連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~ 作:アゲイン
発明少女が語る
そんな四十話でございます
「そもそもどうして私が才改学園に所属しているかというとですね、あれはなんとも稀な経験であったと言わざるしかないことがございまして。
雄英にサポート科としての入学が決まってから少しして、私の発明のためのインスピレーションを得ようと気分転換に外を散歩していたんです。
それが夜ということだったのですが、私の個性は『ズーム』といいまして、かなり遠くのものをはっきりと目視できるのです。その存在ははっきりと私のこの自慢の瞳に映り込んだのですよ。
暗い夜空を颯爽と飛び行く五つの物体。
厳めしいそのフォルムは試験で出たという機体とはまるで設計思考が違うもの。
一目それらを見た瞬間、まさしく稲妻が全身を貫きました。
気付けばそれの行く先を追いかけて駆け出していました。
感情は、けしてそう前向きなものじゃありませんでしたけどね。
走って走って、たどり着いたのは海岸沿いの小さな港。
堂々とした出で立ちのその機体、ロボとかそういう類いの機械を間近で見た時、私は生涯で初めて挫折というものを味わいましたね。
『これは無理だ。これは、越えられない』
そんな思いで目の前真っ暗になってた時です、あの人にであったのは」
「・・・・・・・・・・・・お、おう」
まずい、あまりにも一人でしゃべるものだから意識が飛んでいた。
マシンガンみたく放たれる言葉の暴力、この場合濁流というべきか。それによって理解するより早く脳内が言葉に占領されるこの感覚、新手の精神攻撃かなにかか。
この話になるまでに既に三十分以上経っているぞ。いったいどれほどしゃべるつもりなんだ。
「その人は無防備に佇んでいた私に気づいてわざわざ話しかけてくれたんです。それなのに私・・・」
「あの、もういいから」
まだ話を続けるだと!?
いいや限界だ! 止めるね!!
「もう、けっこうです」
「そうですか? まだまだ序の口なんですがねー。いいんですよ遠慮せず、敵側の情報知り放題なんですから」
「・・・あなた、いったい立ち位置はどこなの?」
わからないのだ、この少女。
長々と語る内容をできる限り整理してみたけれど、なんというか完全に敵側、ということではないみたいなのだ。
「・・・所属している組織の情報を、何故そこまで躊躇なく話せるの?」
「んー、所属・・・とは言いましたが、表現するならそうかな? といったところでして。例えるなら中間というか、どっちでもないというか・・・・・・」
まいった。なんなんだこの子?
「じゃあ、理由は「挑戦です」」
おん?
わたしの疑問に被せるように食いぎみに答える明。
少し驚いてその顔を見れば、見覚えのある感情をその瞳に宿しているのがよくわかった。
挫折。そうか挫折がヒントだったか。
「折れましたよ。そりゃあもうポッキリと心が。今までどんなことがあっても止まらなかった開発の意欲が根こそぎです。
私のドッ可愛いベイビーたちではまるで追い付けないスケールの違いがそこにあったんですもん。いくら私でも、膝から崩れくらいの衝撃がありました」
じっと床を睨みながら、拳を作る手に力が込められていく。
今彼女は言わなかったが、当時の心境ははっきりいって絶望と呼べるものであったのだろう。
目指す遥か先をまざまざと見せつけられ、正気ではいられなかったのだろう。
「それでも私は、あの人に」
そこを父に、絶望の首魁たるモノクロームに見出だされたのだろう。あの人は絶望が生む行動力というものを誰よりも理解している。けして停滞しない負の活力こそ、あの人が信奉してやまないものだ。
「勝ちたいんですよ、私は。
あの人たちに、天才に! 超人に!
今までは満足のいく子供たちを造り上げることがなによりだった!
でもそれじゃあ、届かないんですよ!!
なら、なんでもかんでも、どんなものだって利用してやる!
組織だなんて関係ない!
技術があるならなんだって身につけて自分のものにしてやる!
あなたもだ!
あなたに協力するのも、あなたを利用してより高みにいくためだ!」
それが覚悟、なのだろう。
純心だったはずの、ただの少女だったろうに、やはり毒が強すぎる。
あまりにかけ離れた存在は、その影響によって容易く人の価値観を揺らがせる。自分が小さい存在なんだと、強制的に縛り付ける。
「わかった」
それでもだ。
それならそれで、いいのだろう。
「・・・いいんですか?」
「構わない。利用されてあげる」
この少女は、絶望への同調ではなく対立を選んだ。それはなによりも得難い資質だ。弱さを理由に投げ出さなかったのだ。
父はおそらく、それを見抜いていたのだろう。だからこうしてあえて身内として彼女を巻き込んだのだ。
私の成長のために。
「これは試練だ。挑戦という試練だと父はいっている。
そしてそれは示さねばならない。
はっきりと、形として。
そのために、わたしたちは協力しあう必要がある。
目的のためには、それが必要だ」
雄英体育祭。
それが今度の山場となるだろう。
「わたしはあなたを利用して、ヒーローになる」
「私はあなたを利用して、あの人を越える」
利害の一致はそもそもできているのだ。拒否することはありえない。
こうして、わたしたちは手を結ぶ。
そこには正義だとか悪だとか、小難しいことはなにもなく。
ただ前に進みたいという、当たり前な思いだけがあった。
読了ありがとうございました
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ハツメちゃんの設定に反応してくださる方が何人かいてちょっと驚きました
そこまで突飛な考えじゃないだろうと思っていましたので
彼女はこんなかんじで関わってきまーす