6人の戦車道   作:U.G.N

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 アンチョビ姐さんとの出会いのお話。

 試合はまだだよ!

 どうぞ



安斎千代美です!

 イタリアを模した階段。

 その階段の下で、アンツィオ高校の戦車娘たちが整列していた。

 

 そして、彼女らが見つめる先には…………

 

「きっと奴らは言っている……ノリと勢いだけはある。調子に乗ると手強い」

 

 我らがアンチョビ姐さんが短いムチを持ちながら、演説をしていた。

 

 すると、戦車道のメンバーたちから、おぉ~という声が上がる。

 

「強いって~!」

「照れるなぁ!」

「でも姐さん。だけってどいうことっスか?」

 

「つまりこういうことだ。ノリと勢い以外は何もない。調子が出なけりゃ総崩れ」

 

 何ぃ!! 舐めやがってぇ!! という物騒な声が上がる。

 

 そんなメンバーを見て、アンチョビの横に立っているカルパッチョとペパロニが皆を宥める。

 

「皆落ち着いて。実際言われたわけじゃないから」

 

「あくまでドゥーチェによる冷静な分析だ」

 

「そう、私の想像だ」

 

 なんだぁ。あーびっりした。とあっという間に落ち着く面々。相変わらず、感情の起伏が激しい集団である。

 

「いいかお前たち、根も葉もない噂にいちいち惑わされるな。私たちはあの、マジノ女学院に勝ったんだぞ!」

 

「苦戦しましたけどね……」

 

「勝ちは勝ちだ」

 

 ペパロニの言葉に頷くと、アンチョビの言葉は続く。

 

「ノリと勢いは何も悪い意味だけじゃない。このノリと勢いを二回戦へ持っていくぞ。次はあの西住 みほ率いる大洗女子だ!」

 

「西住って、西住流っスか?」

「西住流ってなんかヤバくないっスか?」

「勝てる気しないっス」

 

「心配するな。いや、ちょっとしろ。何のために三度のおやつを二度にして、ちょくちょく倹約して貯金したと思っている」

 

「何ででしたっけ」

 

「前に話しただろ! それは秘密兵器を買うためだ!」

 

 おぉ~!

 

「こほん。秘密兵器と君たちが持っているノリと勢い。そして少しの考える頭があれば、必ず我らは悲願の三回戦出場を果たせるだろう」

 

 ゴクリと喉を鳴らすメンバー。

 

「皆驚け! これがアンツィオ高の必殺秘密兵器だぁぁぁ! あ……」

 

 ゴーン ゴーン

 

 十二時の鐘である。

 

 すると、メンバーたちはご飯ご飯! とアンチョビの横を走って通りすぎ、食堂に向かってしまう。

 

「こ、こらぁ! お前ら、それでいいのか!」

 

「今の季節、食堂のランチ売り切れるの早いんスよ!」

 

 そしてあっという間に、アンチョビ、カルパッチョ、ペパロニの三人と一輌の布の被せられた戦車だけが、この場に残る。

 

「はぁ。まあ、自分の気持ちに素直な子が多いのが、この学校のいいところなんだけどな……」

 

 と、自分の気持ちに素直じゃない金髪の紅茶っ子と黒森峰の石頭と大洗の今では内気になってしまった幼馴染み達を思い出すアンチョビだった。

 

 

 ーーー

 

 ーー

 

 ー

 

 

「天が呼ぶッ! 地が呼ぶッ!! 人が呼ぶッ!!!」

 

 公園の滑り台の上で、一人のツインテール少女が木の枝をかざしながら叫んでいる。

 

「少し落ち着けと人は言う!!!」

 

「その通りですわね」

 

「よくわかってるじゃないか」

 

「お姉ちゃん、ダージリンちゃん、あれ誰? 知ってる人?」

 

 みほがまほとダージリンに問う。

 

「さあ?」

 

「初めて見る子ですわね」

 

 まるで知り合いのようなツッコミをしていたが、二人も彼女のことを知らないらしい。

 

「ん? 何だお前ら。ここは私の縄張りだぞ。入国には許可がいる」

 

 ビシッと木の枝をみほ達に向け、敵意を剥き出しにする少女。

 

「私たちは遊びに来ただけだ」

 

「それに、公園は皆の場所ですわ」

 

 まほとダージリンは納得いかないと、少女に抵抗する。

 

「うるさいうるさい! この辺で私より強いヤツなんかいないんだ! だからこの公園も私のモンだ!」

 

「なるほど、意味わかりませんわ」

 

 少女の超絶理論についつい頭を押さえてしまうダージリン。しかし、ここにも負けず嫌いの西住流少女がいた。

 

「……ほう。お前が一番強いと?」

 

「当たり前だ!」

 

「なら、アレよりもか?」

 

 そう言いまほが指差すその先には、公園の入口に停めてあるⅡ号戦車F型があった。

 

「」

 

「どうした? お前はあの戦車にも勝てるのか? ちなみに私は勝てるぞ? 何故ならあの戦車を動かすことができるのは私だけだからだ」

 

 それは勝てると言っていいのだろうか?

 

「ず、ズルいぞ! ていうか、何でこんなところに戦車があるんだよ!」

 

「乗ってきたからだ」

 

「戦車が自転車感覚!?」

 

 滑り台の上と下で繰り返されるやりとり。

 まるで小学生の喧嘩である。まぁ、二人とも小学生なのだが。

 

「とにかく、これで私の方が強いとわかっただろ? さあ、さっさとこの公園を明け渡してもらおうか」

 

「な、なにをぉ! そうはいくもんか!」

 

 すると、少女は滑り台の上から飛び降りる。

 

「おおー!!」

 

「なかなかの運動神経ですわね」

 

 後で観戦していたみほとダージリンは少女の動きを見て感心する。

 

「だいたい、人と戦車じゃあ釣り合うわけないだろ! お前自身が私と戦え!」

 

「ふん。負け犬の遠吠えか」

 

「負けてねーよ! いいから、私と戦えよ! 何だ? 私に負けるのが怖いのか!」

 

「…………何だと?」

 

 まほの瞳に、再び炎が燃え盛る。本当に負けず嫌いである。

 

「……いいだろう。私自身が、お前の相手になってやる。その代わり、私が勝ったら何でも言うことを聞いてもらうぞ?」

 

「ふん! 望むところだ! 私が勝ったら、お前には私の下僕になってもらうからな!」

 

 バチバチバチッと互いの視線がぶつかり合った。

 

 

 そこからは、壮絶な戦いだった。

 

 かけっこから始り、鉄棒、登り棒、腕相撲に指相撲、手押し相撲にあっちむいてホイまで、いたる勝負をした。

 

 そして、時間が流れていき……

 

「ふん。これが西住流だ」

 

「くそっ! あと一歩だったのに!」

 

 最終的に、地に膝をつけ這いつくばるツインテールの少女と、それを上から見下ろすまほという形が完成していた。

 

「あと一歩? どこがですの?」

 

「お姉ちゃんが全部勝ったー!」

 

 日陰のベンチに座りながら二人の勝負を観ていたダージリンとみほは、勝負の終わった二人のところへ寄っていく。

 

「…………わかったよ、私の負けだ。ここはお前たちにくれてやる。好きなだけ遊べばいいじゃないか」

 

 そう言うと、ツインテールの少女は公園の出入口の方へとトボトボと肩を落としながら歩いていく。

 

「おい」

 

「……何だよ。まだ死者に鞭を打つつもりかよ」

 

 自分で死者って言うんだ。まほ達三人の心の声が揃った瞬間だった。

 

「私が勝ったら、何でも言うことを聞いてもらう約束だろ?」

 

「」

 

 少女は口を開いて固まってしまった。それはそうだろう。全戦全敗したあげく、その上言うことを聞けと言われているのだ。確かに初めにそういう約束はしたが、今の少女にはあまりにも残酷だった。

 

 故に、少女の目が少しだけ潤んでいく。

 

「な、なんだよぉ。これ以上何する気だよぉ。もう許してよぉ」

 

 涙声で訴える少女に、みほが近づいていく。

 

「許さん。それじゃあ私からの命令だ」

 

「ひぃぃ!」

 

「今から言うみほの命令に従え」

 

「へ?」

 

 話の流れ的に今目の前にいるのがみほという子なのはわかる。

 

(こ、この子の言うことを聞け? こいつ多分あいつの妹だよな? あんなヤツの妹なんて、何を言い出すかわかったもんじゃない。あ、そっか、私、今日ここで死ぬんだ……)

 

 何かを悟った少女は、諦めたように空を見上げる。

 

「君、お名前は?」

 

「…………安斎、千代美」

 

「じゃあ千代美ちゃん!」

 

 何を言われるのか、恐くて目を強く瞑る千代美。そんな千代美に掛けられた言葉は意外な言葉だった。

 

「これからは私たち友達ね! はい、これ決定! じゃあ、一緒に遊ぼ! 千代美ちゃん!」

 

「…………へ?」

 

 あまりにも突然だったので、うまく反応できない千代美。

 

 しかし、そんな千代美の両手を引っ張る者が2人。

 

「ほら、みほの命令だ。早くしろ、千代美」

 

「さっさと行きますわよ、千代美」

 

 千代美の手を引っ張り、先に駆け出していたみほの後を追うまほとダージリン。

 

 

 その強気と少しだけ変わった性格のせいか、一緒に遊ぶような仲の良い友達がいなく、いつも一人で遊んでいた千代美。

 

 そんな千代美の手を引っ張る二人の少女と、その先を駆けるひまわりの様な笑顔をしている少女。

 

 この三人は千代美にとって、初めての友達となった。

 

 千代美はブンブンと首を振り、瞳に溜まった水を払うと……

 

 

 

「……ったく! 命令ならしょうがないな!!」

 

 

 

 と、しょうがないなんてちっとも思ってないような、そんな楽しげな声で言うのであった。

 

 




 西住姉妹は、ダージリンの次にアンチョビと出会っていたんですね。
 まほは小さい頃からいろいろと訓練をしていたため、余裕でした。そして、流石みほ。
 まほも、みほならそう言うだろうと思い、みほに任せたんですね。
 以上、アンチョビ姐さんとの出会いでした。

 次回はアンツィオ戦です

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