連載版 僕のヒーローアカデミア~希望の娘と絶望の転生者~ 作:アゲイン
こんな感じで戦うよ!
そんな五十三話でございます
朝の訓練場は人が少ない。
見れる範囲には人影すらない。
ただし、あいつらを除いて、という条件は付くが。
「---おらっ!!」
地上を走り回っているのは伊留御の野郎だ。
背後に作り出した光球から光線を何本も打ち出している。
狙いは上空を飛び回るあの女だ。
「・・・ふっ・・・はっ・・・」
飛行ユニットだとかいうのを背中に生やした希望ヶ峰 希だ。
光線によって隙間の少なくなった空を縦横無尽に動き回り、的を絞らせない。
爆豪の目からしても、対応に手こずるスピードである。
「ぜぇええあああ!!!」
「・・・・・・!!」
絶叫のち---極光。
伊留御の渾身を込めたであろう一撃は、中央から延びる極太の光線を補助するように幾重もの細い光線が複雑に絡み合って突き進む。さらには光の珠が進行上に展開したかと思えば、爆発したかのように空間を喰らい潰す。
回避など許さないとばかりに放たれた破壊光線の奔流は、その本質たる光の速さを存分に発揮して希に迫る。
希もまたユニットの形状を変形させ、被弾面積を極端に減らす。
さらには驚くべき行動に出た。
「マジかよっ・・・!?」
本来であれば回避のために動くのがセオリーだ。だがそれを希はしなかった。むしろ全速力で伊留御のいる地上へと急降下を始めたのだ。
「・・・・・・!」
「・・・っちぃい!!」
一直線に地面へと落ちた希。
追突ギリギリで九十度に切り返し、速度を殺すことなく伊留御に向かって低空を駆ける。
伊留御も展開していた光の柱の一部をほどき、地上から迫る希へと光撃を繰り出す。
驚異的な反応速度で回避運動を繰り返し、ついに伊留御へと手を掛ける。
「---こなくそぉおおお!!」
最後の交差、伊留御は右手に溜めた光ごと拳を叩きつける。
「・・・・・・!!」
希もいつのまにか展開していたガントレットのようなもので応戦する。クロスカウンターのような形で撃ち合った拳はお互いを弾き飛ばした。
伊留御は希の加速を受けて。
希は伊留御の光爆によって。
それによって制御がなくなった光柱の類いが分解され、綻ぶようにしてその形をなくしていく。
降り注ぐ光が幻想的だが、そんなものに気を回すような奴がいないことが残念である。
「・・・ちくしょう」
「まずった」
すぐに立ち直った二人がそれぞれ立ち上がる。その表情は台詞と違ってそこまで暗いものでない。
「・・・朝っぱらからなにやってんだ」
「あ、来てたんだ」
「おせーぞ」
「ふざけんな十分早いわ」
爆豪の存在に気づいた二人は服の埃を払いながら近づいてくる。あそこまでの戦闘を繰り広げたというのにあまり疲労していない。
「何やってんだよ?」
「模擬戦」
「見りゃわかんだろ」
「規模がデケーよ。ちょっとは自重しろ」
こんなところであんな戦闘を繰り広げては他の奴らにだって能力がばれるだろう。いくら早朝でも来ている者がいないわけではないのだから。
「つーか、なんであれを避けれんだよ」
「あれ?」
「あのやたら眩しいのだよ」
「俺の『ビックバンアタック』だな」
「「クソだせぇ」」
「買うぞ。高値で買うぞその喧嘩」
まあいい。それより聞きたいのはなぜあんな行動をしたかだ。
「あんなことした根拠があんだろ」
「まあね」
そういった彼女は体をほぐしつつ説明を始めた。
「そもそも電飾の攻撃の性質に問題がある。
大きな範囲を塗りつぶした攻撃は、光の速度で迫る巨大な柱のようなもの。確かに避けることは困難。
でも、この面での攻撃にはある欠点もある。
一つはそれが光であること。
測定方法は数多くある。
発射のタイミングや範囲、それらは事前にわたしのセンサーに見切られていた。
そしてそれが一直線の攻撃であったこと。
いくら範囲が広くても、わたしがいたのは上空。移動は地上と違って自由であるのだからとれる選択は多い。
当然、面で迫る攻撃でもその範囲から外れてしまえば問題ない。
急速降下はその中で一番ましな選択だった。
それだけ」
「・・・・・・」
軽くいってくれるが、そもそもそれをできるのはこの女だけだ。
「(俺なら、できていたか・・・?)」
そう考えてしまうが、あの状況でできることはないと思ってしまう。
「別にあなたがそうする必要はない」
「っ!?」
思考を読まれているのか、すぐさま言い当てられた。
驚く爆豪の顔を興味なさげに眺めている希からはそんな言葉が出てくる。
「これは模擬戦。わたしはあの状況でどう戦うかという経験のために
ああしていた。これが本当の戦いならもっと他の手段を使う。
あなたもそう。
どんな状況であれ、相手にしたときに自分の能力を十全に扱えるようになればいい」
そういう訓練をこれからしていく。
基礎から発展まで、きっちりと。
そうつぶやく希の瞳は赤く染まり、爆豪はなぜかそれに悪寒を感じて背筋を震わせていた。
まだ特訓の日々は始まったばかりである。
どれほどの困難があるのだろう。
爆豪の受難は、まだその全貌をまるで見せていないのだから。
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