機動戦士ガンダム00 The human race's reformation   作:K-15

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第29話 赤いモビルスーツ

ユニコーンの元までたどり着いたバナージはパイロットスーツに着替えもせずにそのままクレーンに乗った。

重厚な音を立てて動くクレーンは機体のハッチにまで近づくと音を立てて停止する。

バナージは急いでコクピットハッチを開けるためパネルを操作するとものの数秒で白いハッチは圧縮した空気を噴き出した。

慣れた手つきでシートに滑り込むとセンターコンソールを叩きコクピットのハッチが閉まっていく。

核融合炉のエンジンを起動させると全天周囲モニターも周囲を映し出す。

ユニコーンの前方に立っていたクレーンをクラウスが操作して退かしてくれているのが見える。

 

「クラウスさん、ユニコーンで出られます」

 

「敵モビルスーツの数はまだ未知数だ。いけるか?」

 

「やってみせます。それしかみんなを守れない。他のモビルスーツはここを守ってください」

 

「頼む、ゲートは開けてある。そこから行ってくれ」

 

「わかりました。離れててください」

 

ゆっくりと足を踏み出すと1歩歩くたびに地面を揺らしながらゲートへ向かう。

武器も持たない状態でバナージは1人戦いに行く。

ゲートの外は既に夜、断崖絶壁の岩壁に真っ白な機体は良く目立つ。

メインスラスターが火を吹くと地面から脚部が浮きユニコーンは夜の大空に飛び立った。

 

「情けない話だが今頼りに出来るのはバナージだけだ。大人がこんなんじゃな」

 

夜空に消える白亜のユニコーンに向かって呟くクラウス、今はまだ何も出来ないが彼の目は未来を見据えている。

メンスラスターを吹かし飛ぶユニコーン、目立つ外見に敵機にすぐ発見されてしまう。

 

「敵の数は4機か?来る!」

 

 

正面から確認出来たモビルスーツは4機、白い塗装をされたジンクスが一斉にユニコーンに襲い掛かる。

 

「敵はソレスタルビーイングの新型だ。時間差で攻撃して確実に仕留める」

 

狙いを定めたGNランスからバルカンを連射し弾丸の雨が降り注ぐ。

左腕のシールドを構えると攻撃を受け流して1機目のジンクスに接近戦をしかけようとする。

持っている武器はビームサーベルと頭部のバルカンしかない、その唯一の射撃が出来るバルカンも弾数が少なく安易使ってはすぐになくなってしまう。

敵を落とすには接近戦で倒すしかなかった。

 

「耐えてくれユニコーン、このまま一気に行く!」

 

メインスラスターを全開にすると速度を上げ小細工なしに正面からジンクスに突撃した。

想定外の行動に敵パイロットは反応出来ずにユニコーンのタックルをまともに当たってしまう。

機体を通して吸収しきれない振動がコクピットのパイロットにまで伝わり体を揺らす。

指が操縦桿を離れ機体の制御が出来なくなり2機とも縺れたまま地上へと落下していく。

 

「ぐうぅぅぅっ!!!これなら!」

 

左腕からビームサーベルを引き抜くと相手よりわずかに早く行動に移った。

ビームの刃をコクピットに突き立てると装甲は溶解し機体に風穴が開く。

パイロットの居なくなったジンクスは溶解した鉄から煙を上げて空から落ちて行く。

機体の姿勢を制御しメインスラスターを噴かし落下のスピードを緩めると次の敵を見る。

 

「後は3機、上から!」

 

ユニコーンを撃ち落さんと有利な状況から攻撃を仕掛けてくるが巧みにスラスターで機体を制御していく。

弾をシールドで防ぎながら必要最小限の動きで少しずつ距離を詰めていく。

でも整備が万全ではない機体ではジンクスに追いつく事は簡単には行かなかった。

バナージは距離を詰めようにも簡単にまた離れていく。

 

「くっ!?消耗してるのか、でもまだ!」

 

もう1度メインスラスターを全開にして損傷するのも気にせずに突っ込んで行く。

ここで食い止められなければカタロンに連邦軍を退けるだけの戦力はもうない。

 

「バルカンでいけるか?」

 

頭部のバルカンを発射すると回避行動を取るジンクス、その間は攻撃の手が止んだが次に瞬間に右方向からもう1機のジンクスがビームサーベルで斬りかかって来た。

 

「落ちろ角付き!」

 

「右から来る、見えた!」

 

握っていたビームサーベルで受け止めるとエネルギーがぶつかり合い鍔迫り合いに持ち込んだ。

動きの止まる2機のモビルスーツ、その背後から残りの2機が姿を現す。

 

「動くなよ、このまま串刺しにする!」

 

バーニアを噴かし赤いGN粒子を放出し加速すると握っているGNランスを付きたてた。

見る見るうちに大きくなるユニコーンの背部、トドメを刺すつもりで放つ一撃は寸前の所で避けられてしまう。

身をよじらせるユニコーン、ランスはそのまま誤ってビームサーベルを握るジンクスの胸部に突き刺さった。

 

「避けただと!?」

 

「落ちろ!」

 

ビームサーベルを逆袈裟に振るとジンクスの装甲が寸断され機体が誘爆を始める。

 

「見えなくてもプレッシャーが近づいているのはわかってたんだ。残っているのは1機」

 

「その角をよこせぇー!!」

 

斬られたジンクス誘爆はGNドライブを包むと赤い粒子を拡散して機体は爆発した。

だが残り1機と思っていたバナージの前にコーラサワーの乗るジンクスが合流してくる。

これでまた3体1と不利な状況に戻ってしまう。

 

「く、まだ居るなんて」

 

「不死身のコーラサワー様に掛かればこんなヤツはな!」

 

「行けるか!?」

 

3機がかりで一気に接近戦を仕掛けてくるコーラサワーにバナージは全神経を集中してビームサーベルを振るう。

赤いビームの光が白い装甲を照らすがユニコーンは寸前の所で弾き返す。

単純にパワーだけで強引に押し返し姿勢を崩すジンクス、でも間髪入れずに次の攻撃が迫る。

GNランスの鋭い突きが装甲に風穴を開けんと容赦なく飛んで来る。

だが戦いなれたバナージはこの連続した攻撃にも反応出来てしまう。

左腕のシールドを擦り付ける様にランスにぶつけると火花を上げる。

鉄が擦れる不愉快で甲高い音を鳴らしシールドを装備した左腕を振り切ると攻撃を受け流した。

 

「まだやられない!」

 

「取ったぞ!」

 

さっきビームサーベルで押し返したジンクスがまたユニコーンの背後へと迫っていた。

反応出来ていない、確実に取ったと思ったその一振りは又しても後ろに目が付いているのではないかと疑うくらい動きが早かった。

バナージはスラスターの出力をカットすると推進力のなくなった機体が重力に引かれて行く。

敵パイロットは誤って振りかぶったビームサーベルで味方の機体を切り裂いた。

 

「外した!?なんで!」

 

ビームの熱で斬られた装甲が真っ赤に発熱したジンクスは戦闘不能になりまた1機地上へと落ちて行く。

敵パイロットは攻撃を避けられてしまったショックと味方を落としてしまった事に動揺し動きを止めてしまう。

 

「これなら!」

 

バナージはコクピットに目掛けてバルカンを弾切れを気にせずに撃ちまくった。

威力の低いバルカンでも一箇所に集中して撃ち続ければ損傷させるぐらいは出来る。

そしてその箇所はコクピット、発射しえ数秒でハッチの装甲がひしゃげて穴が開くと小さく爆発を起こしてパイロットは絶命する。

 

「さっきので弾がなくなった」

 

「おりゃああぁぁぁ!!!」

 

「うあぁぁぁ!?コイツ!」

 

コーラサワーの機体は右手を突き出してユニコーンに突撃していった。

そして頭部を鷲づかみにすると全天周囲モニターに拡大されたマニピュレータが映る。

パワー任せに頭部を引っ張るジンクスにフレームが悲鳴を上げる。

 

「角は貰ったーー!!」

 

「このぉぉ!!」

 

兎に角バナージは機体を動かした。

右のマニピュレータを力いっぱいジンクスの頭部に殴りつけた。

2回、3回、殴るたびに機体が揺れるがジンクスもメインカメラのレンズが割れてしまう。

 

「放すもんか!俺は大佐に―――」

 

ぐちゃぐちゃに変形する頭部、ついにはメインカメラは壊れてしまい何も見えなくなる。

そして頑なに手放さなかった右手も離れていってしまう。

 

「カメラが死んだ!?」

 

「これで!」

 

両手を握ると頭上に思い切り振り上げて壊れた頭部に最後の一撃をぶつけた。

ハンマーのように叩きつけられたマニピュレータはジンクスの首をへし折り胴体と頭部は切り離された。

 

「たいさ~~!!」

 

「何だったんだアレは?やれたのか?」

 

最後の1機は重力に引かれて落ちて行くとそのまま荒野の地面に叩きつけられた。

土煙を上げて見えるその様子ではもう動きそうにない。

これで一応ではあるが連邦軍を退ける事は出来た。

だが味方がやられたのがわかったらまた増援が来るかもしれない。

バナージはその事が心配だった。

消耗しているユニコーンでは大部隊を相手に戦っていくのはもう無理かもしれない。

逃げるにしても連邦の統治下でカタロンの安息の地などあるのだろうか。

 

「レーダーにはもう反応はないな。1度戻るか」

 

敵がもう居ないのを確かめるとクラウスの待つ場所へと戻る。

致命的ではないにしろ消耗してきている機体でこれ以上の負担は掛けたくはなかった。

メインスラスターを噴かしてユニコーンは進んだ。

けれども敵が居なくなっただけで問題が解決した訳ではない。

これからどのようにして動くのかもまだ決まっていないバナージ、でも今は体を休めたかった。

 

///

 

ユニコーンに膝を付かせるとコクピットのハッチを開放させた。

夜の冷たい風が流れ込むと額に浮かぶ汗を冷やして心地良い気分になる。

バナージが機体を降りて地面に足を付けるとクラウスが出迎えに来てくれた。

この様子では被害は少ないのがわかった。

 

「すまない、バナージ。キミ1人を戦わせる破目になるとは情けない」

 

「そんなの気にしないで下さい。俺に出来る事をしただけです」

 

「それでもだ、感謝の言葉しかない」

 

感謝の言葉を述べるクラウスに慣れていないバナージを頬を少し赤らめて照れている。

自分よりも年上の大人にこんなに言われる事などそうはない。

 

「それよりもみんなは無事なんですか?」

 

「あぁ、それは問題ない。キミのお陰で被害を受けずに済んだ」

 

「でも連邦軍の居場所がばれたんじゃここには居られませんよ」

 

「だからもう逃げる準備は整っている。今夜にはここを離れるつもりだ」

 

「そうなんですか」

 

「キミはどうする、一緒に来るか?我々としては戦力が増えるのはありがたいが」

 

クラウスの提案に対してバナージの答えは決まっていた。

ユニコーンは今やソレスタルビーイングの所有する機体として認識されてしまっている。

このままカタロンに居ては良い標的になるのはわかっている。

だからこれからはたった1人で動くしかない。

 

「俺は1人で行きます。これ以上お世話になる訳にはいきませんから」

 

「だが1人でどうする?ソレスタルビーイングと合流するにしても今どこにいるのかもわからないんだぞ?」

 

「合流はします。それにやる事もありますから」

 

「宇宙へ行く気か?あの時の座標の場所へ」

 

「はい、そこに何か手がかりがある筈なんです」

 

「長い道のりだな。もう会うことはないかもな」

 

「クラウスさん、ありがとうございました」

 

最後であろう言葉を交わす2人、互いに右手を伸ばすと硬い握手を交わした。

短い期間ではあるがバナージがここにいた時間は掛け替えのない時間でありこれからも思い出として覚えている。

でも今は前に進まなくては何も変える事は出来ない。

夜の風がそよぐ中満月の月に1つの影が映った。

 

「あれは?」

 

「小型の輸送機?」

 

小型の輸送機は見る見る内に距離を詰めてきてその全貌が見えるまでになる。

その輸送機からは赤い粒子を放出しており擬似GNドライヴが搭載されているのが伺える。

 

『見つけた!その白いのがソレスタルビーイングの角付きね』

 

通信機を通して輸送機から拡声器で大きくした声が流れてきた。

声を聞く限りでは女の人、頭の中で何が起きているのかを考えている間に輸送機は逆噴射で速度を落とし着陸の態勢に入った。

逆噴射のバーニアが風を起こすと強風が2人にぶつかるが両腕で顔を防ぎ風に飛ばされてくる砂から守った。

 

「何なんだ?」

 

着陸するとうっとおしかったバーニアの噴射も止みエンジンの音も止まった。

圧縮した空気を噴出するとハッチが開きパイロットスーツとヘルメットを被ったパイロットが降りてくる。

そのピンク色のパイロットスーツから察するにやはり女の人だろう。

 

『え~と、アンタがバナージ・リンクスね?』

 

「アナタは誰なんですか?」

 

『アタシ?アタシはね―――』

 

彼女は手を伸ばすと被っていたヘルメットを脱ぐと赤い髪の毛、ゴムで後ろに束ねてあるその髪型は幼さを感じさせる。

空気を吸い込み手櫛で髪を慣らさせるとバナージを顔を見据えて話を続ける少女。

この女性もまたバナージが経験した事のないタイプの人だった。

 

「ネーナ・トリニティ、ちょっと訳あってアナタを探してたのよ」

 

「俺を?」

 

「大体の場所は聞いてたんだけど、あれだけ派手にドンパチやってくれてたからすぐにわかったわ」

 

「俺に何かあるんですか?」

 

「さぁ、アタシは連れて来てって言われてるだけだから。それ以外の事はさっぱり」

 

「アナタはソレだけの為にここに来たんですか。一体何が目的なんです?」

 

バナージは見知らぬ少女に警戒心を抱き1歩後退りするとクラウスもまた内ポケットから銃を取り出す準備をしていた。

少女1人とは言え敵であるならば躊躇していては大事に触る。

 

「そんなに警戒しなくてもいいから。アタシはお嬢様の、王留美の使いだからさ」

 

「王留美って確かソレスタルビーイングの資金援助をしてる人?」

 

「厳密には違うけどそんな物ね。お嬢様がアナタに用があるって言うから迎えに来たって訳」

 

「それならソレスタルビーイングは、プトレマイオスは今どこに居るかわかりませんか?」

 

ソレスタルビーイングに関係していると言う彼女の言葉を信用したバナージはあの事件の後からずっと気になっていた仲間の存在に触れた。

一緒に戦ってきた仲間を気にならないはずがなかった。

 

「積もる話は後にしてくれない?機体を早く乗せてほしいんだけれど」

 

「あの輸送機にですか?」

 

「あぁ、後それとパイロットスーツにも着替えてちょうだい。そのまま宇宙に運ぶわ」

 

「あんな輸送機で宇宙に?」

 

「大丈夫、大丈夫、それよりも早くしてちょうだい」

 

ネーナはバナージにそう告げると1人でまた輸送機のコクピットへと戻っていってしまう。

 

「どうする、行くのか?」

 

「行きます。ここにいてもどうしようもありませんから」

 

「わかった、パイロットスーツは俺が持って来てやる。その間に機体を動かせ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

これからバナージは激動の戦いに身を投じる事となる。

でも誰1人これから起きる運命は知ることはない。

 

///

 

マリナはシーリンが運転する車の中で1人物思いみ耽っていた。

それは自分たちを守ると言って戦いに行ったバナージと刹那の事である。

2人はモビルスーツに乗って死と隣り合わせの戦場で今も戦っている。

 

(2人ともどうしてそんな事が出来るの?死ぬのが怖くなはいの?)

 

彼女は普通の人が当然に抱く疑問を心の中で考えていた。

自分の命が絶たれる、誰でもそんな事を望みはしない。

けれども彼らは自らの意思で戦地に足を踏み入れている。

死の恐怖が漂う戦地に行くなど普通なら出来ない、自ら行くなの持っての他だ。

 

(でも2人は戦っているわ、モビルスーツに乗って敵を倒している。でもその相手だって同じ人間なのよ。どうして人殺しなんて出来るの?私にはわからない)

 

日常を平和に過ごしてきた彼女に彼らの気持ちを理解するのは難しい。

殺して、殺されて、そんな血生臭い現場など想像すらしたくはない。

人を殺す感覚などわかりたいとも思わなかった。

 

(私は普通に暮らしたかった。アザディスタンの女王になる気なんてなかったのに)

 

「なぁコナー、あのにいちゃん大丈夫だよな」

 

「あったりまえだろ、あの白いモビルスーツに乗って敵をやっつけてくれるに決まってる」

 

「そうですよゲン。何も出来ない僕達を守ってくれる為にあの人は今必死に戦ってくれているんです」

 

「私しんじてる。またもう1度会えるって」

 

「そうだよな!」

 

何も出来ない、そのフレーズがマリナの頭の中に何重にも響いた。

 

(何も出来ない。今の私には何も出来ないの?女王としても、1人の人間としても。だとしたら私は……)

 

マリナは今連邦軍の攻撃から逃げる為に車に乗っているに過ぎない。

そんな彼女に今出来る事などあるのだろうか。

彼らの代わりにモビルスーツに乗って戦うなど無理、だとすれば一体何が出来る。

 

(これはあの時と同じじゃないの?女王になれと言われて私は言われるがまま女王になった。バナージ君が言っていた様に女王にならない道だってあったはずなのに。けれども私はなった。それは私がならなければアザディスタンが崩壊する事を心のどこかでわかっていたからじゃないの?)

 

心の中に眠る過去の記憶を呼び覚ますと当時の出来事と感情が蘇ってきた。

マリナが居なければ国の統治はさらにヒビが入っていただろう。

彼女が女王として出来た事など少ないがそれでも国の存続の為には必要な存在だった。

でなければ国の民が、自分の家族が、知り合いが、みんなが居なくなってしまう。

 

(痛いのも怖いのもガマン出来る。でもみんなが悲しむ顔は見たくなかった。何も出来ないのが一番嫌だった。状況に流されてはっきり自分の意思でなった訳ではないけれど、私が女王になった理由は多分ソレなんだわ)

 

バナージに言われた女王になった理由を彼女はようやく見つけられたような気がした。

その事で物事が劇的に変わりはしない。

けれども確実に彼女は1歩、前に進む事が出来る。

自らが変わる為の、いずれは世界が変わる為の第1歩を踏み出すことが出来る。

 

「バナージ君に守ってもらってばかりではいけないわ。私も変わらないと」

 

「どうしたのマリナさま?」

 

小声で呟くマリナの声に気が付いたコナー、何でもないと返すマリナの眼差しは以前と比べて輝きが増していた。

 

「みんなで一緒に帰りましょ。シーリンもバナージ君も一緒に」

 

///

 

白いパイロットスーツに着替えると輸送機のコクピットのシートに座った。

ネーナは操縦桿を握ると輸送機を地上から飛び立たせる。

 

「準備はいい?それじゃ始めちゃうからね」

 

「はい、お願いします」

 

輸送機はゆっくりと地面から浮き上がるとシートを通して重力から離れていくのが体に伝わってきた。

そのまま速度を上げるとぐんぐんと大空に上っていく。

 

「この輸送機、本当に宇宙に行けるんですか?

 

「さっきから何回も言ってるでしょ?あんまりしつこいとウザイんだけど」

 

解き放たれる重力、星明りは輝きを増している。

久しぶりに感じる宇宙はバナージにニュータイプとしての感覚を研ぎ澄ました。

 

「宇宙、凄く懐かしく感じる」

 

『キノセイダ、キノセイダ』

 

「えっ!?……黒いハロ?」

 

突然聞こえてきた機械音声は会話をするように話しかけてきた。

驚いて声の音源に振り向くとネーナのすぐ傍に黒いハロが転がっている。

 

「コイツちょっと口が悪いけど気にしないで」

 

「はぁ、そうなんですか?」

 

『キニスンナ、キニスンナ』

 

「目的地に着くまでは後3時間ぐらい掛かるわ。適当にしててちょうだい」

 

ネーナはシートベルトを離すと無重力の中で浮き上がりコクピットから奥の部屋に行ってしまう。

 

「適当にってどうすれば」

 

『シルカ、シルカ』

 

///

 

バナージを1人残したネーナは輸送機に積んだユニコーンの場所に来ていた。

 

「この白いのが新しいガンダム。でもGNドライヴを搭載してないってのが気になるわね」

 

酸素の充満した格納庫で横たわったユニコーンのコクピットへと足を蹴った。

ゆっくりと進む体はコクピットのハッチまで流れてゆく。

装甲まで辿り付くと手でつかんで体の流れを止め、ハッチを開ける為にパネルのボタンを2回、3回と押してみた。

普通のモビルスーツなら息をするように簡単に出来た事なのにユニコーンのハッチは開かなかった。

 

「何よコレ?何で開かないの!?」

 

もう1度コードを入力するがそれでもコクピットのハッチは開放されない。

ネーナはイライラが募りヒステリックに声を荒げる。

 

「何でよ!どうして開か―――」

 

爆音と共に艦に大きな揺れが襲い掛かる。

とっさに装甲にしがみ付いて事なきを得て今までの経験から振動の原因について瞬時に判断できた。

 

「外からの攻撃、こんな時に!」

 

こうなってはいつまでもココに居る訳にはいかない。

敵の攻撃が続いては小型の輸送機などあっと言う間に撃沈されてしまう。

ユニコーンの詮索は後回しにしてコクピットに向かう為に白い装甲を蹴った。

無重力の格納庫を流れて出口の扉に近づくとエアロックを解除する為に壁のパネルをタッチする。

指を動かしボタンを押すと空気が開放する音と一瞬のモーター音がして扉が横にスライドして動く。

通路に出ようと考えていたがネーナの目の前にはコクピットに置いて来たバナージが立っていた。

 

「ネーナさん、どうしてココに?」

 

「そんなのは後よ、敵が来てる」

 

ココに居た理由を誤魔化す為もあるが、ネーナはコクピットに戻って敵を振り切るのが先決と考えた。

でもバナージはその場を引こうとはしない。

 

「わかっています」

 

「だったら!!」

 

「俺がユニコーンで出ます。ネーナさんはこの輸送機で逃げてください」

 

「敵の数も何もわかっていないのに正気なの?」

 

「今はこうするしかありません」

 

ネーナは鋭い目つきでバナージを睨んだ、そうしている間にも時間は刻一刻と過ぎていく。

敵が狙いを定めているかもしれない状況で無駄な事は出来ない。

先に心の折れたネーナは体を退かすとバナージを格納庫へと通してあげた。

 

「行くのなら早くして」

 

「はい、行きます」

 

(情報は手に入らなかったけれどどうにでもなるわ。精々戦ってちょうだい、アタシが逃げるまでね)

 

感情を表には出さずにネーナはバナージを機体に送り出した。

ヘルメットを被ったバナージはコクピットハッチまで流れていくとネーナが出来なかったハッチの解除を意図も容易くすると中に入ってしまい見えなくなる。

 

「ふ~ん、自分にしか動かせないってワケ?やっぱりムカつくヤツね」

 

悪態を付くネーナの声をバナージは聞き取れないままユニコーンのエンジンが動き出す。

火が付いたエンジンがエネルギーを供給すると巨体はゆっくりと体を動かし始める。

輸送機の格納庫のシェルターが開くと真っ暗な宇宙空間が広がる。

 

「さっきのは明らかに攻撃なのに2撃目がないのは、こっちを誘っているのか?」

 

『推進装置が1つ破壊されてるわ。逃げるにしても時間を稼いでちょうだい』

 

「はい、行きます!」

 

ネーナから通信を受けると覚悟を決めて敵の居る宇宙へと行く。

武器もない状態で正体不明の相手と戦うのはあまりにもリスクが大きいがやらなくてはならない。

消耗してきている機体、ビスト財団の財力とアナハイム社の技術の粋を結集させて作り上げたこの機体もメンテナンスをされなくては性能も落ちてくる。

損傷して煙を上げる輸送機を見送りまだ見ぬ敵に警戒をする。

 

「どこから来る、気配は感じられる」

 

神経を集中させ敵からの攻撃を待ち構える、ニュータイプとしての能力か戦場に場馴れしているのか。

視界の片隅に一瞬赤い色が見えた。

瞬間機体の全方位からビーム攻撃が襲ってきた。

スラスター制御とアンバックで巧みに機体を動かすと寸前の所でビームを回避した。

 

「これはファンネル!?ならさっきの赤いのが本体か!」

 

メインスラスターを噴かし先ほど見た赤い機体に向かって飛ぶユニコーン。

ファンネルの攻撃を振り切るとその姿はすぐに見えた。

赤い装甲、刺々しいまでに突き出しているフォルム、右手には大型のビームライフルを握っている。

モビルスーツにしては大きな全長、赤い色も相まって威圧感をも感じる。

そしてモニターに表示された形式番号に息を呑む。

 

 

「MSN-04-2、これってアナハイムのモビルスーツなのか!?」

 

『へぇ、このモビルスーツを知っている。やっぱりキミをこのままにしておく訳にはいかない』

 

「お前は逃がさない!機体が大きいなら接近戦で」

 

『まだテストの途中なんだ。傷は付けられない』

 

左腕からビームサーベルを取り出すユニコーンから瞬時に距離を離す赤い機体は大きさとは裏腹に俊敏な動きを見せた。

右手のビームライフルのトリガーを引くと大出力のビームが発射される。

 

「近づけない、どうする!」

 

シールドをスライドさせIフィールドを発生させるとビームを弾き返すが背後から振り切ったファンネルが追いついてくる。

防いでいる間動きの止まっているユニコーンのランドセルにビームの集中砲火が飛んできた。

1基では威力の低いファンネルでも束になって掛かればランドセルを破壊するぐらいなら簡単に出来た。

 

「バーニアが!?」

 

制御できずに仰け反る機体、トドメを刺すべくビームライフルの照準を定める赤い機体。

 

『容赦はしないよ。キミの存在は邪魔になる』

 

「まだやられない!」

 

トリガーを引いて放たれたビームはユニコーンの周りを囲むフィールドに弾かれた。

装甲がスライドし内部のサイコフレームが剥き出しになり赤く発光するとその姿を変える。

 

『ガンダム、これを乗り越えなければ計画は完遂出来はしない』

 

「ここで落としてみせる!」




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