機動戦士ガンダム00 The human race's reformation 作:K-15
敵の要塞へと突っ込んだプトレマイオス、被害は燦々となるもので外側も内側もボロボロ。
限界を超えたメインスラスターは完全に破損し、ブリッジの操縦桿も銃撃で壊されては、修理なしで再び宇宙を飛ぶのは無理。
スメラギは長きに渡り共に航海してきたプトレマイオスを捨ててでも、この戦いに終止符を付ける気でいる。
振動が収まると、固くつむっていた目を開けてブリッジを見渡す。
電気供給すらも満足に行われず、ほとんど何も見えなくなってしまっている。
銃で撃たれた箇所がバチバチと火花を上げ、ヒビ割れたモニターが唯一の光で、視界を確保出来た。
「大丈夫、アニュー?」
抱きかかえた彼女を見ても、表情は眠りに付いている。
でも、たしかに伝わる鼓動と体温はスメラギを安心させた。
「よかった。フェルトも無事なの?怪我はない?」
「だ、大丈夫です」
モニターにもたれ掛かった体を起こすと、かぶっているヘルメットのバイザーにヒビが入っていた。
空気漏れで使えなくなったヘルメットを脱ぎ、肩で大きく息を吸う。
「トレミーはもう動きません。どうするんですか?」
「白兵戦をしてでも、ヴェーダを取り返す。フェルトはここでアニューをお願い」
「生きて……帰って来てください」
フェルトが見つめる眼差しは、涙で濡れている。
5年前の戦いで仲間を亡くしている彼女、もう2度と悲しい思いなんてしたくない。
言葉を交わさなくても伝わるフェルトの思いは、スメラギの強さになる。
「わかっているわ。行ってくる」
力強く返事を返し、スメラギはブリッジを後にする。
電力供給が絶たれた扉を両手で掴み、強引に体が通れるだけの隙間を作る。
暗い通路の床を蹴り、無重力をゆっくり進んでいく。
通路の突き当りに差し掛かると、後ろからラッセも合流しに来た。
「ラッセ、無事ね?」
「頑丈な事が俺の取柄だ。これからどうする?」
「中に乗り込んでヴェーダを取り返す。一緒に来て」
「了解だ。コンテナに急ぐ」
手ぶらで敵地に乗り込むにはあまりにも無謀、モビルスーツの格納庫でもあるコンテナに携帯銃火器は揃えてある。
2人は揃ってコンテナへと向かうが、ブリッジと同様に内部は悲惨な状態に変わっている。
修理に使う部品が散乱し、GNビームピストルで撃った箇所には風穴が開いている。
鉄くずが漂う空間で、ノーマルスーツを着たイアンと抱きかかえられているミレイナが居た。
「イアン、ミレイナ!」
「まったく、無茶をやってくれる」
「これが最善の方法よ。私達は前に進むしかないわ」
「トレミーはもう動かんだろ。まさに、背水の陣ってやつだ」
「ミレイナはどうしたの?」
「気を失っているだけだ。心配せんでもえぇ」
「私とラッセで内部に乗り込むわ。武器をちょうだい」
「了解だ」
ミレイナを床へ寝かせ、ぐちゃぐちゃになったコンテナ内を進むイアン。
残骸を押しのけながら前へ進むイアンを、後ろからスメラギとラッセは付いて行く。
「見るも無残とはこの事だ。だが、行く手間が省けたな」
残骸の中には、収納してあるはずのマシンガンが混じっていた。
マシンガンを掴み取り、動作を手早く確認し、スメラギに渡した。
「1つは見つかった。残り2つもこの辺りにまぎれているか、奥にあるはずだ」
「いいえ、1つで充分よ。内部へは私一人で行く」
銃を受け取ったスメラギは揺るがない意思で、イアンに伝える。
3人で突入すると考えていたイアンとラッセは驚愕する。
「正気か!?1人ではどうにもならん!」
「そうだ、せめて俺だけでも―――」
「内部には私だけで行く。2人はミレイナとフェルト、アニューを守ってあげて。これは命令よ」
ラッセの声を遮ったスメラギの意思は変わらない。
マシンガンを両手でしっかりと握り床をけると、コンテナの穴に向かって飛ぶ。
スメラギは単身で敵要塞の内部へ突入していく。
///
スメラギが潜り込んできたのは、ヴェーダを通じてリボンズにも伝わった。
ソファーの上で足を組みながら、戦況を観察しているリボンズは余裕の笑みを浮かべている。
「白兵戦をしてでもヴェーダを取り戻す気か。無駄な事を」
害虫駆除の為にオートマトンを起動させようとする。
まだ自分からは動こうとはせずに、手足のように従う駒に任せるリボンズ。
目をつむり、脳量子波でヴェーダにオートマトンを起動させる。
(オートマトンを起動させろ。人間が1人紛れ込んだ)
だがヴェーダは指示を聞かず、オートマトンも起動しなかった。
不思議に思ったリボンズが目を開けた先には、彼女が立ちふさがっている。
「どうした、何かあったのか?」
「何故、僕の前に居る?」
視界に映るのは、どこまでも続く虹色の空。
座っていた筈のソファーも消えて、知らない内にリボンズは立ち上がっていた。
目の前に居る長髪の女は以前、自分に煮え湯を飲ませた相手。
「マリーダ・クルス」
「私もお前の名前を知っているぞ。リボンズ・アルマーク」
「僕に用でもあるのかい?たかが思念体風情が」
意識共有領域でのみ、マリーダの思念は存在している。
それでも、今まではバナージを通して出ないと現れる事はなかった。
そのことにリボンズもすぐに感付き、まぶたを細めて彼女を睨む。
「この空間でなら、心で感じた事も相手に伝わる」
「そうだよ。だからキミの考えている事だって、僕には理解出来る。バナージ・リンクスを呼んだな」
「あぁ。でも来るのはバナージだけではない。その時が来たら、もう一度自分と言う存在を見つめ直してみろ」
「見つめ直す必要はない。僕はイノベイターの頂点に立ち、人類を導くただ1人の存在だ」
『それは違うよ。リボンズ』
マリーダとは違う声が、この空間に響き渡る。
意識共有領域に現れたのは、バナージとは別の人物。
リボンズはそいつを理解している、何故なら自分が作り上げたのだから。
「リジェネ・レジェッタ。キミもここへ来たのか」
「そうさ、でも笑ってしまうよ。リボンズ、キミにはもう存在意義なんてないんだよ」
「どういうことだ?」
イノベイターの仲間内では、味方同士と形は作って来たが、内心では敵視すらしている。
リジェネは党首であるリボンズを討ち取る為の計画を練っていたが、随分と前からリボンズも気づいていながら自由に泳がせた。
リボンズは地球連邦を我物にし、アロウズの軍事力で人類の支配を進めていた。
影に隠れながらリジェネはナイチンゲールを作り上げ、リボンズの首を狙っていた。
でもそんな関係も必要なくなり、この瞬間に崩れ去る。
「僕達はイノベイターなんかじゃない。イノベイド、人類を覚醒へと導くのが僕達の本来の使命だ。けれど認めたくないキミは、自分がイノベイターだと言い張った。自分は模造品でしかない事を拒んだキミは、イオリアの目指した計画を歪めた」
「イオリアが目指したのは人類の統括だ。僕は間違ってはいない」
「確かにそうだけれども、それをするのはキミではない。真に覚醒した純粋種さ。そしてマイスターの刹那・F・セイエイは覚醒した」
淡々と語るリジェネを睨んだまま、リボンズは静かに次の言葉を待った。
自分の存在を見透かしたように言うリジェネは、この上なく不愉快な存在だ。
リジェネは不敵な笑みを浮かべ、もうリボンズには従わないと反抗の意思を示す。
「キミだって気づいているんだろう?ツインドライヴシステムも、純粋種の存在も、キミは知らされていなかった。もう必要ないんだよ。今のキミは、存在意義を求めて戦闘を起こしているに過ぎない」
「言ってくれるね。なら僕の考えているイオリアの計画と、キミの考えている計画は違うみたいだ。キミは人類をどうやって導くんだい?」
「僕はただ、来るべき対話に備えるだけさ。その為にはオリジナルのGNドライヴとサイコフレームが必要だ。みんなにも理由を聞かせてあげるよ」
『みんな』の中にはこの場に居る3人だけでなく、もう1人含まれている。
リジェネと同じく、サイコフレーム搭載のモビルスーツに乗っており、ニュータイプと呼ばれる存在。
彼はマリーダのすぐ隣に、いつの間にか現れていた。
「バナージ・リンクス。キミも知る必要がある」
「サイコフレームをどう使うつもりです?」
バナージにも、まだ誰も解明出来ていないサイコフレームの能力がどんな物かははっきりしない。
ニュータイプとしての感性が、リジェネの邪悪な思惑を感じ取らせてくれた。
「サイコフレームは人の意思を増大して力に出来る。GNドライヴから発生する粒子は、意識共有領域を生成し人類を純粋種へと覚醒させる」
「2つが交わればどうなるって言うんだ?」
「まだわからないのかい?ソレスタルビーイングのお陰で、GN粒子は世界中に散布された。条件が整い広範囲の意識共有領域が作れれば、人々の意思を集中させられる。そうすれば僕のナイチンゲールは無限の力を発揮できるんだ。でもその為には時間が掛かる。だから僕は考えた、そして見つけたんだ。オリジナルのGNドライヴは擬似的にでもサイコフレームを共振させることが出来るってね」
「そんな事出来る訳がない」
「キミには出来ないだけさ。でも見ただろう?ナイチンゲールにサイコフレームは力を与えてくれた。ダブルオーのツインドライヴの粒子拡散のお陰でね」
刹那がダブルオーのトランザムシステムを発動させ、広範囲にGN粒子を拡散させたせいで、リジェネの思惑通りナイチンゲールは力を持ってしまった。
バナージは力を求めることしか考えていないリジェネに、サイコフレームを渡すつもりはない。
力で統率される時代を終わらせる為に、バナージは宇宙世紀の時代で戦ってきた。
「アナタは力しか求めていない。イオリアの思想も、人の可能性も何も見えていない!」
「可能性なんかじゃダメなんだ。そんな曖昧な物で、来るべき対話は迎えられない。その為の力、その為のサイコフレーム。キミは決断しなくてはならない、バナージ・リンクス。もしも僕が負けるようなことになれば、サイコフレームの性能は永久に謎のままだ。そうなれば、人類は滅亡する」
「人は困難を乗り越えられる。想い合い、理解し合う事が人間には出来るんだ。アナタが求める力だけでは、何にも変わらない!」
リジェネの思想に対してバナージも真っ向からぶつかり合う。
平行線を漂う両者の言い分、それでも2人には違いがある。
リボンズもリジェネも他人を信用しようとはせず、信頼し合える関係性を持った相手も居ない。
でもバナージは違う、互いに思い合い信頼出来る人達が付いてくれている。
「それでもと言い続けろ、バナージ。お前の傍にはみんな居る。1人ではないことを忘れるな」
「マリーダさん……」
「見えなくても傍に付いている。だから進め、可能性を見い出せ」
その言葉を告げマリーダは、バナージの隣から姿を消した。
でもバナージは決して1人などではない。
マリーダの言うように傍にはみんなが付いている。
父であるカーディアス、同じ時を過ごしたダグザ、敵であっても分かり合えたギルボアとロニが傍に付いて来てくれる。
///
トランザムシステム起動によるツインドライヴから放出された高濃度のGN粒子は、ダブルオーライザーと巨大モビルアーマーを包み込み、パイロットを意識共有領域へと導く。
虹色の世界が広がる空間で、刹那と沙慈は目を覚ます。
「意識共有か。またこの場所に来たのか」
「でも僕達だけじゃないよ。だって、あの機体にはルイスが乗っているってわかるんだ」
「あぁ、ルイス・ハレヴィは取り戻す」
「ルイス、何処に居るの?」
この空間でなら、遠く離れた人の意識でも感じ取る事が出来るようになる。
彼女の意識は2人にも感じ取れたが、聞こえるのはとてもか細い声だった。
周囲を見渡してもルイスの姿は見当たらず、感じ取れるのは邪悪な存在。
『ルイス・ハレヴィーなら僕とずっと一緒さ。あれからずっとね』
「やはりお前か」
刹那が睨む先に邪悪はルイスと共に現れた。
ずっと戦い続けた刹那が、本当に倒すべき相手。
「リボンズ・アルマーク」
「久しぶりだね、刹那・F・セイエイ。リジェネの話が退屈だったからこっちに来てしまったよ」
「ルイス・ハレヴィーは返してもらう」
「無理だよ、彼女の精神は僕が握っている。悪いけど、君たちには返してあげられないよ」
リボンズの言うとおり彼女の瞳は濁った水のように虚ろで、何処を見ているのかもわからない。
意識すら正常に保てているのか、表情から察するに怪しい。
変わり果てた彼女の姿に、沙慈は涙を流して呼びかけた。
「ルイス、僕の声が聞こえるよね?返事をしてよ!ルイスゥ!」
「無駄だと言った。キミ達人間は本当に、無意味な事を繰り返す。やはり人類は僕に導かれなければならない運命なんだ」
沙慈の声は彼女の心に届いていない、でも思いを引き継いでくれる人は居る。
呪縛に縛られているルイスの体を彼女は抱きかかえた。
人の温もりが、彼女の凍ってしまった心を溶かしてくれる。
「もう心配しなくてもいい。彼なら傍に居る」
「まだ僕の邪魔をするのか!マリーダ・クルス!」
「私は今の自分に出来ることをするだけだ。これ以上彼女を、お前の道具にはさせない」
「戯言を!キサマら人間に何が出来る!」
「私は言ったぞ、リボンズ・アルマーク。もう一度、自分と言う存在を見つめろと」
「必要ない。リジェネは僕が直接罰を下す。下等な人間に従うつもりもない」
「そうか……」
マリーダの言葉に耳を傾けようとしないリボンズ、変わろうとしないリボンズの思想にマリーダはこれ以上何も言わない。
呪縛を解かれたルイスを沙慈へ渡してあげる。
「ルイスは無事なんですか?」
「私に出来るのはここまでだ。後は彼女の精神力に任せるしかない。手放すなよ」
「はい」
まだ目を覚まさないルイスの手を固く握り、沙慈は涙を流すのを止めた。
覚悟を決めた表情を確かめたら、マリーダと刹那は向き合った。
「ソラン・イブラヒム。お前も決着を付ける時が来た」
「わかっている。2人を頼む」
マリーダに沙慈とルイスを託し、自分が向き合わなくてはならない相手を見た。
リボンズも笑みを浮かべて刹那を見つめる。
「リボンズ・アルマーク。お前が俺をマイスターに選んだのか?」
「そうだよ。Oガンダムのテストで武力介入した時にキミを見つけた。この空間ならわざわざ言葉を交わさなくてもわかるはずだよ」
「お前の口から聞かなくてはならない。俺がマイスターに選ばれた理由を。そうでなければ、俺は前に進めない」
意識共有領域で刹那は自分をマイスターに選んだのが、ここに居るリボンズだと脳量子波で伝わった。
でも刹那は事実であっても、リボンズの口から本当である確証が得たかった。
リボンズの口でちゃんと聞くことで、刹那は納得することが出来る。
「キミも面倒な人間だね。そうだよ、キミをマイスターに推薦したのは僕さ。あの時、僕を見つめるキミの目が輝いて見えた。まるで神でも拝めるみたいに。それからはキミの知っている通り、ガンダムエクシアのマイスターに選ばれたキミは僕の手の平の上で戦い続けた。消滅させられる存在とも知らずに」
「俺はもう戦いの中でしか生きられない。神に絶望した俺は、ガンダムを神と崇めた。そうする事で俺の心が救われた」
「皮肉な物だね。神と崇めた存在が、今は倒すべき敵とは。でもキミは間違ってはいない。僕は人類を束ね、神とも呼ばれる存在になる。それが僕の使命だ」
「リボンズ・アルマーク、人間に使命なんてない。使命は神が与える物、でも人間には使命がなくても生きていける。生きていく意味がある。お前もイノベイドとしてではなく人間として生きるのなら、使命ではない生きる意味があるはずだ」
仲間であるティエリアもイノベイドとして生み出されたが、今は人間として生きている。
出生の仕方など些細な問題でしかなく、今を生きる意思が何よりも重要だ。
人間として生きると決意したティエリアに使命はない。
自らの意思で仲間の為に今を生きて戦うティエリアはもう、イノベイドではない。
「戯言を。生きる意味だと?笑わせてくれる。脆く簡単に壊れる人間に、上位種である僕に何かを言える権利などない」
「分かり合う気はないのか?可能性は、まだいくらでもあるというのに」
刹那は敵であるリボンズに手を差し伸べた。
分かり合う事がイオリアの目指した未来、自分がこれから歩んでいく未来だと信じて。
それでもリボンズは決して手を取り合おうとはしなかった。
「ない。刹那・F・セイエイ、つまらぬ戯言もここまでだ。僕達は相見えない敵同士、そろそろ決着を付けよう」
両者は視線を交え、これから戦う相手を見据える。
不敵に微笑みを浮かべるリボンズとは対照的に、刹那は悲しみにも似た表情だった。
虹の光は2人を包み込み次第に見えなくなっていく。
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右腕を損傷したアリオスガンダム・アスカロン、片腕でやれる事など限られており味方であるGNアーチャーもサポート機で、白兵戦用に作られたガデッサとガラッゾの前にアレルヤとマリーは窮地に立たされる。
接近戦ではガラッゾに、遠距離ではガデッサのGNメガランチャーが狙っており、脳量子波で連携を取っている2人に苦戦を強いられる。
「どうする。トランザムを使うか?」
切り札でもあるトランザムで一気に殲滅しようと目論むが、それでも倒せなければ待っているのは死。
ようやく一緒になれたマリーも守れずに、宇宙の塵となる。
悩んでいる間にもガラッゾのGNビームクローが眼前へと迫る。
残された左のマニピュレーターでビームサーベルを引き抜き、閃光がほとばしる。
「ガンダム、このまま落としちゃう!」
「くっ!?どうすれば」
ガデッサはGNメガランチャーでGNアーチャーにビームを放ち、アリオスガンダム・アスカロンに接近させないようにし連携を取らせない。
機動力で簡単に回避は出来るが、GNコンデンサーに粒子を貯蔵しているGNアーチャーは持久戦が出来ない。
ここを突破しなければアレルヤも助けられないし、自身も負けてしまう。
「このままでは負ける。どうしたら」
「ヒリング、ガンダムを確実に仕留めるのです」
戦闘空域には高濃度のGN粒子とサイコフレームの光が。
悪戦苦闘するアレルヤとマリーの頭の中に、もう1人の人格が目を覚ます。
『何をチンタラやってんだよ、アレルヤ。雑魚相手に時間掛けてんじゃねぇよ!』
「ハレルヤの声!?」
死んだと思っていたもう1人の人格、ハレルヤ。
アレルヤとは違い過激な性格で、人殺しの戦闘を楽しむくらいに。
無理やりに体を共有させると、ヘルメットを邪魔だと脱ぎ捨てて前髪をかき上げた。
『見せてやる!思考と反射の融合、これが超兵の力だ!トランザム!』
高濃度の量子を放出してアリオスガンダム・アスカロンはガラッゾの前から消えた。
ヒリングは一瞬だけ驚いてしまったが、いつもと同じ戦い方にうんざりする。
「また同じ事ばっかりして。トランザムが切れればアンタなんか敵じゃない。それにこっちにもトランザムは使える!」
刹那が戦闘したスサノオのように、擬似GNドライヴなのにガラッゾは機体を発行させてトランザムを使用する。
切り札であったトランザムでさえ、もはや敵に握られてしまっている。
だが性能が対等だと思われる両機だが、ヒリングはアリオスガンダム・アスカロンの速度に追いつけない。
「ガラッゾよりも早い!?」
「機体の性能に頼っているテメェなんかに、俺は落とせねぇ!!」
正面に現れたアリオスガンダム・アスカロンにGNビームクローを振るが、ビームの爪が装甲に届くよりも早くに機体を必要最小限に反らせ左腕を振り上げた。
握っているビームサーベルが右肘から先を切断し、脇腹を蹴った。
「うわぁぁっ!!」
「右腕の借りは返したぜ。行くぜ、アレルヤァ!!」
甲高い叫び声を上げて、慣性に流されるガラッゾを追う。
ヒリングはメインスラスターを吹かしてすぐに機体を制御し、追ってくる敵を迎え撃つ。
ただの人間に負けるなどヒリングのプライドが許さない。
「アンタなんかに負けていられるか!」
「雑魚は消えろ!!」
腕部に設置されているGNバルカンを向け、ヒリングは接近しにくいように牽制する。
だが超兵として覚醒したハレルヤ、同じように腕部のGNサブマシンガンを向けるとガラッゾが発射したビームの弾を撃ち落としていく。
並外れた反射神経と正確な射撃に舌を巻くヒリング。
「そんな!?なんで!」
「テメェが雑魚だからだ!」
瞬きする一瞬で肉薄し、アリオスガンダム・アスカロンのメインカメラが不気味に光る。
初めて体感する死の恐怖に思考が支配され、頭で考えた事が体に伝わるまでの速度がいつもより遅い。
場面は一転し不利な状況に追い詰められ、リヴァイブはGNアーチャーの相手を後回しにして急いで救援に駆けつけた。
だが2人が合流するよりも早くにハレルヤは動いている。
「助けて、リヴァイブ!」
「もう無駄なんだよぉ!!」
GNフィールドを展開させようとするが、アリオスガンダム・アスカロンは目の前から姿を消して背後に回り込んだ。
ビームサーベルを突き立てて、脱出用のコアファイターごとコクピットを貫いた。
感じられなくなったヒリングの脳量子波に、リヴァイブは死んだ事を悟った。
「間に合わなかったか。ここまでのようですね」
この領域からの脱出を考えるリヴァイブ、けれども追ってきたGNアーチャーとアリオスガンダム・アスカロンに挟まれてしまう。
だがトランザムで粒子が少なくなったアリオスガンダム・アスカロンの戦闘力は下がっているし、サポート機であるGNアーチャーにも負ける要因がないと考える。
「問題はありません。ここは一時撤退します」
「行かせるか。ピーリス!」
マリーのもう1人の人格、ソーマ・ピーリスもハレルヤと同じで目覚めていた。
呼びかけの意図を掴むと両手のGNビームライフルを投げ捨て、ビームサーベルを引き抜き詰め寄った。
「超兵を見くびるな!」
「人間の分際で、イノベイターに楯突くとは。無駄だと知れ」
睨み合うリヴァイブとピーリス、その背後から変形したアリオスガンダム・アスカロンが機首のGNソードを向けてまっすぐに飛んでくる。
でもリヴァイブにはそれが見えており、メインスラスターを吹かして水平に横移動するとこれを避けた。
通り過ぎるのを確認したリヴァイブはGNメガランチャーの照準をアリオスガンダム・アスカロンへ向ける。
だがアリオスガンダム・アスカロンはガデッサが今居た所を通過したその先にはビームサーベルを握ったGNアーチャーが居る。
ピーリスはビームサーベルを振ると機首ごと切断しGNソードを両手に掴んだ。
「何を考えているのです。あの2人は!?」
「行くんだマリー!ぶっ潰せ!」
「私はソーマ・ピーリスだ!アレルヤは逃げて」
互いの人格が交互に現れて、会話が成り立たなくなるが脳量子波で意思の疎通は行えている。
離れ業を見せつけると、GNアーチャーはメインスラスターを全開にした。
リヴァイブは咄嗟には照準を変更出来ず、エネルギーチャージしたGNメガランチャーを発射した。
高出力のビームは飛行形態のアリオスガンダム・アスカロンに当たり、機体から炎が上がる。
それでも突き進むGNアーチャーのスピードは緩むことなく、両手に握るGNソードが目の前に迫る。
間に合わないと考えたリヴァイヴはGNメガランチャーを盾代わりにするも、巨大な実体剣は安々と貫き胸部を貫通してコアファイターからGNソードの切っ先が見える。
動かなくなったガデッサはメインカメラから光をなくし、宇宙空間をさまよい続ける。
「終わった……アレルヤ!」
マリーはビームの直撃を受けたアレルヤに通信を送った。
ガデッサと同じように宇宙を漂流するアリオスガンダム・アスカロンを捕まえる。
外から見ると両脚部をなくしており、GNドライブからも粒子が発生していなかった。
「アレルヤ、大丈夫なんでしょ?アレルヤ!」
「でかい声を出すんじゃねぇ」
「よかった……」
パイロットが無事で胸を撫で下ろすマリー、瞳には少し涙が浮かんでいる。
「でもガンダムはもう動かない。後はみんなに任せるしかない」
動かなくなったガンダムのコクピットの中でアレルヤはつぶやいた。
思った以上に文字数が増えてしまったのでもうちょっとだけ続きます。
あと2話ぐらいかな?
ご意見、ご感想お待ちしております。