機動戦士ガンダム00 The human race's reformation 作:K-15
3機のガンダムは落下してくるピラーの数に圧巻してしまう。
「何て数なんだ」
アリオスは両手のGNツインビームライフルを構えるとすぐさまトリガーを引きビームを連射していく。
そのあまりにも膨大な数に狙いを定めなくともビームは直撃する。
攻撃力の低いアリオスでもビームを直撃させれば簡単に破壊する事は出来るが先の通りに数があまりにも多い。
「ハロ、GNビットをアサルトモードで展開」
「シールドビットテンカイ、シールドビットテンカイ」
「目標を狙い撃つ!」
ケルディムは装備されているGNシールドビットをハロに制御させると4基を格子状に配置させる。
今までは防御にしか使用してこなかったがアサルトモードにすることで攻撃にも使用する事が可能になる。
GNスナイパーライフルを腰部にマウントさせるとGNピストルを握りピラーに目掛けて発射する。
GNピストルのほうがエネルギーの消費も少なく連射速度も速いので脆いピラーを破壊するにはこれで十分だ。
「けどよ、これを全部破壊するのはさすがに堪えるぜ!」
「もうすぐ刹那とバナージも合流すると連絡があった。とにかく持ちこたえるんだ」
合流したセラヴィーもGNバズーカとGNキャノンを全て展開すると空に目掛けてビームを一斉射した。
ピンク色に発光したビームの光りが視界を埋め尽くす。
ビームは全て命中したが以前として湧き出るようにピラーは落下をしてくる。
たった3機のこの絶望的な状況でも彼らはやるしかなかった。
地上の避難もまだ終わってはいない。
それを終えるまでは1枚たりとも地上に落下させてはならない。
無謀、誰もがそう思うし事実としてその瞬間は訪れた。
「ピラーが!?」
破壊出来なかったピラーがアリオスを通りすぎて行ってしまった。
けれどもそれに構っている暇などはない。
ひとたび攻撃を止めてしまうとまたさらに数をましてしまう。
アレルヤは背中越しに落ちていくのを見るしか出来ないでいた。
「くっ!ダメなのか?」
地上へ激突する、誰もが諦めたがピラーは寸前の所で破壊されて被害は防げた。
ピラーを攻撃した先を見るとそこには赤いモビルアーマーとそれに乗る白亜の機体が居た。
「アレルヤさん、遅くなりました」
「バナージか。けれどもそのモビルアーマーに乗っているのは」
赤いモビルアーマーから通信が繋がるとその画面に映っていたのはパイロットスーツを身にまとったマリーの姿だった。
戦わない、戦わせないと思っていたのに彼女がここに居る事に驚きを隠せない。
「マリー!?なんでそんな機体に?」
「ごめんなさい、アレルヤ。アナタの気持ちも分かっている。けれどもこれは戦争なんかじゃない。1人でも多くの人を助けたいの!」
「だからって……」
「スミルノフ大佐も分かってくれると、私は思う」
「……よし、時間は残っていないんだ。マリーは僕のバックアップを!」
「了解」
すべてを納得した訳ではなかった。
それでも今は被害を食い止める為に行動するべきだとアレルヤは考えた。
戦わせたくないと願っているのはアレルヤだけでなくスミルノフも同じはず、でも彼は決断した。
「マリー、これからはキミの思うように動いてもいいんだ。もう昔とは違う」
「アレルヤ」
「僕もキミも戦うだけが全てじゃないんだ。それを分かって欲しい」
「えぇ、分かった」
ユニコーンはメインスラスターを吹かして飛び上がるとGNアーチャーは変形しモビルスーツ形態になる。
両腕にGNビームライフルを握るとその片方をユニコーンへと向けた。
「バナージ君はこれを使って」
「ユニコーンにも使えるんですか?」
「弾数は少なくなるだろうけど何もないよりマシよ」
さっきの戦闘で装備していたガトリング砲は破壊されてしまって携帯武器を持っていないユニコーン。
ピラーの破壊にバルカンとビームサーベルだけではあまりにも心許ない。
マリーの申し出にバナージは素直に従った。
ユニコーンを接近させると差し出されたビームライフルの砲身を右手で掴んだ。
「これで少しは」
「来るわ!」
空を見上げるとパージをされずに落ちてくる大型の破片が目の前を被い尽くした。
小型の携帯武器しかない3機では破壊するのは難しい。
ケルディムかセラヴィーの高出力のビームで破壊するにしてもエネルギーを大幅に消費してしまう。
「あの大型は僕がやる。みんなは壊れた破片を頼む」
でもそんな事を言っている状況ではない事は周知の事実、出力でいったらセラヴィーが一番高い。
ティエリアはGNバズーカを連結させると圧縮されたGN粒子を開放させようとする。
「トランザムで一撃で破壊させる」
背部の装甲がスライドし圧縮されたGN粒子が開放される。
両手のGNバズーカを連結させトリガーを握り照準を合わせた。
「その必要はない」
ティエリアがトランザムを発動させようとした瞬間に大型のピラーがX字に切り裂かれた。
モビルスーツの大きさを有に超えるピラーをビームサーベルで斬る事が出来る性能を持っている機体は1機しか居ない。
「刹那か!?」
「すまない、今から落下してくるピラーの破壊ミッションに移る」
衛星兵器の破壊へ向かっていた刹那のダブルオーライザーが合流してきた。
これで6機のモビルスーツ全てが揃ったがそれでも数は全然足りてなどいない。
飛来してくるピラーは時間が過ぎるほどに数を増し上空に上がっていたものの下へ下へと追いやられてしまう。
高度を下げるにつれて大きく見えてくる市街地に焦りを感じるパイロット達に追い討ちを駆けるかのように地上付近の連邦軍のモビルスーツ部隊が動きを見せ始めた。
「やべぇぜ、敵が動き出したぞ」
連邦軍のモビルスーツは次々と装備している武器の銃口を上空へと向け始めた。
それでも地上への被害を食い止める為にはこの場を退く訳には行かなかった。
何も出来ないまま連邦軍のモビルスーツ部隊は攻撃を開始した。
///
プトレマイオスも搭載されている全ての火器を使用して地上への被害を食い止めようと動いている。
そしてスメラギの願いが通じたのか敵であったはずの連邦軍部隊もピラーの破壊活動に協力してくれた。
大部隊による砲撃によりぎりぎりまで迫っていたのを何とか阻止出来ている。
連邦軍がピラーの破壊に協力してくれているお陰で数分前まで戦闘をしていたカタロンの部隊の被害も止まった。
連邦政府の解体の為に戦っているカタロン、物資も人員も足りていない現状で動きを止めた連邦軍を叩くなら今を置いてない。
そして1人、また1人と上空へ目掛けて武器を向けた。
「トレミーは進路を維持したまま攻撃を続行、周囲の被害状況も随時マイスターに伝えて」
「わかりました。地上の避難も進んでいますが全員が移動するには2時間以上かかる模様です」
「ここはもう食い止めるしかないわ」
敵味方を問わずにこの場に居る全ての人達が地上を守るべく行動をしている。
操舵をしているアニューは映像を見ながら心に暖かい気持ちを感じていた。
そしてこの先に起こる現象に彼女は少しだけ早く感じる事が出来ていた。
「この絶望的な状況でみんなの思いが1つになっていく。この暖かさは……」
着実にピラーを破壊していく中でレーダーに大部隊がアフリカタワーへ向かっている。
その部隊のほとんどが最新形のジンクスや戦艦で固められておりアロウズである事はすぐに分かる。
「モビルスーツの反応が多数、アロウズです!」
「攻撃を続行よ」
「けれどもそれでは!?」
「大丈夫、多分相手の指揮官は彼女だから」
///
スメラギの思った通りでアロウズに指揮を務めているのはマネキンである。
他の指揮官とは違い彼女はここでカタロンやガンダムを攻撃するような指示は出さずに人命救助を優先させた。
その指示に従い全てのモビルスーツは協力してピラーの破壊を行った。
ジンクスに搭乗しているルイスは敵を目の前にしながら何も出来ない事が歯痒かった。
「パパとママの仇が、ガンダムが目の前に居るのに!」
それでも命令では仕方がないと割り切りガンダムの事は無視した。
地上にはまだまだ民間人が残っている事も知っていたし自分1人だけが勝手な行動を取るなど許されはしない。
操縦桿を握る手は普段以上に強く握られてジンクスのGNランスの砲撃を続けていた。
「准尉、何としてもココは死守する」
「わかっています!」
「……気持ちはわかるがここは堪えてくれ」
アンドレイからの通信に応答するもその声には怒気が含まれていた。
事情を知っている彼だが今はこんな言葉しか思いつかない。
「ん、ジンクスと旧型のモビルスーツ。ティエレンか?准尉」
「はい」
「クーデターの主犯格かもしれない。逃げられる前に捕まえるぞ」
「了解」
軌道エレベーター頂上から降りてきたモビルスーツ、状況から考えてクーデタを起こした奴に違いないと判断そたアンドレイはピーリスを連れてそれの捕縛へ向かう。
こうしてソレスタルビーイング、カタロン、連邦軍、アロウズの異なる部隊による共同戦線が実現した。
ピラーの落下による地上への被害を食い止める間だけ、その短い期間のみだが同じ目的を共有して助け合っている。
///
セルゲイとパングはそれぞれに機体に乗り地上へと降りて来た。
4部隊が共闘して被害を食い止めているのが見て分かった。
今更モビルスーツが2機増えた所でたかが知れているがこの原因を引き起こした者として何もせずただ黙って見ている訳には行かない。
破壊されたピラーとおびただしい弾薬が飛び交う現場は土煙で包まれている。
「連邦軍の支配から市民を解放するはずがこんな事になるとは」
「無駄口を叩いている暇などない。今はピラーの破壊に専念するんだ」
2機は所持している武器で他のモビルスーツと同じ様に破壊活動を行った。
煙で視界が見えにくくなっていく中で赤いモビルスーツがセルゲイのティエリアに接近をしてきた。
破壊活動を続けながらも送られてきた通信を繋げるとそこには見慣れた顔が映し出された。
「スミルノフ大佐」
「ピーリスか、どうしてここに!?」
「その事は後で。後方からアロウズのモビルスーツ?」
すると2機のアロウズのモビルスーツがセルゲイ、パング、ピーリスに接近をして来た。
けれどもそれは協力するような雰囲気はなく明らかに敵意をむき出しにしている。
「そこのモビルスーツ、所属を言え!」
銃口を突きつけるアンドレイのジンクス、その声に2人の男は驚きを隠せない
「アンドレイか?」
「この声は父さん!?アンタは何をやっているんだ、こんな所で!」
怒りを抑えきれないアンドレイはGNランスのバルカンをティエレン目掛けて発射した。
回避行動を取るティエレンだが性能の差は歴然としており操縦技術だけで覆せれはしない。
各部のスラスターを駆使して連射されるバルカンの弾を避けていくが旧型ではすぐに限界が来た。
「くっ、聞くんだアンドレイ!」
「やめるんだ、こんな事をしてホリィは!」
「ハーキュリー大佐まで!?キサマラがーー!!!」
バルカンが脚部に命中し右足が破壊されてしまう。
バランスの崩れたティエレンは攻撃されながらも決して反撃しようとはせずに後退しようと距離を離す。
怒りに燃えるアンドレイはビームサーベルを引き抜くと動きを遅くなったティエレンにトドメを刺すべく接近戦を仕掛けに行く。
けれどもそれをパングがビームサーベルで受け止めて鍔迫り合いに持ち込まれる。
そのわずかな時間にセルゲイのティエレンはGNアーチャーと合流した。
「大佐、ご無事ですか?」
「機体は損傷したが問題はない。それより」
マリーは無事なのを確認するとビームライフルの銃口をアロウズのジンクスへと向けた。
「やめるんだ、中尉!」
「ですがこのままでは」
「あの機体に乗っているのは私の息子だ。それにあの男との約束もある」
アレルヤにピーリスを引き渡した時に交わした約束、彼はその事を忘れてなどいない。
兵士以外の生き方も覚えて欲しいの願っているセルゲイの思い、片時も忘れた事などない最愛の息子、そのどちらも無くす事などしたくはない。
パングのその気持ちに気が付いている、握っているビームサーベルは防御にしか使用せず自分からは攻撃しないで居た。
硬直状態が続く中で土煙の舞う空に緑色の粒子が漂っている。
///
「これだけの数が居れば落下物は何とかなりそうだけど、いつまで続くんだ」
バナージはGNビームライフルで1発1発確実に破壊をしていった。
エネルギーのチャージが出来ないユニコーンでは無駄弾は使えない。
他の機体と比べて攻撃速度は必然的に落ちてしまう。
でも他のアロウズやカタロンのモビルスーツが圧倒的な弾幕を形勢して地上に寄せ付けない。
その光景にバナージは舌を巻く。
「すごい、さっきまで敵同士だったのに今は違う。みんな同じ気持ちで1つにまとまっている」
「聞こえるかバナージ」
「刹那さん」
「大型のピラーが落ちてくる。行けるか?」
「分かりました。行けるなユニコーン」
刹那が通信で言っていた通り見上げると比べ物にならないほど巨大なピラーが落ちてきている。
メインスラスターを噴かせて上昇を始めるユニコーン、その姿は白亜から赤い光を放つガンダムへと変身していく。
ビームライフルを腰部にマウントするとランドセルからビームサーベルを引き抜き出力を上げた。
出力の上がったビームは通常の2倍ほどに長くなり縦に一閃する。
「これだけじゃダメだ。まだ大きい」
半分に切断されても破壊するにはまだ足りない。
通り過ぎていく残骸をケルディムとセラヴィーがフォローに回った。
GNスナイパーライフルとGNバズーカをそれぞれに構えると狙いを定める。
「ハロ、出力最大だ」
「リョウカイ、リョウカイ」
「圧縮粒子開放!」
大出力のビームが2つに割れたピラーをさらに細かく分断させる。
だが出力の大きいビームは残骸を飛散させてしまった。
ばらばらと鉄屑が地上へと大量に落下していってしまう。
「ダメかよ!」
「ピラーを破壊するエネルギーが強すぎたんだ」
「クソッタレ!!」
ロックオンはGNスナイパーライフルを腰部にマウントすると地上に落ちる残骸に向かいGNピストルを2丁構える。
狙いを定めてトリガーを指に掛けるがそこで止めてしまう。
もし1発でも外してしまえばビームが直撃してしまい今までの事が無駄になる。
狙撃には絶対の自信を持っているが不安を完全に拭い去る事は出来はしなかった。
「ロックオン、次が来るぞ!」
「分かってる!」
機体を反転させるともう1度空に向かい銃を向けるケルディム、エネルギーの続く限り彼は撃ち続けた。
数え切れないくらいトリガーを引き続ける中でその現象は起こった。
「気のせいか?ビームの出力が上がってる」
「ミドリキレイ、ミドリキレイ」
今まではビーム1発で残骸を1つ相殺していたのが今ではそのビームが貫通していく。
そして視界にはGN粒子とは違う緑色の粒子が漂っていた。
「この粒子は見た事がある。あいつのガンダムか?」
///
ユニコーンのサイコフレームの色が緑色の輝きに変わってく。
その事はバナージも気付いていた。
「これはサイコフレームの光?みんなの思いが1つになっていく。みんなの力がガンダムに」
緑色の粒子は渦を巻き戦場に広がっていく。
そしてその光は人々の気持ちを1つにまとめていく。
思いは力となり、力は形となり心を繋げる。
だが心を繋げたくともそうできない理性がある。
「この感覚はマリーさん!?ダメだ!」
メインスラスターを全開にするとレーダーに映るGNアーチャーの元へと急いだ。
///
「アンタが母さんを殺した!止められた筈なのに!」
「あの時はそれしかなかった。それにホリィも分かってくれるはずだ」
「うるさい!だったらなんで来なかったんだ。去年だって5年前だってずっとそうだ!」
「来なかった?」
「母さんの墓だろ!そんなアンタが今度は軍規を破るのか!」
右脚部を損傷したティエレンではジンクスとまともに戦う事すら出来ない。
押さえつけていたパングのジンクスを抜けてくると躊躇なくティエレンに攻撃を仕掛けてきた。
赤く光るビームサーベルに成す術のないティエレンだがGNアーチャーに乗ったマリーはそうはさせまいと動く。
片手のGNビームライフルを連射し近づかれないよう進路を防ぐ。
「このくらい!」
「アンドレ君!こんな事をしてもホリーは」
「アンタには関係ない!これは僕の」
各部のスラスターを駆使して右へ左へと移動してビームを避けていく。
パングの説得にもまったく耳を貸そうとはせず目の前に居る父の乗るティエレンしか眼中にない。
けれども頭に血が上った状況では冷静な状況判断など出来はしない。
そしてマリーはその隙を見逃さなかった。
「動きすぎよ」
必要以上に噴かしたメインスラスター、それは同一方向なら問題はないが逆方向となるとその慣性にブレーキを掛ける為にさらに出力を増やしてスラスターを噴かす。
けれどもそれはわずかながらに硬直を生み隙を晒す事となる。
慣性を殺した一瞬の間にGNアーチャーのビームが正確に飛来してきた。
「ぐあぁぅっ!!」
直撃したビームはジンクスの右腕をごっそりと持っていってしまう。
動きの止まった機体のコクピットに照準を合わせるとマリーは引き金に指を掛けた。
『ダメだ、マリーさん!!』
指を掛けた瞬間に頭の中に声が響いた。
その声に操縦桿を握っている手の力を緩めてしまった。
「今の声は一体?」
「中尉、キミは戦ってはいけない」
「ですが!?」
セルゲイの言葉に耳を貸しながらも銃口の向きはジンクスを狙っていた。
損傷したジンクスにルイスの機体が救援に駆けつけている。
マニピュレーターを接触させるとコックピットのアンドレイに呼びかける。
「アンドレイ少尉、ご無事ですか?」
「私の事はいい、それよりも」
「反乱分子め!」
GNランスのバルカンで動きの遅いティエレンを狙うが傍に居るGNアーチャーと共に回避行動を取り簡単に避けられてしまう。
損傷しているにも関わらず中々にしぶとい事に苛々を募らせてしまう。
「逃げるな!」
距離を取ろうとする2機に追いつこうとメインスラスターを噴かせようとした。
けれども後方から動きを遮る様に連続してビームが飛んできた。
各部スラスターを駆使して回避行動を取りつつ方向転換すると目の前に居たのは自分は今まで追い求め来た相手。
「ガンダム!」
ガンダムを倒す為に今まで生きてきた。
父と母の仇を取る為にアロウズに入隊した。
それを成す為だけに今彼女はココに居る。
「パパとママの仇だぁぁ!!!」
手が痛くなるくらいに操縦桿を握りGNランスのバルカンを撃ちまくった。
「これ以上マリーには近づけさせない。足止めする」
アリオスの高い機動力の前に弾丸はすべて空に消えていく。
加速して見る見る内に接近してくるアリオス、ジンクスに肉薄するとビームサーベルを抜き斬り抜けた。
斬られた左腕が溶断され落ちて行くが頭に血が上った彼女に損傷した事など気にならない。
装備しているGNランスを投げ捨てるとビームサーベルを抜き接近戦をしかけようとメインスラスターを全開にする。
一直線に距離を離すアリオスに向かうが周りが見えていないルイスは自分が狙われている事に気がついていない。
「悪いが落とさせてもらう。セルゲイをやらせる訳にはいかんのだ」
ルイスのジンクスを射程距離に納めると照準を向けた。
『これ以上戦ったらダメだ!』
突然の叫び声に咄嗟に振り向くとそこには緑色の粒子を放出する白亜の機体が居た。
そのままジンクスに接近してくるとマニピュレーターを接触させて通信を繋げてきた。
「何だ!?」
「憎しみの心を広げて、その先に何があるんですか?」
「ソレスタルビーイングの新型、この原因を作り出したのは私の責任だ。セルゲイもアンドレイもホリィもこの惨劇も!だから私が終わらせる」
「アナタは市民を守る為にクーデターを起こしたんでしょ?そんな人がこうも簡単に人を殺すなんて」
「そうだ、もう私にはこの方法しか残されていない」
「連邦軍もカタロンも今は一緒になって動いてくれています。みんなの気持ちが伝わってこないんですか?」
「だが現実は違う。アロウズの策略に踊らされ関係のない人々を巻き込んでしまっている。クーデターを起こした私に一体何が出来る?目の前ではセルゲイとアンドレイが殺しあって」
「アナタは!?こうなる事だって予測出来た筈です!死んでから変えたんじゃ遅すぎるんですよ!」
「ならどうする!?」
「俺が止めてみせます。マリーさんもあの2人も死なせたりなんてさせません!」
接触させていたマニピュレーターを放すとバナージは戦いを止める為にユニコーンを向かわせた。
ユニコーンが通った軌道はまるで虹の光のように輝いている。
///
「アンタだけは許さない!」
「アンドレイ、私は父親としては未熟だった。だが例え私を殺したとしてもホリィは喜んでなどくれない」
「それを決めるのは俺だぁ!」
セルゲイの必死の呼びかけにも彼は耳を傾けてはくれない。
ジンクスの残された左手にはビームサーベルが握られておりアンドレイはそれを振り上げた。
死を悟ったセルゲイは避けようともせず振りかざされたビームサーベルが機体を貫くのをじっと待った。
「アンドレイ、ホリィ、すまない」
セルゲイは自分の過ちを悔やむが時間が戻りはせず目を瞑り死を待った。
(今までにも死にそうになった事は数多くあるが今ほど無念に思ったことはない)
けれども彼はまだ死んでいない。
再び目を開けるとそこに見えたのは息子の姿、そして見渡す限りの虹色の空間。
「これはあの時の!?」
「何なんだこの感覚は?幻でも見ているのか?」
初めて体験するこの現象にアンドレイは戸惑いを隠せない。
何処を見ても虹色の光、相手の意識が流れ込んでくる感覚など彼には未知の出来事。
「アンドレイも居るのか。いいや、他にも」
「アナタだけは僕は絶対に許さない。アナタのせいで母さんは死んだんだ!」
「許してくれなんて言わない。お前を1人にしてしまったのは私のせいだ」
「そうじゃない!僕は母さんの事を」
目の前の父に向かって叫ぶアンドレイ、うつむき何も言葉を発しようとしないセルゲイに怒りがこみ上げてくる。
不の感情が積もる中で背中に暖かい感触を感じた。
この感触は幼い頃に感じていた物と同じで懐かしい匂いがした。
「これは……母さんなのか?」
「ホリィ、お前はずっと私達を見てくれて」
セルゲイに見えたのは死んだ筈の妻の姿、夢でも幻でも彼はよかった。
再び彼女にめぐり合えた事に感謝し瞳から涙を流した。
この空間に居るのは2人だけではない。
ルイス、アレルヤ、マリーもこの場所に居た。
「どうなっているの?ここは何処?」
「キミがさっきの機体のパイロット。女の子だなんて」
ルイスが振り向くとアリオスのパイロットであるアレルヤとマリーがそこに居る。
パイロットスーツを見る限りガンダムのパイロットである事は想像に容易い。
「お前がガンダムのパイロット、ソレスタルビーイング!パパとママはコイツに!」
「待ってくれ、キミが思っているガンダムはソレスタルビーイングではない」
「何を言っている、ガンダムはソレスタルビーイングの機体。私は確かに見た、ガンダムを!」
「トリニティーと僕達は違うんだ」
「そんなちまちまやってどうすんだよ?」
「ハレルヤ!?」
死んだと思っていたハレルヤのもう1つの人格がアレルヤの隣に現れた。
自分とは真逆の闘争本能がむき出しでキツイ口調は彼に違いない。
「感動のご対面は後だ。今はコイツをどうにかするんだろ?」
「言葉で言ってもすぐには理解出来ないか。なら」
アレルヤは自分の記憶を彼女に伝えた。
どうしたらそんな事が出来るのか彼にも理解出来てなどいない。
けれどもこの空間に居るときだけはそれが出来ると信じた。
「この感覚は、あの人のを見ているの?ガンダム同士で戦ってる?」
ルイスの頭の中に断片的なビジョンが流れてきた。
そこに映るのはトリニティーと戦闘するソレスタルビーイングのガンダム。
「パパとママを殺したのはソレスタルビーイングじゃない?それじゃあこの4年間は何の為に?」
「戦う以外にも道はあるはずよ」
「私と同じようにアナタにだって思ってくれている人は居るでしょ」
マリーとピーリスは意識の共有するこの空間では1人として互いに存在している。
そして2人とも自分を思ってくれている人が居るからこそ今まで生きて来れた。
「沙慈……」
「ルイス、どうしてキミがこんな事を!?」
「だって、そうしないと……」
「戦う必要なんてないんだよ。また昔みたいに僕と一緒に買い物に行こうよ。ルイスが腕を強引に引っ張ってあれもこれもって一杯買うんだ。今からでもまだ間に合うさ」
「無理よ!私はもう人を殺しちゃったのよ、モビルスーツに乗って何人も何人も!そんな私が許される訳ない!」
「そんな事、キミは優しい人じゃないか!」
「ダメよ、沙慈。もう私は元には戻れない、ごめん……」
ルイスの瞳からは涙が止め処なくあふれ出した。
彼の優しい心に、もう戻れない自分の心に、死んでいった人達の思いに。
塞ぎこんでいく彼女の心に沙慈は何も出来ずに居た。
「そんな!?ルイス」
『諦めるな、それでもと言い続けろ』
「この声は?」
頭の中に響くように女性の声が聞こえた。
沙慈は以前にもこの声を1度聞いた事がある。
そのときも今と同じ意識を共有した空間で起きている。
「そうだ、僕はこんな事で止まれない。止まったらダメだ、そうだよね!」
沙慈の隣には姉である絹江の姿があった。
死んでしまったルイスの両親も見守ってくれている。
沙慈はみんなの想いを連れてもう1度彼女の名前を叫ぶ。
「ルイスーーー!!!」
ご意見、ご感想お待ちしております。