟きにテリジアそっくりの女性は少しびっくりしていたようだった。

 

 

 「あれ…?何故真祖様が私の愛しい孫娘の事を…」

 

 それに名前もミュゼリコルデ…女ヶ島で豆バーさんが言ってた奴だ。

 

 「テリジアはウチのメイドだ、いろんな意味でどうしようもない居候だが…親譲りだったみたいだな。」

 

 妙な喘ぎ声を上げながら体をくねくねさせている姿は孫そっくりである。

 

 「まあ本当ですか!?テリジアちゃんったら私が一度国に帰った時には放蕩娘になっているって聞いたのに…真祖様の下に仕えているのですね!?

 流石私の目に入れても痛くない孫娘の一人!手が早い!

 ところで真祖様が履いているブラジャーかパンツ下さい食べるので!」

 

 

 「いや、ちょっと落ち着け。あとブラもパンツもやらん。

 お前、テリジアが孫にしても歳が近過ぎやしないか?」

 

 

 「ほえ?ああ、私悪魔の実の能力者ですので。見た目と実年齢かなり違うんですよ〜。

 ヒトヒトの実モデル〝冥雷鬼(ドラキュリア)〟といいまして、人間の血流とか操作出来たり生体電気なんかも操れたりしますよ。副作用で食べた瞬間から見た目が変わらなくなって、日中外を歩く時は日傘が必要になっちゃいますけどね〜。

 それより真祖様、こちらのタオルに汗か唾液を染み込ませて下さいませ!

 その後回収して今夜のオカズにしますので!あ''あ''あ''ぁぁ真祖様のスメルの残ったフレーバータオルうぅぅ…」

 

 

 「ええ…」

 

 片手に持つ日傘をくるくる回しながら見悶えるミュゼリコルデに頭を抱えるドラゴン君、相当扱いに困っているようだ。

 …気持ちは分かる。

 この女はテリジアとはまた違うベクトルに吹っ切れている変態だ…

 

 「ああ…すまない、ミュゼはこういう奴なんだ。君の話をすると見境無くてな…」

 

 

 「……お前も大変だな…」

 

 

 ドラゴン君、苦労人やね…

 

 

 ていうか俺氏、革命軍とコンタクトとっちゃったよ。くまの奴革命軍だったのか!

 知らなかったあああ!

 

 何故海軍の俺にバラす!?お前の立場悪くするだけじゃねえの!?

 それを推してまで俺とこの男(ついでに変態)を会わせたかったって事か!?

 

 俺に面倒なこと押し付けるなよおおおおおおッッッ!!!(只今ミラは祖龍フィルターのお陰で真顔です)

 

 

 「海兵と革命家…本来なら我々が出会うことは殺し合いの場以外では決して有り得なかった筈だ、だがそれでも私と君を引き合わせたのはひとえにくまの存在が大きい。

 そしてミュゼがいなければ私は君の存在を知ることはなかった。

 世界の答えを知る者、祖なる龍ミラルーツ。私は君に聞かなければならない事がある…」

 

 

 隣で発情した変態が悶えていてもあくまでシリアスを通す気かドラゴン君…健気よな…

 

 

 「世界の始まりと終わりを創る龍よ、君はこの世界に何を思う。

 何故君はそちら側なんだ…!」

 

 

 そちら…側?海軍の事か?

 

 いつだか五老星達が言っていた、海賊達は自分から世界政府を襲うようなことはしないが今世界の水面下で世界政府を直接転覆させようとしている組織があると。

 その名は〝革命軍〟、王政を狂わせ反乱を起こし、 多くの命を争わせる戦火の火種。まだ規模は小さいが五老星達政府の諜報員はその存在にいち早く気付き、世界会議にて各国に注意を促す予定だと聞いた。

 古今東西、たとえ世界が変わっても人という存在が集まる限り〝集団〟ができてやがてそれは成長し〝国〟になる。人間の様々な思惑が複雑に絡み合い、中には王や組織に不満を持つものだって生まれるだろう。そんな彼等の我慢が限界に達した時大なり小なり〝いざこざ〟は起こるのだ。

前世でも結構起こった事だしそういうものだと思って飲み込むのが手っ取り早いのかも知れんケドね。

 

 「私は迷っていた、この問いを海軍に所属する君に投げかけていいものかどうか…だがあえて言おう。

 祖なる龍よ、私は世界政府を討ち滅ぼす。

 世界のバランスを崩し一度リセットするつもりでいる、それは正しいのか?間違っているのか?

 今一度龍としての君の意見を聞かせて欲しい!」

 

 

…あー、ドラゴン君は自分のやろうとしてる事が本当に正しい事なのか今更迷っちゃってるんだ。

いざやろうとした手前、踏ん切りがつかない時とかあるもんねーあるある。

 しばしの沈黙、少しして

 

 

 

 「……なあ革命家、お前は世界を見たか?」

 

 

 「ああ…この目でしかと見てきた。

 圧政や重税に苦しむ国民達、果ては奴隷制度。人攫いを政府が黙認している現状に俺はこれ以上我慢ならない…ッ!

 だからこれから世界を変える。1歩ずつでいい、これから同志達を募り密かに、綿密に準備を整えいくつもりだ。」

 

 

 「沢山死ぬぞ、お前が死地に送るんだ。勝てるかどうかも知れん戦いに多くの犠牲を払う事になる。」

 

 

 「……覚悟の上だ。」

 

 

 「…そうか。で?

 そんな世界規模で危険な男の話を聞いて海軍である私が貴様を逃がすとでも思ったか?」

 

 

 バチリと紅雷が俺の右手に走り、一瞬でドラゴン君の前まで近づいてその首筋に右手が触れる寸前まで近づけた。

 推定八億Vの超超高電圧、触れればたとえ能力者だろうが一瞬で感電死、あと数ミリでもこの手が動いて首筋に触れれば息するよりも早くこのちっぽけなニンゲンはこの世を去る。

 

 

 「……勿論だ、今日はこれを承知で君の下まで来た。」

 

 

 対するドラゴン君は表情を崩さず、じっと至近距離から俺の目を見つめてくる。

 ほんの数秒、この時間がとても長く感じた。

 

 

 「……………やーめたやめた、くだらん。

 この上なく下らん、この手の問答は嫌いなんだよ私は。」

 

 

 スッと手を離し、ひらひら手を振る俺にドラゴンは少し動揺してるようだった。

 

 ………ドッキリ大成功?

 

 

 「答えるも何も、ドラゴン。

 お前の中で答えが出たから革命などと馬鹿げた思想を実行しようとしてるんだろう?

 私に後押しして欲しかったか?馬鹿め。そんなものはお前が勝手に決めるがいい。

 世界を敵に回す?結構。

 どんな犠牲も厭わない?大変結構。

 世界のバランスを崩す?おおいにやってくれ。

 お前の意志はお前だけのモノ、全てはお前の自由、それがヒトというものだ。

 なら私の答えは一つ、『好きにしろ、私も好きにする』だ。」

 

 この世界の人間は皆奴隷も圧政もこれが自分達の〝常識〟なんだとばかりに飲み込んでいる。だがこの男はそれに大きく異を唱え、自分から世界を変えてやろうと考えたのだ。

 半分龍である俺にはその心意気が超美しく見えるよ。まるで伝説に挑むハンター達のようにキラキラと輝く黄金の精神だ(作品違い)。

 権力に歪みきってる連中と話してるよりよっぽどいいね。

 政府がなんだ、世界がなんだ、男ならドーンとやってやれだろ?こんな吹っ飛んだ思想してるあたりが流石あの爺さんの息子よね。

 

 「…ありがとう。」

 

 

 「だが、覚悟を決めたなら…もう辞めれんぞ?お前の理想の為に何百万人が死のうとも、地に這いつくばって泥を啜る恥辱に塗れてもだ。

 生半可な覚悟など容易に打ち砕かれると知れ、それ程に世界政府は強大だ。」

 

 

聞けば800年続く巨大組織らしいからね世界政府。

 要は止まるんじゃねえぞ…と伝えたかった訳だが、この世界じゃ誰もこのネタ分かんねえよな。

 

 

 「全てはお前の自由だ、好きにするがいい。

 ……これ海兵としてヤバイ発言だよな…まあいいさ、これも私の〝自由〟だ。」

 

 

 「そうか、なら私も「ブハアアアアッもう限界!シリアスも私の大事な部分も限界です!真祖様カッコよすぎる!神々しい!濡れる!抱いて!?私の操は貴方様に捧げますうぅぅぅ!!」…ハァ〜〜……ミュゼ…」

 

 

 突然鼻血を吹き出しながら目に爛々とハートマークを映し今にも抱き着こうとしてくるミュゼの首根っこを引っ掴んで止めるドラゴンさん、苦労人(確信)。

 

 「時代を護る者と時代を壊す者…両者共々に面白い。

 やはり人はこうでなくちゃあ。」

 

 

 均衡を保つ世界政府(五老星)

 

 均衡を崩す革命家(ドラゴン)

 

 

 なるほど面白くなってきたなあ。

 原作が始まれば世界は一気に動き出すねこりゃ、オラワクワクすっぞ!

 

 

 ぷるぷるぷるぷる…ぷるぷるぷるぷる…

 

 

 おっと、懐に入れた子電伝虫が鳴り出した、失礼。

 

 

 「出てもいいか?」

 

 

 「構わない」

 

 

 がちゃ

 

 

 「ああ…私だ。

 …………そうか、予定通りガープ中将の手紙を渡したか。ご苦労……何?手紙の内容が…?

 …なるほど、なら滞在を許す。イルミーナの世話もお前に任せた。

 私も仕事が終わるまでゴア王国に居ないといけないからな、それまで世話にならせてもらえ……じゃあ切るぞ。」

 

 

 通信を切る、どうやら俺氏の可愛いメイド達は無事おつかいを終えたようだ。

 ただガープ爺さんの渡した手紙の内容がアレだったので暫く向こうでご厄介になるらしい。山賊だとか言ってたがガープ中将の知り合いなら問題無いだろ、あの爺さんはいろんな意味でとんでもない人だが人を見る目は一流だ。

 

 

 「話は終わりかドラゴン、私もそろそろ戻らないと部下達に怪しまれるのでな。」

 

 

 「ふふ、貴重な時間を割いて悪かった。

 我々も出航しよう、また何処かで会うかもしれんが…その時は敵でないことを祈るよ。」

 

 

 「それは私が海軍である限り不可能じゃないか?」

 

 

 「だな、さらばだ祖龍ミラルーツ。」

 

 

 「えええもう帰るのぉ〜?もうちょっとだけ真祖様の香りを…」

 

 

 「いいから行くぞ。」

 

 

 うだうだ言ってる変態を引き摺りながらドラゴン君は船へ戻って行った、それを見送った後船縁から俺を眺めるくまに気付く。

 あいつ…次会ったら色々仕事押し付けてやるからな……

 

 

 とういわけでドラゴン君とのファーストコンタクトは終了し、軍艦に戻った。

 

 

 主人公のパパに会えたのはびっくりだったけど、なかなか面白い奴だったなー。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 彼女の姿が見えなくなってから、肺に溜まっていた息を吐く。

 どっと汗が額から滲み出て肩で息をしながら呼吸を整えていた。まさかこれ程のプレッシャーとは…

 気まぐれでこの船に乗船したミュゼリコルデが話してくれた『龍』の存在、なかば冗談だと諦めていたが七武海に参入したくまからそれらしい人物がいると情報を得た時は流石に驚いた。

 ()()は美しい女性の姿をし海軍に潜んでいたのだ。

 正直賭けだった、彼女が海軍の思想に染まりきっていれば俺は今ごろあの世に送られていたことだろう。

 …いや、彼女は俺が賭けに出ている事を承知の上であそこまで俺を試したのだ。

 龍とは自由、何者にも縛られず、何者にも囚われず、世界の全てを傍観し時に創る者。

 

 これも祖龍の導きなのだ、なら俺は…

 

 

 世界を変える(ドラゴン)になろう

 

 

 もう迷いはない、この意志は固く何者にも砕けない。そう心に決め、俺は船の状況を確認する為甲板へと上がった。

 

 

 「あらドラゴン、もう『考え事』は終わっチャブルね?」

 

 

 「ああ、もう僅かな迷いも消えたよ。

 世界を変えるぞイワ。」

 

 

 「ン~フフフフ!その顔、いい男になったわねドラゴン。

 ミュゼちゃんの人生相談は効果てきめんみたい。」

 

 

 「ああ、ミュゼにも礼を言わないとな。

 アイツは今何処にいる?」

 

 

 「多分船内の自室でしょうけど…今は入らない方がベターよ、憧れの祖龍サマに会えて多分相当ハッスルしてるわ。隣部屋のくまが呆れて甲板まで出てきた位だもの。」

 

 

 「こうなる事はある程度予想していたが……喘ぎ声を延々聞かされるこちらの身にもなって欲しいものだ……」

 

 

 「今回ばかりは多めに見てやれくま。

 ……いつもの事だが、ナニをやっとるんだミュゼは…」

 

 

 取り敢えずミュゼの部屋の周りには近付かないよう全員に忠告しておいた。







変態が一人増えた。

俺氏「原作を感じるな〜スタート楽しみだな〜」

ドラゴン「龍から直々にお墨付きを貰えた…もう何も怖くない!」

五老星に引き続き熱い勘違い被害者2人目


ミュゼのオリジナル悪魔の実は吸血鬼+冥雷竜ドラギュロスのイメージで考えました。他作品様の悪魔の実と被らない様に必死で考えた結果とんでもない物を作ってしまった…
内容は血流操作とドラギュロス特有の黒い雷を出せます、チートです。出力はミラに遠く及びませんが。
龍はこれ以上出ませんが竜の力に酷似した悪魔の実はちょくちょく登場します、前話のガノス(故人)も本当は『ゲルゲルの実』というゼリー人間で仙異種ガノトトスをモチーフにした能力者でした。相手が相手だったので描写する暇なく消滅しましたが…

多くのSSで他作者様が使ういわばワンピースのターニングポイント、ドーン島ルフィ幼少期にやって来た訳ですが原作勢と遭遇したのはイルミーナ。ミラは未来の革命軍と開示してとうとう原作が少しずつ絡んできます。
会話がガバったり戦闘描写下手くそなのは許してや…許してや…


言うタイミングを逸していましたが、6000を超えるお気に入りに平均7の高評価、本当にありがとうございます。
読者の方からミラの絵まで頂いて…獣は幸せ者でございます。
仕事に忙殺される日々、これからも少しずつではありますが失踪せぬようコツコツ執筆していきますのでお付き合い頂ければ幸いです。



◆原作キャラ、オリキャラのミラに対する感情一覧

イルミーナ…おかあさん(おとうさん)
テリジア…ご主人様、踏んで欲しい
レム…主君、心境は盟友に近い
アン…弱肉強食、敗者は勝者に従うのみ。次は負けねぇ
ステラ…命の恩人、家事が苦手?しょうがないわね…
テゾーロ…恋人に合わせてくれた大恩人、いつか恩返ししたいぜ
クルス…絶対強者、本能で勝てないと悟り従属、優しいご主人様
五老星…良好な関係を築いていたい
ガープ…娘同然、ミラはワシが育てた!
センゴク…龍という事を除いても信頼できる部下
ゼファー…妻と息子が世話になってる、いいヤツだ。
おつる…馬鹿どもと違って真面目だから助かるね。
クザン…イイ身体してんだよなあ、手ぇ出したら消されそう。(いろんな奴に)
ボルサリーノ…可愛い妹が出来た気分だよォ〜
サカズキ…奴の正義についちゃあちと疑問が残るが…嫌いじゃ無いわい
ガスパーデ…いつか超えるべき目標、憧れ(本人の前ではとても言えない)
スパンダム…無茶苦茶な師匠、人として尊敬している
ゾルダン…崇拝
ロシナンテ…不思議な人だ
カイドウ…ミラはオレの嫁!結婚してくれ!
ミホーク…強き者よ…俺もまだまだだな
クロコダイル…白蛇を呼ばれちゃ堪らねえ、今は大人しくしておこう
ハンコック…アレは怒らせたら絶対ダメな奴じゃ…
くま…あれだけ暴れてまだ人だと誤魔化しているつもりか…
ドラゴン…迷いは絶たれた、いざ革命!←New!!
ミュゼリコルデ…発情//←New!!


次回、ドーン島続き

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