大海原の祖なる龍   作:残骸の獣

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ベリークルシミマス、約1ヶ月ぶりの獣ですよ。ハイ。

月更新になって申し訳ございません!

なんかもー年末一色でね、クリスマスなんて大人には無いんじゃよ…


えー32話何ですが、なんと字数が2万近くあります。
非常に長いです、読みづらかったらごめんなさい。仕事しながら繋げてたら分ける場所を見失った…
というか下書きせずにそのままハーメルンに下書き保存してたから分割なんてできねえ…




32 アレンジエピソード・オブ・ドーン

 「……はい、おわり」

 

 

 「ぶへぇ!痛ってェェェッ!?」

 

 

 わたしが振り抜いた鉄パイプがるふぃのお腹にあたって地面を転がった。そのまま木に激突して頭にたんこぶができてるみたい。

 

 みらのお仕事でわたしとてりじあは〝だだん〟という山賊の所まで手紙を届けにやって来た。

 そこにはるふぃ、えーす、さぼという3人の子供が住んでいて色々あって仲良くなった。

 手紙の送り主、ガープじぃじは孫のるふぃを強い海兵さんにする為にわたしと会わせたみたい。手紙にはそんな感じの内容が書いてあったとてりじあが教えてくれた。

 じぃじはいつも大事な事を教えてくれない、『ほう、れん、そー』は大事だってみら言ってたのに…

 てりじあが連絡をとって滞在の許可も貰ったのでしばらくてりじあと二人でふもとの〝ふーしゃむら〟という所の宿に泊まらせて貰うことになってから何日か経った。

 

 

 「あーあー情けねぇ」

 

 

 「これでルフィは50戦負け越しだな」

 

 

 「…でも、前よりよくうごける様になってるよ?

 それに負けたかずならえーすもさぼも同じじゃ…」

 

 

 「「ぬぐっ…!?」」

 

 

 少し唸って頭を抱えるえーすとさぼ、ここ何日かはずっとこの調子でわたしに勝負を挑んでくる。でもるふぃ達はまだ6歳とかだし、わたしが負けることは無かった。わたしお姉さんだし、むっふー。

 それにいつもやってるみらとの遊びに比べたら凄くやさしい。ベリーイージーもーど。

 

 

 「くっそおおお!俺ゴムなのになんで痛ぇんだ!?」

 

 

 「……きあい?」

 

 

 「「「気合い!?」」」

 

 

 正直〝はき〟は私にもよく分からない。みらと一緒に「えいー!」とか「とぉー!」とか叫びながら打ち合いして(遊んで)いたら知らないうちにできたから…

 

 

 「気合いかぁー、じいちゃんのゲンコツもそれなのかな。

 よしイルミーナ、もう一回勝負だ!」

 

 

 「だめ、ひとり一日3戦までっててりじあに言われたから。きょうはもう終わりにしよ?」

 

 

 「ええ〜もう一回だけやろうぜー?」

 

 

 「やだ」

 

 

 「我が儘なヤツだなルフィ、諦めろ。」

 

 

 「そーそー、悔しいけど今の俺達じゃ3人がかりでも倒せないしな。」

 

 

 3人で野生の熊を仕留められるなら充分強いと思うけど…

 

 

 「イルミたんとその他3名、お昼が出来ましたわよ。隠れ家に戻っていらっしゃいな。」

 

 

 てりじあの声が聞こえた、お昼ご飯の時間!

 ごはん!ごはん!

 

 

 「やべ!モタモタしてるとテリジアの料理ダダン達に全部食われちまう!」

 

 

 「走れ走れ!ルフィボサッとすんな!」

 

 

 「そりゃマズイ!急げ~!」

 

 

 「…おさき」

 

 

 私だけ『そる』を使って一足先にてりじあの所まで突っ走る、こういうとき『ろくしき』は便利だ。

 

 

 「あっ、イルミーナずりぃ!

 1人だけ抜け駆けしやがった!」

 

 

 後ろでえーすが何か言ってるけどきこえなーい。

 

 

 

 

 最近、あたらしいお友達ができました

 

 

 ◆

 

 

 

 「うめえ〜!」

 

 「いや〜テリジアちゃんのお陰で食卓が彩るぜー!」

 

 「エース、その肉は俺のもんだ!」

 

 「いーや、俺が先だね!」

 

 「みっともないから止めなクソガキ共ォ!」

 

 

 山賊の隠れ家…と言えば聞こえはいいですが、薄汚いボロ屋ですわね…

 お姉様からイルミたんを任されはや数日、ガープ中将の手紙による頼み事に従ってコルボ山に通いつめ、こうして山賊達に餌を与えている訳ですが、本当に品のない方々ですわ!

 お風呂には入らない!箸の使い方は間違っている!服の替えも無い!なんて不衛生、不摂生な集団なのでしょう、とても同じ人類とは思えません!あっでもお姉様の汗の染み込んだ下着なら私……ふひっ//

 

 

 「おーいテリジアおかわりおかわり!」

 

 

 「歳上には敬語を使いなさいと何度言わせる気ですのガキンチョ!器を貸しなさい!」

 

 

 ガープ中将に頼まれたとはいえ、あんなガキンチョ共とイルミたんを遊ばせるなんて…悪い言葉を覚えたりしないか心配で心配で夜も眠れません。イルミたんは楽しそうにしているようなので今の所問題なさそうですが。

 環境のせいでもありますがあの子には同年代のお友達が少ないですから…ジェイク君位しかいないんじゃないかしら。

 

 

 「済まないね嬢ちゃん、アタシ達の分まで毎回作って貰っちゃって。」

 

 

 「お姉様のご命令ですもの、もののついでですわ。お口に合えば幸いです。」

 

 

 「山賊に食わせるにしちゃ上等すぎる料理さ、ありがとねェ。」

 

 

 山賊の首領、ダダンという女だけは一応最低限のマナーを弁えている様ですが…もっと部下の躾くらいしっかりなさいな。

 

 

 「イルミーナ、食い終わったら不確かな物の終着駅まで乗せてってくれよ!」

 

 

 「やだ、あそこくさいから…」

 

 

 「イルミたんを変な場所に連れていこうとするんじゃありませんわよ。

 まったくもう…」

 

 

 この悪ガキ三人組はイルミたんを気に入ってしまったのか油断するとすーぐ連れ出そうとします。

 

 

 「油断もスキもありませんわ…」

 

 はぁ〜、思わず深いため息が出てしまいます。良く言えば自由奔放、悪く言えば制御不能な年頃の子供3人は何しでかすか予測不能で、ダダンの苦労が少しだけわかる気がしますわ…

 「そうかいアンタも私の苦労が分かってくれるかい…」

 こ、心を読まないで下さいまし!

 

 

 ………

 

 

 「よし、お皿洗いは終わりましたわね…お手伝いできて偉いですわねイルミたん。」ナデナデ

 

 

 「ん…」

 

 

 「さあガキンチョ共!ガープ中将から仰せつかったとおり、今日こそお勉強の時間ですわよって居なあああああいっ!?」

 

 

 「まーまーまー、落ち着いてくれお嬢ちゃん。ルフィ達、俺達が目を離した隙に中間の森へ逃げちまった。」

 

 

 「面目二ー…」

 

 

 全く役に立ちませんわねこの見張り!

 

 

 「毎度毎度…もう許しませんわ、イルミたん行きますわよ!」

 

 

 「ん」

 

 

 バァンと勢いよく扉を開け外に出た私は狼化したイルミたんに腰掛けて森の中へと突入しました。

 どうやらお仕置きが必要みたいですわねぇ(暗黒微笑)

 

 

 

 ーー10分後ーー

 

 

 

 「「「逃げてスンマセンでした…」」」

 

 

 頭に大きなコブを一つずつ付けたズッコケ3人組を部屋に正座させます。

 予めドグラに『秘密基地』の場所を教えて貰っておいて幸いしましたわ。

 

 

 「貴方達の秘密基地を壊さないよう配慮しただけでも有難く思いなさい。」

 

 

 「くっそ〜テリジアの鬼ババア(ゴスッッ)め''ッッッ

 ーーーッ!?ーッッッ!!お''お''お''お''お''お''…」

 

 誰がババアですか誰が!

 

 

 「い…嫌だ!俺は勉強なんてしたくねえ!」

 

 この期に及んでまだ言いますか…

 このサボという名前のガキンチョは頑なに勉強したがりません、何故なのでしょう。聞けばいつの間にか増えてた孤児?らしいのですが…

 

 

 「子供が勉強嫌いなのは承知していますが…貴方は特にですわね。まるで今まで嫌と言うほど勉強させられていたみたいですわ。」

 

 

 「うっ!?そ…そんな事ねえよ…」

 

 

 「…はぁ、いいですかガキンチョ共。

 その辺の貴族達の様なお馬鹿な思想に染まるまで勉強しろとは言いませんが、せめて自分が損をしない程度には学力を身につけておきなさい。後々貴方達の役に立ちます。」

 

 特に数字に強い子はいいですわね。

 私は勉強の必要性など、あくまで生きて行くのに困らないレベルで構わないと思っています。このご時世、力の無いものは虐げられる大海賊時代ではありますが、弱くても頭が回れば身を助けるはず。

但し勉強は必要な事ですが過ぎれば逆に融通の利かないお馬鹿さんになることもありますし、必要最低限で充分ですわ。

 

 「…貴族みたいって、テリジアは違うのかよ。」

 

 

 「私も〝元〟貴族ですので、多少なりとも連中の言い分も汲みます。但し、損得も分からない馬鹿になるのはいけませんが、無駄に知識と権力をひけらかすのはもっといけません。

 真の賢者は有事の際にこそその知識を揮うべきですわ。

 そ・れ・に、力も強くて、頭も良ければ真の意味で〝無敵〟の男になる事だってできますのよ?殿方なら勉強の一つや二つ程出来ないと勿体無いですわ。」

 

 

 「ムテキー!?ホントかよテリジアーッ!?」

 

 

 「えーホントですわホーント、ワタクシウソツカナイ。」

 

 

 「よしじゃあやろう!ムテキングだムテキング!」

 

 

 意味不明な単語を叫びながら無邪気に目を輝かせるルフィ。

 ふっ、チョロい…

 

 

 「ルフィ乗せられてんじゃねェよ、コイツはそ〜言って俺達に勉強させたいだけだ。」

 

 

 「え〜、だってムテキングだぞエースゥ!」

 

 

 「だからなんだその間抜けな称号!?」

 

 

 「あらエース、貴方はいいんですの?」

 

 

 「へっ、生憎俺は訳の分からん称号に騙されたりは…」

 

 

 「あらそう。弟のルフィが出来るのに、()()()()()出来ないんですの…へぇ〜、ほぉ〜、ふぅ〜ん…」

 

 

 「…待てコラなんだその目は、言いたいことがあるなら言えよ!」

 

 

 「…肝っ玉の小さい兄ですわね(ボソッ)」

 

 

 「(カッチーン)ようし分かった問題出してみろ全問正解してやルァァッッ!」

 

 チョロ過ぎて将来が心配になってきますわねこの兄弟!

 さて、残るはサボだけですが…

 彼は少し考え、納得したように頷くと顔を上げました。

 

 「…分かった、やってやる。

 どのくらいまで勉強すればいい?」

 

 

 「そうですわねぇ…簡単な加減乗除と最低限のマナーがあれば生きていくには困りませんわ。

 それに貴方がたは(ガープ中将曰く)海兵になるのでしょう?」

 

 

 「嫌だ!俺は海賊王になる男だ!

 海兵なんかならねえ!」

 

 

 横からルフィが喚いていますが一々気にしてられません

 

 

 「はいはい、分かりましたからテキストを開きなさい。

 このページを終えたら、後は外で遊ぶなり街へ行くなり好きにしてもいいですわよ。」

 

 

 「「「本当か!?」」」

 

 

 「だ・か・ら…敬語を使いなさいと何度も言っているでしょッ!!」ゴンッ×3

 

 

 たんこぶが綺麗に一つずつ増えました。

 

 

 問題を少し解かせた結果、ルフィとエースは予想通りの結果に。しかしサボの成績が思った以上に良いようです。

 私の思う〝必要最低限〟のラインは軽々越えていますし、普通の勉強では教わらない踏み込んだ部分にまで…あの子、本当に孤児ですの?

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

  【ゴア王国港、ミラの軍艦】

 

 

 「貴族の子供が行方不明、ねえ…」

 

 

 国の衛兵隊からの協力願いを渡された中にあった項目の一つを眺めながらボヤく。

 ここ数日、日毎に話し合う為に王宮へ向かったり、何故か衛兵長と二人きりの個室で会議したり、特にいつもと変わらず。

 王都から送られてくる情報も些細なことばかりだった。

 貴族の飼っていたペットが逃げたとか

 端街のヤンキーどもの暴行騒ぎとか

 子供が食い逃げとか

 街は多少騒ぎはすれど平和そのものだ。そんな中報告に入っていたのがこれ。

 

 とある貴族の子供が数ヶ月前から行方不明らしい、名前はサボという。

 その親らしき男性が昼間港までやって来て話を聞いた、が…あまり良い印象ではなかった、親のね?

 なんかゴチャゴチャ言ってた気がするが殆ど覚えてない、でも出来損ないの息子がどうとか将来が期待出来ないから養子を入れたとか、自分の子を出世の道具かなにかと勘違いしてるんじゃ無いだろうか。オマケに「私の養子の許嫁になってくれ」なんて言うもんだから我慢出来なくなったゾルダンが船から追い出した。

 

 ゾルやんまじグッジョブb

 

 貴族ってのは自分勝手だから苦手だね〜、なんでも思った通り事が進むと勘違いしてやんの。一周回って可哀想になってくるな。

 ブルージャム海賊団も姿を現さないし、もうこの海域にはいないんじゃないか?もう数日は粘ってみるけどさ。

 

………ここは偵察部隊の出番かな?

 

 「ゾルダン、ロシナンテ。」

 

 

 「はい、ゾルダンは此処に…」

 

 

 「何でしょうか。」

 

 

 「お前達の能力を見込んで少し頼みがある。……少し、壁の向こうへ行ってこい。」

 

 

 ………2人を偵察に出して数日、街の警備隊がサボを不確かな物の終着駅で発見し確保したとの報告が俺氏の所に上がった。ご丁寧にあの父親も一緒で、サボ本人はかなり抵抗していたらしい。事情聴取の結果、ゴミ山の連中とつるんでいたそうだ。

 

 警備兵から伝わってきた報告はこれで終わりだが、はたして…?

 

 

 「しっかしこの国は臭ぇよなあ。」

 

 

 「ゴミを捨てずに山積みにしてるからな、確かに人間よりも鼻が利く私達には…」

 

 

 「違えよ姉御。この前来たオッサンもそうだったケド、この街は多分()()()()()()()()()。欲望がドロドロに混じったヘドロみてぇな臭いさ。」

 

 

 「……この国は要らない者を視界から外して捨てた気になっている。汚いものから目を逸らし、臭いものに蓋をしてな。

 それを完璧だと信じ悦に浸る国王も、当たり前だと享受する国民も実に人間らしい。

 これも人間のあり方だよアン、誰もが清く正しい聖人でいられるなら海軍なんて出来ないだろ?」

 

 

 「じゃあこの悪臭の素は放っとくのか?流石にいつまでもこんな臭いを嗅がされるのは不快なんだが。」

 

 

 「まあ落ち着けよ、力でねじ伏せるだけならアン1人でも指先一つでこの国を焦土に変えるくらい訳ないだろうが…我々が所属しているのは海軍だからな。」

 

 

 「回りくどいやり方すんだな。

 いっそ全部燃やしちまった方が手っ取り早いだろ。」

 

 

 「海軍の仕事は海賊を裁くこと、そして必要ならば海賊に関わる者を排除する事……人間には人間の筋の通し方というものがある。

 なあに、簡単な話だ。

 例え()()()()()()()()()()()()()海賊と関わりを持ったなら容赦はしない。

 ……もし、近海を騒がせている海賊団が偶然使われていないゴミ山の港をアジトにしていて…あまつさえゴア王国の中の貴族、または王族の誰かが海賊達と裏で繋がっていたら…その時は〝正義(われわれ)〟の出番じゃあないかな?」ニッコリ

 

 

 「うーわ悪っりいカオしてるな。」

 

 

 「……不可解、ロシナンテをゾルダンと同行させたのは考えが?」

 

 

 「ん〜?あいつはウチの部隊じゃ珍しく正義感強いからなあ、この国の悪臭をいち早く嗅ぎとったんだろ。

 だからちょっとした偵察にな…?

 心配するな。ゾルダンも付いてる、危ない目には遭わないよ。」

 

 

 「……依然として真意はよく分からないけど…ミラがそう言うなら。」

 

 そう呟いてレムは読みかけの本に目を落とす。アンのヤツ、混じりっけがない分俺よりも龍だから人間に対する嗅覚が敏感なんだろうか。それにしたって「臭いが不快だがら」っつー理由だけでこの国燃やそうとするんじゃないよ物騒だな…

 

 そしてさり気なくロシナンテを心配するレムだが…患者が心配なんだろう。でも『ナギナギの実』って便利なんだぜ?

 「音を消す」ことが出来るのはかなりのアドバンテージだ、特に諜報任務とか隠密系に使える。

 …あと()()にもだが、ウチに所属する限りはさせることはないっしょ。

 ロシナンテもゾルダンも諜報向きの能力者だし、裏方で何かと役に立ってくれるんだわこれが。

 そして期待どおりサボが無事ゴミ山から救助された次の日、ゾルダンとロシナンテが帰ってきた。

 

 

 ゴミ山のくっさい臭いとデカイ〝お土産〟を連れて。

 

 

 自分で送り出しておいて何だが、取り敢えずお前ら風呂入って来い!

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ある日、いつもの夕食時にガキンチョ共が帰ってきたと思ったら数が一人減っていました。

 ガープ中将の孫の片割れ、エースに理由を聞いても「お前には関係無ェだろ」の一点張りで教えてくれません、その割には夕食をいつもの倍ほどバクバク食べてさっさと寝てしまいました。後でイルミたんが泣きじゃくるルフィに聞いたところ、どうやらサボは貴族の子供だったそうで。その父親と取り巻きの海賊に連れられて街へ連れ戻されてしまったそうです。

 あのガキンチョ、貴族の子だったんですね。道理で学力が一般のそれとは一線を画している筈ですわ。

 自由を求めてゴア王国の壁を越え危険な〝中間の森〟までやって来るなんて、到底お坊ちゃんの考える事ではありませんね。

 けれど籠の中から飛び出して『自由』になりたいというその心には少しだけ共感いたしますわ。

 

 お祖母様も私も、結局は悪魔の実(このチカラ)で無理やり檻をこじ開けなければ外の世界には出られませんでしたから…

 あの子の『檻』も随分頑丈なようですわね。

 

 

 「るふぃ、泣かないで?」

 

 

 「でもよぉ…サボは…ずっと俺の兄貴だったんだ……。こんな形で居なくなるなんて…嫌だよ…」

 

 

 「さぼ、また帰ってくるかも。だから待ってよ?えーすもそう言ってたんでしょ?」

 

 

 「うぅ…」

 

 

 ああっ//イルミたんがまるでお姉さんみたい…映像記録電伝虫はどこかしら、お姉様と共有しないと…

 

 

 その日は結局、ルフィが泣き疲れて寝てしまうまでイルミたんと二人で彼の面倒をみていました。マキノさんに連絡して今日は山賊の家で一泊する事に。

 ダダン、貴女心配なら横目でチラチラ見てないでこっちに来なさい!

 

 

 

 …………

 

 

 

 「……以上、ご報告致します。

 お仕事の方は如何ですか?」

 

 

『ああ、色々きな臭くてな。もう数日かかりそうだ。

 それと…ゾルダンとロシナンテが面白い拾い物をした、テリジアの報告と合わせてブルージャムの尻尾は掴めるだろう。面倒なのはその取り巻きをどうやって一網打尽にするか、だな。』

 

 

 「先程の話に出てきた貴族ですか。」

 

 

『いや、下手をするともっと上だ。

 だがセンゴクさん曰く、海賊に関わる者はどんな些細な繋がりでも有罪。それがたとえ一国の王だとしても…だそうだ。ともあれ私にはあと一つ、証拠(ピース)が足りない。

 テリジアは引き続きそっちでイルミーナに付いていてやってくれ。』

 

 

 「仰せの通りに。

 こちらからお伝えすべき内容は以上です。」

 

 

『それと……ああそうだ、先日お前の祖母に会ったよ。』

 

 

 「…!本当ですの?元気にしていらっしゃいましたか!?」

 

 

『あー、そうだな。(色んな意味で)元気なヒトだったよ…』

 

 

 お姉様、いつの間にかお祖母様とお会いになりましたのね。お話を聞く限り元気にしていらっしゃるそうで安心しました、今はある商船に乗せてもらっているそうですわ。

 お元気そうで何よりです。

 

 ゴミ山の海賊…ブルージャム海賊団、こんな東の海の辺境にある島ですもの、海賊が隠れ家にしていても違和感ありません。よほど用心深い連中ですのね。

 高町の貴族と結託してサボを連れていったのもこいつらという事になりますか…もしかしたらまたこちらにもちょっかいを掛けてくるかもしれません、一応は警戒しておきましょう。

 

 

 

 惜しみながらもお姉様との電話タイム(愛の語らい)を終え、イビキを掻く山賊達の少し外れで寝息をたてるイルミたんの横に……んなあああああ!このガキンチョ!誰に断ってイルミたんの尻尾をモフモフしながら寝てやがりますの!?

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 サボ視点

 

 

 

 「なァお兄様、お前出来損ないなんだろう?だから俺が養子になったんだ。

 お父様が言っていたよ。出来の悪い息子の戸籍は昨日燃やしたから、お前を正式に私の息子にしたいってさ。」

 

 

 「…そうかよ。別にこんな家、出ていけと言われりゃスグ出て行ってやるさ。」

 

 

 「そうもいかないんだって、貴族の体面ってもんがあるだろ?

 貴族が生まれた息子を捨てるだなんて聞いたらウチの家名も地に堕ちるんだよ、だからオマエはお父様の情けで家に置いてもらえてるんだ。有難く思えよ?」

 

 

 「……下らねえ…」

 

 

 「それに明日〝ゴミ掃除〟も始まる。

 命拾いしたなお兄様。

 この国の汚点は消毒されるんだよ…!」

 

 

 「……?どういう事だ、詳しく話せ!」

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 

 この国は腐ってる

 

 

 誰も彼もが汚いものから目を背けて

 

 

 自分達は綺麗だと信じ込んで

 

 

 現実に見向きもしない

 

 

 オレは…オレは…ただ自由になりたかっただけだ。国のしがらみにも家族のしがらみにも囚われず、本当の自由を手に入れて……

 

 

 

『既にブルージャム海賊団がゴミ山に爆薬をセットしている筈だ。

 明日の夜、予定通りに計画は実行される。決して不備はあってはならない。』

 

 

 ステリーから聞いたこの国で明日行われるゴミ掃除の計画、それを聞いていてもたってもいられなくなったオレは連れ戻された屋敷を抜け出し、衛兵たちの駐屯所へやって来た。

 

 

『海賊達も役に立つもんだ、こうも素直に動いてくれるとはな。』

 

 

『国王様のお力の賜物ですね。』

 

 

 部屋の中から聞こえる会話を盗み聞きした感じ、本当に明日の夜ゴミ山に火を放つみたいだった。それにブルージャムも一枚噛んでいるとも言っている。

 

 

 

『港の海軍はどうなってる?』

 

 

『兵士達を常に見張りに出し動向を監視させています。

 妙な真似は出来ないでしょう、ブルージャムとの関わりもバレてはいません。』

 

 

『目を離すなよ、妙な真似をされたら困る。

 まったく…アウトルック卿が懐柔する手筈じゃ無かったのか…』

 

 

『大金は積んだそうなのですが、先方の中将がかなり頑固者のようで。

 殆ど話すまもなく追い出されたそうです。』

 

 

 海軍?港には海軍が来てたのか、それすら金で取り込もうとしてたなんて…徹底的にゴミ山を焼くつもりなんだな。しかもアウトルックってのはオレの父親だ!こんな事に関わってたのか…!

 

 

『フン、お高くとまりやがって。

 あの女…王宮へ警備の確認に訪れて何度が話したよ、かなりの美人だった。中将だと言っていたが…一体何人の将校と寝て得た地位なのか。

 クソッ!!俺も二人きりになった時押し倒す位しておけば良かったぜ!』

 

 

『それでわざわざ個室で会議をされていたんですか?

 ハァ…今は泳がせておきましょう。奴等にブルージャム海賊団の()()()を見つけて貰う仕事がありますからね。』

 

 

『……』

 

 

『………』

 

 衛兵達の下品な会話はもう聞いていられなくなって、俺は詰所を静かに去った。

 

 

 何とかしてルフィとエースに伝えないと…!

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 ゴミ山焼却日当日 昼

 

 

 「……………」

 

 

 「……………」

 

 

 船長室に流れる気まずい空気。

 

 

 「中将殿、進言しても宜しいでしょうか。」

 

 

 「皆まで言うな、分かってる。」

 

 

 「しかし…」

 

 

 「ロシナンテは心配症だな。

 警備兵から監視されてるのは知ってるから安心しろ。」

 

 

 はい。今日も1日お仕事頑張るぞいと、祖龍だヨ。

 ロシナンテ君、皆まで言うな。分かってる。

 街の様子はいつもと変わらない、ただし昼間っから衛兵たちが代わる代わるウチの軍艦を監視してれば誰だって怪しく思うよね。色んなフラグが立ちまくってますぜ。

 そのフラグは見事に回収されるわけで…先日ゴミ山で確保した捕虜に吐かせた情報によれば今日、ゴミ山は火の海になる。

 

 なんでも国王は天竜人視察の際、目の上のたんこぶだったゴミ山をすべて焼き払うつもりらしい。汚いものは全部焼却して少しでも天竜人に気に入られたいから…というワケだ。

 で、ここからが問題。この一連の計画にはブルージャム海賊団が関与してる疑いがある、というか関与が確定している。何故って?

 

 ブルージャムの部下を捕まえて吐かせたんだよ。

 名はポルシェーミ、仲間割れか粛清かは知らないが撃たれて重症だったところをゴミ山に潜入していたロシナンテとゾルダンが発見し保護、それから喋れるようになるまで回復を待ってレムの作った自白剤で洗いざらい喋ってもらった。

 レムの毒はこんな応用も効くのね…聞けば同じ毒の能力を持つインペルダウンのマゼラン君と電話友達らしいし、自白剤の発想もそこから思い付いたようだ。

 自白剤って確か脳を麻痺させて廃人にしちまう薬だった気がするんだが…まぁいいや(切嗣並感)

 案の定ポルシェーミはぼろぼろと今回の計画を喋って半廃人状態、今は牢に入れられている。

 この世界に海賊に対する道徳なんてない、いいね?

 

 正直国の長が海賊を動かしてまで自分とこの国民を殺すなんて有り得ないと最初は疑っていたが、ロシナンテと共にゴミ山へ偵察に行ったゾルダンが撮ってきた写真と今日の衛兵たちの監視状況を見て確信がいった。

 

 

 「そこまで大見得を張りたいかゴア王国、正直拍子抜けだな…」

 

 

 天竜人にいい所を見せたいが為に行った国王の努力の結果がコレか、某世紀末モヒカンライダー共と発想が同じだぞ。他にもっとやり方があったろうに。

 

 

 「まあいい、全ては視察を終えた後だ。

 甲板の見張りを増やしておけ、ちゃんと私達が仕事してる所を見習ってもらおう。」

 

 

 「ハッ!了解しました!」

 

 

 敬礼し出ていくロシナンテ君、テリジアが居ない間は彼に補佐を任せてるんだがとてもいい子だ。テリジアと違って変態じゃないし。変態じゃないし(大事な事だから二回言いました。)

 因みにこの場にいないレムとアンだが、レムは医務室で医学の本を読み漁ってる。最近トムが腰をいわしてその治療をするそうだ。

 アンは厨房で()()()()創作料理だろう。

 アイツ、性格は死ぬほどガサツな癖して唯一興味を持ったのが料理に菓子作り。しかもドンドン上達して今では超繊細な飴細工とか平気で作りやがる。まあ美味しいから良いんだけどね。

 

 「…で、私1人になった訳なんだが。

 そろそろ机の下から出てきてくれるか?」

 

 

 「ふひひ…ふひひひへへ……あへ?バレました?」

 

 

 ズルリ…と机の下の暗がりの中から人影が這い出てきた。

 この(変態)はハレドメラグ・ミュゼリコルデ、先日出会った革命軍総指揮官モンキー・D・ドラゴンの連れていた女だ。ついでにウチのメイド、ハレドメラグ・テリジアの祖母にあたる。

 一言で言うと『度を越した変態』、以上説明終わり。

 

 

 「……この際私の執務机の下で太股に頬を擦り付けている姿には言及しないでおいてやる。お前ドラゴンと帰ったんじゃ無かったのか。」

 

 

 「スゥーーーーーーーーー…………」

 

 

 オイ息を吐け息を

 

 

 「ッあ''〜神祖様の蒸れた太股の臭いひぃぃぃ…//」

 

 

 「話を聞けと言っとるだろ!」ギリギリ

 

 

 人の太股に夢中になる変態を両脚で挟み込んでミュゼの首関節をキメてやる。ちょっとは反省したかと思ったが首を締められながら地上波でお見せできないようなアへ顔を晒していた。この辺の顔まで孫とソックリだ。

 

 ダメだこいつ早く何とかしないと…

 

 

 「ぐえええええっ!?

 我々の家系ではご褒美でぇぇぇぇす…」

 

 

 「いい加減現実に戻って来い、なんで私の机の下から出てきた。」

 

 

 「あへっ…あへぇ…はぁ〜気持ち良かった。

 アッハイ。これは悪魔の実の応用です、範囲は限定されますが影ワープ出来るんですよ〜。

 実はドラちゃんからコレを渡すよう言われてまして。」

 

 おい影ワープとかサラッととんでもないこと言ったぞこの変態。

 懐から取り出した書類を手渡され、中身を確認する。

 

 ……へえ、こりゃまた…

 

 

 「ついでにドラちゃんから言伝です、『この国の真実がそこに示してある、未だ力及ばぬ我々の代わり君に〝正義〟を示してほしい。あと君の下着も欲しい。』ですって!」

 

 

 「うん、最後のはお前の欲望だな?サラッとドラゴンが言ったみたいになってるけどな?まるでドラゴンが変態みたいな言い回しになってるよな?」

 

 

 「という訳で下着を…出来れば下半身の方を下さあばばばばばばっ!?!?」

 

 

 おもむろに俺のズボンに手を伸ばすミュゼにキツめの電撃を浴びせといた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 深夜

 

 

 轟々と唸りをあげて土地が燃えている

 

 

 ゴア王国と〝コルボ山の間、税金を払いきれず国を追い出された者達、又は孤児やはぐれ者が隠れ住む場所、不確かな物の終着駅(グレイターミナル)

 本来多湿で燃えることのないゴミの山は今では紅々と燃え盛り、取り残された人々を飲み込もうとしていた。

 

 

 「熱ィ!熱ィよお!」

 

 

 「助けてくれェ〜ッ!」

 

 

 まさに阿鼻叫喚、不確かな物の終着駅は一瞬にして地獄と化したのだ。

 その様子はコルボ山に居を構えるダダン達山賊達も目にしていた。山向こうの空がまるで血をぶちまけたような赤色に染まり、おちおち寝てもいられない。

 

 

 「あらあら、夜なのに妙に明るいと思ったら…」

 

 

 「不確かな物の終着駅が…燃えてんのかい…?」

 

 

 「ぽいですわね。……お姉様が仰っていたのはこの事だったのですか…」

 

 

 「うぇ……こげ臭い…」

 

 

 人より鼻の利くイルミーナはゴミの燃える臭いに鼻を抑え嫌そうにしていた。

 

 

 「危ないねぇ、あのガキ共が逃げ出さない様にしないと…」

 

 

 「そリが…昼頃からエースもルフィも姿が見え二ーんですお頭。秘密基地にもいませんでした。」

 

 

 「何だってえ!?

 あの馬鹿ガキ共…まさか行ってたりしないだろうね!?」

 

 

 「……るふぃ…えーす…!」

 

 

 ゴウッと一迅の風が吹き、イルミーナが白銀の巨狼へと姿を変える。

 幼女の突然の変身に山賊達はおおいにどよめいた。

 

 

 「イルミたん!?……まさか…」

 

 

『……うん、行く…!

 るふぃとえーすが心配だから…』

 

 

 「お待ちなさい!万が一火傷の一つも負ってしまったらお姉様が悲しみます、まだルフィとエースが彼処にいると決まったわけでもありませんし火事が収まるまで待ってからでも…」

 

 

『だめ…!るふぃとえーすは〝友達〟だから…。

 友達に何かあったら助けてあげないといけないってみらも言ってた!だから…てりじあが止めてもいくよ…』

 

 

 テリジアは驚いていた。あの大人しく滅多に大きな声を上げないイルミーナが怒鳴ったのだ。

 初めての友達、彼等の危機を思う故に先行してしまうイルミーナの気持ちをテリジアは察している。だがそれ以上に彼女もイルミーナの事を大切に想っていた。だからお互い譲らない。

 

 

 

 二人の間に剣呑な空気が漂い始めたその時、テリジアは諦めたように深く溜息を吐いた。

 

 

 「はぁ…分かりました。但し私も同行します、イルミたんを1人で行かせてはお姉様に大目玉を食らってしまいますもの。あのガキンチョ共にキツいお仕置きもしないといけませんしね…」

 

 

 「待ちな、そりゃ仮親登録されたアタシの仕事だよ。嫌でもついて行ってやるからね。」

 

 

 何処からか斧を持ち出したダダンが意気込む、ほかの山賊達も同じ気持ちなのか、決意を込めた瞳でテリジアを見ていた。

 

 

 「まったく貴方達は……付いてくるのはダダンだけで充分です、残りの貴方達はガキンチョ共が帰ってきた時の為に食事をたらふく作っておいて下さいまし!台所に書き置いたレシピ通りに作れば馬鹿でも美味しくつくれますわ。」

 

 

 「「「おう、任せろォッッ!!」」」

 

 

 テリジアとダダンを背に乗せたイルミーナは疾風の如く森を駆け、不確かな物の終着駅へと突き進む。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 「何でだよ!宝の在り処は教えたろ!」

 

 

 「ウソ吐いてる可能性もある、お前らも一緒に来い。」

 

 

 「ふざけんな!そんな事してたら逃げ場が無くなって…」

 

 

 「黙れガキ共…!!

 俺ァどんな手を使ってでも生き延びてやる。お前らの命なんざハナからどうでもいいんだよ…」

 

 

 燃え盛る不確かな物の終着駅、肺が焼け爛れそうになる位の熱気に晒されながら俺とルフィはブルージャム海賊団に脅されている。

 この山に火をつけたのはこいつらだったが、手違いがあったのかブルージャム自身もこの大火事から抜け出すことが出来なくなったらしい。いい気味だ。

 そうしたら今度は俺達の集めた『海賊貯金』を狙って俺達を捕まえに来た。

 

 

 「ガキの集めた財宝を頼りにしてでも…!!

 俺は再び返り咲いて貴族共に復讐してやると誓ったんだ!!

 オメエらの〝兄弟〟そうなんだろ?

 貴族共(あいつら)は己を特別な人間だと思ってやがる。その他の人間はゴミとしか見てねえ!!」

 

 

 「違う!サボはそんな事思ってねえ!」

 

 

 「同じだ馬鹿野郎、ゴミ山のお前らとつるんで優越感に浸ってたのさ!

 腹ん中じゃお前らを見下して笑ってる、金持ちの道楽に付き合わされたんだよなァ!!」

 

 

 「それ以上サボを悪く言うんじゃねェッッ!!」

 

 

 「そうだ!サボは卑怯者なんかじゃねえ!」

 

 

 その時海賊の一人に捕まっていたルフィ咄嗟にが奴の腕を思いっきり噛んだ!

 痛みで思わず腕の力が抜けたスキを突き、ルフィは脱出。しかしそれが海賊の怒りを買ってしまった。

 

 

 「このガキィ…ッ!」

 

 

 「うわあっ!?」

 

 

 振り下ろされるサーベルをルフィは鉄パイプでガードするが所詮は只の鉄パイプだ。鋼で鍛え上げられた剣には敵わず真っ二つにされ、ルフィ自身も深い傷を負ってしまった。

 

 ドクンと心臓が高鳴る。弟が傷付けられた。

 俺の弟、どうしようもないヘタレな野郎だが、サボと共に盃を交わした世界でたった1人の、弟が。

 

 「この…殺してやる…ッ!」

 

 

 「うわああああっ!!」

 

 

 激昂した海賊がルフィを殺そうともう一度剣を振り上げる。

 

 駄目だ…ルフィは俺の弟だ…

 目の前で大切な人を失うのは…嫌だッッ!

 

 

 「止めろォォォッッ!!!!」

 

 

 ドクンッッ

 

 

 無我夢中で何が起こったのか分からない、気付いたら突然そいつは白目を剥いて口から泡を吐きながら倒れてしまっていた。いや、奴だけじゃない。他にも何人か海賊達が意識を失って地面に転がっている。

 一瞬だけ呆然としたブルージャムだったが、これがオレの仕業だと分かったのか怒り、銃口を向けてきた。

 

 

 「何をしやがった…このガキィ!!」

 

 

 マズイ、流石にこんな至近距離から撃たれちゃ助からねえ!

 

 

 「…クソッ!」

 

 

 「エースうううううッッ!!」

 

 

 ルフィの叫び声が遠くから聞こえる。

 もうブルージャムは撃鉄を引いて、引き金に指が掛かってる。

 すまねえルフィ……

 

 最後の抵抗とばかりにブルージャムをこれでもかと睨みつけ、

 奴が引き金を引こうとしたその時

 

 

 「そこまでにしときな海坊主ゥ!!」

 

 

 聞き覚えのある大声が後ろから聞こえ、ブルージャム目掛けて大きな斧が振り抜かれた。堪らず剣で防御したがその反動で奴は俺から離れた場所まで飛ばされる。

 その直後ズドンッと大きな()()が着地した振動を感じ振り返った。

 

 

 「…まったく、先走りすぎですわよダダン。」

 

 

 「いいじゃねえかい、さっさと助けなきゃきっとエースは撃たれてたよ。」

 

 

 「まあそれに関しては異論ありませんが…

 ガキンチョ共、生きてますか?」

 

 

 信じられない

 

 

 俺達のロクデナシな保護者共が、駆け付けて来たなんて

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 「ルフィ!?凄い傷だ!

 生きてるかい?返事しな!」

 

 

 「う…ダダン…イルミーナも…」

 

 

 頭から血を流すルフィをダダンは抱き抱え、イルミーナの背に乗せる。そしてエースにも来るように促した、が。エースは断固として退かなかった。

 

 

 「早く来なエース!ブルージャムは子供がイキがって勝てる相手じゃねえ!」

 

 

 「嫌だ!俺は逃げねェ!」

 

 自分の後ろに守るべき仲間がいる、故に絶対にエースは退かない。

 ()()から受け継いだその頑固さにダダンも歯噛みしていたその時、エースの頭に衝撃が走る。

 

 

 「ぐわぁ!?痛っっっってェェェェェェ!?!?

 今までで一番痛かったぞ!?何すんだテリジアァ!」

 

 

 「子供がいっちょ前になーにほざいてますの、とっととイルミたんに乗って隠れ家まで帰りなさい。

 ほら、貴方が今しがた気絶させた海賊が起き上がりますわ。事態は一刻を争うのです。」

 

 

 「でも後ろにはルフィが…」

 

 

 「ん〜もうめんどくさいですわね!

 貴方の自己犠牲で何とかなるほど小さな事ではありません!

 小さい身体で1人前に吠えるなら、もっと力をつけてからにしなさい未熟者!!」

 

 そう、威勢は充分でも今のエースには圧倒的に力が足りない、テリジアに痛い所を突かれ口を噤いでしまう。

 

 「なっ!?ぐっ……じゃあ…テリジアはどうするんだよ…」

 

 

 「子供の不始末は保護者の責任です。故に、この場は私が受け持ちますわ。」

 

 

 「はあっ!?テリジアお前正気かよ!?相手はあのブルージャムだぞ!?」

 

 

 「まったく人の言うことを素直に聞かないガキンチョですわね!ルフィの傷だって酷いんですからさっさと乗りなさい!」

 

 

 「え?うわああああっ!?」

 

 業を煮やしたテリジアはエースの首根っこを掴んでイルミーナのもとへと放り投げ彼女は見事に口でエースをキャッチ、そのままダダンとルフィを乗せ中間の森へとかけて行く。

 

 

 「おいテリジア!?テリジアあああ!!」

 

 

 イルミーナの口元で揺さぶられるエースには安堵に満ちた笑みでこちらを見送るテリジアの姿が見えた。

 

 

 

 ◆

 

 

 「おいイルミーナ戻れよ!戻ってテリジアを…」

 

 

 「黙りなクソガキ!作戦通りだよ、テリジアがブルージャムを足止めしてるうちにアタシ達は離脱する手筈だったんだ。」

 

 

 「でも他の海賊達も起き上がってた!女ひとりじゃ死にに行くようなもんだ!」

 

 

 「だから作戦通りだっつってんだろ!お嬢ちゃんは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()分かったら暴れるの止めな、イルミーナ嬢ちゃんが走りにくいだろ!」

 

 

 「はあ!?それって…」

 

 

『だいじょぶ、えーす』

 

 

 「イルミーナ、心配じゃ無いのかよ!」

 

 

『てりじあ、つよいから。』

 

 

 

 ◆

 

 

 燃え尽きるゴミの山。その片隅で、大勢の海賊達と相見えるのは1人の淑女。

 傍から見れば淑女の方が圧倒的に不利な状況で、五分もしないうちに殺され、犯されるであろう運命が待っている。

 そうなる筈だった、海賊達の誰もがそう確信していた。

 

 しかし彼女は堂々とした佇まいで彼等の前に立っている。まるで、自分の勝利を確信しているかのように。

 

 

 額に青筋を浮かべながらブルージャムは嗤う

 

 

 「…で?さんざ茶番を見せられたワケだが、お嬢ちゃんが俺達に何の様だい?」

 

 

 「…用も何も、子供相手に大の大人が寄ってたかって銃まで持ち出して…恥ずかしくありませんの?」

 

 

 「用意周到と言って欲しいねェ…獅子は子鹿を狩る時だって全力を出すだろう?」

 

 

 「船長、いい女だ。手脚を一二本折って動けなくしてから捕まえて、ここを出てから皆でマワしましょうぜ。」

 

 

 エースの覇気に当てられ、倒れていた海賊達も起き上がり、目の前の美女に舌なめずりを初めている。

 

 

 「まて、俺ァ今怒ってんだ…ピストルの引き金も今なら羽より軽い。

 気晴らしに女は殺す、その後お前ら好きにしろ。」

 

 

 「マジですか、死体とか後免ですぜ…」

 

 

 「お前は動かない方が楽でイイってこの前言ってたじゃねえか」

 

 

 ギャハハハハハハッッ!!

 

 

 

 下品に嗤うブルージャムとその海賊達。テリジアはそんな彼等を座った目で見つめながらたった一言、呟いた。

 

 

 「…黙りなさい

 

 

 「ッッッッ…」

 

 

 嘲笑するブルージャム海賊団はテリジアは底冷えするような殺気の込められた一言に思わず口を噤む。

 目の前にいるのは武器も持たない生娘だ、それにこちらは多勢で武器も持っている。

 なのに、このただならぬ胸騒ぎは何事なのか。

 ブルージャムは内心冷や汗を掻く。

 

 

 「…羽虫如きが人間の言葉を喋るな。

 やっとあの子達が()()()()()に逃げてくれましたので、不本意ながらお相手して差し上げます。

私、今とても…とても怒ってますのよ?

イルミたんがこの島で見つけた希少なお友達、柄は悪いですが決して悪ではないあの子達にあんな深い傷を負わせた…のはどうでもいいとして、イルミたんをこんな危険な場所へ連れてきて。ふふふっ…どうしてくれやがりましょうか…。

 …ハレドメラグ家家訓、『親愛なる隣人()の為、愛する者達(家族)の為。仇なす輩には一片たりとも容赦するな。串刺帝(お祖父様)の名の下に全ての不義に鉄槌を下すべし』。ですわ…」

 

 

 何かと思えばそんな事か、今更言って何になるかとブルージャム海賊団は嗤う。

 

 

 「聞き間違いか?これからお前が俺達を倒すように聞こえたんだが。」

 

 

 「ええ、ええ。違いますわよ。

『倒す』ではなく『殺す』のです。貴様等は羽虫の分際でイルミたんのお友達に白刃を向けた。充分復讐するに値します。

許容も無く、慈悲も無く、一片の情も掛けず最ッ高に惨たらしく虐殺して差し上げますわ…!!

 抵抗は許しません。ただ頭を垂れ、『殺してくれ』と懇願し、地面に頭を擦り付けながら無様に泣いて後悔しなさい。」

 

 

 業火を突き破るようにテリジアが吼える。それでも自分達が圧倒的有利と信じて疑わない海賊達は一笑に返すだけだ。

 

 

 「ハッ!おめでてえこった。

 それで?お嬢ちゃんは俺達をどうやって殺す気なんだ?この状況で!」

 

 

 吐き捨てるようにブルージャムが叫び、部下達がテリジアに向け一斉に銃口を向けた。

 

 その時

 

 テリジアは嗤っていた。

 

 

 「うっ!?」「う…アァ…」

 

 突如海賊達の一部が呻き声と共に銃を取り落とす、それに続くように次々と(うずくま)るようにして彼等は苦しみだした。

 

 「アァ…船長ォ…」「か…体が痛てぇ…軋むみてえだ…」

 「がああああっ!?脚が!指先までグチャグチャになりそうだァッ!」

 

 各々苦痛の悲鳴を上げながら悶え地面を転げ回る部下達にさしものブルージャムも目を丸くした。

 そしてそれが目の前の女の仕業だと悟り、彼は激昂する。

 

 「どういうことだ…何をしやがった!」

 

 

 「ふふふふ…うふふふふ……さあ?

 なんでしょうねぇ?

 無い知恵を絞って考えてみなさいな。」

 

 

 身も焼けるような業火の中、涼しく笑うテリジアの様子は余計ブルージャムを怒らせた。

 

 …彼は気づいていないがブルージャム海賊団の周囲には宙を舞うほど小さな銀粉が散布されていた、勿論それはテリジアによるものである。それは燃え盛る炎の起こす上昇気流によりブルージャム海賊団へとばら蒔かれ、呼吸によって彼等は取り込んでしまったのだ。気化した水銀を。

 本来、水銀は非常に強い毒性を持つ。テリジアは制御し普段から無害な物として使用しているが千分の一ミリでも体内に侵入すれば人間を内側から蝕み死に至らせる事が出来るのだ。そして水銀は高温により気化しやすい。ブルージャム海賊団の周りを舞っていた銀粉はそれである。

 

 テリジアは今、己の意思で消していた水銀の毒性を解いた。その結果、不幸にも呼吸によって猛毒の粉を大量に摂取してしまった海賊達は即効性の水銀中毒を起こし、今に至る訳だ。

 だがそれにブルージャムが気づくはずも無く、知らぬうちに苦しみ倒れていく部下達を前に次第に冷静さを失っていき、反狂乱になりながら吠える。

 

 「このクソ(アマ)…一体何をしやがったァァァ!」

 

 

 立て続けに銃声が響き、鉛玉が不敵に笑うテリジアの額にぶち当たる。

 眉間を貫通、常人なら即死。それを見てほくそ笑んだのも束の間、ブルージャムは驚愕の表情に顔を染める事になる。

 テリジアに直撃したハズの銃弾はズルズルと彼女の身体の中に沈んでいき、べえっ!と出した舌の上で銃弾は弄ばれていたのだ。テリジアは受けた弾丸を口から吐き出しまた笑った。

 

 「羽虫らしい囁かな抵抗、大変よろしい、ですが少々品に欠けますわねぇ?」

 

 

 「なっ…テメエ、能力者か!」

 

 

 「東の海の田舎海賊にも一端の教養はありますのね……ご名答ですわ。

 私は『マキュマキュの実』を食べた水銀人間。まあ、これから死にゆく貴方方には冥土の土産程度に思ってくだされば結構です。」

 

 

 にこり、と微笑むテリジアにブルージャムの不安は確信へと変わった。

 この女は危険だ、一刻も早くここから…「逃げた方がいい?」

 

 「ハッ……!?」

 

 

 「駄ァ目ですわよ…ええ、いけませんわいけませんわ。

 罪人を逃がすなどあってはならないこと、家名に傷が付いてしまいます。だからぁ…

 裏月霊・傷身自殺(べノンヴォルメ・ロストキューション)…ッ!!」

 

 

 ずしゅんっ、と音がした。

 まるで果物にナイフを通したようなさっぱりとした音。

 業火の中でもハッキリと聞こえたその不自然な音にブルージャムは顔を向ける。

 

 「…は?」

 

 部下の口から銀色の刃が生えていた。

 比喩表現でも何でもない、まるで元から生えていましたよと言わんばかりに部下の口から刃が飛び出している。

 鋭く研磨されているであろうその刃に口は裂かれ血が喉を伝う。何が起きているのかも半ば理解できぬまま彼は涙目になってブルージャムに懇願した。

 

 「へ…へんちょー……たす…たひゅけ…へばッッ!?」

 

 

 「ッッ!?」

 

 

 次の瞬間、先程口から生えていた銀刃が大小様々な大きさで彼の全身から飛び出した。腹から、腕から、腰から、体の至る所を抉られ、切り刻まれ、真っ赤な華と化した彼はドシャリと音を立てて地面を転がった。

 その余りに惨たらしい光景にブルージャムも息を呑む。

 

 だがテリジアだけは、腕を組んで口元を隠しながら心底面白そうにその光景を眺めていた。

 

 

 「ひ…ひぃぃぃ!!」

 

 「スペンス!スペンスが死んじまったぁ!」

 

 「お…俺達もああなるのか?」

 

 「たっ…助けて!たすゲッッ…」

 

 命乞いをしかけた海賊がまた一人、物言わぬ磔死体のように地面に横たわる。

 その後も一人、また一人と血溜まりを作り段々と血の臭いが辺りに充満し始めた。

 そして最後の一人の頭がザクロのように弾け飛んだ後、ブルージャム海賊団は船長を残すのみとなる。

 

 「あらあら大の男達がまるで子供のように泣き叫びながら…無様ですわねぇ。」

 

 

 「くっ……そ…!!」

 

 海賊の『生』に対するセンサーは一般人のそれより敏感だ。海で生き残るのは『強者』か『臆病者』東の海(最弱の海)出身の海賊とはいえブルージャムも海の争いを生き抜いてきた海賊だった。逃げるは恥でも役に立つ事を知っている。故に今になって命の危険を察知し行動に移す、それが今更手遅れだとしても。

 

 この時点でブルージャムから『戦う』という選択肢は消え失せ、目の前の化物からどうやって逃げおおせるかを考え行動していた。

 幸い宝の在り処は聞き出した、何十年かかってでも自分達を騙したあの国王に復讐するまで死ぬ訳にはいかない。

 彼はテリジアに背を向け、燃え盛る業火の隙間を縫いながら走り出す。

 

 だが、彼女がそれを赦すはずも無く

 

 「に〜が〜さ〜な〜い♪」

 

 

 「がッ!?ぐわぁ!!」

 

 

 地面から飛び出した二本の銀杭がブルージャムの脚を貫き、もんどりうって地面を転がった。それと同時に全身を掻き毟る様な痛みが彼を苛む。

 

 痛い

 

 頭のてっぺんから爪の先に至るまで満遍なく駆け巡る

 

 痛い

 

 最早脚の痛みなど気にしてはいられない。

 失いそうになる意識は内側からこみ上げる苦痛によって乱暴にたたき起こされ、想像を絶する激痛は気絶さえも赦してはくれなかった

 

 痛い

 

 呼吸する度、指1本動かす度、身体に振動が加わる度、自らの身体に加わる全ての感覚が問答無用で『痛み』に変換されていく。

 

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

 

 「あああああああああ痛い…痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いィィィィィッッッッ!?!?」

 

 

 涙と鼻水を撒き散らし、苦痛に顔を歪めながらビクビクと身体を引き攣らせ、叫び声を上げ続けるブルージャムの姿はとても悪名高い海賊の姿には見えないだろう。

 

 「ギィィィィィィィィィィァァァッッ!?…ーーッ!ーッッ!」

 

 

 「おほほほ。そんなに身をよがらせ跳ね回って、余程お気に召したご様子…て、聞こえてませんか。」

 

 

 声にならない悲鳴を上げ続けるブルージャムをひとしきり眺めた後、テリジアは彼の前まで近寄って優しくこう言った。

 

 

 「さあ、答えなさい。

 貴方の今1番叶えたい願いはなあに?」

 

 

 「あ…たすけ……だのむ……ころじで…殺してくれえ…ッ!」

 

 

 ブルージャムの答えに満足した様子で頷き、今日一番の笑顔でテリジアは答える。

 

 

 「い・や・で・す・わ♡」

 

 

 ブルージャムの表情が絶望に染まる。

 突如、テリジアの足元から伸びた水銀の槍がブルージャムを串刺しにし、宙へと釣り上げた。不幸な事に急所と心臓は全て外されている。

 四肢と内臓を貫かれ糸で吊られるマリオネットの様に宙ぶらりんにされたブルージャムは最早、血の泡を吐きながら声にならない悲鳴を上げ続ける事しか許されなかった。

 

 「ーーーッーッッ!?!?ーーーーッッッッ!!!!」

 

 

 「言ったでしょう?一片の情もかけず、最高に惨たらしく虐殺して差し上げます。と。

 私、お姉様程いい子ではありませんの。

 お姉様程皆を平等に扱えません。お姉様程私情を挟まず冷静さを保てません。……お姉様程、苦しみを与えず一瞬で殺せません。

 ああ、お姉様。未熟な私をお許し下さい。

 私怨に駆られこの男の凄惨な死を望む私を、赦して下さいまし。

 ……ああそれと。喉が張り裂けるまで叫び続けるのは結構ですが、イルミたんが夜眠れなくなるのでその口は閉じなさい。鬱陶しいですわ。」

 

 

 水銀がブルージャムの身体に絡み付き、猿轡の様に口を塞ぐ。

 これでブルージャムはもう叫び声を上げることも、痛みに耐えて助けを求める事も出来なくなった。

 

 

 「それでは、もう夜も更けて来ましたので私はこれにて。

内と外から死ぬ程苦しんで、涙の一滴に至るまで苦しみ嘆いて枯らしたら…業火がその身を焼いてくれるでしょう。

 ゴミ山の住人達は……まあなるようになるかしらね。私には関係ありませんわ。

 では、ごきげんよう。荒くれ者(バッドアス)♪」

 

 

 テリジアは笑顔でお辞儀をし、痛みで咽び泣くブルージャムを尻目に能力で造った6枚の大きな水銀の翼を翻し、ゴミ山を後にした。

 

……

 

炎が全てを飲み込もうとゴミ山を舐める。何もかもが燃え尽き、灰になっていくグレイターミナルの片隅で、彼女の小さな復讐劇は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 ………………

 

 ああまったく、血の臭いが付いてしまいました。

 帰ったらダダンにお風呂を借りなくては…

 

 ………………

 

 

 

 

 

 

グレイターミナルと端街を分ける城壁、唯一その二箇所を行き来できる大門の前にサボはいた。

 

 

「ルフィ〜!エースッ!逃げてくれェーッッ!!」

 

 

「あのガキまた来てるぞ、さっさと追い払え!」

 

 

「クソッ離せ!…うわあッ!?」

 

 

近づこうとしても衛兵に放り出されただ虚しく壁向こうにチラつく炎を眺めるしか出来ないサボに()()ローブを着込んだ人影が行違いざまにぶつかった。

 

 

「おっと大丈夫か少年。そんなに咽び泣いて、一体どうしたんだい?」

 

 

フードをハラリと捲ったその顔を見て、サボは驚愕する。

 

 

「テリ…ジア……?」

 

 

「んん…?どうして私の孫の名前を知ってるのか、お姉さん知りたいな〜。」

 

 

 

 

少年はその時、冥雷妃と出会う

 

 

 

 

 




一旦ここまで、サボとミュゼの話、かつドーン島編エピローグ的なのは次のお話にぶち込みます…

問題の次回更新ですが…未定です、全ては師走が悪い。
あと疲れの中書いてるので文章おかしいところや読んでいて不快な文章構成になってたりするかもしれません。
ごめんなさい。

取り敢えず、寝ます。
おやすみなさい_(ˇωˇ」∠)_ スヤァ…

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