「私…虐められてるの」
「…………チェックメイト」
「また負けたー!ちょっとは手加減してよー!」
「悪い悪い、フランが強いからつい本気を出してしまうんだ」
「むー…つまんない…」
俺は目の前にいる少女…フランドール・スカーレットと言う名前らしい…とチェスで遊んでいた。たった今俺が3連勝したところだ。
「ねぇ、どうして白はこの屋敷に来たの?」
「ん?そうだな…暇つぶしついでにあの霧を止めにきた」
そう言って遥か上にある小さな天窓を指さした。そこからあの紅い霧が見えた。
するとフランは少し暗い声で「…そうなんだ…」と呟いた。
「あの霧ね…お姉様が出してるんだ」
「フランには姉がいるのか?」
「うん、レミリア・スカーレットって名前なんだ。すっごい強いんだよ!運命が見えるんだよ!」
「……運命…ね…」
「でも、お姉様は私の事嫌いなんだ…」
「なんでそう思うんだ?」
「……ずっとここに閉じ込めてるから」
「……どうして?」
「私ね…『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』を持ってるの」
「それはもう『程度』で済まされる領域を超えてるな」
「そう?……それでね、私『狂気』に憑かれやすいの」
「狂気…ね…」
「そのせいで、私…産まれてすぐにお母様とお父様を殺しちゃったんだ…」
「…………」
「それでお姉様に嫌われて、ここにずっと閉じ込められたの。もう500年近くも」
「へぇ……そうなのか……」
「…………もっと驚いたりするのかと思ってた」
「そうか?……でも、2つほど言いたい事がある」
「なに?」
「まず1つ、フランは姉からは嫌われてない」
「‼……ど、どうしてそう言い切れるの⁉」
「もし俺がフランのお姉さんの立場だったら、すぐに殺してるからだ」
「⁉」
嘘じゃない。
多分俺ならそうしてる。
これだけは断言できる。
「だってそうだろ?親が殺されたんだ。しかも産まれたばかりの子供に。自分の幸せを奪われたんだ。フランのお姉さんがフランを殺さなかったって事は、フランを守ろうと思ったんだろ」
「……じゃあなんでお姉様は私の事を閉じ込めてるの⁈」
「そりゃ……狂気に憑かれやすい妹をそのままにしてたら、もしかしたら無益に人を殺すかもしれないだろ。だから閉じ込めた。フランにはこれ以上人を、家族を殺して欲しくなかったから。あ、間違えてもお姉さんが自分の為にしたんじゃない。これ以上フランに罪を背負って欲しく無かったからだ」
「…………」
「それともう1つ……俺はフランが羨ましい」
「………………え?」
フランは驚いた顔で俺を見た。「こいつは一体何を言っているんだ?」と顔に書いてあるのがよく分かった。
すぐにフランの顔が怒りに変わった。
「…馬鹿言わないでよ!私の今の状況のどこが羨ましいのよ⁈」
「親が死んだ原因がはっきりしてる事。他人から愛されてる事」
フランの顔が怒りからまた驚きに変わった。
「俺も産まれてすぐに親を無くした。理由は不明、謎の病だった。その後、母方の実家に引き取られた。その家の住人は2年後には俺以外誰もいなくなった。病気、事故、自殺、妖怪に襲われた、理由は様々だった。その後も俺と関わった人はみんな死んでいった。その頃から俺は『死神』として人里の住民から嫌われていた」
俺はまるで物語を語るかのように話した。フランはなにも言わず、ただただ俺の話を聞いていた。
「外に出れば汚物を見るような目で見られ、暴力、暴言の嵐。食料も生きていける最低限、しかも屑のようなものしか貰えなかった。その全ては『俺に関わった人はみんな死ぬ』って言う説明のつけようがない理由によって起きたものだった」
「…………」
「13歳の誕生日だった。俺は人里から追い出された。理由は『13歳はもう大人だから』。それを理由に真冬の吹雪の中、何もない状況で追い出された。……あの時、俺の命の恩人がいなかったらここにはいないだろうな…」
「………」
「その時思ったさ、『俺の周りにいる人が死んでいく理由が分かったらなぁ…』って。だって理由が分かったら、それを注意して生きていれば、こんな状況にはならなかったんだからな」
…………あー、暗い話になったな……
俺はすぐに笑顔になった。
「でも、それがあったから今の自分があるし、色んな奴らに出会えた。だから羨ましいと思ってもやり直したいとは思わないかな」
「……今は…関わった人は死なないの?」
「まぁ、もっともな疑問だな。今は大丈夫だ。人里から追い出された後は何故か無くなったから」
「そう……私も、白のようになれるかな?」
「それはフラン次第だな。フランはどうしたい?」
「私は……私はもっとお姉様とお話したい!遊びたい!外に出て、色々見てみたい!でも……」
「狂気、か」
「うん…」
さて、どうしたものか……狂気なんて……そうか…
「…克服したり制御できればいいんじゃないか?」
「……無理だよ。私ももう数えきれない程試したけど、成功した事なんて……それに制御しようとしたって狂気を表に出さないと…」
「表に出している間、俺がフランを止めると言ったら?」
「え?…………いいの?」
「あぁ、ここまできたら放っておく訳にはいかないしな」
「……信じていい?」
「あぁ、こんな俺でも信じたいなら」
「……やってみる」
「そうか。じゃあ戦闘準備だな」
俺は立ち上がるとフランから少し離れ、短刀と護符を手に持った。
「白……死なないでね」
「あぁ……」
次の瞬間、フランの雰囲気が変わった。さっきまで無邪気にチェスで遊んでたフランの雰囲気はもう一欠片も無かった。
あるのは『殺気』、いや『狂気』だけだった。
Q.シリアスタグつけろや!
A.まぁ、気が向いたらね
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