大海原の祖なる龍   作:残骸の獣

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前話で力尽きた後日談です。
相変わらず駄文ですネー、面白い文章書いてる他作品の作者様が羨ましいです。(主は文章力以前に国語力が低い可能性がワンチャン…)





33 アレンジエピソード・オブ・ドーン:エピローグ

 

 

「テリジアじゃ…ない……?」

 

 

「そーだよー?私はミュゼ。テリジアちゃんは私の孫娘だね。

…あ〜どうして孫なのかは話すと長くなるから今は言及しないで欲しいかな。」

 

 

端街の外れの路地裏で、少年は1人の女性と出会った。

 

白金色の輝く長髪に黄金の瞳、そして少年もよく知るメイド姿のあの女と瓜二つの容姿をした目の前の女性はキョトンとして泥だらけの少年(サボ)を見る。

 

 

「テリジアじゃなくてもいい、聞いてくれ!この火事は…」

 

 

「『貴族が起こした』、でしょ?」

 

 

「な、なんで知って…」

 

 

「もっと言えば、この火事は国王主導の下始まった国絡みの犯行だよ?

天竜人の来訪の際、国の汚点を手っ取り早く帳消しにする為に起こした証拠隠滅さ。」

 

 

ゴミ山の大火事をさも当たり前のように受け止め、つらつらと説明まで始めるミュゼにサボは驚きを隠せない。

ミュゼの説明を聞いているうち、サボは肩を震わせながら拳を握りしめていた。

 

自分の国の国民を燃やす王なんて正気じゃない。

それを当たり前のように黙認する貴族達も…皆狂っちまってる。

 

サボはがしりとミュゼのローブの裾を握り、叫んだ。

 

「この町は…ゴミ山よりも嫌な臭いがする…!!人間の腐ったイヤな臭いがするんだ!!

ここにいても…俺は自由になれない…ッ!」

 

 

「……」

 

 

「俺は…貴族に生まれて恥ずかしいッッッ!!」

 

 

滂沱の涙を流し、自分の思いを吐露するサボをじっと見つめるミュゼ。

 

 

「貴族、ね。…そっかぁ少年は貴族かあ…ふぅん……。

フツー子供にこれ言わせるかなぁまったくもう…」

 

 

やれやれと嘆息した後、サボの頭を優しく撫で、告げた。

 

 

「男の子がそう簡単に涙を見せるんじゃないよ少年。

……君の気持ちは分かったから。そろそろ泣き止みなさい。」

 

 

「あんたは…俺の話……聞いてくれるのか…?」

 

 

「ウン、勿論。君の無念も、絶望も、よく聞こえるし分かってる。

この国は昔の故郷とよく似てるからね…」

 

 

「…?」

 

 

「とにかく少年、考えなさい。

此処で無様に泣くだけでその無念が晴らされる?

一番駄目なのは君がこの国に呑まれる事だ。君のような子供が圧政の影に埋もれて動けなくなることだよ。

考えるのを止めちゃ駄目、まだ君は若いんだから欲しい結果は自分で掴み取りなさい。」

 

 

「俺が…自分で……?」

 

 

「そうそう、私だって国を飛び出した身だし。

こんな国でいつまでも燻ってちゃ連中と同じ馬鹿になるかもしれないよ?」

 

 

「……ッ分かった!ありがとうミュゼ!」

 

 

サボは涙を拭い、走り出す

 

 

「ばいばーい、あと年上には敬語を使いなさいよ〜。」

 

 

その後ろ姿をミュゼは少し悲しそうな表情で見送っていた。

サボには彼女が迷える自分を救う救世主のように見えていたことだろう。実際ミュゼリコルデは元ではあるが一国の女王で、それなりの気品を持ち、良識に優れた女性なのだ。たった一つ…

 

祖龍の話題を出さなければ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、朝

 

ゴア王国は昨日の火事が嘘のように、国民達はいつも通りの日常を過ごしていた。ゴミ山の火事も時々話題に上がる程度で、特に騒ぎ出す者もいない。

 

王宮から許可が降りたので俺達は燃え尽きたゴミ山で海賊達の遺体を探した。出てきたのは港に停泊してた焼け焦げた海賊船、それからところどころにブルージャム海賊団らしき海賊の焼死体。特にブルージャムはゴミ山の外れで串刺しの状態で発見され、まもなく死亡が確認された。

…まるで体内から剣が突き出して全身を貫かれたような痕とわざとらしく急所だけ外した銀の槍。テリジアの奴、ブルージャムと一悶着あったかな…。まあこうなったものはしょうがなし、本部には『ブルージャム海賊団は全滅』と報告しておこう。

 

 

「…以上、ゴミ山の報告を終わります。

これにて我々の仕事は完了、あとはそちらで天竜人受け入れの準備を行ってください。」

 

 

「ふむ…海兵諸君も任務、ご苦労であった。長期の任務で疲れただろう、慰安も兼ねて宴の準備でも…」

 

 

「それは有難いですが、お気持ちだけ頂いておきます。次の仕事があるので直ぐに本部へ戻らないといけませんので。」

 

 

「…そうか、何にせよ感謝する。

それにしても、()()()()()()()()()とはいえ火災によって海賊達が全滅とは…」

 

 

「これも国王様の日頃の行いの成果で御座います。」

 

 

「そうか大臣、私は日頃の行いが良いか。」

 

 

「勿論で御座います、ほっほっほ。」

 

 

「……では、我々はこれにて失礼致します。」

 

 

大臣と国王の三文芝居にも飽きたので礼をしてさっさと王宮から退出、船まで戻ってさっさと出港準備よー。

 

 

………

 

 

そのまま島の裏まで回ってフーシャ村まで船を出し、テリジアとイルミーナを待った。

 

 

「みら、おひさー。」

 

 

「おっっ会いしとうございましたお姉さマブェッ!?」

 

 

馬鹿めテリジア、貴様の行動など読めているわ。抱き着いてきた勢いを利用して巴投げをかまし、腹から勢い良く地面に叩きつける。そのまま地面に倒れたテリジアの背中を踏みつけた。

 

 

「あああんお姉様♡村の皆様が見てる前で公然と…//でもお姉様になら私、公開プレイでも構いませんわ……//」

 

 

「よーしよしイルミーナ、私がいない間テリジアの世話を頑張ったな〜。」

 

 

「ん…」

 

 

「お姉様!?逆!逆では!?あ''あぁ〜〜背骨から直にビリビリは効きますううううううう…」

 

 

祖母譲りのアへ顔ダブルピースを晒すテリジアをもう1回踏みつける。

…村人達の視線がそろそろ痛いので悪ふざけもこれくらいにして、無事テリジアとイルミーナを回収した俺達は世話になったマキノという酒場のお嬢さんにお礼を言って島を後にした。

去り際、コルボ山の麓にある崖に子供が2人こちらを見ながら叫んでいたけど…テリジアが言ってたイルミーナのお友達かな?

見送りに来てくれるなんていいお友達を持ったじゃないか、俺氏嬉しい。

でもイルミーナを将来海賊に誘うのは止めてくれな?二人して「俺んとこのクルーになれよー!」とか叫ばないで。

 

 

「イルミーナ、海賊に誘われたのか?」

 

 

「うん、ふたりから。…こっそりもう一人からも誘われたの。」

 

 

「海賊、なりたいか…?」

 

 

「ううん、わたしはみらのものだから。どこにも行かないよ?」

 

 

無垢な瞳におじさんノックダウン、またボルサリーノ中将と飲みに行った時に話す話題が増えた。

 

 

「でも…あのふたりが困ったら、助けてあげたい。ふたりは友達だから…」

 

 

「そうだな、存分に助けてやりなさい。友達は何よりの宝だ。」

 

 

「……うん!」

 

 

可愛い可愛いイルミーナを愛でながら船はドーン島を離れ、海軍本部へと進む。これでこの島での仕事は終わり、あとは可愛い弟子に引き継ごう。

 

 

 

 

 

 

 

 

覚悟しろよ、ゴア王国。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……イルミーナ、行っちまったな…」

 

 

「ああ、元々ジジイに連れてこられたんだ。ずっとこの島にいる訳じゃねえ。」

 

 

「俺達が海に出たら、一緒に冒険してくれるかなぁ…」

 

 

「さあな、でも海に出ればいつか会えるさ。」

 

 

「……おうッッ!!」

 

 

涙ぐみながら頷く泣き虫ルフィ。

イルミーナとテリジアはあの火事が起きて少しして、迎えが来たらしく島を去っていった。

たった数週間の付き合いだったけど、あの2人はいいヤツだった。俺が海に出たら一番に仲間にしたい。でもイルミーナの母親は海兵らしいから将来俺達を捕まえに来るのかもしれないな。

 

 

「…それまでに絶対アイツより強くなって見返してやる。なにより女に負けたままなんて格好がつかねえよ…!!」

 

 

イルミーナ達の滞在中、結局一度も俺達はイルミーナに一撃も加える事ができなかった。そしてブルージャムの一件もあって、尚更強くなろうと誓った。

テリジアも戦ったら強いんだろうな。殆どゲンコツしか食らってないけどあの日の夜、本当にブルージャム海賊団を一人で退けて帰って来た時は正直信じられなかった。ずっと実力を隠してたんだ。

 

 

「サボが帰ってきたらまた3人で特訓だな。」

 

 

「おう!実は俺、イルミーナに頼んでこっそりロクシキ?のやり方教えてもらったんだ!」

 

 

「何ぃ!?ズリぃぞルフィ!」

 

 

このヤロウ、こっそり抜け駆けしやがった!

 

 

イルミーナ達の乗る軍艦が見えなくなったので、俺達は隠れ家に帰った。帰り道は勿論競走だ。

 

俺はもっともっと強くなる、『ガキの背伸び』だと言われなくなる程強くなって俺や、俺の親父のことを馬鹿にした連中を見返してやるんだ!!

 

 

「次会ったら負けねェぞ…!!」

 

 

 

いつかサボもこっちへ帰ってきて、3人で一緒に海賊やれたらなぁ…と柄にもなく淡い期待に心を踊らせていた。

数日後、街から帰ってきたドグラの一言で、俺達は絶望する事になるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偉大なる航路 司法の島

エニエス・ロビー

 

 

偉大なる航路に広がる大海原の中にぽっかりと空いた穴、その中心に位置する政府三大機関のうちの一つ。夜を迎えることの無い特殊な天候を持つこの島は『昼島』と呼ばれ、多くの罪人を裁いてきた。

犯罪者にとっては陽を拝める最期の機会、公正なる審判により悪を裁く司法機関『エニエス・ロビー』。まさに正義の玄関口とも言えるこの施設の中、その最重要とも言われる『司法の塔』長官室に座り、新聞を読む若い男が一人、物憂げな表情をしながら珈琲を口に含み…

 

 

「ブアッハァ!?熱ィィッッ!!」

 

 

盛大に口から吹き出した。

 

 

「長官、セクハラです。」

 

 

「コーヒー吹いただけで!?ていうかカリファあ…オマエが淹れた奴だろ!熱ぃんだよ!俺は猫舌だって何度言わせる気だコラァ!!」

 

 

「……セクハラです。」

 

 

「おいコラこっち見ろ!そして自分の非を認めろォ!」

 

 

口元を真っ赤にしながら眼鏡の金髪美女を怒鳴りつけるこの男の名はスパンダム。政府特務機関CP9のトップにして海軍本部中将ミラの『弟子』である。

当時CP5だった彼は数年前、海賊王に与した船大工を拘束し、裁いた功績を認められ、一般には語られない『9』番目の特務機関の長官へと成り上がった。公には語られないが、世襲が当たり前の役人職にとって親の後ろ盾も無しに自力で功績を立て、長官の座まで就いた彼に五老星達は期待を置いている。

 

 

「ああ〜チクショウ…。つか、お前以外の連中はどうしたよ。ちゃんと招集を掛けただろ。」

 

 

「セクハラです長官」

 

 

「セクハラは分かったから質問に答えろ、超重要案件だ。」

 

 

「……他の者達に伝達は終わっています。長官がご指定された時間まで残り一時間ありますので、来ていないのは当然かと。」

 

 

「えっ」

 

 

「えっ」

 

 

「「……………」」

 

 

二人の間に気まずい沈黙が流れる。

スパンダム、完全に時間を間違えていた。

 

 

「……ズズズ…(無言で激熱コーヒーを我慢して飲みながら新聞紙に目を落とす)」

 

 

「長官」

 

 

「…………」

 

 

「長官」

 

 

「…………」

 

 

「………スッ」ぷるぷるぷるぷる…

 

 

「待ってゴメンナサイ無言でバスカヴィル裁判長に電伝虫掛けないで。」

 

 

因みにカリファがセクハラでスパンダムを告訴した場合、ほぼ100%の割合でスパンダムは負ける。悲しいかな、ことセクハラ告訴において男性側に人権など無いのだ。

 

 

「まったく…集合時間を間違えるとは何事ですか。」

 

 

「…面目無い。」

 

 

カリファが嘆息したその時、電伝虫の音が長官室に鳴り響く。

 

 

ぷるぷるぷるぷる…ぷるぷるぷるぷる…

 

 

「ぎゃあ!?まさかバスカヴィルから…」

 

 

「そんな訳ないでしょう、さっさと出てください。」

 

 

恐る恐る受話器をとったスパンダム、長官としての威厳とかゼロである。

 

 

「はい、こちらエニエス・ロビー……ミラさん!」

 

 

一転、スパンダムの表情が明るくなり、笑顔を見せた。それと引き換えに何故かカリファの鉄仮面が崩れていたが。

 

 

「どうしたんだよ急に………何?東の海…?なんだってそんな辺境の国に…

分かった、こっちで調べさせる。資料を送ってくれ。ああ、じゃあそういう事で……(ガチャ

カリファ、ラスキーを至急呼び出しだ。()()()()()()はルッチ達とこの資料を一通り見ればいいから………カリファ?おーい、カリファさ〜ん?」

 

 

「………死んで下さい長官、早急に。」

 

 

「指示飛ばしただけで!?!?」

 

 

氷より冷たい視線でスパンダムを見下すカリファ、その視線の真意にスパンダムは気づくはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………んで、数日後。

無事天竜人はゴア王国視察を終え、五老星の所に視察完了とゴア王国の世界政府加盟を決定する知らせが入った。

ただし天竜人来訪の際、そばを横切った小舟が一隻連中によって沈められた。海賊旗を掲げた子供が乗ってたらしいが…運が悪かったネ。

そしてこっからが本番、俺の集めたゴア王国の不正の証拠はスパンダムの手に渡り、諜報員によって事細かに調べあげられた。

天竜人訪問後、不正の確証を得たCP9はこれを政府上層部へ報告。しかし世界政府加盟を決めてしまった後にこんな報告をされ今更取り消しなんて出来ない五老星は必殺『オトナの事情』を使って密かにゴア王国国王及び関係者を更迭、結果国王の首がすげ替わり国民達の知らぬ間に現国王政権は終焉を迎える事になった。ウワサじゃ天竜人が『0』を動かしたらしい…くわばらくわばら。

 

以上、ゴア王国の闇は綺麗さっぱり取り払われて元国王サマの言うとおりゴア王国は『綺麗な国』へと姿を変えた訳よ。イヤーヨカッタネー。

 

 

「みら、なんだか嬉しそう。」

 

 

「ん〜そうか?今日はステラに頼んでちょっと贅沢な夕飯にしような。ケーキも頼もう。」

 

 

「……けーき!」

 

 

膝の上で尻尾をぶんぶんさせるイルミーナ、イイぞーコレ。

緩んだ顔をしながら娘の頭を撫でていると部屋の扉をノックする音が

 

 

「ミラ、私だ。入るぞ。」

 

 

「ええどうぞ、センゴクさん。」

 

 

入って来たのはセンゴクさんだ、片手に大判の書類の束を掴んでる

 

 

「座りますか?」

 

 

「ああ、悪いな。」

 

 

いつも席を陣取って居眠りしてるアンを起こしておしのけ、センゴクさんには来客用のソファに座ってもらう。

 

 

「お飲み物をお持ち致しますわね。」

 

 

「緑茶を頼む。まずはミラ、ゴア王国〝掃除〟の件、ご苦労だった。よく政府の面子を保ってくれたな。」

 

 

「好きでやった事です。それに…これもまた人間の一側面、私は自身の正義に従ったまで。」

 

 

「そうか……ならこの話はもういい。

それで、次の仕事なんだが……ボルサリーノの部隊が『タイヨウの海賊団』を捕捉した。協力者の情報提供により奴等が次に寄港するのは『フールシャウト島』という田舎島だ。ミラにはそこへ先回りして船長フィッシャー・タイガーを討伐、または捕縛してほしい。」

 

 

「………フィッシャー・タイガー、奴隷解放の英雄ですね。」

 

 

「……表向きは天竜人の所有物を攫った大罪人だ。」

 

 

「奴隷達からは英雄でも海軍(こっち)からすれば大犯罪者か。全く人間という奴は…背中に焼印入れた程度で優劣を付けるなんて馬鹿なコトを…」

 

 

フィッシャー・タイガーはあの日、俺がテゾーロを助け出した時同じタイミングで暴れていたあの魚人だ。ひとしきり暴れまわったあとは魚人の元奴隷達を率いて『タイヨウの海賊団』を創設し偉大なる航路を中心に活動している。魚人の腕力は人間の10倍、そんな怪力持ちがゾロゾロいる魚人海賊達に襲われたら少将クラスの海兵だってタダじゃ済まない。タイガー以外にもチラホラ実力者がいるみたいだし、今かなりホットな海賊団だ。

 

 

「ついては五老星から直々にフィッシャー・タイガーの捕縛要請が出ている。」

 

 

「……連中が過去に市民に向けて略奪を行った経歴は?」

 

 

「無い」

 

 

「なら応戦した海兵たちに死者は?」

 

 

「……無い、手酷くやられ返り討ちにはされているが死人は出ていない。」

 

 

「なら私は出ない、他を当たってくれ。」

 

キッパリと断った。

そう、タイヨウの海賊団。名を上げようと挑んでくる海賊達や追手の海軍には容赦無く応戦するが、一般人には全く手を出さない。更には応戦した海兵も半殺し状態ではあるものの、ただの1人も殺していないのだ。

船長命令なんだろうか、一味全員がその掟を守り海賊行為を行ってる。

 

 

「死人が出ていないのは彼等に何かしらの信念があるからだ、志持つ海賊ならば私は手を出さない。

どうせ五老星共が『やられっぱなしでは海軍の面子が立たない』等と言い出したんだろ。いいじゃないかボルサリーノ中将に任せておけば。死人が出ていないなら報復する必要も無い。」

 

 

「だが……」

 

 

「くどい、大将殿の頼みでもこればかりは断らせてもらう。人間(そちら)の面子など私には関係無い。」

 

 

「むう……」

 

対するセンゴクさんは苦い顔をしてる。

だって誰も死んでいないのだ。タイガーのやった事といえば奴隷を解放、やってくる木っ端海賊達を返り討ち、更には捕らえようとする海軍も返り討ち、死人はゼロ。海賊行為も返り討ちにした海賊や海軍から奪うだけ、市民から略奪なんてもってのほかだった。

コイツら普通にいいヤツらじゃん、俗に言う〝義賊〟って奴だろ。

 

海賊で一括りにするには出来すぎた連中だ、船長が元奴隷なのにも起因しているんだろう。奴隷を経験すれば考え方も変わるさね。

 

 

 

 

 

 

「なんだ行かねぇのかよ姉御。じゃあ(オレ)が行こうか?」

 

 

声を上げたのはソファを追い出され、テーブルに腰掛けて一連の話を聞いていたアンだった。

 

 

「お前が自分から行きたいなんて言い出すとは珍しい。何か企んでるのか?」

 

 

「別にぃ?行先のフールシャウトって島に興味があるだけだ。」

 

 

そう言ってアンはテーブルの上に置いてあった世経の発行してる雑誌の見開きを見せてきた。

なになに…?

 

 

 

◆〜◆〜◆〜◆〜◆〜◆〜◆

 

 

『今話題の沸騰島特集!

フールシャウト島産サボテンの肉包み串!!今、辺境島のグルメがアツい!!』

 

 

◆〜◆〜◆〜◆〜◆〜◆〜◆

 

一面に描かれていたのは串焼きにされジュウジュウと美味しそうな煙を上げる肉巻きサボテンの写真だった。長い文章で特集も組まれていてこの記事の気合いの入りっぷりが伺える。

 

 

「B級グルメの特集じゃないか。」

 

 

「そーそー、コレ美味そうじゃん。丁度食べに行こうと思ってたし、ついでにその魚人…?を始末してきてやるよ。」

 

 

海賊討伐はB級グルメ観光のついでかよ、これもうわかんねぇな。

 

 

「動機が不純過ぎるだろう…まあいい、行ってこい。タイガーの始末はお前の裁量に任せる。

レムも『白蛇』の仕事で出ているしな、これも社会勉強の内だ。」

 

 

「あいあいっと。」

 

 

ちゃんと手入れすれば綺麗になるだろうに、寝癖も直さずボサボサの金髪を揺らし珍しくウキウキしてるアン。趣味が出来たのは良いことだ。うんうん。

 

 

「という訳だセンゴクさん、私の代わりにアンが行こう。『白蛇』としては無理だが、プライベートで付いていくそうだ。その後の処理はそっちに任せるよ。」

 

 

「ああ、助かる。宜しく頼むよ。ボルサリーノには私から伝えておく。」

 

 

ホッとした様な表情を浮かべ、センゴクさんはテリジアの持ってきたお茶を飲み干し部屋を出て行った。

アンが相手にするという事は、十中八九黒焦げか丸焼きだろうネ。魚人達、南無三。

しっかし、たかだか2億チョイの海賊の為に五老星が白蛇を呼び出すなんて、タイガーがそんなに嫌いかね。…いや、アイツが元奴隷なのも関わってるのかな?どっちにしろ天竜人関係だろうし下手に首を突っ込むのはなぁ…嫌だなあ…

 

七武海もまだ全員集合には程遠いし、原作まで先は長いなあ…

 

 

 

 

 

あ、あとで五老星は鬼電の刑に処す。慈悲はない。

 

 

 

 

 

 

少し時を遡り、ゴア王国に天竜人の船が着港した日の夜

東の海(イーストブルー)のとある海域の小さな港村

あたりの闇に溶け込むように真っ黒に塗りつぶされた帆船が港へ停泊していた。

 

 

「遅いじゃないのよドラゴン!いつまで待たせチャブルの!!?」

 

 

「すまん。船医、この子を診てやってくれ。」

 

 

「な…おい、手当を急げ!!酷い傷だ!」

 

 

甲板をドタドタと医療班がひた走り、ドラゴンの連れてきた負傷者を医務室へと運ぶ。その様子を白いローブに身を包んだミュゼも眺めていた。

 

 

「わぁお、こりゃビックリ。この子も一歩を踏み出したわけだ。」

 

 

「?ミュゼ、知り合いだったのか?」

 

 

「ん〜?知り合いといえば知り合いだけど…この子もまた、時代に立ち向かう覚悟を持った同志だよ。

ドラちゃん、ウチにスカウトしてみたら?」

 

 

「まずは意識が戻ってからだ。…ゴア王国の子供か、あんな国にも子供は産まれてくる…。

彼女の前でも誓った。いつの日か、必ず俺はこの世界を変えてみせる…必ずッ…!」

 

 

「アツいなあこの人…まー頑張りなよ。私も神祖様のお導きだし、もうちょっと付き合ってあげようかなー。」

 

 

 

 

揺れる世界の水面下で、革命の龍は着々とその牙を研ぎ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「またお会いしたいなあ神祖様……でゅふふふふふへへへ……

ダメです神祖様私には可愛い二人の孫が…あん//でも神祖様がどうしてもと仰るならいつでも膜は再生させて…」

 

 

「………(今更だが、こんな変態が幹部で大丈夫なんだろうか革命軍…)」

 

 

 





はい、ガルパン最終章新キャラに心踊らせる獣です。
短いですがこれにてドーン島編は終了します、中々話が進まなくてすいません。
年末ですよ、師走も近くに迫り、ドタバタしがちな今日このごろ、獣はというと…仕事を辞めました(^^)
といっても転職先は既に決まってるので一月頭から別のお仕事に着手致します。死ぬほどどうでもいいですね。
今年はあと一、二話更新出来ればイイ感じのペースで頑張っていこうと思います。

次回、ストロベリーは空気

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