死神と呼ばれた少年   作:深海龍

2 / 14
むかしむかしあるところに、心優しい死神が住んでいました






九尾といなり寿司

「...あー暑い...」

 

俺は今日の掃除と畑仕事を終えて、縁側で団扇を扇いでいた。

説明するのを忘れていたが、今の季節は夏。葉月の初め頃である。

 

「昼飯どうしようかなー...あんまり食欲ないしなー」

 

そう言いながら縁側から離れて台所にある冷蔵庫を開けた。

 

「...ない、何もねぇ...」

 

中を確認すると、魔猪(まぎょ)の肉、麦茶、調味料が少々残っている程度だった。

 

「こんな暑いのに魔猪なんて食いたくねぇしな...昼飯抜くか」

 

それが身体に悪いことは承知しているが、流石に脂っこい魔猪を食べる気にはならなかった。

 

「こういう日は...河童の所にでも行くか。涼しいし、将棋に勝てば何か食わしてくれるだろ」

 

そうと決まれば話は早い。麦茶を香林堂で貰った水筒に入れ、いざ出発...

 

「おい、白は居るか?!」

 

とはいかないようだ。

 

「はいはーい、今出ますよー」

 

少し駆け足で玄関に向かうと、既に戸が開けられていた。戸の前には、明るい黄色の髪と9本の尻尾、ケモミミが特徴の美人が立っていた。

 

「藍...」

 

「なんだ?何故その...何とも言えない顔をするのだ?」

 

「...すまん、チェンジで」

 

俺の頭に拳骨が炸裂したのはほぼ同時であった。

 

 

_________________

 

「...何でこんな暑い中正座させられてんだ俺...」

 

「開口一番であれは流石に怒るぞ」

 

「仕方ないだろ!こんな暑いのに玄関に暑そうな尻尾9本も持ってる奴来たら誰だって言うわ!」

 

「ほう...また私の拳骨をくらいたいらしいな...」

 

「すいませんでした」

 

「全く...」

 

彼女はこの幻想郷の管理者である八雲紫の式である八雲藍。実は大昔、玉藻の前として色々してたとかなんとか...

俺はある理由からこの人に監視されて、こうして定期的に家に来ている。俺は別に最近何かしたわけじゃない。

 

藍は溜め息を吐くと、9本の尻尾の中から風呂敷を取り出した。

 

「それは?」

 

「これは人里で買った油揚げだ」

 

「何故それを今ここで出す?」

 

「白、これでいなり寿司をつくりなさい」

 

「ハイハイいなり寿司...ってちょっと待て、こんな暑いのに酢飯作れって言うのか」

 

「いなり寿司だから当然だ」

 

「ふざけんじゃねぇよ!こっちは今から河童の所行って涼みながら将棋して勝って昼飯奢って貰って、あわよくば白狼天狗の尻尾触りたいと思ってたのに、何で酢飯作らなきゃ...」

 

言い過ぎたと思い藍の方を見ると、案の定怒りでプルプルと揺れていた。

 

「...おい白、今なんて言った?...」

 

「え、えっと...河童の所に行って...」

 

「違う...最後だ」

 

「...白狼天狗の尻尾を触りたい、と」

 

「...あんな奴の尻尾より、私の尻尾の方が綺麗だし、さわり心地も良いぞ!」

 

「そっちか!」

 

________________

 

 

あの後、仕方なく藍の為にいなり寿司をつくることになった。

 

暑い中、熱い酢飯を汗が入らないようにかき混ぜるのはかなりしんどかった。

 

そして今、酢飯を油揚げに詰める作業を藍と一緒にしていた。

 

「なぁ藍、今日はどうして俺の所に来たんだ?」

 

「何時も通りの理由さ。白が何かしてないか、監視目的だ」

 

「そうか...済まないな...人里の連中に言われてるんだろ?」

 

「......まぁそうだ...」

 

「全く...あいつらもしつこいんだよ。あいつらか「出ていけ」って言ったからこうしてるのにな...」

 

「...全くだ」

 

「....さ、全部出来たぜ。冷めないうちに早く持って帰れよ」

 

皿の上には綺麗ないなり寿司がこれほどかと並べられていた。

 

「...その、なんだ...白も食べるか?」

 

「え?...いいよ別に。藍好きだろ、いなり寿司。それに俺あんまり..グゥゥゥゥ...腹減って...」

 

「...プッ」

 

「笑うな!これ俺が一番恥ずかしいんだからな!」

 

「分かった分かった...それにしてもあんなタイミングで.....プッ...駄目だ、笑ってしまう」

 

「これ以上笑うとこのいなり寿司全部食べるからな」

 

「な!?それはズルいぞ!」

 

「...じゃあ食べるか?」

 

 

 

その後、俺と藍は気がすむまでいなり寿司を食べた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




人物紹介

黒川 白(くろかわ はく)

23歳

能力
霊力を操る程度の能力

名前通りの真っ白な髪が特徴の青年

両親を赤ん坊の頃に亡くし、彼の周りにいる人が次々に死んでいった。
ついたあだ名は「死神」

13の時に人里から追放された。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。