機動戦士ガンダム00 The human race's reformation   作:K-15

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第31話

「メメントモリは破壊されたようだね。まぁ、あんな物がなくても僕の計画に揺るぎはないけれど」

 

リボンズはソファーに座りながら足を組み活動を再開したソレスタルビーイングが連邦の衛星兵器を破壊した情報をヴェータを通して見ていた。

リボンズが目指す人類の新しい未来がどんな物なのかはまだ彼にしかわからない。

 

「ソレスタルビーイングが動き出したというのにアナタは何もしないのですか?」

 

「このくらいで僕の計画は揺るがないよ。それよりもキミの方こそ大丈夫なのかい?」

 

優雅に構えるリボンズは隣の王留美に質問を投げかけその真意を探ろうとする。

すでにリボンズには彼女が心の中で考えている事を把握しているのかもしれないが、彼女は何の事かわからないと答えた。

 

「何を仰っているのですか?」

 

「もう隠さなくてもわかっているのだけれどもね。まぁ言いたくないならそれでもいいさ」

 

リボンズは彼女を既に見切りを付けておりもはやどうでもいい存在に成り下がっている。

イオリアの計画を実行すれば人類はイノベイターの配下となる。

イノベイターの頂点に立つ人物、計画を実行出来るのは自分しかいないと絶対の自信を持っているリボンズには多少の障害など些細な問題だ。

 

「今は好きにすればいい。でも邪魔になるようなら―――」

 

気が付いているにも関わらずあえて今はその事を話さない、でもその口ぶりから秘密裏に進めていた計画がばれてしまっている事を彼女は理解した。

腹の中で何を考えているのかが探れないリボンズの存在は彼女にとって非常に鬱陶しい存在だ。

他人を見下し自分を中心にして世界が回っていると考えるリボンズを彼女は嫌いだった。

 

「キミには消えてもらう」

 

「っ!?……消える?この私が?」

 

消える、この言葉を聞いて彼女の背中に冷や汗が流れた。

リボンズは仲間ですら便利な道具程度にしか考えていないのだと彼女は悟った。

最も彼女もリボンズを利用していると言う点では似たような者でもある。

 

「ふふふ、イオリアの計画が実行されれば人類はさらなるステップに進める。そうなれば古い体制は邪魔になる。でも人間は変わる事に臆病だ、変わりたくないと安心出来る場所に居座りたいと反発してくる。変わるために計画を進めているのに変わりたくないヤツを説得したりして待っていられる程、僕は寛大じゃないよ。そうなれば邪魔な存在は消えてもらうしかなくなるよね」

 

「計画の邪魔になる者は消す、イノベイターの頂点に立つ程の人物にしては安易な考えではありませんこと?」

 

「ならキミは100年後に世界がどうなっているかを考えた事があるかい?200年先、300年先にこの地球がどうなっているのかを、人類はどれほどの文明を発展させているのか、キミは考え想像し今を生きているかい?」

 

「それは……」

 

「僕はその為に計画を進めている。今しか生きられない人間に何故従う必要がある。考える事すら出来ない人間を僕が導いてあげているのに、それを拒む者を何故受け入れないといけないんだい?」

 

彼女はリボンズの質問の答えを言う事が出来なかった。

それはリボンズの言う通りでそんな先の未来までも考えていないからだった。

今の自分を取り巻く世界を変える為に生きている彼女に自分の居なくなった100年先の未来の話など想像すらしていない。

だからリボンズの言った『消す』と言う言葉に恐怖を感じてしまう。

 

「今のキミには関係のない話だったね。それまでは自由にするといいよ」

 

「では失礼させていただきます」

 

王留美は部屋を後にするがリボンズは見向きもせずにソファーに座ったままだった。

1人立ち去る彼女は表面上は冷静を保っているが心の中では焦りが見え始めている。

 

(リボンズはこちらの計画に完全に気が付いている。何故かはわかりませんが今は自由にさせてもらっていますがこのままでは時間の問題。リジェネだけでは当てになりませんわね、そうなると自分に動くしか―――)

 

彼女の考えている事を見透かしているリボンズには手のひらで泳がすようなもの、何ら計画に支障は出ない。

誰も居ない空間で静かに思っている事を口に出して呟いた。

 

「ふふふ、精々足掻くといいよ。そういえばあの赤い機体は完成したのかな?擬似GNドライヴと核融合炉を組み合わせた面白いモビルスーツ、是非お手合わせ願いたいものだね。名前は確か―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第31話 ナイチンゲールの影

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

///

 

衛星兵器を破壊したソレスタルビーイングはプトレマイオスに送られてきた暗号文の解析を行なっていた。

解析自体はすぐに終わったが誰から送られてきたのかもわからない暗号文にスメラギはこれからの行動を悩んでいた。

暗号文には開発途中で放棄されたコロニー、エクリプスの座標だけが示されていた。

 

「これはどういう意味かしら?」

 

「ですが暗号文で送られている以上はそれほどに重要な内容だと思います」

 

「直接会って話しさないと信用できないって訳?ここからならそれほど時間は掛からないけれど敵には見つかりたくはないわ」

 

内容は気にはなるがそれの為に艦を危険に晒す訳にはいかないとスメラギは慎重になっているけれどもいつまでもこうしても居られない。

宇宙に上がってきたものの敵の情報はそれほど集まってはいなかった。

時間が過ぎればアロウズの地球圏侵攻もさらに進んでしまう。

その為に直接イノベイターの本拠地を叩こうと活動を再開したが状況は思わしくない。

行方不明のバナージとも未だに連絡1つ取れておらず生存確認も出来ていない。

 

「なら俺が行く」

 

悩んでいるスメラギに刹那は自らが指定されたポイントに行くと名乗り出た。

 

「刹那、でも何があるのかわからないのよ?」

 

「ダブルオーの性能なら単独でもモビルスーツ部隊と戦える。それにイヤな予感がする」

 

「イヤな予感?」

 

「上手く言葉には出来ない、だが急いだほうがいい」

 

意味深な言葉を言う刹那だがその真意は本人にもよく理解出来ていない。

純粋種として進化した刹那は無意識の内にその能力で周囲の意識や感情を受信しており他の人よりも早くに危険を察知している。

でも自分でもわからない事を他人に説明など出来るはずがなく今は『イヤな予感』と言葉を濁してしか言えない。

 

「ここは決断する時ね。刹那、ダブルオーライザーで沙慈君と一緒に指定ポイントまで行ってちょうだい。トレミーは迂回して進路を反れるわ。万が一敵に見つかってもこの事はばれない」

 

「わかった、すぐに出る」

 

ブリッジを出て行く刹那を見つめるフェルトは彼の昔とは違う変化に気が付いていた。

 

「刹那、昔と比べると変わりましたね」

 

「そう?今も昔も無表情でぶっきらぼうなだけだと思うけど?」

 

「前までの刹那ならあんな言い方はしないと思います。もっと他人との干渉を拒絶していましたから」

 

「それを言うならアナタも変わったわ、フェルト」

 

「私が、ですか?」

 

「みんなもよ、これからも変わっていくの。それがこの戦いが終わった先にある未来だと信じているわ。イオリアの目指した未来を」

 

終局に向かいつつあるソレスタルビーイングとイノベイターとの戦い。

その先にある未来はリボンズ・アルマークが世界を牛耳るのか。

創設者であるイオリア・シュヘンベルクが唱えた人類意思の統一か。

それとも今を生きる人達の想いなのか。

さまざまな思いを孕みながら戦いは終焉へと近づいていく。

刹那の乗るダブルオーライザーは単騎で指定されたポイントへと向かう。

 

///

 

「月ですか?」

 

「そうだ、コクピットの座標にはそう記されていた。ここからならゲタを使えばモビルスーツでも行けるだろう」

 

ユニコーンから降りてきたアムロから知らされたのは再び発動したラプラスプログラムが示す次なる場所。

この小惑星からならサブフライトシステムに機体を載せてそのまま月まで行くことが出来るとアムロは言う。

サブフライトシステムはこの世界では普及していないし、ゲタと呼ぶのを見てもバナージは本物のアムロ・レイだと確信が持てた。

 

「行くかい?」

 

「行きます、俺にはまだやらないといけない事があります」

 

バナージの目はもう迷いはない、決意の固まったその意思は簡単には揺らがない。

その意思は自分1人だけの物ではなく、今までに出会ってきた人達の想いも背負っているのだから。

アムロはまだ幼さの残る少年の姿に昔の自分を照らし合わせてしまう。

初めてモビルスーツに乗って敵を倒しそのまま戦争へと加担してしまった自分に。

あの時はただただ生き残るためにホワイトベースのクルーは必死だった。

連邦軍の兵はサイド7襲撃によりほとんどが戦死してしまい残された艦長パオロ・カシアスも負傷しており新米指揮官であるブライト・ノアが代わりにクルーを束ねていった。

経験不足で幾度もクルーとの衝突もありアムロもその1人であった。

無断でガンダムを持ち出して逃げ出した事もあったが戦いの中で人間として成長していった。

だが戦いに強くなっても1人の人間に出来る事は限られておりニュータイプとして共感しあえたララァ・スンをその手で殺してしまった。

ララァの呪縛に捕らわれたアムロは克服にかなりの時間が掛かってしまい終戦後は第一線から退いた。

 

「生きている人間が生きているときにやるべき事がある。俺はそのことに気が付くのにずいぶんと時間が掛かってしまったがバナージなら大丈夫だ。準備なら1時間もあれば終わる」

 

「お願いします。それと―――」

 

「何だ?」

 

ずっと思っていた事を言うべきかどうか悩みながら、わずか数秒でカラカラに乾いてしまう口で息を吸う。

フル・フロンタルに本当はシャアなのかと聞いたときよりも体に緊張が走った。

ニュータイプと呼ばれた彼について興味もあるし、これから自分がどう進んだらいいのかも聞きたかった。

 

「アナタはアムロ・レイなんですか?」

 

「どうしてそう思う?」

 

「それは……うまく説明できません。でもそうなんじゃないかって思ったんです」

 

「バナージは俺よりもずっとニュータイプについて理解しているのかもな」

 

「そんな事ないですよ。ニュータイプは人が誤解なく分かり合えるために進化した人類でしょ、俺は何も出来ませんでした」

 

人は分かり合えるのに、戦いの中に身を置きながらもバナージは人の心の在り方を学んでいった。

年齢も性別も、今までに経験してきた事も境遇もすべてが1人1人違う。

何1つとして同じ物などない世の中だけれども手を取り合って繋がる事も出来る。

長くもあり短かったラプラスの箱をめぐる戦いの中でバナージが学んだ事だった。

けれども現実はそうではなかった。

感情を持った人間であるからこそ心に誰しもが闇を抱えている。

心のしがらみが、時として人をも殺してしまう。

 

「俺も何でも1人で出来る訳じゃない。昔の自分はただがむしゃらに進んでいただけだった。でもそれで良かったと思える。昔がなければ今の自分はないからな」

 

「アムロさん、俺はいつも空回りしてばかりで。でも、それでもって行動したのに全部裏目になって」

 

「人間そんなものだよ、すべてがうまく行く訳がない。俺も彼女を死なせてしまった。ニュータイプと囃し立てられてもアイツの考えを理解は出来なかった」

 

「アイツ?」

 

「ヤツは俺との決着を付けたかったんだろう。初めてガンダムで戦った時からの因縁だからな」

 

アムロの乗るガンダムが現れた事で彼が描いていた計画は大きく崩れてしまう。

ニュータイプとして覚醒した2人の力量は五分五分であったがアムロとは違い彼はララァ・スンの呪縛を引きずっていた。

それが勝負の分かれ目になったのかもしれないがアクシズを止める事は出来ずに地球へと落下のコースを走る。

人々の想いがサイコフレームにより集中しオーバーロードすると虹の光はアクシズを落下コースから遠ざけていった。

虹の光は人類の可能性を見出す新たな道しるべとなったのか、アムロにはもう分かることはない。

消えてしまった宿敵は今はどうしているのだろうと、ふと頭を過った。

 

「それより準備に掛かるぞ。俺たちもあまり長くはここに居られない。チェーンと機体の調整をしてくれ、俺はゲタを用意する」

 

「お願いします」

 

アムロに諭されるとバナージは損傷した箇所の修理の終わったユニコーンの細かな調整をする為に無重力空間を進んだ。

床に仰向けに寝ているユニコーンのコクピットへ慣性の力でゆっくりと進んでいくのを後ろから見守るアムロ。

 

「あの時の俺はバナージよりも弱かった、先の事を考える余裕なんてなかったしララァから逃げた。シャアも俺と同じで迷いを捨てきれなかったのか。それにしても―――」

 

一角獣と呼ばれるガンダムをアムロはもう1度見た。

真っ白な装甲と頭部の角は一角獣と呼ぶに相応しい姿だろう。

その中に眠るNT-Dシステムを彼はわずかではあるが垣間見てこの機体の存在意義を感じ取った。

 

「ニュータイプだけを殺す機械か、アナハイムめ!」

 

第2次ネオジオン戦争時に自身が登場したνガンダムはアナハイムが開発したモビルスーツだ。

ニュータイプと呼ばれたアムロとシャアのモビルスーツもすべてアナハイムが開発した機体である。

企業である以上利益を考えてこちらの敵味方の都合など考えてくれないのは理解している。

けれども自分さえも殺そうとモビルスーツを作っていたのだと思うと悲しくもあり怒りも込み上げてくる。

 

///

 

「目標ポイントを視認、敵機の反応はない」

 

「ここに一体何があるんだろう?建設途中のコロニーにしか見えないけど」

 

「このコロニー自体には何もない。中で暗号通信を送ってきた密告者が居るはずだ」

 

刹那と紗慈はダブルオーライザーでコロニー・エクリプスへとたどり着いた。

当初の予定通りプトレマイオスは進路を迂回してダブルオーライザーとは離れた位置へと進んでいる。

 

「今回の任務はその密告者と接触する事だ。俺が直接会ってくる、その間はガンダムを頼む」

 

「もし敵が来たらどうするのさ?」

 

「ハロのサポートがあれば動ごかすぐらいなら出来る。誰ともわからない相手と会う方が危険だと考えた」

 

「わかったよ、僕はここで待っていればいいんだね」

 

「そうだ、何かあればすぐに戻る。着くぞ」

 

目の前まで近づいてきたエクリプス、建設途中とはいえモビルスーツなど簡単に覆い尽くせるほどまで作られている。

刹那は港口まで機体を移動させるとコロニー内へ侵入する。

静寂とした港は一切の出入りがなくダブルオーライザーが1機居るだけ、脚部を着地させると刹那はハッチを解放しコクピットから出た。

 

「紗慈、ガンダムを頼む」

 

「やってみるよ、刹那も注意して」

 

「了解」

 

刹那は単独で密告者と接触すべくコロニーへ入っていく、ガンダムを任された紗慈は不安に思いながらも操縦桿を握りしめて平常心を保った。

 

「刹那なら大丈夫、それより自分を何とかしないと」

 

『ノウハフアンテイ、フアンテイ』

 

「ハロにまで言われちゃったよ」

 

パタパタと耳を動かしてコクピットの設置されているオレンジ色のハロ、簡単に心が不安になってしまう自分が少し情けなくなってしまう。

コロニーに入っていった刹那、内部には酸素が供給されておらずノーマルスーツのヘルメットのバイザーを閉じて無重力空間を進む。

右手には拳銃を握りいつでも襲撃に対応できるように用心しながら通路の壁に体を密着させて先を覗く。

 

「敵は居ない」

 

確認すると床を蹴り通路の奥にある指令室を目指す。

今のところ敵の襲撃はないがあまりにも静かすぎるのが刹那は気になった。

わざわざ建設途中のコロニーを場所に指定してくるぐらいなのだから誰にも見つからない事を考えての指示なのだから静かなのは安心出来る筈なのに、どこか釈然としなかった。

けれども襲撃はなく指令室まで辿り着くと扉を開ける為に壁のパネルを操作した。

特別なコードなどもなくロックは解除され扉はスライドして中に入れるようになった。

そこに居たのはソレスタルビーイングのサポートをしている王留美と執事の紅龍が居た。

 

「王留美、アナタがトレミーに暗号通信を?」

 

「そうです、刹那・F・セイエイ。私はこれまでの調査でイノベイターが所有するヴェーダの場所が掴めました」

 

「ヴェーダが何処にあるのか掴めたのか!?」

 

「そうです、この事は絶対に敵に知られる訳にはいきません。その為にこのような回りくどい方法をさせていただきました」

 

王留美の手の中にはマイクロチップが握られておりヴェーダの場所がインプットされている。

彼女は手を差し出すと刹那にマイクロチップを手渡した。

 

「へぇ、何をしているのかと思えばそんな事をしてたんだぁ」

 

「お前は!?」

 

刹那は振り向くと背後には銃を構えたネーナがそこに居た。

自分も銃で応戦しようと考えるが既に構えているネーナの方がトリガーを引くのが早い。

王留美を守る為には今はまだ動けないと判断して刹那は相手の動向を見た。

ネーナの突然の裏切りに王留美は驚きを隠せない。

 

「アナタは自分が何をしようとしているのかわかっているのですか?」

 

「はい、充分に理解しておりますわお嬢様。アタシは初めて会った時からアンタのその他人を見下した態度がだいっきらいだった」

 

「たったそれだけの為にこのようなことをするのですか?」

 

「たったそれだけ?はん、アンタだって似たようなモンじゃない。アタシはにぃにぃの仇を取る、あのヤロウを殺す!その為にアンタを利用した、アンタと同じようにね」

 

「私とアナタを一緒にしないでください。私は世界の変革の為に―――」

 

「何が世界の変革さ!自分の事しか見えていないくせに!」

 

ネーナがトリガーに掛けた指に力を入れようとすると突然コロニー全体が大きく揺れた。

その場に居た全員が足元をふらつかせ震源が何なのかを探す。

 

「この揺れは一体!?」

 

『ネーナ・トリニティー、そして王留美、僕の障害となるのならここで消えてもらいます』

 

「この声はリジェネ!?消えるってどういう事よ!」

 

『ヴェーダの情報は渡さない。このままこのコロニーごと消えてもらいます』

 

聞こえてきたのはイノベイターのリジェネの声、その間もコロニーは揺れ続け爆音まで響いてきた。

刹那は通信機で外で待機させた紗慈に連絡を取り状況を聞いた。

 

「紗慈、何があった」

 

『わからない、中からコロニーが壊されてく!』

 

「くっ!?イノベイターの仕業か、アイツは?」

 

尚も揺れが続く中で刹那はネーナがどうしているのかを見た。

だが既に彼女の姿は指令室にはなくここから逃げ出したのがわかる。

崩壊の始まるエクリプス、いつまでもここに居る訳にはいかなかった。

 

「王留美、紅龍、ここから脱出を。先導します」

 

「お願いします、行きましょう」

 

刹那はここから脱出する為に2人を連れて指令室から出た。

 

///

 

指令室からいち早く逃げたネーナは偽装船の中のモビルスーツのコクピットに居た。

それは兄弟たちと一緒に作られた自分の愛機、スローネ・ドライ。

今や疑似GNドライヴは世界に普及しており他の機体と比べて優位に立てる程の性能差はない。

 

「クソッ!あの女を殺しそびれた。でもこんな所じゃ死ねない」

 

疑似GNドライヴを起動させると赤い粒子が発生し機体に動力が伝達される。

手順通りに進めている暇はないと考えた彼女はスローネ・ドライの右腕のGNハンドガンで偽装船の装甲を破壊するとその穴から機体を出した。

 

「とにかくここから逃げないと」

 

『キミが行くのはそっちじゃないよ』

 

出口に向かい機体を動かそうとすると突然何者かにバックパックを攻撃された。

 

「ぐぅぅ!?どっから!」

 

『誰も生かしてここから出す訳にはいかない。キミには―――』

 

スローネ・ドライの背後から現れたのは深紅の機体、通常のモビルスーツと比べても一回りは大きいであろうその機体は右手の大型ビームライフルの照準をコクピットに定めている。

 

「リジェネ・レジェッタ、まだ死ねるかぁ!!」

 

最後の抵抗にGNハンドガンを向けてトリガーを引こうとするがそれよりも相手のほうが早く動いた。

何も出来ないまま彼女の乗った機体はビームに貫かれた。

 

「このコロニーを破壊するのは簡単だ。でもその前にダブルオーガンダム、あの機体のGNドライヴは僕の物だ」

 

リジェネのモビルスーツは刹那が置いてきたダブルオーガンダムに向かう。

リボンズが差し向けた刺客が居るとも知らずに。

崩壊するコロニー、紗慈は刹那が戻ってくるのを待つしかなかった。

逃げるだけならハロのサポートもあればなんとか出来るだろうが刹那を置いていく事など出来ない。

それにもう昔の自分の過ちを繰り返したくはなかった。

だが紗慈の前に敵であろうモビルスーツが現れてしまった。

 

「あれは、敵!?」

 

『ようやく出会えたなガンダム、この日をどれだけ待ちかねたか』

 

現れたのは黒い鎧を纏ったモビルスーツ、両手には実体剣を握り兜のようなデザインの頭部は日本の武士を連想させる。

 

『キミと再び剣を交える時が来た。今一度私との決闘を申し込む』

 

「決闘!?相手は戦う気でいる、とにかく動かさないとやられる!」

 

紗慈はオーライザーのコクピットの中で操縦桿を握りダブルオーガンダムを動かそうとするがそう簡単に出来る代物でもない。

敵が目の前に居る事にあせってしまい刹那に言われたハロのサポートもなしに動かすのは素人では無理だ。

操縦桿を操作しようとも計器類を触ってもガンダムは反応してくれず敵に攻撃させる時間を与えてしまう。

 

「動いてくれない、どうして!?」

 

けれどもそれが幸運だった、一向に動く気配を見せないガンダムに敵は攻撃を仕掛けてこなかった。

 

『何故戦おうとしない?』

 

「うぅ、何なんだこの敵は?」

 

『まさかガンダムに乗っていないのか、そうなるとこのコロニーの中にまだ居るのか』

 

敵はガンダムにパイロットが居ないのに感づくと背を向けて立ち去ろうとする。

戦わずに済んだ事に紗慈は肩の力を抜き安堵した。

 

「戦わないのか?」

 

黒いモビルスーツはゆっくりとガンダムから距離を離していく、その時になって刹那からもう1度連絡が入ってきた。

通信機を通して紗慈は今の現状を伝えようとする。

 

『紗慈、もうすぐそっちへ着く。イノベイターがこのコロニーに居る、油断するな』

 

「イノベイターもここに居るの!?刹那、急いで!他にも黒いモビルスーツが居る」

 

『黒いモビルスーツ……わかった』

 

そう言って通信を切る刹那、紗慈は早く来るのを祈りながら待つしか出来なかった。

だが一際大きな振動が起こるとすぐ近くのコロニーの外壁が崩れ落ちそこからまた見たこともない赤いモビルスーツが現れた。

 

「あれも敵!」

 

『見つけましたよ、ガンダム。これさえなくなれば僕の計画は揺るぎない』

 

『そうはさせん!』

 

黒いモビルスーツは剣を取るとガンダムを守るように突然現れた赤いモビルスーツに振りかぶった。

 

『リボンズの差し金か!』

 

『ガンダムをやらせはせん。ヤツを倒すのはこの私だ!』

 

実体剣を左腕のシールドで受け止めるとスカートの隠し腕からビームサーベルを抜き胸部に突き刺そうとする。

だが一瞬の判断でそれを見破ると後方へと脚部で床を蹴り飛んだ。

 

『その程度で私を倒せると思うな!』

 

『くっ!ガンダムが目の前に居るというのに』

 

黒い鎧を纏った武士と赤い魔物の火蓋が切られた。




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