連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~   作:アゲイン

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どうもアゲインと申します

大人じゃなくても楽しいよね

そんな四十三話でございます


大人の嗜み

 権謀術数の権化とも言えるモノクロームを相手に、相澤は事細かに賭けのルールを決めていった。

 その重箱の隅をつつくような様子は警戒の現れではあったが、される側からしたらええかげんにせぇよ? と言われるくらいに鬱陶しいものであった。

 

 

「・・・・・・じゃあもう一度確認するけど、

 

 一つ、勝負は一回

 二つ、不正は禁止

 三つ、ジョーカーは除く

 四つ、ディーラーは店員がする

 五つ、手札の交換は交互に行う

 

 ・・・・・・これでいいね?」

「・・・・・・ああ」

 

 確認の声を聞き流すようにしながら、相澤は入念にカードの粗がないかを一枚づつ確かめてた。

 

「いい加減信用したまえよ。いくら調べたって何の変哲もないただのカードさ。そんなものに仕込みを入れるような低俗な奴ではないつもりなんだがね」

「君に信用なんてあったのかい? 初耳だ」

「ふふ、ぶっ飛ばすぞYou」

 

 こうして関わっている以上、この喪服の男も敵という立場の人間なんだろうが。どうしてか、この二人の間柄というか関係性がよくわからない。

 オールマイトから見て、いがみ合っているようにも見えるし、それにしてはギスギスした関係という風には見えない。

 

「あのー、まーだかかりそうっすかね?」

 

 膠着している現状に不満があるのは何も一人ではない。巻き込まれた店員も迷惑そうにしている。

 まあ訳もわからずこうしてキャラの強い集団とはあまり関わりたくないのは当然のことだろう。

 

「早くしてもらいたいんですけど」

「悪いね青年。あとで可愛い娘紹介してあげるから」

「まじすか!」

「気をつけろ青年。絶対よこらんことになる」

「だいじょぶだいじょぶ。ちょっとゴーストが囁いてるだけだから」

「ほらみろ青年。こいつ事故物件押し付けてるだけだぞ」

「違いますー家庭が大変なだけですー」

「そんな相手を紹介するやつがあるか。君、こちらの女性にしたまえ。顔が壊滅しているが環境は素晴らしいぞ」

「どっちにしろ問題物件じゃねぇか!! なにかしら壊れてるじゃん!! なんだよこの女顔面ブルドーザーじゃん!!」

 

 喪服の男が出した写真にはどう見ても女性とは言えないような容姿の、ギリギリ人に見えるくらいの人物が写っていた。

 

「・・・おわったぞ」

 

 そんな喧騒にかけらも興味を示すことなくカードを検査し終わった相澤のぼそりとした呟きが漏れる。

 何故だかすでに疲労しているように見えるが、そういえば彼はドライアイであったことを思いだした。凝視をしすぎて眼に負担が掛かったのだろう。

 

「おいおい、そんな状態で大丈夫か?」

「大丈夫だ。問題ない」

「いや、本当に大丈夫かい」

 

 その血走った眼が大丈夫だとは思えないのだが。

 

「まあいいかそれじゃ店員君。始めよう」

「まともな娘お願いします」

 

 そしてまとめられたカードがシャッフルされ、それぞれに配られる。

 五枚の手札が揃い、勝負の幕は上がった。

 

 

◆ 

 

 

「(まずまず、といったところか)」

 

 相澤は自分の手札を見て、ひとまずはそう評価した。

 既にジャックのペアが揃い、フルハウスも視野に入れれれば上位の役を揃えることもできるだろう。

 

「(しかし)」

 

 目の前の相手は、そんなことが通じる相手ではない。

 

 

 

 

 

「どうやらいい手配になったようだね」

 

 この男、モノクロームが、ただの賭けをするなどとは思えない。

 

「あれ? ちょっとまて」

 

 こいつ。

 

「なんで、目隠ししてるんだ?」

 

 そう。いったいいつの間にかこの男、視界を覆っていたのだ。これではカードの絵柄どころかこちらの表情すら見えないはず。

 

「(なのに何故、こちらのことが・・・!?)」

 

 まるでわかっているかのように、内心を言い当てた。

 

「天才と言っているだろう? この程度のことにいちいち驚くことはない。さあ、カードの交換はどうするかね?」

「気にするな。なめているだけだ」

「いうことじゃないよね。今そういうこというもんじゃないよね?」

「さっさとしてくれませんか!! いつまでもこうして拘束されてちゃ敵わないんですけど! 店長にどやされる前に終わらしてもらわないと」

「オーケーオーケー。ならば私から、三枚チェンジだ」

 

 裏側に伏せられた手札の内から選び、その内容を見ることも、迷いの一つもなく確信さえ見せつけてくる。

 

「・・・こちらは二枚だ」

 

 相澤も手札を交換し、そろった役を確認する。

 

「(ツーペア)」

 

 交換してキングのペアができた。だがまだだ。この程度では勝てる手札とは言えない。

 

「交換したい。そっちは」

「では私も。一枚だ」

「こちらも一枚」

 

 次の交換で、ついにきた。

 

「(よし!)」

 

 上出来だ。

 スペード、ダイヤのジャック。

 クローバー以外のキング。

 相手はジョーカーがないので最上位の役が揃うことはない。

 

「(今できる最善手、といったところか)」

 

 これ以上は役を崩すことになりかねない。これの手札で勝負しなければならないだろう。

 

「俺はこれでいい」

「そうか。じゃあ」

 

 

 

 そういったこの男の顔は、喜色染まった、およそ悪人がするようなそれとは隔絶したものであった。

 そして。

 

 

「------オォール、チェエエンジ、だ」

「・・・っ!?」

 

 

 それまで交換した手札を、そっくりそのまま捨て去った。

 

「・・・何を考えている・・・・・・!?」

「賭け事に必要なことが、なにかわかるかね相澤君」

 

 指を組ませて顔の前で構える。たったそれだけの動作に、どうしようもなく悪寒が走る。

 覆いの奥にある、その瞳が恐ろしい。

 見えずとも見られているのだ。その感覚が、今はっきりと全身を貫いている。

 

「・・・クレバーな思考だ」

「常人ならば、だ。私はそうじゃない」

 

 配られたカードを弄びながら、くっきりとその笑みを深くする。

 

「こうくるならば、こうくる。そういたならば、そうなる。だがね、そうならないのが、定石など意味をなさない事柄が、この世にはあるのだ。事象とは、時にわけのわからない結果を生み出す」

 

 

 さあ、勝負といこう。

 

 

「・・・・・・」

「お互いに、カードをオープンしよう」

 

 

 そこにある光景は、とてもではないが信じられないことだった。

 

 

「・・・・・・ばかな」

 

 そこにあったのは、こちらの手を越える配役。

 

「エースの・・・フォーカード!?」

「ほう、素晴らしい結果となった」

 

 まぎれもなく、それは確かに現実としてそこにある。

 

「楽しい時間だった」

「っ!? 待て!!」

 

「ああ、緑谷 出久君、だったかな」 

「「っ!?」」

 

「そもそも知ってた情報さ。お遊びにも緊張感がいるだろう? 君、お代だ。いくぞ」

「さらばだ」

 

 驚愕を露にするこちらなど歯牙にも掛けず、その場を後にしようとするあいつは、最後にそんなことを残して姿を消してしまう。

 

「くそっ!」

「相澤君・・・・・・」

 

 敗北感だけを抱かせるだけ抱かせて、嵐のように過ぎ去っていった。

 

 

 

 

「よかったのか?」

「いいさ、別に。それより調子はどうだ」

 

 

 

 なあ、オール・フォー・ワン。

 

 

 

 




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