「ミホ(みほ)(ミホーシャ)!!」
三人の少女の声が店内に響く。
「……? ……!?」
「え!? あ、あれは、サンダースのケイさんに、アンツィオの安斎さん、それに去年の優勝校、プラウダの地吹雪のカチューシャさん!! まさか、全員有名校の隊長さんじゃないですか!!」
「ハァイ」
「アンチョビよ!」
「ふん。よく知ってるじゃない」
ケイ、アンチョビ、カチューシャの三人はみほ達あんこうチームの隣の席に座る。
「皆さん……。お久しぶりです」
「久しぶりねミホ」
「元気そうでなによりだ」
「それよりあんた、ダージリンに負けたらしいじゃない。情けないわね」
席につくなり気さくに話す三人だが、みほはやはり、どこか気まずそうである。
「みほさん、こんな凄い方達とお知り合いなのですか?」
華がみほに率直に思ったことを質問する。
しかし、それに答えたのはケイだった。
「イエス! 私たちと、あとダージリンとまほの6人は、小さい頃からの幼馴染みなの」
「ええ!? そ、そうだったんですか!? そんな話初めて知りましたよ!! 流石西住殿です!」
「ダージリンって、あの聖グロリアーナの? あ、そう言えばあの試合の後、みぽりん、ダージリンさんに連れていかれてたような」
実は聖グロリアーナとの親善試合の後、問答無用でみほの腕を掴んでどこかへ連れていくダージリンの姿が何人かに目撃されているのだ。
「みぽりん! 何でそんな凄いこと教えてくれなかったの!?」
「そうですよ西住殿!」
「えっと、それは……」
沙織と優花里に問われ、言いづらそうに困るみほを助けたのはもちろんこの人だった。
「まあまあまあ! 私たちみたいにスゲー有名人と幼馴染みだってバレると色々と厄介だろ? ほら、取材とか。だから秘密にしてたんじゃないか? そんなとこだろ? みほ」
「う、うん」
流石、我らがアンチョビ姐さんである。
「ま、積もる話もあるだろうけど、それはまた今度! 今は全国大会に集中しないとね! そうでしょ? 一回戦のお相手さん達?」
ケイの言葉でハッと我に帰るあんこうチーム。そう、今目の前にいるのは、みほの幼馴染みで有名人であるのと同時に、一回戦二回戦、そして準決勝で当たる高校の隊長たちなのだ。
「言っておくけど、私たちサンダースは例え相手がミホだとしても、いや、ミホだからこそ手加減なんて一切しないわ。千代美やカチューシャとも戦いたいしね」
「アンチョビだってば!」
「望むところよ」
ケイが、みほの幼馴染みとしてではなく、サンダース大附属高校の隊長として、みほ達に宣戦布告をする。
すると、そこへ別の声がかかる。
「……副隊長?」
あんこうチームとケイたちの間の通路を通りかかったのは、黒森峰の制服を着た少女二人だった。
「ああ、元、副隊長でしたね」
「ああん!? 誰だお前。だいたい、今は私たちがみほと話してんでしょ!」
黒森峰の1人の発言が頭にきたのか、すぐにアンチョビが反応した。
「あー! わたしコイツ知ってるわよ。確か、黒森峰の新しい副隊長で、名前は、逸崎 エリカよ!」
「逸見 エリカよ!!」
カチューシャの間違いを即座に訂正するエリカ。見事な切り返しである。
「ハァイ、まほ。久しぶり!」
「お前達……」
そして、もう1人の少女。西住 まほに皆の視線が集まる。
「お姉ちゃん……」
「「えっ」」
みほの呟きに華と沙織が反応する。
「………………ダージリンも一緒なのか?」
まほは一瞬みほに何かを言おうとするが、思いとどまると、そう問いながら店内を見渡す。
「ダージリンはいないわよ。そもそも、私たちだってたまたまこの喫茶店の前を通りかかっただけだもの」
「え!? そうだったの!?」
ケイの言葉に驚いたのは沙織だった。しかし、あんな風に同時に来たのに、実は皆たまたま通りかかっただけだったとは、これが幼馴染みパワーというやつだろうか。まぁ、ダージリンはいないのだが。
まほはそれを聞くと一つ息を吐き、再びみほに向き直り、
「……まさか、まだ戦車道をやっているとは思わなかった」
そう言い放つ。
「お言葉ですが! 去年の西住殿の判断は間違ってなかったと思います!」
「部外者が口を出さないで」
「……すみません」
エリカに睨まれ、スゴスゴと引き下がる優花里。
しかし、引き下がらない者もいた。
「あら、関係者ならここにいるわよ?」
そう口にしたのは、カチューシャだった。
「うっ、そういえば貴女は、プラウダの……」
カチューシャの言葉にエリカが口を閉じる。
「そこの子の言う通り。ミホーシャの判断は正しかった。そしてそこを狙ったのがわたし。つまり、黒森峰の連覇を止めたのはこのわたし、カチューシャ様なのよ!」
椅子の上に立ちあがり、ドヤッと胸を張るカチューシャ。因みにちゃんと靴は脱いでいる。
「……行くぞ、エリカ」
「あ、はい! 隊長」
立ち去ろうとするまほ達を一つの声がとめた。
「マホ」
「……何だ、ケイ」
「この間、約一年振りくらいにダージリンから電話が来たそうね?」
「……それがどうした」
「その様子じゃ、未だにケンカ中か……」
「えっ……」
ケイの言葉に反応したのはみほだった。
確かにみほは黒森峰を、そして戦車道を辞めてからは幼馴染みの誰とも連絡をとっていなかった。ケイやアンチョビからは電話もメールも大量に来ていたのだが、気まずくてそれに答えることはなかったのだ。
因みに、その当時のケイとアンチョビは、みほに嫌われたと夜な夜な枕を濡らしていたのだが、それはまた別のお話しである。
とにかく、自分だけが連絡をとっていなかっただけで、他の幼馴染みの皆は今でも仲が良いと思っていたし、実際、この間ダージリンから、よくカチューシャとはお茶会をすると聞いていたので、まさか姉とダージリンが一年もケンカしていたなど全く知らなかったのだ。
「お姉ちゃんとダージリンさんが……?」
「あー、えっとねミホ……」
「ケイ。余計なことは言うな」
「……はぁ、ハイハイ」
結局、まほとダージリンのことはわからず仕舞いでまほとエリカは行ってしまった。
「それじゃあ、私もこの辺で失礼するわね。大洗の皆、一回戦はお互い熱いバトルを期待してるよ。じゃあねミホ」
ケイは手を大きく振りながら、喫茶店を出ていった。
「……千代美さん。カチューシャさん。お二人は、お姉ちゃんとダージリンのこと……」
ケイに逃げられたみほは、次にアンチョビとカチューシャに質問することにした。
しかし、
「あー、私はよくは知らないんだよ。それと今はアンチョビよ」(アレのことだよなぁ~)
「わたしも知らないわ」(あのときのやつよね)
二人とも心当たりはあるようだが、みほに言おうとはしなかった。
「わたしもそろそろ行くわ。ノンナが捜してるといけないし。ああ、それと、あんた達の誰が勝ち上がってきても、準決勝でこのカチューシャ様がボコボコにしてあげるんだから、覚悟しておきなさい。それじゃあね、ピロシキ~」
カチューシャも一言そう言うと、店から出ていった。
「……皆、心配してたんだぞ?」
「え?」
すると、一人になったアンチョビが突然みほに話しかける。
「お前、電話に出ないし。メールも返ってこないし。マジで嫌われたかと思った」
「そ、そんなことは……」
「それでも何も言わず、何も聞かず、当たり前のように昔みたいに私たちがお前と話してるのは、今のお前が楽しそうだからだよ」
「……千代美さん」
「アンチョビよ。……何があったのか、どういう経緯でお前がまた戦車道を始めたのかは知らない。でも、また戦車道を始めたことに後悔はしてないんだろ?」
「……うん」
「今が楽しいんだろ?」
「……うん」
「戦車道が楽しくて仕方がないんだろ?」
「……うん」
「うん。ならよしっ。これで私も一安心だ!」
「千代美さん……」
「アンチョビよ! いい? ケイがいないから今のうちに言っておくわ。一回戦、サンダースなんかに負けるんじゃないわよ? 二回戦であんたと戦うのを楽しみにしてるんだからな」
そう言うと、アンチョビは右手をみほに差し出した。
「はい。私も楽しみです」
みほは軽く微笑みながら、アンチョビと握手を交わす。
「よっしゃ、私たちが来てからようやく笑ったな。やっぱりみほは笑顔が一番似合うよ。じゃあ、二回戦でな!」
アンチョビはそうキザな台詞を残して、店をあとにした。
まほとダージリンは約1年も喧嘩しているみたいです。
以前の電話で、まほが「お前から電話が来るとは思わなかった」と言っていたのは喧嘩してたからなんですね。
ちゃんと喧嘩の理由も、アンチョビとカチューシャが言っていた『あのとき』というのも後々書くつもりなので、お楽しみに。
因みに今回、この場にはいるのに一言も喋ってない人がいました。多分、ケーキに夢中だったか、寝ていたんでしょうねw
では次回、サンダース戦です。
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