機動戦士ガンダム00 The human race's reformation 作:K-15
クーデター派はステーション内の民間人を人質に取り連邦政府の解体と反政府活動家の釈放を求めた。
だが政府はこれに応じる事はなく徹底抗戦の構えを取っている。
既にアロウズを出撃させ事態の鎮圧に掛かった。
真正面から戦ったのではクーデター派はアロウズに勝つ術はない。
そして世論も人質を取るなどという卑劣な行為をするクーデター派を支持はしていない。
この報道をパング・ハーキュリーの旧友であるセルゲイも見ていた。
「こんな状況でどうするつもりなんだ、ハーキュリー。昔言っていた世界との調和をこんな事で出来ると思っているのか?」
すぐれた政治、良識ある市民、抑止力となる軍隊、それぞれが正常に機能すれば敵国との緊張も解かれる。
そして世界は緩やかに統一されていく。
ハーキュリーは士官学校時代にセルゲイにこう言った。
確かに理想ではあるが1人1人の思想は違うしそれを統一させる者の思想が絡んでくるのもまたしかり。
たった1人では社会を、世界を変える事なんて出来ない。
だがそこで集団を作って立ち向かってもまた組織としての悪癖が出てしまう。
変えられたとしても変化を拒絶しまた同じ様に反発する者は出てくる。
それでは同じ事の繰り返しである。
こうして今している事も長い人類の歴史で幾度も繰り返されてきた。
パング・ハーキュリーもまた人であった。
ならば諦めるしかないのか、妥協するしかないのか。
彼の言った事は夢物語なのだろうか。
「私は……」
セルゲイは連邦軍の仕官である。
クーデターを弾圧する立場にある彼は友を手助けすることは出来ない。
すると通信機から音が鳴った。
1度映像画面を消し通信を繋げた。
「セルゲイ・スミルノフ大佐であります」
画面越しに敬礼をするとその先に映っていたのは司令官だった。
やはりこのクーデターの対処についてだろう。
連邦政府が創設されて始めての大事件であるのだから当然か。
「大佐、キミに極秘任務を頼みたい」
「極秘任務……」
///
地上の起動エレベーター周辺は完全に軍で囲まれてしまった。
低軌道ステーションにも確実に連邦軍が包囲網も敷いている。
戦力差は歴然としており攻められたらどうする事もできないだろう。
クーデター派の指揮を取るハングはそんな事は承知の上だ。
「地上も宇宙も完全に包囲されたか。だがこれも予定通りだ。カタロンはどうなっている?」
「すでに大部隊がこちらに向かっています」
「そうか、後はソレスタルビーイングがどう動くかだが……」
「本当にソレスタルビーイングは来るんでしょうか?」
「来る、必ずな」
地上に居るプトレマイオスはすでに動いていた。
このクーデター騒動をどうするべきかをブリーフィングルームでクルー全員で話し合った。
「このクーデターでアロウズの大部隊が動いている。あいつらはクーデターに目が入ってるはずだ、今なら狙えるぜ」
ロックオンはカタロンの構成員なので秘密裏にエレベーター周辺の状況をキャッチしていた。
今なら彼の言う通り敵の背後を突ける。
「たしかにそれも出来る。でも気がかりがあるの。イノベイターはヴェーダを掌握しているのにどうして今回の事件に気付かなかったのかしら……」
スメラギの言うようにヴェーダがあれば今回のクーデターは未然に防ぐ事が出来た。
なのにわざわざクーデターを起こさせ自ら首を絞めるような行為をしているのが気になった。
「クーデターを知っていたにも関わらず見逃したと……でも、そうだとしたら裏がある事になります」
「そうねフェルト、私達はそれを防がないといけないわ」
「カタロンやクーデター派を見捨てるっていうのか!?」
アロウズが裏で進めている作戦を止める、だがそれはロックオンの言うようにクーデター派を見捨てる事になる。
「このままじゃカタロンとクーデター派は確実にやられるぞ!今までだって助けてもらったのに何でだよ!!」
ロックオンの叫びがブリーフィングルームに響く。
沈黙が包まれる室内でただ1人、バナージが口を開けた。
「連邦軍やアロウズはたしかに許しちゃいけない。けれども、人質を取って武力で解決しても意味がない!」
バナージは叫んだ。
力で行使しても何も変わらない。
そして武力で弾圧しようものならまた別の勢力が武力を持って攻めてくる。
宇宙世紀における地球連邦軍もそうだった。
ジオン公国軍が独立し1年にも亘る戦争を繰り広げたが終わった後には何も変わってはいなかった。
ティターンズ、エゥーゴ、ネオジオン、その後もさまざまな勢力が生まれたがやる事は常に戦争。
地球連邦が力によって地球圏を統治したのに対して同じく力でねじ伏せようとする。
それは歴史に置ける悲劇だった。
だがロックオンはそんな事に納得がいかない。
「何だと!」
「俺達だってモビルスーツに乗って戦闘をしてる。でもその力を間違った事に使ったらダメなんだ。例え助けても戦闘を止められるだけで、関係のない人が傷付いていくだけだ!」
「だから見捨てるって言うのか!!それなら俺達は何の為にここに居るんだ!!」
「クーデターなんかしても世界は変わらない。力で相手を抑えてもまた力で対抗される。それじゃあ同じことの繰り返しじゃないですか!」
「だったら!!クーデターは悪だから死んでも仕方ないって言うのか!」
「やり方が間違っているんです。イオリア・シュヘンベルクがGNドライヴを作ったのだってただ戦う為に作ったのではないはずです!託された思いを未来に繋げないと……」
「何処で造られたのかも分からないモビルスーツに乗っておいて偉そうな事を言うんだな」
「そんな事、今は関係ないでしょ」
「信用出来ないって言ってるんだ。だったら言ってみろよ、あの機体は何処で造られたんだ?」
「それは……」
バナージは口を閉ざしてしまう。
今はまだユニコーンの情報を知られる訳にはいかなかった。
頭に血の上がったロックオンは尚も攻め立てる。
仲間のカタロンを見捨ててもいいと言うバナージを許す事が出来ない。
「ほら、言えないじゃねぇか。他にもお前には聞きたいことがいっぱいあるんだ。それを―――」
「やめておけ、今はミッションをどうするかを決めるべきだ」
2人の言い争いに刹那が間に入って仲裁した。
このまま言い合っても時間が無駄に過ぎるだけ。
「例え裏があるとしてもイノベイターの行動を探るには現地へ向かうしかないわね。アニュー、進路をアフリカタワーへ向けて。イアンは現地に着くまでにトレミーの火器管制の修理をお願い」
スメラギの指示にクルーは従った。
重く沈んでいた空気がピリピリとした緊張感に変わった。
「マイスターは各ガンダムで待機。指示はまた伝えるわ。ロックオンとバナージくんも、作戦が始まったら私の指示には従ってもらうわよ。いいわね?」
「オーライ、さすがに1人じゃあんだけの数は相手に出来ないからな」
「わかりました」
「では各員持ち場に付いてちょうだい。トレミーはアフリカタワーへ向かいます」
アニューは操縦桿を握るとプトレマイオスの大型スラスターから粒子が放出される。
加速したプトレマイオスがクーデターを止めるべく、囚われの民間人の救助の為に軌道エレベーターへと進む。
クーデターを制圧すべく低軌道ステーションはすてに連邦軍とアロウズの艦隊に包囲されてしまった。
しかし人質を取られている現状では攻撃や内部へ強行突破する事は出来ず連邦軍は上層部が決断を下すのをじっと待機していた。
それでも連邦軍の優位性は変わらない。
地上部隊も宇宙と同様に軌道エレベーターを包囲しつつも待機状態でクーデター派の動きを待った。
だが独立治安維持部隊アロウズは上層部の見解を待つ必要はない。
アーサ・グッドマンの指示で待機していたアヘッドが6機動き出した。
モビルスーツは編成を取りつつステーションへと向かっている。
その腰部には鉛色をしたコンテナが装備されている。
アヘッドによるモビルスーツ部隊の動きはクーデター派もすぐに察知した。
「ハーキュリー大佐、アロウズが動き出しました」
「こちらから先には絶対に攻撃するな、世界が見ている」
「敵モビルスーツがコンテナを射出しました」
装備されていたコンテナがステーションに向かってゆっくりと流れてくる。
コンテナを阻む物はなくそのままの速度でステーションの外壁へと接触してしまう。
「カタロンから聞いたオートマトンか」
ハーキュリーはオートマトンの情報を事前に調べていた。
小型ロボットによるオート操作で迅速かつ安全にこのような狭い建物内部でも掌握できる。
だがそれは無慈悲なまでの殺戮マシーン、機械ゆえに感情はなく冷酷なまでに指令を遂行する。
その存在を一般人はまだ知らない。
「だがオートマトンを使ってくる事など計算済みだ。その為の対策もしてある」
コンテナが開かれると中から数十機のオートマトンが起動し内部に侵入を始めた。
オートマトンは集結するとステーションのハッチへ機関銃で一斉射撃を行った。
1機のオートマトンでは到底破る事は出来ないが数を集めれば強固に作られたハッチでも隙間は作れる。
雨のように降り注ぐ弾丸にハッチはものの数秒で破壊されてしまう。
開放されてしまったハッチの中へとオートマトンは入り込んで行く。
「大佐、ハッチを突破されました」
「防御システムを作動させろ。しばらくは前に進めんはずだ」
「了解、防御システムモードSで作動させます」
指示にしたがいパネルを操作すると設置されている防御装置が稼動した。
オートマトンが進む通路の外壁から突如として自動ガトリングが設置される。
ガトリングは目標をオートマトンにのみ限定し攻撃を開始した。
レーダーでガトリングを察知するとすぐに回避行動に移った。
だが迎撃を逃れる事は出来ずに侵入したオートマトンは蜂の巣にされていく。
四脚にローラーとシンプルな作りになっているオートマトンは狭い通路、無重力化、段差などを弊害なく通る事が出来るように設計されている。
そのためにスピードは遅く軽量化の為に装甲も薄い。
ガトリングの弾丸が意図も容易く装甲を突き破り次々と残骸へと変わり果てていく。
「オートマトン撃破率、49パーセントに到達しました。ただの拙攻でしょうか?」
「いや、まだ分からん」
「大佐、カタロン部隊がピラーに接近します」
「連邦軍の迎撃は?」
「ありません、カタロン部隊はピラーの射出口に侵入。我がほうの地上部隊と合流しました」
「地上にはアロウズの部隊も展開しているはずだ。それを出してこないとなると……」
あのアロウズがこうも簡単に侵入を許すはずがない。
となると、何か裏があるに違いない。
しかしそれに気付いた時にはすでに遅すぎるのであった。
「報告、XM地区よりピラーに侵入し上昇してくる機体があります」
「カメラからの映像を廻せ」
「了解しました」
指示に従い接近してくるモビルスーツの映像を画面へと映し出す。
そこには旧型のティエレンタオツーが映っていた。
この機体を見てハーキュリーはすぐに分かった、これに乗っているパイロットのことを。
「迎えの機体を出せ、そのくらいはしないとな。あの機体には私の友が乗っている」
事態は刻一刻と進みながらも静寂を保っていた。
///
プトレマイオスが光学迷彩を展開しつつアフリカタワーの空域まで接近する事が出来た。
連邦軍、そしてアロウズの戦力と真っ向から戦ったのではこちらに勝機はない。
「アニュー、トレミーの速度はそのままで。フェルトは周囲の索敵を、イアンとラッセには砲撃をしてもらうわ」
望遠カメラを使わずとも軌道エレベーターが肉眼ではっきりと見える。
タワー周辺はモビルスーツと艦隊で埋め尽くされており抜け道なと存在しない。
見つかってしまったら一溜まりもないだろう。
「スメラギさん、敵がアフリカタワーの包囲を解いています」
「包囲を解く……絶対的有利な状況で何故?」
「人質が開放されるまでは動かないつもりでしょうか?」
モビルスーツの大部隊は2手に分断し軌道エレベーターから離れていく。
このまま包囲していればクーデター派は攻める事が出来ない。
なのにこの陣形を解いた、と言う事は別の作戦があるはず。
スメラギはその動きにただ離脱したのではなく規則性があることに気がつく。
「いいえ、違うわ。ただ離脱したんじゃない。何かもっと大きな意味が隠されている。フェルト、アフリカタワー周辺1000キロの風速データを表示して」
「分かりました」
フェルトがパネルを操作すると画面に周囲の地形と敵の布陣が表示された。
敵部隊は風向きとは反対方向へと離脱している。
「これは明らかに損害を避ける為に動いている」
「スメラギさん」
「衛星兵器はまだ残ってた」
その言葉にブリッジの全員が息を飲む。
確定した訳ではないとはいえ楽観視など出来ない。
衛星兵器の攻撃による被害は甚大、何としても止めなくてはならない。
「スメラギさん、望遠カメラでオービタルリング上に大型物体を確認しました!」
イアンはモビルスーツデッキで最後の整備をしていた。
ユニコーンは武器がないため使えるように調整している。
これが終わればラッセと砲撃に廻る予定だ。
「シールドにマウントしたガトリングは良さそうだな。後はコクピットから最終調整だけだ」
ユニコーンが左腕に付けているシールドにガトリング砲を装備させてある。
今まではエネルギーの問題で装備させても威力が低下し弾数も少なかったが実弾兵器ならそれも気にしなくて良くなる。
電子制御でトリガーを握らなくてもシールド裏にマウントした状態でも撃てる様にした。
「さて、コクピットに」
調整の為にハッチを開放しようとパネルを触る。
エアロックが解除され圧縮された空気が漏れて風邪が吹く。
重たいハッチが持ち上がると全天周囲モニターのコクピットへと入り込もうとした。
「にしても360℃モニターなんてよくも作った……なぁ?」
イアンが見た先には何故かハロが居た。
シートの上に置いた状態でじっとこちらを見ている。
「ウケトッテ、ウケトッテ」
「何を言ってるんだコイツは?」
するとハロの口が大きく開いた。
///
連邦軍の陣形が変わっていくのは宇宙からでも確認出来る。
そしてハーキュリーも又、衛星兵器の存在をすでに確認していた。
連邦軍のしようとしている事、事の重大差に今の自分の状況で何が出来るのだろうか。
「すぐに一般市民を開放するんだ。時間はない!!」
「ハーキュリー」
連邦軍から特使として来た旧友のスミルノフもそこには居た。
「私は連邦軍を見くびっていた。まさか我々ごと軌道エレベーターを攻撃するなんて!」
「今は後悔している場合ではない、一刻も早く行動するんだ」
「連邦軍は私達が市民を人質に取った時にはすでに決めていたんだ。事実を知った市民も反逆者として私達ごと抹消するつもりで」
「ここには6万もの人が居るのだぞ」
「彼らにはどうでもいい事なのだろう。そうする事で連邦の支配体制をより強固な物に出来るからな」
「たとえそうだとしても今は話している時間はない。とにかくここを脱出するぞ」
「そうだな、今は成すべき事を成すしかない」
囚われていた市民はリニアレールに誘導され準備が出来た車両から順次に発進している。
だが6万人を移動させるのに何分掛かる事か。
ハーキュリーの賛同者である部下達も撤退の準備を始めている。
皆が必死に動こうとも無常にも時間は過ぎていく。
衛星兵器による大量殺戮、悲劇はまた繰り返される。
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