機動戦士ガンダム00 The human race's reformation   作:K-15

11 / 39
第11話 意識共有

日も沈み周囲は暗闇に包まれている。

月明かりに照らされる海をプトレマイオスは飛行する。

スメラギはミッションレコーダーでアリオスが最後に交戦したポイントを目指す。

それは陽動の為にアロウズと交戦した場所だ。

今はもうアロウズのモビルスーツ部隊も撤退しておりレーダーにも何の反応も無かった。

だがいつまでもこんな所に留まっていては発見されてしまう可能性が高い。

アレルヤの救出は迅速に行わなければならない。

 

「残っているガンダム2機とバナージ君を発進させてちょうだい。制限時間は40分、これ以上は待てないわ」

 

時間に間に合わない場合、アレルヤは置いていくしかない。

彼もガンダムマイスターとして今まで世界を変えようと戦ってきてくれた。

もしものときにどうするか覚悟は出来ている。

 

「ケルディム、発進どうぞ」

 

フェルトがガンダムの発進シークエンスを完了させるとモビルスーツデッキからリフトでケルディムが運ばれる。

カタパルトに脚部が固定され目の前には地平線の彼方まで海が広がっていた。

カタパルトは火花を上げモビルスーツを強制的に前方へ射出させるとそのまま飛び立った。

 

「続いてセラヴィー、カタパルトに固定完了。いつでも発進出来ます」

 

「ミレイナ、ティエリアに繋げて」

 

「はいです」

 

ミレイナがパネルを手早く叩くとブリッジの通信画面にコクピットに居るティエリアの顔が映し出された。

パイロットスーツを着てヘルメットを被っているティエリアの表情はいつも以上に読み取りにくかった。

 

「セラヴィーにアロウズとの交戦空域のデータを転送しておいたわ。もし敵が居ても戦闘は極力避けて時間内に帰艦してちょうだい」

 

「了解、ティエリア・アーデ行きます」

 

彼も事情を察しているのだろう、何も聞かずにそのままセラヴィーをカタパルトから発進させた。

最後にユニコーンもリフトで上がってくる。

今回は捜索がメインなので武器は持っていない。

 

「必ず助けます、アレルヤさん」

 

後はカタパルトから射出し飛び出すだけ、するとミレイナから通信が繋がった。

 

(何だ、作戦を変更するのか?)

 

センターコンソールを叩き回線を繋げるバナージ。

 

「リンクスさん、がんばってください!」

 

「大丈夫です、必ず助けて見せます」

 

(そうだ、俺がもっと動けていればこうはならなかったかもしれないのに。でも悔やんでばかりもいられない、アレルヤさんは今も助けが来るのを待ってるんだ。時間内に探さないと!)

 

「あっ!あと……それから……」

 

「どうしたの?」

 

「いっ!?いえ、何でもありませんです!!ユニコーンさん、発進どうぞです!!」

 

いきなり頬を赤らめながら彼女は大声で叫んだ。

そのせいで耳に少しの間耳鳴りが鳴ってしまう。

何を伝えたかったのかはっきりしないがそれはまた後にしよう。

操縦桿を両手でしっかり握り締め全天周囲モニターが映し出す景色を見つめる。

 

「了解、バナージ・リンクス行きます!」

 

パイロットスーツが機体に掛かるGを軽減してユニコーンも発進した。

 

刹那はモビルスーツデッキで動かなくなってしまったダブルオーをずっと見ていた。

艦内放送でミレイナの声が響いている、ガンダムの無い今の自分では救出作戦に参加出来ない。

 

「モビルスーツ全機発進しましたです、これよりトレミーは潜行準備に入るです」

 

もう何分ここに居るのだろうか、新しいガンダムを手にしてもまだ世界を変える事は出来ない。

 

(こんなことで俺達は変われるのか?ロックオン……)

 

コクピットを降りてからずっとその場で立ち尽くしているとイアンの怒鳴り声が聞こえた。

 

「刹那!トランザムは使うなと言っただろうが。ツインドライブが稼動状態にあるからいいようなものの」

 

これから修理する事を考えると頭が痛くなる。

ツインドライヴはまだ完璧に完成された訳ではないのだ。

修理には他の機体と比べて時間が掛かってしまう。

イアンはどうしたものかと頭を抱えた。

 

「修理を頼む、アレルヤが」

 

「分かってるよ。刹那、お前ももう休め。ガンダムは俺が見ておく」

 

「すまない」

 

刹那はイアンの言葉を聞くとモビルスーツデッキから立ち去ろうとした。

デッキと艦内とを繋ぐ扉に歩き出す。

すると突如扉が開いた、そこには彼が居た。

 

「沙慈・クロスロード」

 

「オォーイ、コッチだ!」

 

後ろからイアンが沙滋を手招きしならが呼んでいる。

彼もソレスタルビーイングの作戦行動に何かしらの形で参加する事になった。

 

「いいのか、お前はガンダムに」

 

戦うのが嫌だったはず、ソレスタルビーイングに参加すると言う事は戦いに加担する事になる。

その事を彼もよくしっているはずだ。

 

「いいんだ、カタロンの人達が逃げられる間では何でもやるよ」

 

罪の意識に苛まれているのだろうか、その目は4年前に見た彼の目と変わっていた。

 

///

 

アリオスとアヘッドは組み合ったまま無人島に落下していた。

落下の衝撃と今までの戦闘のダメージの蓄積でもうまともに動く事が出来ないで居た。

島に落ちてもうずいぶん時間がたった。

脱出装置も作動せずコクピットのハッチはフレームが歪んでいる。

かろうじで生きているカメラでアヘッドの様子を見るがパイロットが気絶しているのか動く気配は無かった。

 

 

「このまま救助が来るのを待つしかない。マリー」

通信でいくら呼びかけても反応は無かった。

 

「もしマリーの目が覚めたら僕はまた掴まってしまうのかな」

 

敵が見つけるのが先か、それとも味方か……

 

(今は信じるしかない、みんなが救助に来てくれる事を。マリーの人格が元に戻っていることを)

 

外では雨が降っている。

 

「ロックオンはE-56ポイント周辺の海を、バナージはそこから見える島を探索してくれ。範囲は広いが何としても探し出す」

 

「こんな雨ん中海水浴かよ」

 

「行きます」

 

プトレマイオスから飛び立った3機は分散してアレルヤのアリオスを捜索する。

バナージは指示に従いユニコーンを島の方角へ飛ばす。

だが島は雑木林に覆われており巨大なモビルスーツでも姿勢を低くしたら簡単に隠れてしまう。

視界の悪い雨の中で探していたのではとても時間内に見つける事は出来ないだろう。

 

「感じるんだ、そうすれば!!」

 

バナージは諦めてはいなかった。

この広範囲の捜索ポイントでアレルヤの存在を感じ取ろうとしていた。

絶望的な状況であろうと希望を捨ててはいけない。

それがバナージが戦いので学んだ事だ。

アレルヤの感応波を感じ取ろうと意識を研ぎ澄まさせる。

自身の体の脈動が脳に響く。

すると上空から島の全体を見下ろしある一点に目を集中させた。

 

「もう一人だれか居るのか?行こう」

 

メインスラスターの出力を下げるとユニコーンを島の陸地に降下させる。

島に近づくにつれて視界には木しか見えなくなっていく。

でもソレに連れてアレルヤともう一人の存在を確かに感じ取る事が出来た。

 

(この息使いは女の人?)

 

ユニコーンを着地させると地面に何かを引きづった様な跡が続いていた。

大きさからしてモビルスーツしか考えられない。

その跡の先にメインカメラを向ける。

 

「アレは!?」

 

そこには破損したアリオスと少し離れた場所にアヘッドが横たわっていた。

バナージはユニコーンを急いでアリオスの傍まで歩かせる。

 

「アレルヤさん、無事ですか!?アレルヤさん!」

 

「その声は?」

 

「聞こえますか?バナージです。助けに来ました」

 

「よかった、もうアリオスは動かないんだ。悪いけどトレミーまで運んでくれないか?」

 

「分かりました、すぐにプトレマイオスに連絡します」

 

それを聞きすぐにプトレマイオスのスメラギに通信をつなげようとする。

回線を合わせようとセンターコンソールを操作した。

 

「逃げろ、バナージ!!!」

 

「!?」

 

突然倒れていたアヘッドが起き上がり右手にビームサーベルを握りユニコーンに襲い掛かってきた。

振りかぶるビームサーベルをギリギリの所で相手の腕を掴み防ぐ。

左からも何か来るのかと警戒したが腕はぶらんと垂れ下がっており動かないようだ。

おそらくは電気系の故障で操作しても反応しないのだろう。

だがこのまま邪魔されたのではアリオスを運び出せない。

そうなれば倒すしかなってしまうが敵パイロットを殺してはいけない。

 

「どうすればいいんだ、どうする」

 

必死にどうするべきか考えるが答えは見つからない。

 

『最後まで諦めるんじゃない、それでもと言い続けろ』

 

懐かしい声がした。

しかしそれは聞こえたのではなく心の中に伝わるような感覚。

 

「マリーダさん……」

 

『今のお前とユニコーンなら出来るはずだ』

 

マリーダの声に覚悟を決める。

ユニコーンのシステムを目覚めさせる。

パイロットの感応派を感じ取りNT-Dが発動する。

センターコンソールにNT-Dと文字が浮かび上がりバナージの座っているシートが稼動する。

装甲がスライドしていきサイコフレームの赤い輝きが照らす。

頭部の角が左右に割れガンダムに変身する。

 

「ガンダム……」

 

その姿を見たアレルヤはサイコフレームの輝きに見せられていた。

ユニコーンがガンダムに変身するとオーバーロードで制御出来なくなっていたGNドライヴが稼動し始めた。

微弱ながらもGN粒子が発生しユニコーンに引き寄せられていく。

 

「何なんだコレは?ガンダム!?」

 

目の前の白亜の機体がガンダムに変身しピーリスはすぐには思考が追いつかない。

そしてユニコーンのNT-Dシステムが超兵であるピーリスの脳量子波を乱れさせる。

 

「あっ頭が……割れそうだ!」

 

いきなり頭痛がし苦痛に顔を歪ませる。

操縦桿を手放し両手で頭を抱える。

 

「何かが私の中に入り込んでくる!?あああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

大声を上げ苦しみだすピーリス、そして彼女の意識はGN粒子とサイコフレームに導かれてアレルヤとバナージの深層意識と絡み合う。

GNドライヴから放出する粒子がユニコーンとアヘッドへ流れていく。

アリオスのGNドライブはすでに制御出来る状態ではない。

にもかかわらずサイコフレームの輝きに導かれ尚も粒子を放出する。

GN粒子が3人の意識を共有させ同じ物を見る。

イオリア・シュヘンベルグの提唱した人類の対話、ニュータイプに覚醒したバナージは何を思うのか。

 

///

 

「何だ、コレは?幻覚を見ているのか?」

 

意識の共有した世界でピーリスは目覚める。

もう頭の痛みは無くなっていた。

不思議な感覚に包まれながら自分以外に4人居る事に気がついた。

 

「キサマはソレスタルビーイング!」

 

ガンダムマイスターのアレルヤもそこに居た。

 

「キミがソーマ・ピーリスなんだね」

 

「何を言っている!」

 

「そう、彼女は私の中のもう一人の自分」

 

背後から声がした、女の声だ。

でもそれはありえない。

何故ならば、自分と同じ声だから。

 

「私?」

 

ピーリスが振り返るとそこには自分が立っていた。

姿かたちはまったく同じ、まるで鏡を見ているよう。

 

「アナタは研究所が私に植え付けた偽りの人格、超兵として私を軍に送り込むために造られたもう一人の私なの」

 

「もう一人の私だと?何を言っている!」

 

「アナタには私の事は分からなくても仕方ないわ。私の人格と記憶は奥底に封印されてしまったから。でも今なら分かるはず、この意識を共有した空間なら私の事が分かるはずよ」

 

するとマリーの記憶がピーリスに流れてくる。

遺伝子工学により試験管から生み出されたマリー、幼い頃から超兵としての訓練、強化を受けさせられていた。

それゆえ自我はなく毎日研究員の言われるがままに生きていただけだった。

そんな彼女にも一つの光りがあった。

一緒に超兵として訓練を受けていたアレルヤだ。

だが同じ研究所に居ても訓練時以外は麻酔で眠らされており話す事すら出来なかった。

それでも脳量子波でアレルヤは話しかけてきてくれた。

それだけが彼女の生きる希望だった。

 

「惑わすな!私は……私は超兵だ!」

 

「でも違う生き方だって出来る筈だ!超兵だの強化人間だのそんなの関係ない。そんなのに惑わされて自分の生き方を狭めては悲しいだけだ!だから感じて分かり合うんです。俺達にはそれが出来る筈です!」

 

「子供が!お前に何が分かる。それに、戦う事しか出来ない私に人並みの幸せなんて……」

 

「お前にはもう、心を許した人が居るだろう」

 

また声が聞こえた、今度は女の声がした。

物静かで落ち着いた、そして私と同じ目をしている。

長髪の女はバナージに被さる様にして立っていた。

 

「もうすぐ会える。そうしたらもう一度自分と言う者を考えて見るんだな」

 

「誰の事だ?」

 

「自分の心にウソは付けない。分かっているはずだ。お前の傍にいつも居てくれている」

 

 

それは上官と部下の関係ではなく家族と呼べるものだった。

 

「来てくれるの、大佐が」

 

///

 

ジンクスに乗りピーリスの探索をするスミルノフ。

暗闇の中をたった一人で探し出そうとマネキンからソレスタルビーイングとの交戦空域を転送してもらいしらみつぶしに探していた。

だがレーダーには何の反応も無く雨も降っており見つけ出すのは絶望的だ。

 

「中尉、生きて待ってろ」

 

それでもスミルノフは諦めなかった。

モニターに映る景色に目を凝らし微かな痕跡でもないか見つけようとする。

しかし映るのは海と木に覆われた島しかない。

こんな場所を一人で探す事なんてやはり無理なのだろうか。

 

『スミルノフ大佐……』

 

諦めかけていた時、声が響いた。

聞き間違えではない、彼女の声だ。

 

「中尉!?どこに居る!!」

 

『もう一度、大佐に会いたかった』

 

また声が響いた、その声がスミルノフをピーリスの居る場所に導く。

ジンクスを声の聞こえた場所に移動させる。

どこで声が聞こえたかなんて分からない。

でも今は不思議と確信に近い感覚でその場所へ向かった。

島へ機体を降下させて行き声を辿る。

 

「コレは!?」

 

木々をすり抜けて着いた場所にはピーリスのアヘッドが白亜の機体、ユニコーンガンダムと組み合っていた。

傍にはソレスタルビーイングのガンダムが倒れていた。

 

「どうなっている!?中尉、聞こえるか?中尉!」

 

アリオスから発生するGN粒子が3機を覆っていた。

だがこんな現象は始めてだ。

技術部からもこんな事例があると報告は届いていない。

急いで通信でアヘッドに呼びかけるがピーリスの応答は無い。

 

「とにかく行かなくては!」

 

操縦桿を動かしジンクスの膝を付かせコクピットから降りるスミルノフ。

空から降る雨が白いパイロットスーツを濡らすが一切気にしなかった。

ぬかるむ地面を走りピーリスの元へ向かう。

一歩走るたびに雨の水が弾き飛ぶ。

そしてスミルノフもピーリスと同じ意識共有領域に足を踏み入れた。

 

///

 

「どうなっている?私は確か」

 

突然の出来事に思考がうまく回らない。

ピーリスを救助しようとアヘッドに向かっていたはずが気が付くと意識だけがここに居た。

体験したことのない現象に戸惑うスミルノフ。

そんな彼を2人は待っていた。

 

「大佐、来てくれたんですね。私の為に」

 

聞き覚えのある声がした、そして振り向く先に彼女は居た。

 

「中尉!?無事か?」

 

「アナタには話さなければいけません。私と彼女の定めを」

 

また声が響いた、だがそれはおかしい。

彼女は私の目の前に居るが言葉を発してはいない。

 

「私の名前はマリー・パーファシー、彼女の心の奥底に眠るもう一人の彼女」

 

「中尉が2人!?」

 

「今までアナタがピーリスとして接していたのは超兵として運用する為に造られた偽りの人格。でも彼女は確かに存在するわ」

 

「……どう言う事だ」

 

「私はアレルヤと一緒に居たい。でもそれはアナタと彼女を離ればなれにさせてしまう」

 

マリーの隣にアレルヤの姿が浮かび上がる。

そのパイロットスーツを見て傍に倒れていたガンダムのパイロットだと分かった。

 

「そうか、キミがガンダムのパイロットか、ソレスタルビーイング!」

 

「スミルノフ大佐、マリーは優しい子です。連邦に戻ればまた彼女はまた超兵として扱われてしまう」

 

「だがキミはソレスタルビーイングだ。キミと一緒に居ても中尉は戦いに巻き込まれる」

 

「そんな事はしません!」

 

「テロリストの言う事を信じるほど私は愚かではない!」

 

2人の会話は平行線のまま進展しない。

その様子を見ていたバナージは思う。

 

「想いは同じなのに」

 

彼女を守りたい、でも立場の違いからそれを相手に譲る事なんて出来ない。

意識の共有で想いは伝わるはずなのに、それを自分の心が認めない。

 

(こうして話し合えても分かり合えないのか)

 

「お前が諦めてどうする」

 

「マリーダさん」

 

「最後まで諦めるな、それでもと言い続けろ」

 

「……分かりました。ユニコーンならそれが出来る」

 

「そうだ、バナージ。お前は私達の希望、いつも見守っているぞ」

 

そう言ってマリーダの思念は消えていった。

 

ユニコーンのサイコフレームが4人の意識を乗せると共鳴し始める。

赤く光っていたフレームが緑色の輝きに変化する。

 

「大佐、私はアナタの義娘になりたかった。」

 

「中尉……」

 

「戦いしか知らない私に心を与えてくれた。それは幸せな事なんでしょう。でも超兵である私に人並みの幸せなんてあっては成りません。ですが大佐と一緒に居させていただいて私は欲しくなってしまいました。幸せと言う物を……」

 

「だったら!」

 

「私には大佐が居てくれた。ですがマリーには何もない。だからこれからは彼女と一緒に探していきます。幸せを」

 

「分かった。その言葉だけで十分だ」

 

///

 

雨の降る中スミルノフは立ち止まる。

ユニコーンのサイコフレームから輝きは無くなり装甲がスライドしていく。

それと同時にアリオスのGNドライヴの活動も停止する。

組み合ったままのユニコーンとアヘッド、白亜の機体はアヘッドの腕を掴みゆっくりと地べたに機体を横に寝かせる。

そうすると損傷しているガンダムへと歩いていった。

寝かされたアヘッドはしばらくするとコクピットのハッチが開いた。

そこからアロウズの深緑のパイロットスーツを着た彼女が出てきた。

スミルノフは一目見て分かった。

 

(中尉とは違う)

 

見た目は同じだが今までの彼女ではない事が分かる。

 

「キミはマリー・パーファシーか?」

 

「そうです、スミルノフ大佐」

 

「……そうか、本当に中尉ではないのだな」

 

「大佐……」

 

「ガンダムのパイロットに礼を言っておいてくれ。5年前低軌道ステーションでの事故、救助活動に参加してくれた事は感謝する」

 

スミルノフはマリーに背を向けてジンクスへ向かい歩き出した。

哀愁の漂う背中に彼女は走った。

 

「大佐!!!」

 

抱きつく彼女をスミルノフは優しく受け止めた。

 

「生きてくれ、生き続けてくれ。彼と幸せにな」

 

もう心に迷いなどない。

2人は体を離すと互いに敬礼をした。

 

「今までありがとうございました。大佐!」

 

「……」

 

右腕を下ろすと再びスミルノフは歩き出した。

ジンクスのハッチから伸びているワイヤーに足を掛けると上昇させそのままコクピットに乗り込んだ。

GNドライヴから赤い粒子を発生させジンクスは空へと飛んでいく。

機体が見えなくなるまで敬礼するマリー、その目からは涙が溢れていた。

ユニコーンはアリオスのハッチを無理やり開放するとアレルヤは外へと出た。

アレルヤはその足で敬礼そするマリーの元へ行き背中から彼女を抱きしめた。

 

「ありがとう、生きていてくれてありがとう、こんな僕に生きがいをくれて」

 

「アレルヤ」

 

2人は互いの温もりを感じあった。

雨は止み雲の隙間から太陽が見え始めていた。




ご意見、ご感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。