連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~   作:アゲイン

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どうもアゲインと申します

父、戦闘に飽きる
そんな十話でございます


推理ゲームの舞台装置

「ダンガンロンパという作品にあたって、こいつらは島の行き来を制限するものでしかなかった。いわゆる行動規制の理由付けみたいなものさ。初代は学校が舞台なのに対し、2は孤島だ。つまり環境という点だけ見れば2のほうが自由度がある。そこを何とかするために、分かりやすい脅威が必要なんだよ。島を行き来するのを橋に限定し、そこに門番を置くことで、ここはまだ行けないよ、としていたわけだ。舞台装置ということで、必ずしもこいつらでなければいけない理由はなかったし、もっと大胆に、橋が浮き上がってくるギミックでもよかったんじゃないかと思うんだよ。こいつらだって海に一体いれば泳いだり船を漕いだりしようなんて思わないだろ? それで行動制限は出来上がる訳だ。ならばなぜ、こんな厳ついやつを門番にしようとしたか。私が思うに、前作を知って要るがゆえの認識、それを利用したかったんじゃないかと思うんだ。大胆に改造された各種おしおき部屋。あれほどの技術があるならこんな兵器があっても不思議じゃない。そう考えたプレイヤーもいたんじゃないかな? そのため、主人公たちがいる世界がゲームだとは気付けない、気付きづらいようにしていたんだ。つまりはプレイヤー自身を欺く大胆かつ巧妙な手口だったということだよ。

 

 ちなみに今の状況とは一切関係がない」

 

 長々と持論を語ってすまなかったね。読者の皆様もなんじゃこいつと思ったことだろう。心から謝罪するよ。

 

 しかし、そんなことでもしていない限り、とてもじゃないが暇なんだよ。これは私のリハビリを兼ねた復帰戦だというのに、あいつらモノケモノ相手にどんだけ手こずっているんだか。お前らあれだぞ、数人がかりでモノケモノ一体倒せないようじゃあのモノミ以下という評価しか加えられないぞ? もっと本気ださなきゃさ。

 

「しっかし、本当に弱くなっているなオールマイトの奴」

 

 今も人型のモノケモノの一撃を食らって動きが止まっている。以前であれば軽く吹き飛ばすくらいはしてくれていたもんなんだが。こんなんじゃ私、お前に倒される気がしないよ。

 

「おっと、また一人吹き飛んだ! これは大きいぞ!!」

 

 蛇型の動きに惑わさせたところを馬型に轢き飛ばされた。あれは13号君だったかな。乱戦では君の個性は活かせんだろうに、足を引っ張っているな。個性と同じで。

 

「ダメだ。こんな低レベルの皮肉しか思い浮かばない。こんなんじゃフリースタイルでやっていけないぞ。もっとよいライムを絞り出すんだ」

 

 もはや自分がこうしてここにいる意味を感じなくなってきた。もういいだろう、このくらいで勘弁してやるか。

 

「あー、左右堕君左右堕君。聞こえているかい? こちらおじさん。こちらおじさん。オーバー」

『こちら左右堕です。絶さん、やっぱ過剰戦力だったみたいですね。一、二体戻しますか?』

 

 モノケモノ達を起動させたピンマイクに向かい、制作者であり私の部下である左右堕君に話しかけていた。

 彼はこの超人社会で燻っていた技術者で、自分が無個性であることを理由に不当な扱いを受けていたところ、私がスカウトしたわけである。

 抑圧された社会から抜け出し、のびのびと成長した彼はダンロンでいうところの『超高校級のメカニック』の才能を開花させたのだ。

 

 今ではこうして私の右腕として活躍してくれている。頼もしい限りだ。

 

「いや、もう飽きちゃってね。これ以上居ても意味ない感じだから、『あれ』、やっちゃおう」

 

 

『分かりました、合図はお願いします』

 

 

 私の指示で彼が準備に入る。さて、それでは本日の締めと参りますか。

 自分の顔に笑みが刻まれるのが分かる。ここまでの愉悦はそう、やはり初めて彼らを裏切ったときのに匹敵するだろう。結果を今から想像してにやけてしまうな、これは。

 

「あーあー。あー、ヒーロー諸君。今宵はなんともつまらない時間となってしまった。主催がこんなことを言うのもなんだが、君たちではキャストとして不十分だったらしい。そんな君たちにはせめて最後に余興に付き合ってもらおう。なに遠慮はいらない。存分に楽しんでくれ」

 

 こんなところにもう用はない。憂さ晴らしついでに、見せてやろう。敵として研鑽した私の力を。

 

「脳力解放」

 

 言葉はスイッチとなり、脳内に普段とは異なる電流が流れる。その刺激により脳が活性化する。

 

「才能選択。武闘家、物理学者、幸運」

 

 それはこの身に本来あり得ざる才能を呼び覚ます。身体は一瞬にして引き締まり、瞳はビルの構造を丸裸にする。

 

「ヒーローの皆様は、クロに決定しました。スペシャルなおしおきを用意しております」

 

 一層悪辣に、気狂いのように告げてやる。

 

「それではいってみましょう。レッツ処刑ターイム!!!」

 

 振り上げた拳。打ち付けるのは戦闘でガタガタになった屋上の床。物理学者の才能で見抜いたその弱点に、渾身の一撃を食らわせる。

 武闘家の才能、浸透勁によって衝撃は全体に伝わり、下の二つの階層もろとも屋上は崩れ落ち始めた。

 

 

 

 思い上がった人間に神が下した雷が如く、それは破壊をもたらした。次々と崩れていく階層、一見強靭に見えた建築物も、物理学者の目から見ればトランプのタワーと一緒だ。適切な力を加えれば容易くこうなる。

 

 さらに左右堕君にはこのビルの各所に爆弾を仕掛けてもらっている。屋上で暴れる程度では反応しないが、階層ごと落ちてくるような衝撃には耐えられず、ポップコーンのように弾けるだろう。それによりビルはあっけなく崩れていく。

 

 道化が自分の罠に嵌まるように、私もまた自由落下をしつつ、満足に動かない体でそれでも仲間を助けようとするオールマイトをただただ笑う。悔しげに顔を歪ませる彼の姿を見て、私は手を叩いて彼らを応援してやった。

 

 そうして最後、一階も崩れ、私たちは地上に叩きつけられた。

 

「『バベルの塔』、執行完了」

 

 幸運の才能により傷一つなく降り立った私は、服に着いた埃を払いながらその場を去ろうとした。そんな私を止める声が弱々しく響く。

 

「ま、ま・・・て・・・・・・」

 

 屋上よりもボロボロになったオールマイトの姿の近くには、他のヒーローが全員無事で横たわっていた。どうやらあの状況できちんと全員を救出できたようだ。

 

「オールマイト、今のお前の弱っちい個性では私には勝てない。元超高校級の天才にして、超超人級の絶望たる私に、もはや君では役不足だ」

「なぜだ・・・。なぜそこまでして・・・・・・」

 

 道を違えたかつての友人に、俺はこう言い放った。

 

 

「言っただろう。絶望。ただそれだけだよ」

 

 それだけ告げた私はもう振り返ることなく、すでに退避したモノケモノ達が向かった先へと歩き出す。

 

 彼らヒーローは私の舞台装置足り得なかった。

 推理ゲームに必要のない暴力だけが、彼らの利用価値だったというのに。

 それすらない者達に、もはや興味はなかった。

 

 

 こうして、かつての焼き増しのような戦いは終わった。残るのはただ、瓦礫と、崩れ去るヒーロー達だけだった。




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