大海原の祖なる龍   作:残骸の獣

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突如現れた異界の特異点

それは犯罪の無い、完璧な〝正義〟の下に象られた理想郷

その裏に潜む光と闇

海軍、海賊、革命軍、三つ巴の争いの果てに待つ、彼女が見た〝正義〟とは

f〇te/g〇ound o〇der Epi〇 of 〇emnant

亜種特異点

人理定礎値EX

理想正義世界ONE PIECE ~運命の龍~



〝正義〟は時に、悪意にも善意にも姿を変える



今夏、執筆開始…








………できるかっ!!

ハイ、おふざけです。すんまへんでした。
今回は閑話だよ、ミラが主役だよ!やったぜ!






38 閑話、Happy Happy Wedding

「汝、この男を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、

愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓うのかね?」

 

「はい、誓います。」

 

「汝、この女を妻とし、

良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓うか?」

 

「ああ、勿論だ。」

 

「…宜しい。

諸君、二人の上に神の祝福を願い、結婚の絆によって結ばれた この二人を神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう、祈り給え。

2人が愛に生き、健全な家庭を築きますよう、我らが主に。

 

……Amen(エィメン)

 

 

彫りの深い、愉悦感じてそうな顔した初老の神父様から口上を頂き、それに応えるステラとテゾーロ。真っ白なウエディングドレスとタキシードを身にまとい、今まさに2人は幸せの絶頂期………

 

 

ハローグッデイ、祖龍だよ。久しぶりの登場だネ!

ただいまステラの結婚式に出席しております。長年の夢叶えた我らがハウスキーパーの晴れ舞台です、はい。

真っ白なウエディングドレス姿のステラの薬指にテゾーロが指輪を嵌め、2人は幸せなキスをして終了……

 

いやー良かった良かった、ステラちゃん幸せそうだ。

この日の為に高い金出して買ったカメラが火を吹くぜ!

 

此処は俺の職場、海軍本部廃船置場。その波止場に停泊する出来たばかりの元戦艦、その名もオックス・ロイズ号。その甲板上で、俺達はステラとテゾーロの結婚式を祝ってる。

無敵の船大工、トムの頑張りあって、なんとか年内に進水出来たこの船に戦闘能力はなく、観覧用の客船として生まれ変わった。本来なら政府主導の下、海軍本部のイメージアップやらなんやら、オカネの話に使われる予定だったのだが……主催者権限(パトロンのチカラ)により無理矢理この結婚式をぶち込んだ。ここぞとばかりに権力使ったよ、二人の門出を祝う為だもんネ。

 

「もう、離さないでね…?」

 

「嫌がったって離すもんか!」

 

熱いキスを交わすステラのお腹には新しい生命が宿っていた。俗に言う〝できちゃった婚〟というヤツだが、2人が幸せならオッケーです!

 

「お腹の子、来年には産まれるそうですわ。名前も決めてあるんですって。」

 

「すてらのこども…?」

 

「ええ。イルミたん、お義姉さんになるんですよ。」

 

「おねーちゃん…わたしが…おねーちゃん…」

 

どっちか言うと従姉妹なんだろうが、まあ細かい事はこの際気にしないでおこう。お姉さんだよイルミーナたん!

 

「ステラには新しい命が…という事は彼女は交尾を…」

 

「先生、お願いですからステラさんを問い詰めに行かないでくださいね…?」

 

なんか不穏な事を呟いてるレムとそれをなだめるモネちゃんが視界に映るが、気にしちゃダメなのだ。なんたって今日は祝の席だからネー!

 

「では、この場を取り纏めた者から一言頂こうか。中将殿?」

 

不敵な笑みを浮かべた神父からマイクを渡された。

こんの男…

 

「私に振るのか、良い趣味してるな神父殿…

新郎新婦、2人ともあの運命を乗り越え良くここまで漕ぎ着けたな。

…ステラ、良く頑張った。これからは生きたいように生きろ、それがお前の〝自由〟だ。

テゾーロは……そうだな…ウチの優秀な家政婦を持っていくんだ。不幸にさせたら、仮令弟子でも遠慮なく落雷を脳天に叩き込むからな?」

 

「望むところだ、ミラさん…!」

 

ちょっと顔引き攣っとるで弟子ぃ。横でステラちゃん必死に笑い堪えとるがな。

 

「男に二言は無しだぞ?死ぬ気で守れ。

………結婚、おめでとう!」

 

ファンファーレが鳴り響き、参列者から拍手喝采が巻き起こる。

今日という日が2人にとって最高の時間になりますように。

これも人間らしい行いだろ?

 

 

……………………

 

 

「ホラよ、姐御に頼まれた料理だ。

この我が直々に設えたんだ、一欠片でも残しやがったら全員燃やすからな?」

 

ぶっきらぼうに言うアンと、後ろから運ばれてくる絢爛豪華な料理の数々。

アンは性格はともかく、料理の腕は本物だ。聞いた噂じゃ最近海軍食堂からスカウトが来たらしい。

大きな縦長テーブルにはサンドイッチのような片手で摘める料理に始まりガッツリ系のパスタやハンバーグ、果ては鍋までがズラリと並ぶ。

 

「うっほおおおお美味そうじゃのう!」

 

「落ち着かんかガープ貴様!」

 

「こりゃ高級ホテルのディナーにも負けてないね。アンタ達、ちゃんと手は洗ったかい?」

 

来賓のガープ爺さん達も楽しんでくれてるようだ。センゴクさんは数少ない休みを取ってもらって出席してる。

 

因みにクザン、サカズキ、ボルサリーノの三中将はただいまお仕事中、センゴクさんが抜けた穴を補う形で入って貰ってる。将来大将に最も近い3人には丁度いい機会だとセンゴクさんも納得したうえでの判断だ。

クザン兄さんがかなり渋っていたけど、後でアンの料理を差し入れに行くと言って納得させた。サカズキ中将とボルサリーノ中将が逃げない様に上手く押さえ付けてると思うよ。

 

そんな訳で、人数は少ないが披露宴が始まった。

 

…因みに酔う前に済ませておこうとステラによるブーケトスが行われ、見事花嫁のブーケを手に入れたのはモネちゃんだった。素敵な相手が見つかるといいネ!

 

 

 

……………………………

 

 

 

 

「あの3人が大将になったら、私は辞めてもいいか?」

 

「む…それは…五老星が納得すまい。

今や君は海軍にとって欠かせない存在だ、急に辞められると困る。」

 

「やっぱりか、あのジジイ共め…」

 

酒を2人分注ぎながらセンゴクさんとぼやき合う。ケーキカットの後、酒の瓶を開けたその瞬間から、披露宴は宴会へと姿を変えた。

周りを見渡せば、イルミーナは酔ったガープ爺さんに抱き着かれて嫌そうな顔してるし、レムはお鶴さんと何やら話し込んでいる。ガスパーデ、ゾルダン、ロシナンテの三人トリオも酒が入ってるのかテゾーロに絡んでて…あーあスパンダムの奴、早々にダウンしてるよ。酒弱いのに無理しちゃって。お目付け役のカリファちゃんに膝枕されながらすっげえ冷たい視線で見下されてるな。

ゼファー先生、マリアさん、それから最近訓練校でシゴかれてるらしいジェイク君は親子水入らずで話してる。いやゼファー先生の横に大量の一升瓶見えるからありゃ絡み酒だな。ジェイク坊、南無三。今度訓練校に顔出しに行ってやろう、アインちゃん元気してるかな?

モネちゃんとテリジア、2人ともリキュールの瓶をラッパ飲みしながら隅っこでコソコソ何を話してるんだ?モネちゃん顔真っ赤やで?あの変態、純心無垢なモネちゃんに一体何を吹き込んでやがる…

二頭身の素敵な御仁、タナカさんはTボーン君とサシで飲み比べか。渋いネ。

アンは料理を追加で作ると言って厨房に戻って行った、どうやら作った麻婆豆腐を神父にえらい気に入られてしまったらしい。他にもウチの非番の部下達が何人かいるから大体出席者は40人くらいかな。思い思いに楽しんでる。

 

…ひっそりとは何だったのか

 

「まあ、楽しんでるならそれでいいか。」

 

「君は酔わないのだな。」

 

「ん〜?まあな。レムやアンもそうだが、私達は酒にめっぽう強いらしい。その辺も人間とは違うということだ。」

 

そう言って升になみなみに注がれた日本酒っぽい酒を一気に飲み干す。

もう一升瓶を五本くらい俺氏とセンゴクさんで空にしてるが、まだまだいけるで?センゴクさんの方は顔赤くなってて、いかにも酔ってるってカンジだけど。

龍って酒に強いんだよねー。

 

今日は波もほとんど無く、風が暖かくて心地いい。絶好の結婚式日和だ。

 

「ふふ、風が気持ちいいな。」

 

「………私があと15歳若ければなぁ。」

 

「口が軽くなってるぞ、センゴクさん。」

 

「…むっ、こりゃイカン…」

 

ほけーっとこっちを見てたセンゴクさんは慌てて姿勢を正した。まあミラ美人だからネ、気持ちは分かるよ。

だがしかし、恋人とかは俺氏には関係ないですし?もはや記憶の彼方だけど、前世にもそんな相手なんて…悲しくなってくるからやめよう。

実践経験無いまま祖龍ボディになったんだよね…悲しみ。

 

センゴクさんもたまの休みくらい飲んだくれたっていいのだ、自由だからネ。

 

 

 

 

大将専用の執務室

 

 

「アアア〜結婚式行きたかったぜ〜…」

 

「黙って仕事せえクザン。センゴク大将が居らん分は儂等でせにゃあならんのじゃ。文句言わずシャキシャキ働かんかい。」

 

「へいへ〜い。

……俺もミラと酒飲み交わしたかったなァ、そんでもって酔った勢いであわよくば…」

 

「そりゃア無理だろうねェ。

ミラちゃん、滅茶苦茶酒豪だし。ありゃトンでもない蟒蛇(うわばみ)だよォ。」

 

「マジかよ…

ていうかボルサリーノ、お前ミラといつ飲みに行ってたんだ!?抜け駆けしやがって!」

 

「わりと良く誘われるよォ?

大体はイルミーナちゃんの惚気話だけどねェ。」

 

「かぁ〜っ!羨ましいね!

俺なんてこないだレムに窓から吹っ飛ばされたってのに。」

 

「ありゃクザンが新入りの女海兵に手ェ出そうとしたからじゃろ。自業自得じゃ。」

 

「だーって若い女の子なんてウチの隊にゃ入って来ねぇし!」

 

「その様子じゃとセクハラに関しては全く反省はしとらんようじゃのォ…いっぺん燃えるか?」

 

「君の所はねェ、セクハラの元凶が居るから…まァ…。

でも、不用意に若い女海兵が来られてもねェ。激戦区に望んで行くサカズキの所は言わずもがな、ウチだって天竜人案件が多いんだし、下手に気に入られて聖地(向こう)連れて行かれても困るよォ。

そう考えたら、お鶴さんとミラちゃんの部隊が女性は一番安心して職務に集中出来るよね。」

 

「それでも割り当てて欲しいモンは欲しい!」

 

「…下らんのォ、男手がありゃ良かろう。面倒な揉め事抱える前にミラん所が請け負ってくれるなら好都合じゃ。」

 

「だって花が無えだろ花が。

長い航海の最中にむさっ苦しい野郎共ばかりじゃ気が滅入るじゃねーの。」

 

「花だけじゃ仕事出来んわい。」

 

「そう言うサカズキだって、休日はイルミーナと遊んでんだろ?そりゃ心のどっかで女の癒しを求めてんのよ。」

 

「イルミーナはまだ小娘じゃ…」

 

「アレ?知らねぇの?

イルミーナ、あの姿で実年齢20位だぜ?悪魔の実の副作用で成長が遅いだけで。」

 

「なん…じゃとォ……!?」

 

「(あーあの顔、知らなかったねェ…

完全に娘の成長に付いていけない親父の顔だよォ。)」

 

「馬鹿な…儂はずっと娘の様に慕って…」

 

「(しかも、これからイルミーナちゃんにどんな顔して会えばいいのか分かんないってカンジだねェ)」

 

「(律儀かよ…)」

 

 

 

 

 

さてさて、真昼間なのに結婚式と称して酒飲みまくってる今日この頃ですが。センゴクさんもダウンしてしまったので仕方なく1人船縁に腰掛け、騒ぐ他の連中を眺めながら酒を煽っている。

そんな俺氏の傍に近寄ってきたのは酒瓶とグラスを片手に持ったステラちゃんだった。

 

「ようステラ、テゾーロの方はいいのか?」

 

「ガスパーデ達にもみくちゃにされてるからね、今日くらい放っとくわ。」

 

向こうの方でテゾーロはガープ爺さんに絡まれて野球挙やってる。見聞色使うのは卑怯だろ爺さん…

 

「思い返せば、ステラが一番付き合い長いんだもんな。あっという間だったから忘れていたよ。」

 

「うふふ…そうね。

……ミラには本当に感謝してるわ。あの日私を拾ってくれなかったら、今この瞬間は味わえなかった。

本当にありがとう…」

 

「私はきっかけを作っただけだ、後はお前の努力の賜物だよ。それはとても美しい、尊い物だ。

お前なら大丈夫。

私がいなくてもテゾーロが守ってくれるさ。」

 

「うん、ありがとう…

そう言えば、ミラは結婚しないの?今はそんなに言われないけど、昔は島へ遠征に行くたびにラブレターやら贈り物を貰っていたじゃない。」

 

「私か?私はなあ…

色々人と違うから、恋人など考えたことも無かったな。

それにこの身体はな、子供を作れん。そういうのとは無縁なんだよ。」

 

「…そう、ごめんなさい変な事聞いて…」

 

「?…いや、気にするな。」

 

ステラちゃん、露骨に落ち込んだ。

何故や、龍って人間とは身体の作りとか色々違うからホニャララして子供作る必要ないんやでって言っただけなのに!?

あっ、そう言えばステラちゃん俺氏が龍ってことも知らないのか。すげえ誤解させたかも…

話の内容変えよ!?な!?

 

「そ、そう言えば産まれてくる子の名前はもう決めてるんだったな。どんな名だ?」

 

「お医者様とレムの話だと産まれてくる子は女の子らしいから…『シルヴィア』にしようって彼と決めたわ。

テゾーロは黄金を操れるでしょ?だから男の子だったら『ゴルドー(金)』、女の子だったら『シルヴィア(銀)』って前から話してたの。

…この子達は私みたいにお金に困る事が無いようにって。」

 

そう言いながら第一子(シルヴィア)を宿すお腹を優しく撫でるステラ。

世の中どこ行ってもカネが付き纏うもんなー、験担ぎにしちゃいい名前だ。

 

「シルヴィアか、いい名だ。

産まれたら是非、私の所にも連れてきてくれ。」

 

「ええ、必ず。」

 

指切りげんまん、嘘ついたら雷鎚千発のーます。

 

その後もステラから今後の事について色々話した。

テゾーロは賞金稼ぎを続けながら本来の夢であるエンターテイナーの道を進むらしい。グレイテストなショーマンになるのを期待しよう。

聞けば俺氏のあげた財宝を元手に色々とコネクションを作り、巨大カジノ船を建造するらしい、そこで本業をするんだって。密かにトムにも話してるんだそうな、トムならホイホイ作っちゃうんだろうね。

カジノの従業員はヒューマンショップから奴隷を買い、所有権を得てから首輪を外す。そんで終身雇用するか自分が買われた額まで働いて故郷へ帰るか相談して雇い入れるらしい。2人は奴隷の辛さを知ってるからな、このシステムで1人でも多くの奴隷が自由を取り戻せるようになるだろう。背中の傷も別の焼印で上書きさせるようだ。

 

「天竜人に目をつけられないようにしないといけないな…」

 

「ええ、だから連中を上手く利用する算段も整えた。

…もう、使われるのだけは2度とゴメンよ。」

 

た、逞しくなったなステラたん!

 

 

テゾーロは賞金稼ぎとしての腕もかなり高い、まあ俺氏の弟子やし?ゴルゴルの実も上手く馴染んでいるようだ。本人曰く、「次のステージへ行けそうな気がする」らしい。多分〝覚醒〟の事だろう、今後が楽しみだ。

…それから、内緒の話だが彼の腕を見込んでテゾーロを七武海入りさせようという話も五老星に持ち出してみた。実力は問題なしなので後は名前が売れればなんとかなりそうだ。やったね!

これでこの前連絡とったタイヨウの海賊団船長『海峡のジンベエ』君、それから五老星が渋々推してきた『天夜叉』ドンキホーテ・ドフラミンゴ君も七武海に加入予定だから…やったねミラちゃん!七武海が揃ったよ!

 

いやー疲れました!これにて大将白蛇業終了です!

 

……なーんて、軽々と辞めさせてくれないだろうなぁ…

 

「おーいミラ!ミラぁ!」

 

物憂げに考えていると向こうからぶんぶんと手を振りながらガープ爺さんが走ってきた………パンツ一丁で。

 

「あら変態だわ。」

 

「変態だな、サカズキ警察に連絡するか…」

 

「酷い!?

ワシはただテゾーロの奴と野球挙で遊んどっただけじゃ!」

 

不健全極まりないなこのジジイ!

というかテゾーロ頑張ったな、あの英雄をパンツ1枚まで追い詰めたのか。

ちらっと向こうを見ると真っ赤になってガスパーデ達に介抱されているテゾーロ(18禁)の姿が。ああ、前はタオルで辛うじて隠れてましたよ。

 

「そうじゃミラ、オヌシも交ざるか?

楽しいゾぉ!?」

 

からのダイナミックセクハラ発言ですか、随分酔ってんな英雄さんよぉ…

 

「ガープ中将!?女性のミラに野球挙なんてセクハラですよセクハラ!」

 

「いいぞ。」

 

「ほらミラもこう言って……

へ…?いいの!?」

 

意外だったのかぽかーんとしてるステラちゃん。

ええで、だって楽しそうだもん。

 

「偶には羽目を外すのもアリだしな。」

 

「絶対羽目を外すタイミング間違ってるわよ!?」

 

「ヨォシよう言った!

センゴクも潰れとる様じゃし邪魔するヤツはだれもおらん!存分に羽目を外せい!ぶわははははははッ!!」

 

 

 

 

「いいぞ」

 

ミラの放った一言は決して大きな声では無かった。だが常日頃、影ながら彼女の為に正義を尽くす耳聡い者達が反応するには充分すぎた。

 

「(なっ…!?)」

 

「(馬鹿な……)」

 

「(そんな…嘘…?)」

 

「(あの…あのミラ中将が…)」

 

「(永遠の憧れ、絶対不可侵の偶像(アイドル)、超絶美女のあの人が……)」

 

 

 

「「「「(野球挙だとおおおおおおおッッ!?!?)」」」」

 

 

その時、式場に電撃走る…ッ!!!!

 

「おおおおねおねおねお姉たまがやきゅーけん〜〜ッ!?!?

許しません!赦しませんわそんな事!お姉たまの裸体を堪能していいのは私とイルミーナたんだけふもがっ!?!?」

 

彼等の判断は一瞬だった、一番反対しそうな存在を瞬時に見極め、1人が後ろから羽交い締めにし、もう1人がその口へアルコール強めの酒を流し込む。

この間僅か0.5秒!

 

「〜ッ!?〜〜〜ッ!?………きゅぅ」ガクッ

 

哀れ酒に溺れさせられたテリジアは目を回してノックダウン。南無三。

無言でハイタッチし合う2人の姿を見て、モネは素直にドン引きしていた。

 

その頃、ミラとガープはというと

 

「ルールはどうする、ガープ中将?」

 

「そこは私が審判を努めよう…

神に使う者として公正公平に判断を下す、構わないかね?」

 

審判(野球挙に審判などという概念が必要なのか疑問だが)に名乗りを挙げたのはテゾーロとステラの式を執り行った神父だった。名をオニキスという。

 

「ルールなんてあったのか、初耳だな。まあいいや、頼むよオニキス神父。」

 

「よろしい。では今回はオーソドックスルールを適用し、ミラ殿とガープ殿の一体一(サシ)での勝負としよう。

残機は4つ、ジャンケン(勝負)に敗北した者は裸に剥かれその姿を海軍食堂で配布される明日の一面に掲載されるのだ。双方、覚悟はいいかね?」

 

愉悦たっぷりの笑みで説明する神父。

海軍食堂の新聞とは構内新聞のようなもので、海軍内のちょっとした出来事を纏めて掲載している。売れ行きはそこそこで、あまり好き好んで購読する者もいないマイナー新聞だった。

 

「負ければ晒し者か…いいぞ。そっちの方が面白そうだ。」

 

「ワシも構わん!勝負にゃリスクが付き物じゃからのう!」

 

2人とも快く承諾。

ガープは裸のうえからワイシャツ、ネクタイ、下はパンツとズボン。

ミラはブラジャーのうえからワイシャツ、下はパンツとズボンでそれぞれ4つの残機を準備した。

 

「う…またキツくなったか…」

 

そう言ってミラはワイシャツのボタンのうち上二つを外した。ワイシャツの下で窮屈そうにしている二つの果実が谷間を作り揺れている。

 

「ゾルダンが鼻血吹いて倒れたぞ!?」

 

「担架ー!担架持ってこおい!」

 

外野は何やら騒がしくなっているが気にしない気にしない。

 

「では始めよう…

やぁきゅうう〜すうるなら〜、こういう具合にしやしゃんせ〜。

アウト…!セーフ…!

よよいのォ……」

 

バリトンボイスで掛け声を歌う神父のタイミングに合わせ、2人が手を振りあげ、同時に突き出した。

 

「「よいっ!!」」

 

ミラが出したのはチョキ!

 

ガープが出したのはグー!

 

「「「「いよっしゃあああああああああッ!!」」」」

 

大歓声が船を揺らす。ガープはともかく、外野がとにかく喜んでいた。

 

「む…くそ。見聞色で予測した筈なのに…」

 

「甘いのぉミラ!

まだまだワシぁ衰えとらんぞ!」

 

一見只のジャンケン勝負に見えるが、これは見聞色の覇気を応用した高度な腹の探り合いだ。より精度の高い見聞色が勝利をつかむ鍵となる。

 

「仕方ない、一枚脱ぐか……

………いや、いい手を思いついたぞ。」

 

そう言ってミラはブラジャーのフロントホックを外し、器用にワイシャツの下からブラジャーを抜き取った。

 

「んな…ッ!?」

 

「ふう…これで少しはラクになったか。」

 

ふふんと胸を張るミラ。ブラジャーから解き放たれ、より胸の形が強調されたことにより、俗に言う裸ワイシャツ(上半身のみ)状態になった。更に酒気を帯びてほんのり赤くなったミラの肢体は底知れぬエロさが滲み出る。

その姿は男は勿論の事、女ですら魅了した。勿論、あの英雄とて例外ではない。

 

「ゾルダン!ゾルダアアアアアアンッッ!?

しっかりしろォ!」

 

「ゾルダン大佐が鼻から血をぶちまけてまた気絶してるぞ!」

 

「なんて安らかな表情で眠ってやがる…!!」

 

哀れ、犠牲者がここにも1人…

 

「では2回戦といこう…双方準備は?」

 

「いつでもいいぞ………」

 

向かい合うガープへ見せつけるように胸を寄せて挑発するミラ。

今にもワイシャツからはみ出しそうな二つの果実が左右に揺れる、ガープは目を剥きながらそれに釘付けになった。

 

「ミラ…オヌシ……これが狙いかァ!?」

 

「私は負けず嫌いなんでな、使えるものはなんでも使わせてもらう。

どうしたガープ中将、胸に気を取られて見聞色が乱れているぞ?ほれほれ〜♪」

 

「ぬおおおおおお卑怯なああああ!?」(ガン見)

 

「なるほどねぇ、そういう事かい。」

 

「…?おつる、何か知っているの?」

 

いつの間にか実況席を作って2人の対決を眺めていたつるがぼやく。レム、アン、やっとガープから解放されたイルミーナも同席していた。

 

「見聞色の覇気ってのはね、精神を安定させていないと効果を発揮しないのさ。ミラはああやって、ガープの集中力を途切れさせる気だね。まさに女の武器って奴だよ。」

 

「見た目とは裏腹に、かなり高度な戦略…なの?」

 

「いやあからさまに浅いだろ。」

 

「おんなのぶき…私にもできる?」

 

「イルちゃんは…あと10年ぶんくらい体が大きくなったらねえ…」

 

「う〜…ぼいんぼいんのないすばでー…」

 

悪魔の実の副作用で精神と肉体の成長が人のそれより遅い為、残念ながらお色気とは縁遠いと悟り、胸をぺたぺた触りながら残念そうに項垂れるイルミーナ。

 

「アウト…!セーフ…!

よよいの……」

 

「「よいっ!!」」

 

今度はミラがチョキ、ガープがパーでガープの負けだ。ネクタイを剥ぎ取って放り捨てた。

その後もミラのお色気作戦に見聞色を乱されたガープは立て続けに2敗、辛うじて1勝したもの残りはパンツ一枚となった。

対するミラはズボンを脱ぎ、下はパンティ1枚に上は裸ワイシャツというかなり危ない格好になってしまっている。(因みにゾルダンは仲間達による必死の介抱の甲斐あって復活していたが、ミラの下着姿を見てまたもや気絶した。)

 

「中将負けないで!」

 

「ガープ中将ォ!」

 

「俺達の英雄!」

 

「実質あと一枚剥げば私達の勝ちです中将、だから頑張って!」

 

男性と比べ女性は隠さなければ行けない部分が2箇所ある為、まあそういう事になる。

観客達の歓声を受けて、再び立ち上がる海軍の英雄。そう、仮令パンイチでも彼は英雄なのである!

 

「なんだ?私の部下が多い筈なのになんで私こんなにアウェー?」

 

「くうううぅぅぅ…ッ!!

ミラのスケベボディに惑わされるなワシィ!これが最後の勝負じゃあ!」

 

何度も自分で頭を叩き覇気を研ぎ澄ますガープ。これが普通の戦闘ならもう少し格好がつくのだが…

 

「では、いこうか。

アウト…セーフ…よよいのォ…」

 

お互い腕を振り上げる

 

「ヌゥおおおおおおおッッ!!!!」

 

「………ッッ!!!!」

 

万全を期す為祖龍の霊眼も合わせ、ミラが見聞色で感じ取ったのはグー!

ならば先を読みパーを出すのが道理!

しかし、ミラは更に精神を研ぎ澄ませガープの行動を………

 

「…!?馬鹿なッ!?」

 

一瞬ミラが動転し、そのまま腕を振り下ろした。

 

ミラが出したのはチョキ!そしてガープの出した手は…

 

 

グーだった。

 

 

「「「「ウオオオオオオオオオッッ!!!!」」」」

 

大歓声に船が揺れる、吼えるガープとは対照的にガックリと肩を落とすミラ。勝敗は決した。

 

「やった!やったわ!」

 

「英雄がやってくれた!」

 

「ガープ中将、やっぱり貴方は英雄です!野球挙の英雄ですよォ!」

 

「そ…そんな…私が読み違えるとは…」

 

「ガハハハ!どうじゃぁ!」

 

「何故だ?手を出す直前、中将から覇気が完全に消えた。貴方は最後一体何をした…?」

 

「アレかぁ?そうじゃのぉ…」

 

ん〜…と首をひねって少し考え、ガープは言葉を紡ぐ。

 

「勘」

 

「「「「「勘かよッ!?!?」」」」」

 

「下手に覇気を使うとミラに詠まれるじゃろ?じゃからボーッとしながら勘で出した、それだけじゃ!」

 

ぶわはははははは!と笑うガープ。

 

直前まで予測の出来ない〝勘〟に敢えて頼る事により、一か八かの賭けに出た。ミラが油断したタイミングを突き、勝利をもぎ取った。それが英雄の掴んだ運命である。

 

「さて、勝負は決した訳だが…どうするかねミラ中将。ワイシャツと下着、どちらを脱ぐか。そしてそのまま戦闘を続行…「続行だ…」……ほう?」

 

ざわり、と観客がどよめいた。

 

「まだあと一枚ある…脱ぐのは…これだッ!!!!」

 

そう言ってミラはパンティを脱ぎ捨てた。どこまでも負けず嫌いな龍である。

 

「なっ…何ぃ!?じゃがそんな事をしたら………ッッ!?!?」

 

ガープは見た。

パンティを脱ぎ捨てたミラの肢体を隠すのはもはや布一枚、丈が長くギリギリ大事な部分が隠れる程度の長さしかない裾のワイシャツだ。少しでも激しく動けばその下に潜む一般向け小説ではお見せ出来ない部分が顕になってしまう。それを押してなお、正真正銘裸ワイシャツ一枚でガープへと立ち向かった。

彼女は凛々しい、いつだって尊大で、部下からの羨望の眼差しを常に浴び続けてきた。そんな高嶺の花である彼女が、流石に恥ずかしいのか頬を赤らめ、必死に裾を手で抑え羞恥の表情を浮かべながら前屈みになるその官能的な姿は……

 

「う…流石にちょっと恥ずかしいな…」

 

刺激が強過ぎた

 

「「「「「ぶはァっ!?!?!?」」」」」

 

式場に鮮血が舞う。ガープも、ロシナンテも、ガスパーデも、他の部下達も男女問わず。余りのエロさに脳が耐え切れず鼻血を吹き出し倒れた。(ゾルダン?いい奴だったよ…)

 

「さあガープ中将、これで正真正銘最後の戦いを……アレ?」

 

ミラが前を向くと、鼻血を吹きながら白眼を剥いて気絶しているガープが目に映る。それだけではない、後ろに控える者も皆、悩殺されていた。

オニキス神父が顔色一つ変えずミラに近づき、右手を掴み上に掲げる。

 

「ミラ中将の勝利。」

 

「あれぇーーーッ!?」

 

第一時野球挙大戦は、多くの血を流した結果、祖龍の勝利により終結を迎えたのだった。

 

それを見ていた素面のアンは一言

 

「…なぁにこれぇ」

 

「若いねぇ、アタシもミラくらい若いときゃあれくらい……」

 

「つるばあちゃん、けっこう酔ってる?」

 

「あの2人を最初に止めなかったあたりそうかもね…。ハァ…私、居なくなって本当に大丈夫なのかしら…」

 

ステラは頭を抱えこれから先を憂いていた。

 

…………

 

あの宴の後、起きたセンゴクに裸ワイシャツ状態のミラを目撃され、全員彼から小一時間程説教を受けた後、宴はお開きとなった。幸いにもミラの〝無自覚幸せパンチ〟を受けずに生き残ったのは早々に酔い潰れてずっとカリファの膝枕で看病されていたスパンダムだけだ。ある意味彼は不幸だったと言えよう。

因みにこの事件を知ったクザンは血の涙を流しながら後悔したという。

更に約束通り次の週交付された海軍食堂新聞には「気絶しているパンイチのガープ中将と、その後ろで裸ワイシャツ状態に笑顔でVサインをするミラ」の姿が一面に記載されており、構内新聞史上最速最高の売上を記録した。この新聞はあっという間にコング元帥の下まで届き、再びミラは2時間ほど説教を受ける事になる。

 

そして例の宴でも…

 

「18万!!」

 

「25万!!!!」

 

「50万ンンンッ!!」

 

「俺の全財産だァアアアアアアッッ!!!!」

 

司教が貧血で気絶する前、辛うじて撮影された一枚の写真を巡り、熱い戦線が繰り広げられていた。

その結末は…皆様のご想像にお任せしよう。

 

ただこの新聞は、一部の物好きな者達にも頒布されていた。

 

それは五老星による厳重なチェックを掻い潜り赤い壁を越え、一般の者の踏み込めぬあの土地にまでも。

 

 

 

 

 

「あら…下には面白そうな方がいるのですね………アマス。」

 




はい、これにてステラの結婚式は無事?終了しました。
幸せになるんやで…

読者方も薄々勘づいていると思いますが、モリアが脱落してしまったためテゾーロがその枠に埋め込まれる予定です。このへん原作との乖離が激しいですね、注意で(今更)
冒頭の悪ふざけは…すんませんした、FGOのCM集見てたらどうしても書きたくなったのでここで消化させてもらいました。モンハンやワンピとは違い、別ベクトルで獣の厨二心を擽ってくるんだよ…FGOは…
ま、今回出てきた神父もちょいキャラでもう登場する予定は無いので多少はね?

次回、七武海勢揃い、そして避けられない出逢い

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