機動戦士ガンダム00 The human race's reformation 作:K-15
鍔迫り合いになる両者、刹那は慣れない武器での戦闘に苦戦を強いられていた。
重量バランスが整っておらずツインドライヴの出力も低下してしまう。
その事を戦いの中でグラハムは気付いていた。
「その新装備、使いこなせていないようだな!」
アヘッドのビームサーベルを振り払う。
接近戦に特化した機体のアヘッドは今のダブルオーと比べて戦闘能力が高い。
機体のポテンシャルをフルに使い切る事で接近戦ではガンダムと対等に戦う事も可能なように設計されている。
そしてグラハムにはそれが出来た。
「ぐっ!?」
アヘッドのパワーに握っていたGNロングソードを振り落とされてしまう。
そのパワーで機体のバランスも崩されてしまい背部から海に落ちそうになる。
両手に武器の無くなったダブルオーにグラハムの猛撃が迫る。
ビームサーベルでガンダムに斜めに一閃する。
「いいや、まだだ!」
刹那はガンダムの右足を蹴り上げた。
ふくらはぎに増設されたハードポイントにGNカタールが装備されている。
刃にはクリアグリーンの新素材を使用しており超高温で高い切断力を生み出している。
ビームサーベルを右足のGNカタールで無理やり斬り付けるとぶつかり合った刃から激しく火花が飛び散る。
「このような技を持っているとは、うれしいよ少年!」
刹那はGNカタールで攻撃を斜めに受け流す。
そのまま勢いを付け機体を一回転させ姿勢を元に戻すと振り向き様に左手にビームサーベルを握る。
だがグラハムの反応も素早く再びビームサーベル同士で鍔迫り合いになる。
「やるな!」
「この程度の攻撃で、私を倒す事など!」
刹那はガンダムの背中を反らせ今度は左足のGNカタールをアヘッドのわき腹に向けて蹴り上げる。
「やらせはせん!」
グラハムは蹴りが届く前に右腕のシールドで足を受け止めようとした。
だが彼は新装備で性能の下がっているダブルオーに僅かながら油断があった。
足に装備されているGNカタールの向きが変わった。
今までは地面に向かって装備されていたがダブルオーの前方に向きが変わりリーチが伸びた。
しかしシールドに突き刺さりはしたが装甲にはダメージが通らない。
それを見ると左足からGNカタールをパージする。
「GNダガー!」
素早い動きで右手でGNビームサーベルをダガーモードに出力を合わせシールドに刺さっているGNカタールに目掛け飛ばす。
ダガーはそのまま突き刺さり貯蔵されていたエネルギーが爆発する。
爆発でアヘッドの右腕が破壊されてしまう。
だがこの程度の事で引く彼ではない。
その隙にアヘッドから距離を取る刹那、背を向けて海面の上を移動するダブルオーをグラハムは見逃さない。
「逃がすものか!」
ダブルオーを見つけるとアヘッドをフルパワーで加速させる。
加速による物凄いGが体に掛かるがそんな事は気にしない。
残った左腕のビームサーベルを渾身の力を込めて振りかぶる。
再び接近するアヘッドに振り返るとビームサーベルで受け止める。
「このままでは!」
こんな所で時間を掛けすぎては作戦に支障が出てしまう。
それに新型のアヘッドの性能とパイロットのグラハムの技量が想像以上に高い。
残りの武装も少なく押し切られるかもしれない。
この状況を打破する為、刹那はダブルオーの右足のGNカタールで海面を蹴り上げた。
高温の刃が海水を水蒸気に変え少しの時間ではあるがスモークの変わりになる。
アヘッドのビームサーベルが空を斬った。
「目くらましなど、私には通用せん!」
グラハムは精神を集中させ周囲の空気を感じ取る。
この場ではレーダーなど無用、信じられるのは己の心眼のみ。
スモークで視界の見えない中に一瞬緑色の光りが横切った。
「!!!」
ビームサーベルを横に一閃すると飛んできたGNカタールを弾き飛ばす。
(これは次への攻撃を繋げる為の布石、本命は……)
「後ろだ!」
ダブルオーとアヘッドのビームサーベルが交わり激しく火花が飛び交う。
グラハムは小手先の技で戦うガンダムに苛立ちを感じていた。
「歯ごたえがない!手を抜くか、それとも私を侮辱するか!」
怒りがそのままパワーとなりダブルオーを押して行く。
このままでは負ける、刹那は覚悟を決め残された手段を使う。
「ガンダム、引導を渡す!」
「トランザム!!!」
刹那が叫ぶとトランザムシステムが発動する。
オリジナルの太陽炉に搭載されているシステムで高濃度圧縮粒子を全面開放する事で機体の性能を一定時間ではあるが上昇させる。
ダブルオーの装甲が赤く発光しアヘッドの攻撃をすり抜ける。
「これは!?」
ダブルオーのスピードが今までとは比べ物にならないほど早くなる。
その姿にグラハムは歓喜した。
「そうだ、それとやりたかった!」
目にも止まらぬ速さに動くダブルオー、メインカメラのセンサーも反応が出来ずに残像が残る。
「はああああぁぁぁぁ!!!!」
正面から迫るダブルオーにグラハムはビームサーベルの出力を下げた。
それによりグリップの根元に少しビームが発生しているのみでとても戦闘など出来ない。
「修行の成果、試させてもらう。」
左腕を右脇に構える、その構えは日本刀の居合い斬りの構えと同じだ。
トランザムで接近するダブルオーに斬る瞬間にのみビームの刃を発生させる。
アヘッドを通りすぎるダブルオー、その手にはビームサーベルがしっかりと握っていた。
「さらにやるようになったな少年」
左腕が斬り落とされる、勝ったのは刹那。
だがツインドライブが煙を上げ機体の色も元に戻る。
コクピットには警告音が鳴り響き戦闘画面にはオーバーロードの文字が出ていた。
出力が上がらずダブルオーは海に沈んだ。
「オーバーロード!?」
もうダブルオーには戦闘能力は無い、それを見てグラハムは撤退した。
「相打ちと言いたいが、私の負けだ。また会おう、少年!」
///
刹那の指示に従いアレルヤの援護に入るバナージ。
アリオスはルイスとアンドレイの2機のジンクスとピーリスの搭乗したアヘッド・スマルトロンに囲まれていた。
ジンクスはGNランスのバルカンを2機で挟み込むようにして撃ち続ける。
2機による連携をアレルヤはスラスターを吹かし巧みに避けていく。
ユニコーンの射程範囲まで近づいたバナージはその1機に狙いを定める。
「当たってくれよ。」
操縦桿を握りユニコーンが右腕に持っているGNアサルトカービンのトリガーを引く。
銃口からビームが発射されジンクスに飛ぶ。
パイロットのルイスは敵であるガンダムにしか目が行っていない。
ビームが左腕に直撃し破壊されてしまい、その時になってやっと白亜の機体の存在に気付いた。
「何!?どこから攻撃が……!」
「准尉、新手だ。私が前に行く、援護を!」
ジンクス2機の連携攻撃が止む、ユニコーンをアリオスに接近させるバナージ。
「無事ですか?」
「助かったよ、刹那は?」
「あの人なら大丈夫です、とにかくここを切り抜けましょう」
ピーリスは背部の大型スラスターを吹かしビームサーベルを引き抜く。
「来ます!」
ピーリスの機体に銃口を向けるバナージ。
だが脳量子派でパイロットがピーリスだとアレルヤは気付いていた。
「待ってくれ、アレにはマリーが!」
「マリー?」
アレルヤの呼びかけに攻撃を止め回避行動に切り替える。
接近するアヘッドのビームサーベルが振りかぶる。
ランドセルのバーニアを吹かし高度を上昇させるとユニコーンを回避させる。
アレルヤは通信でピーリスを説得しようと必死に叫ぶ。
「僕だよ、マリー、アレルヤだ。昔、ラボで一緒に居た―――」
「私はマリーなどと言う名前では無い。私は超兵だ!」
だがアレルヤの声は彼女には届かなかった。
バナージは2人の脳量子派を通してその事に気付き始めていた。
「このままじゃダメだ!」
彼女は暗い心の中に引きずり込まれている。
このまま呼びかけても声は届かない。
(心の呪縛を解いて上げないと、でもどうしたら)
バナージはかつての戦いを思い出す。
(ロニさんもマリーダさんもリディ少尉だって戦いの中で分かり合うことが出来たんだ。だからあの2人だっで出来るはずなんだ)
でも今のままでは説得もままならず倒されてしまう。
「アレルヤさん、避けて!」
ピーリスのアヘッドがビームサーベルを突き刺そうと突撃して来る。
だがアレルヤは避けなかった。
右腕を故意に前に出しビームサーベルを受け止める。
当然ビームの刃が装甲を貫くが左手でがっちりとアヘッドを掴み放さない。
ビームが装甲を溶かし火花が飛ぶ、コクピットが激しく揺れる。
「もう放さない、マリー」
「コイツ!」
ピーリスはアームレイカーを動かすが機体はビクとも動かない。
「アレルヤさん!くっ!?」
アンドレイとルイスのジンクスがユニコーンに攻撃を仕掛けてくる。
バナージが応戦する為目を放すとアリオスのGNドライヴがオーバーロードで出力が下がる。
アヘッドとアリオスは抱き合ったまま落下していく。
バルカンの弾をシールドを前に出し防ぎながらGNアサルトカービンを放つ。
正確な射撃がアンドレイに迫るが落ち着いてシールドのGNフィールドを発生させる。
銃口から発射されたビームがシールドに受け止められ相殺されてしまう。
「ビームが効かない、あの機体にもIフィールドがあるのか?」
擬似太陽炉により連邦軍の技術も飛躍的に上昇し今ではGNフィールド発生装置を作れるまでになった。
だがガンダムとは違いまだシールドに限定してしか発生する事は出来ない。
ココに来たばかりのバナージはGNドライヴの特性をまだ把握していなかった。
「沈め角付き!」
アンドレイは機体を加速させビームサーベルを振りかぶろうとした。
ユニコーンはジンクスが腕を振るよりも早くスラスターで機体を制御しスルリと横に回避した。
「そんな、避けた!?」
その超人的な反応速度にアンドレイは驚いた。
(シールドで受け止めるならまだしも避けるだなんて!機体の性能だけではない、何なんだコイツは?)
「今はコイツに構っている時間はないんだ。アレルヤさんを助けないと!」
ユニコーンの右足から蹴りが飛んで来る。
脇腹の装甲に重い衝撃が掛かりコクピットにいるアンドレイを激しく揺らす。
「ぐあああぁぁぁぁっ!?」
機体にはたいしたダメージはないが意識が飛びそうになる。
そのわずかな間は制御が出来ず無防備な状態になってしまう。
「よくも少尉を!」
機体を立て直したルイスが援護に入る。
バルカンを敵に向かい一心不乱に撃ち続ける。
「落ちろ角付き!!!」
「また来る!?」
回避行動を取りながら左腕のシールドで避け切れない弾を防ぐ。
同時にGNアサルトカービンをジンクスに1発だけ放つ。
攻撃する事に夢中なっているルイスはスラスターを必要以上に吹かし機体を大きく移動させてしまう。
「動きすぎたな」
操縦桿を素早く操作しトリガーを2回引いた。
ビームが発射されるときのノックバックがあるにも関わらず2発目のビーム射撃も正確だった。
1発目のビームが右足にかすめる。
「くっ!?」
機体の制御に乱れが生じてしまう、2発目のビームが右手に握っていたGNランスに直撃し破壊されてしまう。
ルイスの目の前には武器を構えたユニコーンが居る。
マニピュレーターも動かなくなってしまい攻撃を防ぐ手立てはもう無い。
「殺られる!?」
目に見える風景がスローモーションで動いているようでルイスは死を覚悟した。
(パパとママの仇も討てぬままここで死んでしまうの?沙滋、最後に一目だけでも見たかった)
まぶたをギュッと閉じ体を強張らせ死の恐怖を和らげる。
「撃ってこない?」
しかし目を閉じて数秒、機体に変化は無かった。
恐る恐る閉じていたまぶたをゆっくりと開けると、白亜の機体はまだ目の前に居た。
「弾切れ!?こんなに早いなんて!」
トリガーを引くが銃口からビームは発射されなかった。
武器に貯蔵されているGN粒子が底を突いたのだ。
GNドライヴ搭載機なら自身のGNドライブの粒子を武器にチャージする事でエネルギー切れを防ぐ事が出来る。
しかし核融合炉で動いているユニコーンにはそれは出来ない。
「もうあの機体は使えないはずだ、アレルヤさんを!」
攻撃の手段をなくしたルイスのジンクスを見て構えを解いた。
機体を方向転換させアヘッドと共に落下していったアレルヤのアリオスを探そうとする。
逃げようとするユニコーンにルイスはまだ戦いを挑もうと闘志を撒き散らす。
そこにアンドレイが急いで駆けつけた。
「情けのつもりか!私はまだ!」
「引くんだ准尉!」
「私はまだ戦えます!」
「無理だよ、その機体はもう使えない。艦に帰艦する」
「くっ!?ソレスタルビーイング!!!」
アンドレイのジンクスに引きつられてルイスは母艦に帰艦していった。
バナージはアリオスの落下したポイント周辺をレーダーで探索するが2機とも反応は無かった。
目前には島がある、あそこに落ちたと願いたいが目視では確認出来ない。
海だとしたらさらに救助は困難となってしまう。
それにこんな場所にいつまでも居られない。
するとプトレマイオスのスメラギからガンダム全機に通信が届く。
「ガンダム全機へ、ここは一時撤退します。魚雷で高濃度粒子とスモークを出して敵の連携を分断します」
「待ってください、アレルヤさんがまだ……!」
「アレルヤはこちらでも探索しているわ。バナージ君、ともかく一度帰艦して」
「……分かりました、帰艦します」
苦虫を潰す思いでスメラギの指示に従う。
すぐにプトレマイオスから魚雷が2発発射された。
広範囲のスモークで視界は見えなくなり大量のGN粒子でレーダーも利かなくなる。
///
アロウズの指揮を執っているマネキンは撤退を始めるソレスタルビーイングを見て部隊の体制を立て直す為、コチラも撤退するよう通信兵に指示を促した。
レーダーも利かず、視界も見えないこの状況で深追いするのは危険だ。
母艦から光信号が空高く発射される。
それを見た部隊長を中心にアヘッド、ジンクスが撤退していく。
その中にピーリスの機体は居ない。
「ピーリス中尉のアヘッドをロスト?そんな!?」
ルイスは憧れに近い印象を抱いていたピーリスが負けた事にショックを受ける。
マネキンも直前の戦闘記録を元に至急捜索班を出動させた。
「スミルノフ大佐に何と報告すれば」
右手の親指の爪を噛みどのように報告するべきか悩んでいた。
おそらく見つけるのは困難であろう。
戦闘が終わり数時間、ピーリスが戦闘中に行方不明になったとマネキンから情報が入った。
マネキンの部隊は捜索を中断しソレスタルビーイングの追撃に出るよう上層部から命令が下った。
命令に違反する事は出来ず彼女は捜索を打ち切った。
その事を自らスミルノフに伝えた。
「大変申し上げにくいのですが、おそらく―――」
「分かった、もういい」
「私のミスです。申し訳ありません」
「いいんだ、彼女だって覚悟していたはずだ。キミもそんなに気にするんじゃない」
「……本当に、申し訳ありません。失礼します」
通信が切れた、スミルノフは無言のまま彼女が戦闘していたと言う空域に向かおうとする。
空母の通信室から出るとパイロットスーツに着替えるスミルノフ。
単身でピーリスを捜索しに行こうとする。
「使える機体は何がある」
「大佐、どちらへ?」
「中尉の捜索へ行く」
「一人でなんて無理ですよ!?」
「下がっていろ」
整備兵の制止を聞かずにジンクスに乗り込む、GNドライヴを起動させ空母から発進する。
「中尉……」
赤いGN粒子を輝かせジンクスは暗闇の空を飛ぶ
ご意見、ご感想お待ちしております。