機動戦士ガンダム00 The human race's reformation 作:K-15
衛星兵器の司令官であるアーサ・グッドマンはエネルギーの充填が完了するのを今か今かと待ち望んでいた。
この攻撃が放たれれば何万人と死者が出るが彼にとっては些細な出来事にすぎない。
自らの私利私欲しか考えていないグッドマンに罪の意識などないし、いくら人が死のうと積み上げられた数字としか見ない。
「エネルギー充填94パーセントまで完了」
「チャージが完了したら軌道エレベーターに発射しろ。これで反連邦組織に打撃を与えられる。このメメントモリで連邦軍の支配統治は揺るぎないものとなる」
着々と行われるメメントモリのエネルギー充填、カウントダウンはもう目前へと迫って来ている。
地上のアフリカタワー周辺ではカタロンとアロウズの地上部隊が戦闘を行っている。
その中にはソレスタルビーイングのガンダムも居るとの報告があった。
もうこの作戦を妨害するものなど何処にも居ない。
「チャージ完了まで残り20秒」
「この一撃が世界を変える!」
「司令!地上から上がってくる機体があります!」
「地上から?数は?」
「数は1機、識別反応は……」
レーダーに表示される機体の識別反応を確認するとそこに映っていたのはGNと名の付く型式番号。
望遠レンズから映し出されるその機体は今までにも幾度となく敵対してきたあの機体。
特徴的なツインアイとアンテナ、オリジナルのGNドライヴから放出される緑色の粒子は連邦軍の兵士なら知らない者など居ない。
「ガンダムです!」
「ガンダム!?だがたかが1機だ。メメントモリの発射を急がせろ!」
「了解!」
///
宇宙へと上がったダブルオーライザー。
地上から発進したときには見ることすら出来なかった衛生兵器が今や肉眼でも確認出来る。
「連邦軍の衛星兵器、破壊する!沙慈、ライザーシステムを発動させる」
「わかった、制御は僕がする」
「トランザム始動!」
刹那の合図で沙慈はツインドライヴのリミッターを解除した。
機体の装甲が赤く発光し機体性能が飛躍的に上昇する。
そしてオリジナルのGNドライヴよりのさらに高密度のGN粒子を発生させる事で今までに無い粒子エネルギーを使う事が出来るようになる。
「ツインドライヴ出力安定、いけるよ刹那!」
両手にGNソードを握り前方に構えると照準をメメントモリへと合わせる。
だが宇宙に上がり衛星兵器を目視出来ていてもガンダムとの距離は遥か離れている。
この距離を詰めるだけの時間もないし、この位置から破壊出来るだけの武器は持っていない。
それでも彼らは諦めていない。
ガンダムに、ツインドライヴに秘められている性能を開放する。
その為にスメラギはダブルオーライザーを衛星兵器の破壊へと向かわせたのだ。
「圧縮粒子完全開放、トランザムライザー!」
ツインドライヴに貯蔵されている全てのGN粒子がエネルギーに廻される。
そしてそれは現存する全てのモビルスーツを遥かに凌ぐ性能を持っていた。
構えていたGNソードから大出力のビームを発射する。
ビームのエネルギーは尽きる事なくメメントモリへと伸びていく。
だが長距離による攻撃はわずかなズレで着弾点が変わってしまう。
大出力のビームはメメントモリには直撃せず反れてしまっていた。
「そんな、ダメなの!?」
衛星兵器破壊作戦はこの一撃に全てを賭けている。
目の前で起きている現実に沙慈は落胆した。
「これじゃあ軌道エレベーターは……」
「ライザーソーーード!!!」
しかし外れたと思っていたビームはそのまま衛星兵器へ目掛けて傾いていく。
これは大出力のビームライフルではない。
絶え間なくエネルギーを放出する事で巨大なビームサーベルへとその姿を変える。
巨大なビームサーベルはそのまま衛星兵器の外壁にぶつかった。
「はあああぁぁぁ!!!」
ライザーソードはそのまま衛星兵器を両断せんとさらに斬り込んだ。
外壁は一瞬の内に破壊され周囲に衝撃が伝わり衝撃に耐え切れなくなった箇所が崩れ始め、それに合わせていたる所から炎が上がる。
衛星兵器は崩壊せんとその形状を見る見る内にライザーソードに切り裂かれて行く。
「すごい!衛星兵器が壊れていく」
戦艦すらも凌駕する圧倒的な火力で破壊されて行く衛星兵器を見て沙慈は安堵した。
だが既にメメントモリ発射のトリガーは引かれていた。
砲身から充填されたエネルギーが発射されようと稼動を始めている。
「止せ、やめろぉぉぉ!!!」
刹那の叫びも虚しく衛星兵器は発射されてしまう。
///
青空の中で赤い閃光が2つ、目にも止まらぬ速度で飛び回る。
「邪魔者は消えた、行くぞガンダム!!」
「1体1ならまだ勝機はある。でも……」
開戦時とは違い今は目の前の敵に集中して戦う事が出来るにも関わらずバナージは焦っていた。
(NT-Dを発動させてからもうすぐ5分、このままだと……)
その5分が過ぎてしまうとガンダムは元の姿へと戻ってしまう。
ユニコーンに戻ってしまえば戦闘能力は今よりも下がってしまいトランザムを発動させているスサノオに太刀打ち出来なくなってしまう。
けれども敵はこちらの都合など考えてはくれない。
スサノオの握る強化サーベルが鋭く光り輝いていた。
「引導を渡す!!はあああぁぁぁ!!!」
「ユニコーンはまだ戦える!」
メインスラスターを最大出力にし両者が一直線にぶつかり合う。
その光景はさながら流星が降っているかのように美しく光り輝いていて見えた。
ユニコーンはビームサーベルで強化サーベルを受け止めているがスサノオはジリジリとパワーでビームサーベルを押し返していく。
バナージはビームサーベルを握っている右手首を反し強化サーベルを受け流すとそのままスサノオを斬り抜けた。
「これで!」
「くっ!ガンダム!」
スサノオの右手は宙に浮きそのまま重力に引かれて落ちていく。
ものの数秒で右手は米粒ほど小さくなり見えなくなってしまう。
だが片腕がなくなろうともグラハムの闘志はより一層燃え上がっていた。
「これぐらいの損傷が何だ、私はまだ!」
「まだ動くのか!?」
残っている左腕の強化サーベルを構えるスサノオを見てまだ戦闘の意思があるのだと察知するバナージ、だがその時間は無常にも迎えてしまった。
ユニコーンの装甲はスライドして元の姿へと戻って行く。
サイコフレームも輝きを失い、アンテナは収納されツインアイもフェイスカバーに隠されてしまう。
NT-Dの稼動限界時間の来たユニコーンは白亜の機体へと変わってしまう。
「NT-Dの限界時間、でもやるしかない」
例え機体の性能で負けていたとしてもここで引く訳には行かない。
左腕からビームサーベルを引き抜くと正面にいるスサノオに目掛けて振りかぶった。
「元の角付きに戻った?どう言う事だ!」
損傷しながらも片腕でユニコーンの攻撃を強化サーベルで受け流すグラハム。
姿を変えた目の前の敵に驚きを隠せないで居た。
そして戦闘能力もガンダムの時とは違い明らかに下がっているのが分かる。
「活動限界時間でもあるというのか、これからというものを!だがそれはこちらも同じか」
けれどもそれはスサノオも同じであった。
擬似GNドライヴのトランザムの活動時間が限界を迎えた。
強制的に粒子量を増加させ機動性を向上させていたがそれも終わってしまう。
そして擬似GNドライヴは純正GNドライヴとは違いトランザムで粒子量が尽きるとまったく動く事が出来ない。
その為に離脱できるように機体にエネルギーを貯蔵させているがこの状態では満足に戦う所ではない。
完全に機体が動かなくなる前に帰艦をしなくてはならない。
「行かせない!」
「くっ!」
ユニコーンは元の姿に戻っても尚も攻撃を止めない。
ビームサーベルの突きが左肩の装甲をかすめると火花が散る。
強化サーベルで近づいてきた所を一閃するがバナージは素早い反応でシールドを構えダメージを抑えた。
「あの白い角付きはまだ動けるのか。もはやここまで」
「逃げるのか!?」
「決着は必ず着ける。覚えておくがいい!」
この場から撤退をしていくスサノオ、けれどもバナージは追撃をしようとはしなかった。
「そらが……落ちる……」
メメントモリのビームを直撃した軌道エレベーターが崩壊を始めていた。
軌道エレベーターはその構造を維持する為に外壁を構成するピラーを次々とパージさせて行く。
分離したピラーは大気圏外の物は摩擦熱で燃え尽きてしまうがそれより下の地球圏内は全て地上に降り注ぐ。
///
地上では連邦軍、反政府組織カタロン、ソレスタルビーイングが入り混じり激戦を繰り広げていた。
連邦軍のモビルスーツは性能、数と全てにおいてカタロンを圧倒しており優位は確実の物だ。
それでも地上で戦うガンダム3機は最後まで諦めてはいない。
衛星兵器を破壊しに行った刹那を信じて1人でも多くの人を助けようと懸命に戦っていた。
それでも、いくらガンダムと言えども大部隊を相手にカタロンを守りながらと言う状況では苦戦を強いられてしまう。
1つ、また1つとカタロンの旧式のモビルスーツが閃光のへと消えていく。
「クソッ!コレだけ相手にしてたんじゃ守りきれねぇよ!」
ケルディムのコクピットの中でロックオンは嘆いていた。
爆発に包まれる機体をモニター越しに見て、また誰か仲間が死んでいくのを見るしか出来ない。
操縦桿のトリガーを休む事なく引き続けて両手に握っているGNピストルからビームを絶えず発射して敵機を狙う。
「そんな弱音を言っている場合ではないぞ」
セラヴィーが両肩にGNバズーカを接続すると大出力のビームを敵陣に放ち敵機を一掃する。
だが穴の開いた空間も数秒もすればまたモビルスーツの大部隊で埋め尽くされてしまった。
次の目標を破壊する為にすぐにエネルギーの充填をしながらもティエリアはロックオンに通信を繋げた。
「ティエリアか!?でもよ、これじゃ」
「スメラギさんから連絡があった。ミッションは失敗だ」
「何!それなら」
「もうすぐオートパージされたピラーが地上に落ちてくる。僕達はそれの破壊に向かう」
「くっ!アロウズのヤロウ、本当にやりやがったな」
「アレルヤは先行して既にピラーの破壊に向かっている」
「カタロンの防衛はどうするんだよ?」
「この下の地上は人口密集地域だ、とにかく急いでピラーを破壊するんだ」
「くっ、了解だ」
ライルは装備されているシールドビットを機体周辺に展開させた。
飛来せてくる敵の攻撃を寸前の所でビットが防ぎ機体にはダメージが通らない。
連邦軍からの攻撃をビットで防ぎつつケルディムはカタロンの防衛を断念しパージされ地上へと落下してくるピラーの破壊へ向かう。
///
プトレマイオスに居るスメラギは沙慈から送られてきた報告に頭を悩ませる。
「ミッションは失敗。このままだと最悪の展開になるわね」
想定していた最悪の展開、パージされたピラーが地上に落ちる。
それをいち早く気付いたからこそこの作戦を実行したがそれも失敗に終わってしまった。
このままでは地上への被害は免れない。
「こうなったら……アニュー、トレミーの進路をアフリカステーションに向けて。ラッセとイアンは落ちて来るピラーの砲撃を。フェルト、この空域全体に有視界通信を送って」
「了解しました」
フェルトは言われた通りにこの空域に居るすべての機体へ向けて通信を伝達する準備を進める。
プトレマイオスも光学迷彩を切りアフリカステーションに向けて加速を始めた。
(仮に彼女が協力してくれたとしても可能性は限りなく低い。けれどもやるしか!)
すでにガンダム3機は破壊活動に向かっているが何処までやっても防ぎきるのは無理。
けれども望みは少ないがこの場に居る誰もが諦めては居なかった。
「現空域に居る全ての機体に粒子界通信でデータを送ります。データにある空域に落下してくるピラーを破壊してください。その下は人口密集地域です。このままでは多くの人が命を落としてしまうわ。だから私達が言える立場じゃない事も分かっているけれど、お願いみんなを助けて」
切実な願いを込めて彼女は言う。
「ブリッジ、聞こえますか?」
通信を終えるとモビルスーツデッキのピーリスから回線が繋がった。
彼女はパイロットスーツを来て画面に映し出された。
「マリーさん、どうしたの?」
「私もモビルスーツで出ます」
「けれどアナタは!?」
「これは戦争ではありません。私にも手伝わせてください」
彼女の言葉にスメラギはアレルヤとの約束を思い出していた。
やっとも思いで助けた彼女をまた戦闘に出すなんて事をアレルヤもスメラギも望んではいない。
けれども今は1人でも人員が必要な時だった。
マリーの言う通りピラーの破壊活動は戦争ではないがモビルスーツに乗せるのはやはり抵抗があった。
「お願いします。このままでは多くの人が犠牲になってしまう」
「……モビルスーツの操縦は出来る?」
「もう1人の私のお陰でモビルスーツの操縦技能は私にもあります」
「……フェルト、ユニコーンの位置は?」
パネルを数回叩くと画面上の地図にモビルスーツの位置が表示される。
その中の機体は型式で表示されているがユニコーンは該当するデータがない為に手動で登録した(Unicorn)と出されている。
「現在、ユニコーンもピラーの破壊に軌道エレベーターに向かっています。けれど速度が間に合わないかもしれません」
その報告を受けてスメラギはすぐにこれからの行動を思考した。
ユニコーンの地上での推力はそこまで高くはない。
他のガンダムと比べてもその能力だけは下回ってしまう。
この条件を満たす為にスメラギは決断をする。
「フェルト、ミレイナにGNアーチャーの準備をさせて。マリーさんは出撃後にユニコーンを回収、ピラーの破壊に向かってちょうだい」
「ありがとうございます」
マリーがそう言うと画面に映っている映像が途切れた。
///
落下するピラーの破壊にバナージのユニコーンも向かっていた。
先の戦闘でプトレマイオスから持ってきたガトリングはなくなってしまいビームサーベルと頭部バルカンしか武器はもう残っていない。
こんな状態では満足に破壊活動など出来はしないが、それでもユニコーンは空を進む。
地上の人々の意思がサイコフレームを通してだがぼんやりと伝わってくる。
「行くんだユニコーン、まだ諦める訳にはいかないんだ」
前へ前へと進むユニコーンだが軌道エレベータまでははるか先である。
このままでは付いた頃には地上は壊滅的な被害を被っている。
サイコフレームで肥大したニュータイプの能力が人々の意思をバナージに集めてくる。
けれども今のそれは死に行く人の膨大な魂を受け止めてしまい並の精神では耐える事など出来ない。
そのせいか悪い予感ばかりが頭の中を過ぎってしまう。
「ん、この感覚は?」
後方から知っている感覚が近づいてくるのが分かった。
全天周囲モニターのコクピットで後ろに振り向くと赤い小型のモビルアーマーがユニコーンに接近しようとしている。
どうするのか様子を見ているとそのモビルアーマーから通信が送られてきた。
「ユニコーンへ、聞こえますか?」
「その声はマリーさん?どうしてそんなのに乗っているんです?」
「その事は後、今はピラーの破壊に向かうわ。このGNアーチャーならユニコーンを運んで行くことが出来る」
「無理はしないでくださいね。アナタに何かあったらアレルヤさんが悲しみます」
「えぇ、分かっているわ。バナージ君、難しいだろうけどユニコーンをこの機体の上に乗せてちょうだい」
「わかりました」
ユニコーンはメインスラスターの出力を下げGNアーチャーと速度を同調させると機体をすぐに合わせた。
SFSにも乗った事のあるのでバナージは簡単にGNアーチャーに乗れた。
GNアーチャーに膝を付けた振動がコクピットのマリーにも伝わってくる。
「もう乗ったの?早いわね」
2機はスラスターを噴かすと加速を始める。
それでもピラーの落下には間に合わないかもしれない。
地球と宇宙を繋ぐ軌道エレベーター、地球側のピラーがオートパージを始めるまでに残されている時間など限りなく少ない。
「マリーさん」
「どうしたの?」
「どうしてまたモビルスーツに乗ったんです?アナタは戦うような人じゃない。だからアレルヤさんも」
「それは違うわ。これはもう戦争なんかじゃない。このままピラーが落下すれば関係のない人達が大勢死んでしまう」
「そうですけど」
「命を守る為の戦い。それに出撃するのは私が決めた事だから、アレルヤも分かってくれるはずよ。戦う事で守れる命も有ると私は思う」
接触回線でマリーの意思を聞くバナージ、音声しか書くことは出来なかったがその意思は本物だと十分に伝わってくる。
戦う事で人の命を守る、その言葉にバナージは胸を痛めた。
(マリーダさん、みんな、こんな俺でも今出来る事がある。見守ってください)
バナージの想いを乗せてユニコーンとGNアーチャーは空を飛ぶ。
落下してくるピラーはもう肉眼で見える程の距離まで来てしまっている。
ご意見、ご感想お待ちしております。