機動戦士ガンダム00 The human race's reformation   作:K-15

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第28話 動き出す決意

「マリナも待ってるからもう戻るわね」

 

「護衛は付けられない。敵には注意するんだぞ」

 

「わかってるわ、そっちも悟られないように気をつけて」

 

シーリンはクラウスに告げるとバナージと子供たちを乗せた車の運転席に座った。

エンジンを駆けヘッドライトの光をつけると夜の暗闇を照らす。

右足でアクセルペダルを踏むと車はゆっくりと進みだした。

マフラーから排気ガスを吐き出して舗装されていない悪路をボディーを揺らして進む。

 

「バナージ君」

 

「はい?」

 

シーリンはハンドルを握ったまま正面を見た状態でバナージに話しかけてくる。

メガネを通してみる瞳はいつものように鋭い。

 

「あのときに流れてきた演説は結局は何なの?」

 

「それは俺にもわかりません」

 

「演説では人類が宇宙に移民したと言ってたわ。でも今の技術では宇宙に進出はしているけど移民なんてまだ出来てはいない。あれはどう言う事?」

 

クラウスに聞かれた時もバナージは説明する方法がわからず口を閉ざしていた。

シーリンに問いただされている今も同じ、3年前のシャアの演説の内容の矛盾をどう説明していいのかわからない。

彼女の目線から目をそらして口を閉じるしか出来なかった。

 

「だんまり、か。まぁ、あの演説が何であろうと私達には関係ないけれど。言ってたアクシズも地球には落ちていないし」

 

(アクシズは地球には落ちなかった。サイコフレームの光が地球から押し返していったんだ。だとしたらあの時あそこにはサイコフレームを搭載したモビルスーツが居た事になる。ユニコーンが示した座標と関係があるのかもしれない)

 

話を切り上げるとシーリンはバナージから目を離して運転に集中した。

後部座席に座っている子供たちはまだ興奮冷めやらぬ様子で騒いでいた。

 

「すごかったよな!本物のモビルスーツ!」

 

「真っ白なのもあるなんて始めて見た!」

 

「途中から赤く光っていたのは何なのでしょう?」

 

「細かいのはいいんだよ、お前も見ててかっこよかっただろ?」

 

さわがしく喋る子供たちの声がシーリンにストレスを少しづつ募らせていった。

 

///

 

「まったく、いきなり倒れてどうしたんだと思ったが何もなくて何よりだ」

 

「もうお体は大丈夫なんですね?」

 

アフリカタワー崩落時に突然倒れてしまったイアンはミレイナ、ラッセ、アニューに介護されて今はメディカルルームで安静にしていた。

検査の結果では体に特別な異常は見当たらなかった。

それを聞いて3人は胸を撫で下ろすがミレイナだけは瞳に涙を溜めていた。

 

「よかったです、本当によかったです」

 

「そうだな、この分なら明日には動いてもいいだろう。人手も足りないしおやっさんにはまだ頑張ってもらわないとな」

 

「でも何でイアンさんは突然倒れたりしたんでしょう?」

 

「過労じゃないか?もう歳だしな」

 

「そうなのでしょうか?」

 

イアンが体調不良で倒れてしまった原因を安易に決め付けるラッセに疑問が残るアニューだったが医学知識のない彼女には本当の事はわからなかった。

しょうがないと思考を切り替えようとしていたら機械質な音声がそれを呼び止めた。

 

『ヒロウチガウ、ヒロウチガウ』

 

「ハロ?」

 

『トウブントリスギ、トウブントリスギ』

 

「糖分の取りすぎ?どういう意味でしょう?」

 

「そのままの意味じゃないか?甘い物を食べ過ぎたんじゃないのか?」

 

ハロの言う言葉に頭を悩ませる2人、それがどういう意味なのかが理解出来ないでいた。

 

『ヒヤミズ、ヒヤミズ』

 

「年寄りの冷や水って言いたいのか?まぁ、この年になって甘い物を食べ過ぎるなんてそうとも言えるが」

 

「一体どれだけ食べたのですか、イアンさん」

 

『カカオケンシュツ、カカオケンシュツ』

 

「カカオ?」

 

ハロが次に言った言葉はカカオ、それを聞いてアニューは少し引っかかる事があった。

カカオが入っている甘い食べ物に彼女は心当たりがある。

 

「ハロ、イアンさんが食べた甘い物ってもしかしてチョコレート?」

 

『アタリ、アタリ』

 

「はぁ、いい大人がチョコレートの喰いすぎで倒れるなんて呆れちまう」

 

ラッセは倒れたイアンを呆れるばかりだったがアニューの曇った表情は未だに続いている。

アニューは真実を探るべくハロに確信の持てる答えを導き出そうとする。

 

「ハロ、それっていつ頃食べたかわかる?」

 

『ニガツジュウヨッカ、ジコクハフメイ』

 

「やっぱり!」

 

「どうかしたのか?」

 

ハロの答えを聞いてアニューは1つの結論を導き出した。

その答えにラッセはまだ気づいていないしミレイナは涙ぐんでイアンを見つめているだけだった。

 

「イアンさん、もしかしてミレイナがバナージ君の為に作ったチョコを食べたんじゃ!?」

 

「いくらなんでもそれはないだろ。だいたいいつ食べるんだよ。チョコはミレイナが直接渡したんだろ?」

 

「私はリターナーさんと一緒に作ったチョコを紙に包んでハロのクチの中に入れたです」

 

「ハロのクチの中?どうしてそんな所に入れたの?」

 

「ノリエガさんがビックリするサプライズが必要だって言ってたです。だからリンクスさんが驚くようにハロのクチの中に入れてユニコーンさんのコクピットのシートに置いたです」

 

「ユニコーンのコクピットの中……イアンさんは確かユニコーンにも使える武器を装備させていましたよね?」

 

「いくらなんでもまさか、なぁ?」

 

アニューがそこまで言うとある1つの可能性にラッセはたどり着いた。

けれどもいい年をした大人がそんな事をするなど考えたくはない。

でもそれを証明する出来事をミレイナは覚えている。

 

「リンクスさんが出撃する前に作ったチョコの感想を聞いたです。でも何だか話がうまく噛み合わなかったです。リンクスさんが乗った時にはもうハロの中には何もなかったんじゃないですか?」

 

「だとすればおやっさんがミレイナの作ったチョコを喰いすぎて倒れちまったってか?いくらなんでも娘がバレンタインに作ったのを奪い取って食べるなんてダサいことするか?」

 

ラッセは笑いながら仮定の話を進めているが本当にイアンがこんな事をするなど思ってもいない。

あくまで仮定の話で喋っていたその時に眠っていたイアンが目を覚ました。

 

「……ダサくて悪かったな」

 

「おやっさん、起きてたのか!?」

 

「それよりもチョコレート食べたの本当にイアンさんなんですか!?」

 

アニューはイアンの目が覚めた事よりもミレイナの作ったチョコがどうなったのかが重要だった。

ベッドに寝ているイアンに詰め寄ると事の真相を確かめた。

 

「教えて下さい、イアンさんは本当にミレイナさんのチョコを食べたんですか?」

 

「今年はまだミレイナに何も貰ってないんだぞ!それなのになんで何処の馬の骨ともわからんガギにあげないとダメなんだ!?」

 

「それでも普通食べますか!?」

 

「男親の気持ちがわからんからそんな事が言えるんだ!愛娘というのは―――」

 

想像していたように犯人はイアンだった、そのあまりの理由にアニューはあきれて物も言えない。

イアンは自分のした事を正当化しようと弁論するがベッドの隣ではうつむいて何も話さないミレイナがたっていた。

それを見ると喋るのを止め自分の愚かさを自覚するが傷ついた彼女の心はすぐに癒される事はない。

 

「ミレイナ、その~これは―――」

 

「パパなんか―――」

 

下を向いていたミレイナは睨むようにイアンを視界に入れるとその瞳からは涙が流れていた。

 

「パパなんかダイッキライです!!!」

 

「み、ミレイナ!?」

 

娘にキライと言われ衝撃を受けるイアンを残してミレイナはメディカルルームから走って出て行ってしまう。

 

「ミレイナ!ちょっと待て、ワシは―――」

 

走り去る彼女を追いかけようとベッドから立ち上がろうとするがシーツが絡まってそのまま床に転げ落ちてしまう。

 

「っ~~!?ミレイナ~~!!」

 

娘に見捨てられた情けない姿に2人は何も言わなかったが心の中で呆れていた。

 

///

 

「まだ1人残っていたな、スザクの次に厄介なヤツが」

 

「ゼロ、キミの革命家としての働きには僕も敬意を表する。歪んだ体勢は変えなくてはならないと言う考えは僕も同じだ。でも!」

 

黒の騎士団の前にそびえるはあの時に見た巨大な機影、その特徴的な4本角は戦場に居るものは1度見たら忘れるはずもない。

その圧倒的な性能を前にしては数など無意味、幾人もの兵士が何も出来ずに倒されていった。

味方になってくれることもあったが今は戦うとき、ここでゼロはクスィーガンダムを、マフティー・ナビーユ・エリンを倒す気で居る。

 

「例え0になってもやがてはまた1となり2となりすべては元に戻る。組織の悪癖は消え去らなくてはならない。その為にキミを打つ!」

 

「また私の敵となるかマフティー、ブリタニアはなくなり世界は新たな道を歩んでいるというのに」

 

「僕はこの世界に存在してはならない。そしてそれはキミも同じ、この世界にギアスの能力を持っているのはキミ1人だけ」

 

「ギアスなどなくても私はこの世界を壊す気でいたよ。少し計画が早まっただけにすぎん」

 

「もう人類は過ちを繰り返してはならないんだ。キミだってわかっているはずだ!」

 

「ユーフェミアは私の中で、人々の心の中に生き続ける」

 

「事を成すのに人が死んでからでは遅すぎることもある。彼女はキミにとって必要な存在だったはずだ」

 

「何もわからぬ者にそのような事を言う資格があるのか?いいや、ない」

 

「……そうだな、僕にはその資格はない。彼らのようなニュータイプでないからじゃない、人間として不完全すぎたのかもしれない」

 

ゼロとマフティーの最後の言葉に戦場に居る者は皆、静かにそれを聞いていた。

新しく変わりつつある世界にゼロは必要なのか、それとも消え去るべきなのか。

 

「キミと、キミたちと過ごした時間は僕の中で掛け替えのない記憶として残っている。このままキミと一緒に入れればもっと楽に人生を生きられるのだろう。たった1人の人間が世界の行く末など気にしなくてもいいはずだ。でもそれが僕なんだ」

 

「マフティー、私も忘れない。共に過ごした日々を。そして!」

 

「だからこそ!」

 

クスィーガンダムのメインスラスターが火を吹いた、大型の機体にも関わらずその圧倒的なスピードは目を疑うほどに早い。

それを見てゼロも部隊に指示を出す。

 

「4本角の目的は私1人だけだ。アイツの機体は巨体故にここでは動きにくいはず、そこに付け入って攻撃をするんだ。各チームは12機で必ず行動しろ、1機でも欠けたら無理な行動はするな。カレン、四聖剣は正面から切り込め」

 

「了解しました。今までは心強い味方だったけれど今だけは別だよ。ゼロを倒すと言うのなら私が相手になる!」

 

カレンの専用機、紅蓮聖天八極式は翼を広げるように赤いエナジーウイングを広げクスィーガンダムを迎え打つ。

ゼロに指揮に従い部隊は行動を始める、ビルの立ち並ぶ行政特区日本でその巨体は動かしにくい。

まずは地上部隊が無反動砲で狙いを定めている。

突破されたらそれでお終い、クスィーガンダムを止める事は出来ない。

 

「目標を視認しだい各機攻撃を開始しろ!躊躇をするな、容赦もするな!そんな事が出来るほど生易しい相手ではない!」

 

地上に配備されているKMFが一斉に攻撃を始めた。

無反動砲は武器としてはかなり大きな部類ではあるがクスィーガンダムにとっては豆鉄砲にも等しい、それでも100、200、さらなる数の砲撃が飛んで行く。

 

「この程度、突破してみせる!」

 

右手のビームライフルを突き出すと向かって来る砲撃に1発打ち込んだ。

高出力のビームが砲撃を突き抜けると地上に居た1部隊に直撃した。

マグマのように真っ赤になるアスファルト、そこにKMFの姿は確認出来ない。

砲撃は爆竹のようにビームのエネルギーで爆発し拡散していき爆発の光で視界が見えにくくなってしまう。

 

「こんなもの!僕が目指すのはただ1つ、揺るぎはしない!」

 

スピードを緩める事なくさらに加速してクスィーガンダムが突っ込んで行く。

腕部と脚部からはとめどなくミサイルを発射しながら地上部隊の敵を爆撃していく。

その攻撃はまるで要塞が攻撃しているかのようで、ミサイル攻撃でビルは崩れその雪崩れに飲み込まれていくKMFも居る。

 

「やはり一筋縄ではいかんな。ラクシャータ、例の装置の配備はどうなっている?」

 

「もう終わってるよ、あとはおびき出してボタンを押すだけさ」

 

「よし、ここまでは計画の範囲内。あとはカレンたちがどれだけ出来るかに掛かっている」

 

「悔しいけどアレをKMFで止めるのは無理だねぇ。サイズだけの問題じゃない、使ってる装甲も、武器も全てが規格外さ。あ~ぁ、実際に見て触ってみたかった」

 

「だがやらねばならん、その為にお前にアレを作らせた。出来るな?」

 

「当たり前さ、私を誰だと思ってるんだい?」

 

ラクシャータは煙管を吹きながらのらりくらりと話しながら映像に映るクスィーガンダムを眺めていた。

その戦闘能力は凄まじく待ち構える部隊は全て爆撃で吹き飛ばされ制空圏で待機していた部隊も行動に移るが近づく前にビームライフルで撃ち落されてしまう。

ビーム1発で2機、3機とまとめて破壊されまるで飴を溶かしているように一瞬で終わる。

 

「数で押さえようとしても無駄だ、ゼロならそれくらいわかっているはず。何か裏があるに違いない」

 

「ゼロは私が守ってみせる!これ以上は行かせない!」

 

正面から真紅にKMF紅蓮聖天八極式と四聖剣に合わせてカスタマイズされた暁が立ちふさがる。

4対1だがむしろ危険なのはカレンたちの方、KMFの性能を限界まで引き出してもクスィーガンダムに一太刀浴びせられるかも疑わしい。

 

「カレンか、そこを通してもらう!」

 

「やれるもんならやってみな!」

 

ビームライフルを腰部にマウントすると肩のラックからビームサーベルを引き抜いてそのまま斬りかかった。

サーベルは空気を焼きながら小さなKMFに迫る、カレンのコクピットからはピンク色に発光するビームサーベルが視界一杯に映し出される。

一瞬でも、かすっただけでも、戦闘不能になるくらいの威力は持っている。

だがカレンは恐怖など感じない、全ては自分の為に、死んでいった兄の為に、一緒に戦ってきたゼロの為に。

 

「手ごたえがない、まだ近くにいるな」

 

「当たらなきゃどうってことない!」

 

「ファンネルミサイルならどうだ」

 

視認は出来ていないがサイコミュ兵器のファンネルミサイルなら小型ゆえに視認しにくいKMFでも攻撃出来る。

空気抵抗を減らす為に肩に装備されている追加装甲がスライドすると中から装填されているファンネルミサイルが4発発射される。

重力を無視し従来ミサイルとはまったくの別物といっても言いファンネルミサイルはパイロットの脳波を通じて瞬時に紅蓮に狙いを定める。

 

「コイツ!?ぶっ潰れろぉ!!」

 

右腕の輻射波動のエネルギーをチャージするとそのままボールを投げるようにファンネルミサイルに向かって腕を振り上げた。

赤い球状になったエネルギーはミサイルに直撃し破壊出来たがまだ3発も残っている。

続け様にすぐもう1度輻射波動を放つがミサイルはスラスターを噴かすと真横に移動し簡単に避けるとまた紅蓮に向かって飛んで行く。

 

「そんなのありなの!」

 

カレンがファンネルミサイルに苦戦している間にクスィーガンダムは安々とカレンの防衛エリアを抜けていく。

 

「しまった、マフティー!」

 

だが意識を反らしている隙にミサイルはすぐ懐にまで飛び込んできていた。

右腕を前方に構えると輻射波動をバリアにしてミサイルの1発を受け止めた。

ファンネルミサイルは1発でもKMFを破壊出来るだけの破壊力は十分に備わっている。

爆発の炎が紅蓮を包むが損傷はしておらず機体はまだまだ動く事は出来る。

 

「なら機動力で振り切る!」

 

KMFが唯一クスィーガンダムに勝っている性能、瞬間加速と小回り、それでファンネルミサイルを振り切り取り付こうと考えるカレンだがミサイルは縦横無尽に飛び回る紅蓮を捕らえて放さない。

 

「何なのよあのミサイルは!一瞬でも気を抜いたらやられる」

 

「私達が居るのを忘れていないか?」

 

藤堂の斬月は対ナイトメア用日本刀を一閃するとミサイルを1発切断させた。

その鮮やかな腕前はまったく衰えておらずミサイルの爆発にも巻き込まれていない。

 

「藤堂さん!?」

 

「ミサイルを排除したらすぐに追いつく。カレン、千葉、朝比奈はマフティーを追え!」

 

「「「了解!」」」

 

3機は藤堂を残して全速力でクスィーガンダムを追うが瞬間的な加速では勝っていても最高速ではクスィーガンダムはマッハ2を超える速度を出せる。

数秒で距離を突き放すと待ち構える軍勢を相手にした。

 

「僕の目的はゼロだ。この軍勢、メガ粒子砲で一掃させてもらう」

 

///

 

「コナー、もう寝なきゃダメでしょ。みんなもう寝室に行ったわよ」

 

「え~、今いい所なのに!」

 

「ダメよ、子供はもう寝る時間よ」

 

「はぁ~い」

 

時刻はもうすぐ深夜0時を跨ごうとしていた。

コナーはマリナに諭されると渋々従い用意していあるパジャマへと着替え始める。

着替えている間も付けっぱなしのテレビから音が流れ続けていた。

 

『あの時の決着を着ける時が来た。マフティー・ナビーユ・エリン、正当なる預言者の王。だが今、世界の王はこの俺だ!王はこの世に2人も要らない。お前が残るか、俺が残るか、全てが―――』

 

マリナはテレビの電源を消すと流れていた映像と音声が消え画面が真っ黒に変わる。

コナーを見るともう着替えは済んでいたが服が脱ぎ散らかしたままだったので拾い上げるとマリナは寝室に行こうとした。

 

「ちゃんと着替えたわね?ならみんなの所に行きましょう」

 

「は~い」

 

返事を聞くと手を繋いで一緒に歩き出したが夜中だというのに玄関のドアが勢いよく開かれた。

 

「大変だ!!みんなすぐに逃げる準備を!!」

 

「どうしたんですか!?一体何が?」

 

「連邦軍のモビルスーツがここに向かってる!クラウスはモビルスーツの準備を進めているが持ちこたえれるかどうか」

 

息を荒げながら喋るカタロンの構成員の声に寝室から眠そうに目を擦りった子供たちとシーリン、バナージが出てきてしまう。

 

「マリナ、何かあったの?」

 

「シーリン、ここから逃げなきゃ」

 

「連邦のモビルスーツがここに向かってます!」

 

「数はどうなの、ここにある機体で持ちこたえられる?」

 

「正確な数は確認出来ていませんが相手はGNドライヴを搭載しています」

 

「そんな事はわかってる、逃走経路を使って避難するからアナタはクラウスに伝えてちょうだい。合流ポイントで落ち合いましょ。みんなすぐに車に乗ってちょうだい!」

 

響き渡る声で子供たちに言うと車のキーを掴んで部屋から出て行くシーリン、マリナも子供たちを引き連れて一緒にシーリンに付いて行った。

 

「マリナさま、だいじょうぶ?」

 

「大丈夫だから、ね。早く行きましょう」

 

みんなが部屋から出て行く中でバナージだけはその場から動こうとしなかった。

振り返ったマリナは動こうとしないバナージに近寄ると右手を掴んで一緒に避難しようとする。

 

「どうしたのバナージ君、一緒に―――」

 

「俺、戦います。ここのみんなを守ります」

 

「バナージ君、でもまだアナタは子供なのよ。そんな……戦うなんて」

 

「ユニコーンは俺じゃないと動かせません。それに戦力は少しでも多いほうがいいはずです。行かせて下さい」

 

マリナを見つめるバナージの目は決意が見えた、揺るぎない覚悟に満ちた決意が。

 

「アナタは刹那と同じなのね。戦う事で世界を変えようとしている」

 

「マリナさん、俺は戦いで世界を変えようなんて思っていません。でも戦うのって武器を持って争うだけじゃない筈です」

 

「でも死ぬかもしれないのよ!どうしてそんな危険な事をするの!」

 

「みんなを守りたいから、明日もまた笑顔でみんなと居たいから。マリナさんが居てコナーやみんながいて、俺はその為に戦います」

 

「バナージ君、でも―――」

 

「マリナさんは早く避難してください。俺は行きます!」

 

「言っても時間の無駄よ、マリナ」

 

マリナの背後にはまだシーリンが待っていてくれていた、彼女にはバナージの決意が伝わっていた。

 

「バナージ、行くのなら早くしなさい」

 

「わかりました、みんなを頼みます」

 

「言われるまでもないわ、彼と一緒に付いて行って」

 

バナージは走った、ユニコーンで戦う為に戦場へと走る。

 

///

 

「目標ポイントを確認、敵は旧型のモビルスーツが6機確認されています」

 

「残党軍の殲滅なんて俺にしたら簡単な仕事だ」

 

連邦軍から派遣されたジンクスは6機、そのパイロットであるコーラサワーは上層部の命令でカタロンの残党軍の殲滅に来ていた。

GNドライヴを搭載した機体でなら旧型のモビルスーツなど物の数ではない。

 

「さっさと終わらせて大佐の所へ帰るぞ!」

 

「隊長、敵機に増援が来ました」

 

「増援?どうせ旧型のだろ、そんなのこのコーラサワー様に掛かれば」

 

「数は1機、識別は―――」

 

部下はレーダーに表示されるモビルスーツの識別コードを読み上げた。

その機体は連邦製の機体ではない、GNドライヴを搭載されていないが旧世代のモビルスーツでもない。

真っ白で頭部に角があるその機体は1度見たら忘れない。

 

「ソレスタルビーイングの角付きです!でもどうしてここに!?」

 

「角付きだと!?よ~し、その真っ白な角をへし折って大佐にプレゼントするんだ!」

 

不死身のコーラサワーと異名を持つ彼は初めて白亜のユニコーンと対峙する。




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