機動戦士ガンダム00 The human race's reformation   作:K-15

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第27話 ラプラスプログラム

ガンダムを全機収容したプトレマイオス、光学迷彩で周囲に溶け込みアフリカタワーから少し離れた場所に隠れている。

戦闘が終わって数時間、アフリカタワー周辺の人工密集地域からの民間人の避難も無事に完了した。

けれども崩壊したピラーの復旧、空気中を漂う埃は濃密で器具がなければまともに外で呼吸をする事も出来ない等問題は山済み。

それでも今は無事に生きている事に安堵する人々、決して忘れる事はないだろう。

人類の英知が詰まった軌道エレベーターの崩壊、そして空に輝く虹の光を。

これらの出来事は人々の心に深く刻まれる事だろう。

 

「予想外の出来事ばかりだけどとりあえず民間人の避難は完了したようね」

 

スメラギは無茶ではあったが無事に作戦が成功した事に胸を撫で下ろす。

そしてソレスタルビーイングのこれからの行動を決める為に、戦術予報士として次なるプランを考えなくてはならない。

ただ1つ、重大な問題が彼女達には残っている。

未だに行方不明のバナージとユニコーンガンダムの所在、それがこの場を動けない理由。

 

「フェルト、レーダーの分析はどう?」

 

「ダメです。観測を始めてからは何も反応がありません」

 

「やっぱりあの光が原因なのかしら。そうだとしてもあの現象に説明が付かない」

 

あの時に出現した眩いばかりの虹の光が何なのか誰1人として分からない。

虹の光の正体を調べる為にもユニコーンは何としても回収したかった。

だが時間ばかりが過ぎてしまい現状は変わっていない。

バナージの生死も不明でどうしようもない状態だった。

 

「あまり長くここに居る訳にもいかない。でもせめて何か1つでも情報が欲しい」

 

「分かっている事なら1つある」

 

ブリッジの扉が開くとパイロットスーツを着た刹那がやって来た。

彼はスメラギの下へ歩いてくると話を続けた。

 

「バナージは生きている」

 

「何ですって?」

 

「アイツはまだ生きている。上手く説明は出来ないが俺には分かる」

 

「本当なの、バナージ君が生きているって?それにどうしてそんな事が分かるの」

 

「あの光の中で、意識を共有した空間で俺は見た。アイツにはマリーダ・クルスが付いている」

 

「マリーダ?」

 

「俺達に出来る事を進めるんだ。バナージは必ず戻って来る」

 

刹那はそれだけ言い残すとまたブリッジから出て行ってしまう。

何故刹那にはバナージが生きている事がわかるのかは結局は有耶無耶にされてしまったが彼は断言した。

スメラギはその言葉を信じてみた。

そして今の自分に出来る事を進めていく、それが未来に繋がると思って。

 

「でも」

 

「でも、なんですか?」

 

「刹那言ってたわよね、バナージ君にはマリーダって人が居るって?」

 

「そう言っていましたね」

 

「マリーダって女の人よね?」

 

「その確率が高いです」

 

2人は互いの顔を見つめあうと言葉を発せずとも考えている事が伝わった。

頭の中にはイアンの介護についているミレイナの表情が浮かび上がった。

 

「不味いわね」

 

「私もそう思います」

 

刹那のイノベイターとしての能力不足ではなくただの彼の言葉足らずなのだが2人には少し歪んで伝わってしまった。

 

///

 

車に揺られる事数分、バナージはシーリンが運転する車に乗りユニコーンが隠されている格納庫へと向かっている。

目の前に見えるのは断崖絶壁の岩壁、ここにモビルスーツがあるとは普通ではわからない。

舗装されていない道を走るとサスペンションが軋みながら車のボディーを揺らす。

 

「こんな所に隠してあるんですか?」

 

「満足に支援も受けられないからね。場所もないからやれる事をやっただけよ」

 

「どうしてそんな危険な事をするんです?」

 

「強者が弱者を支配するなんて旧世紀の出来事よ。けれども今の連邦はそれを平然とやってのけている。これは虐げられてきた者達の反抗の意思よ」

 

(でもこのまま戦い続けても消耗するだけで長くは続かない。連邦軍、アロウズ、イノベイターが世界を実質的に支配している)

 

カタロンには旧世代のモビルスーツを保有している程度でとても連邦軍に太刀打ち出来る戦力など持ち合わせてはいない。

戦うのなど絶望的な戦力差だがシーリンはそうは思っていなかった。

 

「勝ち目のない戦い、でも私達は諦めない。たった1人になったとしても最後まで戦い続けるわ。それにこの子達の面倒も見ないといけないしね」

 

シーリンが運転席から後ろを覗くと一緒に付いて来たコナー達が到着を今か今かと楽しみにしている。

 

「この子達の為にも歪んだ体制は正さなくてはいけない。従わなければ排除するなんてそんな事があっていいはずがない」

 

「言いたい事はわかります。だから俺もユニコーンでソレスタルビーイングと一緒に戦いました」

 

「戦うと言っても殺し合いをするだけではないでしょう。連邦の支配統治から他の国の人達も解放しないといけない。この子達の為にも、他の犠牲者を作らない為にも」

 

車を運転しながら助手席に座っているバナージに彼女がカタロンに所属している理由を聞かせてくれた。

シーリンが無謀な戦いを続けるのにもまた理由がある。

 

「話しすぎたわね。着いたわ」

 

ブレーキペダルを踏み車を減速させる。

ローターとパッドの摩擦から甲高い音が鳴ると車は停止した。

止まった場所は何もない、ひたすら断崖絶壁の岩壁が続く場所。

シーリンは車に取り付けてある通信機を握ると周波数を合わせた。

 

「こちらシーリン、クラウスは居る?」

 

通信機の向こう側から雑音交じりに男の声で返事が返って来た。

 

「俺だ、どうした?」

 

「今シェルターの前に居るの。空けてくれない?」

 

「わかった、他には誰か居るのか?」

 

「子供たちとあの白い機体のパイロットよ」

 

「白い機体のパイロット、目が覚めたのか。あの機体は構造は今までのモビルスーツとは全然違うと技術者が言っていた。メンテナンスもまともに出来ていないぞ」

 

「話は後にしてくれる?すぐそっちに連れて行くから」

 

「あぁ、そうだな。今開ける」

 

通信が切断されると目の前の岩壁が大きな音を出して揺れ始めた。

土煙を上げながら壁が横にスライドしていくとシーリンはアクセルを踏み開いた隙間に向かって車を進めた。

中に侵入するとそこはコンクリートの壁や鉄骨で作られたモビルスーツの格納庫になっていた。

旧世代のモビルスーツが数機固定されていたのとその中に真っ白な機体が1機特徴的な角を輝かせる。

ユニコーンを囲むようにクレーンなどの重機が設置されており整備中のように見える。

後ろに座っている子供たちは間近にモビルスーツが見れるとあって歓喜に沸いている。

シーリンはユニコーンの前まで来るとブレーキを踏み停止させた。

 

「はい、着いたわ」

 

「ありがとうございます、シーリンさん」

 

「別にこれぐらいいいわよ。クラウスがアナタと話がしたいみたいだから後で紹介するわ」

 

「クラウスさん?」

 

「カタロンの幹部よ、ここでは司令を兼ねてるけど。取り合えず機体を見に行くんでしょ?」

 

「はい、あまりここに長く居る訳には行きませんから。ユニコーンの状態を見て出来るなら早くソレスタルビーイングと合流するつもりです」

 

「その事も含めてクラウスと話してちょうだい。行きましょ」

 

ドアを開けて車から降りていくシーリン、バナージと子供たちもそれに続いてドアを開けて降りる。

バナージは久しぶりに見るユニコーンの姿を確かめた、その白い装甲は綺麗に輝いている。

 

「すっげぇ!本物のモビルスーツだ!」

 

「真っ白で綺麗!」

 

「この白いモビルスーツにもGNドライヴは装備されていないのですね」

 

「じーえぬー……なんだそれ?」

 

「GNドライヴですよゲン。ソリスタルビーイングのガンダムの動力源、今では新しく作られるモビルスーツには全部GNドライヴが付いています」

 

「じゃあなんでここにあるモビルスーツには付いてないんだよ」

 

「それは……」

 

「それはGNドライヴを作るだけの技術もそれを揃えるだけの資金も不足しているからだ」

 

ミッチはゲンの質問の答えがわからずに言葉に詰まるが背後から来た人物がそれに答えてくれる。

この人こそカタロンの司令でもあるクラウス・グラードだ。

 

「よく来たねみんな、マリナ様は元気かい?」

 

「「「「クラウスさんこんにちは!」」」」

 

大きな声で一斉に挨拶をする子供たちの声はコンクリートの壁を響き渡った。

普段から交流のあるクラウスに子供たちは親しんでいる。

 

「クラウス、ソレスタルビーイングの動きはどう?」

 

「いや、まだわからない。けれども連邦は動き始めている。こちらも対策をしなければならない」

 

「あれだけの事件があったというのに対応が早いわね。でもそうでなけれが世界の主導権は握れない、か」

 

「そうだな、そこの少年がこの機体のパイロットだな?」

 

「えぇ、バナージ・リンクス君よ」

 

シーリンから紹介されるとバナージはクラウスに向かって行く。

 

「バナージです。よろしくお願いします」

 

「あぁ、シーリンから聞いている。悪いがキミが眠っている間に機体の事は調べさせて貰った。はっきり言って我々では手に負えないな。あのじゃじゃ馬は」

 

「じゃじゃ馬、ですか?」

 

「あの機体は普通のモビルスーツと比べても構造が全く違うらしい。一体何処であんな機体を作ったんだ?」

 

「機体の構造についてはソレスタルビーイングの技術者の人も言っていました。イアンさんもすごく苦労してたのを覚えてます」

 

「向こうの技術者でも手に負えないのか。俺はモビルスーツに付いてはあまり詳しくないがGNドライヴがなくてもジンクスに勝っている、あの機体は」

 

「ユニコーンは俺の父親に譲り受けたんです。だから詳しい事は何も」

 

「ユニコーンと言う名前なのか、あの機体は。そう言われると白くて角が付けてあるのも頷けるな」

 

クラウスはユニコーンを見上げるとその名前の由来に納得し頷いて見せた。

 

「機体の状態を確かめるんだろ、クレーンでコクピットに入れるぞ」

 

「はい、いいんですか?」

 

「あれはキミの機体だろ、自由にしてくれ。クレーンは俺が操作してやる」

 

2人はユニコーンに設置されているクレーンに向かうとその台座に乗った。

クラウスはバナージの代わりにクレーンのレバーを操作して台座を上昇させるとクレーンはゆっくりとハッチの開いたコクピットに向かって行く。

重たく響く機械音に気が付いた子供たちが下から声を上げる。

 

「にいちゃんずるいぞ!僕たちも乗せろ!」

 

「あ~、登って行っちゃう」

 

「いいなぁ、乗りたかった」

 

「約束守んないとマリナ様に言っちゃうからな!」

 

「アンタ達、大人しくしてないと追い出すからね!」

 

騒ぐ子供たちをシーリンが一喝しているのを見ているとクレーンの動きが止まった。

機械が止まる振動が体に伝わるとバナージの目の前にはハッチの開いたコクピットを覗き込んだ。

中はエンジンが完全に停止しているせいで真っ暗で何も見えない。

 

「特に何もしていないんですよね?」

 

「あぁ、正確には何も出来ないだがな」

 

バナージは中に入り込むとシートに座りパネルを操作すると機体のエンジンを起動させた。

機体に電力が供給され全天周囲モニターから周囲の背景を映し出す。

その様子をクラウスはハッチから覗き込んでいる。

 

「モニターは正常か、他も大丈夫そうだけど動かしてみないとわからないな」

 

「360度見えるモニターか、中が球型なのはこの為か」

 

息を吹き返すユニコーン、シートに座ったバナージのセンターコンソールに久しく見ていなかった文字が

浮かび上がってきた。

 

「プログラムが作動してる。でも何で?」

 

「何かあったのか?」

 

モニターに映る文字を見て困惑するバナージ、クラウスは強引に中に入ると映っているモニターが何なのかを見た。

それに映っていたのは『La+』と浮かび上がった不可思議な文字。

 

「ラ……なんて読む?」

 

「ラプラスプログラム」

 

「ラプラス?」

 

「箱を開放したのにどうしてプログラムが?」

 

疑問が絶えないバナージを余所にプログラムは次の段階へ移行する。

コンクリートの壁を映していた全天周囲モニターが天球座標へと切り替わった。

 

「地球を中心にした座標。まだ行くべき場所が残っているのか?」

 

座標は地球へと拡大されていく、場所は月と地球の間を指示している。

 

「いきなり何が始まったかと思ったがただの座標を表しているだけみたいだな」

 

「地球と月の間、ここに一体何があるんだ?」

 

プログラムが表示する場所には本来なら何もない宇宙空間、資源衛生なども存在しない。

すると操作をしていないにも関わらずユニコーンから音声が発せられた。

 

『このコロニー、スウィート・ウォーターは密閉型とオープン型をつなぎあわせて建造された極めて不安定なものである。しかも、地球連邦政府が難民に対して行った施策はここまでで、入れ物さえ造ればよしとして―――』

 

「何が始まった!?演説か?」

 

「この演説は確か3年前の」

 

突然始まった演説にクラウスは驚きを隠せない。

けれどもバナージは1度この演説を聞いた事がある。

 

『私の父、ジオン・ダイクンが宇宙移民者、すなわちスペースノイドの自治権を要求したとき、父ジオンはザビ家に暗殺された!そしてそのザビ家一党はジオン公国をかたり、地球に独立戦争をしかけたのである!』

 

「ジオン・ダイクン?宇宙移民者?」

 

「でもジオンは連邦に負けた。歴史の授業で習った」

 

バナージは虚ろな目で昔を思い出すように淡々と語った。

その間も演説は大音量で続いている。

 

///

 

『しかも、地球連邦政府が難民に対して行った施策はここまでで、入れ物さえ造ればよしとして彼等は地球に引きこもり、我々に地球を解放することはしなかったのである!!』

 

「これは演説?でもなんで」

 

「声がうるさい~!」

 

「コナー少しの間静かにしててちょうだい」

 

ユニコーンから流れる大音量の演説、シーリンはコナーをあやしながら流れてくる声を注意深く聞いた。

 

『私の父、ジオン・ダイクンが宇宙移民者、すなわちスペースノイドの自治権を要求したとき、父ジオンはザビ家に暗殺された!』

 

「おかしいわ、人類は宇宙には進出しているけど移民なんてまだ出来ていない」

 

シーリンは流れてくる声が不思議でならなかった。

単語1つですら聞いた事のないものがあり、今ある現実と食い違っている部分もある。

考えをめぐらせているとユニコーンに変化が現れた。

装甲の隙間から赤い光が漏れ出した。

 

「この赤い光は何なの?」

 

「あぁ!何か光ってる!」

 

「すっごく綺麗!」

 

「なぁミッチ、なんで光ってるんだ?」

 

「それは……僕にもわかりません」

 

白い装甲を赤く照らす光は幻想的に見えるほど綺麗だった。

 

///

 

『ここに至って私は人類が今後、絶対に戦争を繰り返さないようにすべきだと確信したのである!!それがアクシズを地球に落とす作戦の真の目的である!!これによって地球圏の戦争の源である地球に居続ける人々を粛清する!!』

 

「アクシズを地球に落とす。でもそんな物は地球に落ちてないし、これだけ大きな事件なら一般市民にも知れ渡るぞ。でも俺はそんな事は今始めて聞いた、この演説は本当に何なんだ?」

 

「アクシズは地球には落ちなかった。連邦軍のロンドベルがそれを阻止したんだ、俺もニュースで見た。今ならわかる、あの時の光はサイコフレームの光だ」

 

『自らの道を拓くため、難民のための政治を手に入れるために!あと一息!諸君らの力を私に貸していただきたい!そして私は父、ジオンの元に召されるであろう!!』

 

「バナージ、俺にはこの演説が何なのかわからない。でもこの演説をしている革命家は本気で地球を破壊しようとしているのは伝わってきた」

 

「この演説は3年前、ネオジオンと連邦軍の2度目の戦争。ネオジオンは小惑星基地アクシズを地球に落とそうとした。その時のネオジオンの総帥がジオン・ズム・ダイクンの息子」

 

淡々と語るバナージは授業で習って来た事、自分が今までに見てきた事を思い出していた。

第2次ネオジオン戦争、バナージが生まれて物心が付いてから初めての大規模な戦争はまだ鮮明に記憶の中に残っている。

そしてその戦争を引き起こした人物の名前も当然に。

 

「シャア・アズナブル」




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