機動戦士ガンダム00 The human race's reformation   作:K-15

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第25話 イオリアの遺産

「マリナさま~、お空に虹がい~っぱいなの」

 

「本当ね、すごく綺麗」

 

「カメラどこ~?」

 

今回のクーデターに先駆けてアフリカタワーに増援を出せる位置に基地を設営した。

岩が転がる谷の底に穴を掘り人が住めるように必要最低限の改築を施してある。

けれどもクーデターは連邦軍とアロウズの衛星兵器により失敗に終わってしまった。

こうなると地上の部隊は味方が次々と撃墜されていくのをただ黙って見るしかない。

落下してくる軌道エレベーターのピラー、市民を守る為に起こしたはずのクーデターは取り返しの付かない事態にまで派生してしまった。

絶望に苛まれる中でも光は残っている。

目の前で起こっている現象にカタロンの構成員はその場に立ち尽くしていた。

 

「何なんだあの光は?軌道エレベーターはどうなったんだ?」

 

「他の奴と連絡は取れないのか!」

 

現場の状況を把握しようにも軌道エレベーターは光に包まれて何も見えず、現場に居る兵からも連絡が途絶えている。

戸惑う大人を退けて保護している子供達は今を楽しんでいた。

それを見守るマリナの元へシーリンもやって来た。

 

「シーリン、この光は?」

 

「分からないわ、みんな同じでしょうね」

 

「そう……」

 

「でも可能性があるとすればソレスタルビーイングのガンダム、あの機体から放出される粒子はあれと似ているわ。まぁ似ているだけだけど」

 

「刹那、アナタもそこに居るの」

 

マリナは呟くと虹が包む空を見上げ祈りを込めた。

両手を握り合わせ彼に声が届くようにと心の中で願う。

 

「マリナ……」

 

「声は届くわ。諦めずに信じる事、今の私にはそれしか出来ない」

 

「そうね、信じるわ」

 

虹の光、サイコフレームの輝きはより一層と光を増していた。

 

///

 

刹那が目を開けるとそこはダブルオーライザーのコクピットの中ではなかった。

彼もまた意識共有領域に取り込まれている。

 

「これはあの時の!?」

 

「気が付いたか、ソラン・イブラヒム」

 

「お前はマリーダ・クルス。この現象はやはりお前が関係しているのか」

 

刹那の前には以前にもこの空間で出会った彼女が居た。

彼女は睨み付ける様に刹那の顔を見ている。

 

「前にも言ったはずだ。私には分からないと」

 

「ならなぜまた俺の前に現れた?」

 

「何故私がお前に会いに来なければいけない?」

 

「お前が前に言っていたニュータイプとこの現象は何か関係があるのか?人と人とが誤解なく分かり合えるのがニュータイプ、人類の革新だとお前は言った。だとすれば今の俺が感じているこの感覚は」

 

刹那にはこの空間にいる人々の意思が自分に流れ込んでくるように感じれた。

だから分かる、誰も戦いなど望んでいない。

隣に居る仲間、思いを寄せる人、自分を待っていてくれている人、その人達を思う自身の心。

死への恐怖、生きる事の執着、押しつぶされそうな程の深い悲しみ。

その人の過去も意識せずとも見えてしまう。

生まれた時は皆同じ姿でもそれぞれの環境は異なる。

1人1人が違う人生を歩む中でどうして今戦っているのか。

どうして相手を倒さなければならないのか。

どうしたら相手を恨む事が出来る、自身の生存の為に目の前の敵を倒す。

 

「そうだ、俺は殺してしまった。俺を育ててくれた両親を。恨んでなんかいない、一番俺を見ていてくれた人達を」

 

「それだけ人の心は脆いんだ、今のお前なら分かる筈だ」

 

「だが今の俺では無力だ。それが出来る人類をニュータイプと呼ぶのか?」

 

「いいや、お前はニュータイプではない。イノベイターだ」

 

「イノベイター、ティエリアの言っていた。敵と同じ存在になるなんて皮肉なものだな」

 

アロウズを裏から操り世界に戦いを広げているイノベイター、彼らを止めて戦争のない世界を作るのが今のソレスタルビーイングが存在する意義。

刹那はマリーダにその事実を聞かされて落胆した。

それは今までの自分の人生を否定するにも等しい事であった。

 

「ニュータイプでなくても今のお前の考えている事などすぐに分かる。何を勘違いしているかは知らないがお前の相手をいつまでもしていられるほど私も暇じゃない」

 

「どう言う事だ?」

 

「詳しいことは本人に聞け。私にはまだやる事がある」

 

「待て!」

 

そう言い残すとマリーダは刹那の目の前から霧のように消えてしまう。

詳しいことは結局は分からないまま刹那は1人この空間の取り残されてしまう。

 

「違う、1人じゃない。俺以外にもまだもう1人誰かが居る」

 

「……ほぅ、私の存在に気が付くとは。キミは本当の純粋種らしい、コードネーム刹那・F・セイエイ」

 

「お前は……アナタは!?」

 

GN粒子の設計者でありソレスタルビーイングの創始者でもある。

その姿は映像でしか見た事がない、見た目はそれよりも若く見えたが確かにその人だと理解出来た。

彼が居たからこそ刹那はガンダムとめぐり合えた。

 

「イオリア!?」

 

「その名前を最後に言われたのは一体いつだったかな。もはや忘れてしまったよ」

 

「教えてくれ。イノベイターとは、純粋種とは何なのかを」

 

「イノベイター、それは進化した人類の事だ」

 

「進化した人類、ニュータイプとは違うのか?」

 

「どちらも同じだ。違いがあるとすればイノベイターはGN粒子によって人工的に覚醒させる。その副作用で肉体にも変化が現れる。だがニュータイプは違う。あれは人類が宇宙に適応するために進化した存在だ」

 

「あなたは人類を進化させる為にGNドライヴを作ったのか?だとしたらニュータイプの存在はどうなる」

 

「私は戦争の火種を宇宙にまで持って行ってほしくはなかった。いずれ訪れる対話の為には人類をまとめて進化させるしかないと考えた。その為のGNドライヴ、ソレスタルビーイングの武力介入は戦争をなくすのが目的ではない。人類の進化の為だ。けれども私は人類を過小評価していたらしい、ニュータイプ。彼のような存在が自然に現れるとは」

 

「バナージの事か」

 

「彼だけではない。ニュータイプはこれから先にもっと増えて行くだろう。私は人間を見くびっていたみたいだ」

 

「だがアナタが居てくれたお陰で今俺はここに居る。けれど今までの人生で俺は分かった。人は神にはなれない」

 

「そうだ、だからこそ刹那・F・セイエイ、GNドライヴとガンダムをキミに託す。この戦いを終わらせる為に」

 

「あぁ、この戦いは俺達が終わらせる」

 

この言葉を最後にイオリアは刹那の前から姿を消した。

そして刹那の意識も現実世界へと呼び戻される。

 

///

 

刹那は意識共有から抜け出すとコクピットの中で周囲を埋め尽くす緑色の粒子を見た。

緑色に輝く粒子はGN粒子だけではなくユニコーンのサイコフレームからも溢れでている。

 

「イオリアに託されたガンダム」

 

意識共有領域で刹那は彼に託されたGNドライヴの本当の性能を開放させる。

ツインドライヴの粒子発生量が増大し機体の装甲が赤く発光していく。

 

「俺達は変わる、託された想いを未来へ繋げる!その為に俺とガンダムはここに居る!トランザムバースト!!」

 

数回に渡る意識共有で刹那はイオリアが求めた人類が進化した存在へと成り得た。

純粋種へと進化した刹那の脳量子波に反応し純度を増した七色の輝きを放つ膨大なGN粒子が戦場全域に放出する。

サイコフレームの光と交わると粒子はこの空域に居るモビルスーツやピラーの残骸を吹き飛ばしていく。

その現象はアクシズショックと呼ばれる現象に似ている。

 

///

 

プトレマイオスではこの現象について出来る限りの情報を集めていた。

虹の光は輝きを増しており軌道エレベーターで何が起こっているのかは確認出来ないでいた。

 

「この光は何なの?みんなから応答は?」

 

「まだありません」

 

「フェルトは可能な限りデータを採取してちょうだい。こうなったらもう私達には何も出来ないわ」

 

「スメラギさん……」

 

「戦術予報士と言っても万能にはなれない。今も戦っている仲間がどうなっているのかすら予想も付かない。ただ祈るしか出来ないなんて」

 

何も出来ない無力な自分がスメラギは堪らなく悔しかった。

これでは昔のように何も出来ずに、何も変えれずに終わってしまう。

 

「バナージの声が聞こえた」

 

操舵をしていたはずのアニューは突然立ち上がるとぽつりとつぶやいた。

現在はユニコーンどころか誰とも通信回線は繋がっていない。

声など聞こえる訳がない状態、でも彼女は確かにそう言った。

 

「アニュー、声が聞こえたって誰が?」

 

「バナージ、ううん。アレルヤさんも沙慈さんもみんなの声が聞こえる」

 

「みんなの声」

 

「みんなまだ生きてます。生きて戦っています。今を変えようと必死に戦い続けてます」

 

今を変える、その為にソレスタルビーイングは存在する。

スメラギは絶望に飲み込まれて忘れ掛けてしまっていた。

過去を繰り返さない為に彼女はここに居る。

 

「そうね、まだ諦めるには早すぎるわね。トレミーの進路変更、このままアフリカタワーの虹に接近します。フェルトはこのまま観測を続けて。ラッセ、イアン、ミレイナは砲撃に回ってちょうだい」

 

「了解しました」

 

「はい。……ダメ、バナージ!このままだと引き込まれる、逃げて!!」

 

///

 

意識共有領域の中にはまだ沙慈、ルイス、そしてバナージが居た。

彼女の心の中の闇を取り除く為に沙慈はずっと叫び続けている。

 

「ルイス、戻るんじゃない。また新しく始めるんだ。もう1度僕と一緒に」

 

「無理、もう無理なのよ」

 

「無理なんかじゃない。絶対に諦めたりなんかしたらダメだよ」

 

「でも……私は……」

 

「僕だって同じさ。自分の事しか考えられなくて無関係な周りの人を巻き込んでしまった。償いの方法なんてわからないよ。でも僕はいつか彼らに許してもらいたい。その為にも生き続ける」

 

沙慈にもなくしてしまいたい過去はある。

自分の行動によりアロウズに虐殺されてしまったカタロンの人々、それを拭い去る事は出来ない。

だが沙慈はそれに心をいつまでも縛られたりしてはいられなかった。

ルイスの存在が今の彼を作り上げている。

 

「だからルイスもこんな所に居たらダメだよ」

 

ルイスの心の中はまだ揺らいでいた。

 

「私は復讐の為に生きてきた。そんな私が今更許されてもいいの?」

 

自問自答しても答えは導き出されない。

ただ変わろうとする彼女に沙慈は手を差し伸べる。

 

「ルイス、僕を信じて」

 

「諦めないで。辛い事も悲しい事も乗り越えられます」

 

バナージは沙慈と共に彼女に呼びかける。

ロニ、マリーダ、分かり合えたのに助けられなかった人達がバナージには沢山居た。

沙慈にはそうなってほしくない。

 

「人間には苦難を乗り越えるだけの力がある。それが今出来ない訳がない」

 

「だから手を伸ばして。僕が全力で支えるから」

 

「沙慈、いいの?」

 

目に涙を浮かべ硬く握っている右手を差し伸べゆっくりと沙慈の手に触れようとした。

けれどもそれを邪魔する存在が彼女に取り付いている。

触れかけていた指は動きを止めて彼女の体が沙慈から離れていく。

 

「困るんだよ、勝手な事をされると。彼女にはまだ利用価値がある」

 

「誰だ?」

 

「始めましてだね、ユニコーンのパイロット。バナージ・リンクス、キミの事を僕は少なからず知っているよ。僕の名前はリボンズ・アルマーク、この世界の救世主さ」

 

「救世主?」

 

「そうだよ、だからあまり邪魔をしないでほしい。特にキミの存在は計画の障害になりかねない」

 

バナージのニュータイプとしての能力はこの空間では飛躍的に向上しておりリボンズが敵である事は感覚ですぐに理解出来た。

このままではルイスの精神はまた閉ざされてしまいリボンズに利用されてしまう。

それだけは何としても止めなければならない。

遠ざかっていく2人の姿をバナージと沙慈は追いかけた。

 

「アナタは危険な人だってわかるんだ。その人を連れては行かせない!」

 

「ルイス!待ってて、すぐに助けるから!」

 

「必死になるのはいいけどキミ達は状況が把握出来ていないようだね」

 

『バナージ!このままだと引き込まれる、逃げて!』

 

薄れ行く意識共有領域で聞こえたアニューの確かな声、けれども声が聞こえたときにはすでにリボンズの術中に嵌まっていた。

 

「逃げるって、そんな事をしたらルイスさんが!?」

 

「ふふふ、もう遅いよ。バナージ・リンクス、キミの心も一緒に連れて行く」

 

バナージの周囲に亡霊のように複数の人の意識が纏わり着いてきた。

けれどもはっきりとした人の意識は感じることは出来ない。

まるで空っぽ、フル・フロンタルのように器としてしか存在していない。

 

「この亡霊は一体?」

 

「まだ生まれていないイノベイターさ、キミは彼らと一緒に行って貰う。そしてヴェーダに取り込む」

 

「人間の意識を機械に取り込むなんて出来るわけがない」

 

「なら今の状況はどう説明するんだい?こんな事が現実に起こるなんて誰も想像が付かないよ。なら試してみる価値はあると思わないかい?」

 

亡霊はバナージに纏わり付いたまま離れようとはしない。

身動きの取れなくなる体を亡霊はそのまま引き連れていこうとする。

沙慈も金縛りにあったかのように何もすることが出来ない。

 

「ルイス!バナージ君!行ったらダメだ!」

 

「いくら足掻こうとも無駄だよ。さようなら、沙慈・クロスロード」

 

///

 

スメラギの指示でラッセ、イアンは管制室に集まった。

ミレイナは遅れているのかまだ到着していない。

2人ともアフリカタワーに現れた虹の光が気になってしょうがなかった。

 

「おやっさんはどう思う?この現象はGN粒子が関係しているのか?」

 

「わしだってアレが何なのか知りたいわ。可能性があるとすればユニコーンのサイコフレーム」

 

「サイコフレーム?」

 

「あの機体のフレームに使われている材質だ。だが調べてみてもさっぱりだ」

 

「結局誰にもわからないか。戻ってきたら本人に聞くしかない。バナージも知らないかもしれないけどな」

 

「あぁ、戻ってきたら洗いざらい話してもらう。このままじゃ……」

 

「このままじゃ?何か他にもあるのか?」

 

意味深な事を呟いたイアンに追求するラッセ、けれどもイアンは硬直したままその先を話そうとはしない。

数秒が経過すると突然鼻を押さえると嗚咽を漏らして床に片膝を付いた。

 

「おやっさん!?」

 

急いで体を支えると何が起きたのかを確認するラッセ、イアンの指の隙間からは血が流れてきていた。

緊急事態と判断して1度ブリッジのスメラギに報告する為に急いでコンピューターのパネルを叩くとブリッジに回線を繋げた。

 

「ラッセ、どうしたの?」

 

「大変だ、おやっさんの状態が良くない。血を噴いている」

 

「なんですって!?」

 

「すぐにメディカルルームを連れて行く」

 

「そうしてちょうだい。ミレイナは?」

 

スメラギとラッセが通信をしている丁度その時に遅れてミレイナがやってきた。

彼女は床で苦しんでいるイアンを見ると深刻な状態だとすぐに判断出来てしまう。

床に落ちた数滴の血痕を見て慌てふためくミレイナ」

 

「パパ!?大丈夫ですか?パパ!!」

 

「ミレイナ、おやっさんをメディカルルームへ連れて行け。後の事は俺がやる」

 

「は、はいです!」

 

ミレイナは小さな体でイアンの腕を抱くとふらふらとだがゆっくりと歩いて行く。

それを確認するとラッセは1人で砲座のシートに座った。

 

「全部は無理だ、ある程度はオートでやるしかないか」

 

前進するプトレマイオスの目の前に広がる虹色の光、接近してくるとその様子がよく見えた。

光の中からモビルスーツやピラーの残骸が吹き飛ばされるように出ている。

吹き飛ばされたモビルスーツの中にはガンダムの姿もあった。

それを確認して安堵するスメラギ、けれどもダブルオーとユニコーンはまだ出てきていない。

 

「ケルディム、アリオス、セラヴィー、GNアーチャーを確認しました」

 

「とりあえずみんなを回収してちょうだい。ダブルオーとユニコーンはまだ見えないの?」

 

「ダメです、2機は確認出来ません。スメラギさん、このままここに居るのは危険なのでは?」

 

「それはわかってる。でも全員が戻って来るまで待ってあげるしかないわ」

 

光の中から出てきたモビルスーツはガンダムだけでなくアロウズのモビルスーツも混じっている。

今はまだ体勢が整っておらず全員が虹の光に釘付けだが再び戦闘が始まったらここを切り抜けるのは厳しい。

 

「スメラギさん、刹那さんは大丈夫です」

 

するとまた突然アニューが意味深な発言を始めた。

ダブルオーはまだ確認出来ていないのに根拠のない事を言う彼女だがスメラギは信じてみようと思った。

 

「そうね、こんなのを見せられたらアナタの言う事も信じられるわね。みんな無事に帰ってくるわよね」

 

「刹那さんと沙慈さんの意識は感じられます。でもバナージくんは……」

 

「バナージがどうかしたの?」

 

「バナージくんの意識が、吸われていきます」

 

「意識が吸われる、何なのそれは?」

 

真相を確かめようとスメラギはさらにアニューに追求するとアフリカタワーに発生していた虹の光が突如として消えていく。

だんだんと見えてくる景色の中でダブルオーライザーのみがその場に居た。

 

「光が消えた!?ダブルオーは見えるけど。フェルト、ユニコーンはどうなってるの?」

 

「ダメです、レーダーでは確認出来ません!」

 

「一体、何が起きているの……」

 

誰もが予想もしなかった結末、ピラーの落下は阻止出来たがその代償は行方不明になってしまったユニコーンとバナージ。

これから世界はどのように変革していくのだろうか。




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