機動戦士ガンダム00 The human race's reformation   作:K-15

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第8話 傷跡

「そんな……」

 

戦闘の終わった後の基地は燦々としていた。

負傷した人の治療、脱出する為の物資の搬送に皆必死に動いていた。

壁は崩れあたり一面に血が飛散している現場を見て沙滋は恐怖する。

崩れた瓦礫からまた一人、死体が運び出されていく。

 

「負傷兵はこっちへ運んでくれ」

 

「ライトの向きを替えろ、敵に見つかる!」

 

もはや原型を保っていない人の亡骸、漂う薬莢の匂い。

 

(これが戦争だって言うの?僕が連邦軍に話さなかったらこうはならなかったのか……)

 

自分のせいで人が死んでいくと言う現実を沙滋は認識できないで居た。

カタロンの防衛に駆けつけたソレスタルビーイングのガンダムマイスター3人とユニコーンのパイロットであるバナージも見るも無残な姿となった現場を目の当たりにしていた。

 

「無抵抗な人まで殺すなんて、こんなの!」

 

かつて地球連邦軍とジオン残党の袖つきを行き来している時にもこのような現場は幾度も見てきた。

ビーム兵器の攻撃で髪の毛一本として残らず死んでいく人も居た。

何度見てもこの光景は辛かった。

たとえ世界が変わろうとも人は戦う事を止める事が出来ない。

そして悲劇と言う名の連鎖がいつまでも続く。

 

(もうこれ以上悲しい想いをする人を増やしてはいけない)

 

「そうだよね、オードリー」

 

すると援護に来てくれたソレスタルビーイングのガンダムから通信が入った。

 

「機体は無事か?」

 

「アナタは?」

 

「俺はロックオン・ストラトス。ケルディムガンダムのガンダムマイスターだ」

 

「ガンダムマイスター?」

 

「今回の事は礼を言う。お前のお陰で被害が少なくすんだ」

 

「俺はそんな。ただ、今の自分に出来る事をしただけです」

 

「それでもさ、他のメンバーも紹介する。コクピットから降りて来い」

 

ロックオンはそう言うと通信を切った。

画面からロックオンの顔が消えるとセンターコンソールを操作する。

ロックが解除されるとユニコーンのコクピットが開放され外の空気が入ってくる。

薬莢の匂いが充満しており破壊された壁などから砂埃が舞って息苦しかった。

バナージはコクピットから身を乗り出すとアンカーに足を掛けてゆっくりと下へ降りていく。

床へ足をつけるとロックオンと残りの2人のマイスターが近づいてきた。

 

「パイロットスーツも着てないのか?」

 

「ロックオン……さん」

 

「さん、なんて付けなくていいよ」

 

「キミがあの白いモビルスーツを操縦していたのかい?」

 

ロックオンに続きアレルヤがバナージに話しかかる。

だがバナージはプトレマイオスの乗組員をまだ全員覚えていない。

初対面のアレルヤに戸惑どっていた。

 

「あぁ、そういえば初めて会うんだったね。僕はアレルヤ・ハプティズム、アリオスのガンダムマイスターだ。もう1人は―――」

 

「知っています、ティエリアさんですよね」

 

「って、知ってたのか」

 

「はい、意識が戻ってすぐに会いました」

 

「なら説明しなくてもいいね」

 

アレルヤは心なしかすこし残念そうだった。

話が終わるとティエリアがバナージに詰め寄ってきた。

 

「キミにどうしても聞かなければならない事がある」

 

「……」

 

高圧的に話すティエリアにバナージは臆せずに話しを聞いた。

真っ直ぐにティエリアを見る。

 

「キミはどうしてアロウズの襲撃が分かったんだ」

 

「それは……」

 

「出撃前にイアンから聞いた。トレミーがアロウズのモビルスーツを索敵するよりも前に彼は敵の存

在に気付いていた。これは一体どうゆう事なのか説明してもらう」

 

それは自分がニュータイプだから、などと言っても信じてくれる訳がない。

それに彼らにはニュータイプと言う概念など持ち合わせていない。

説明した所で理解など出来ないし、バナージ自身ニュータイプが何なのかはっきりと分かっていない。

何故いち早く敵を見つけたのか、バナージはそれを説明する事が出来ない。

 

「まぁいいじゃねぇか、そんな細かい事。コイツが来なけりゃ被害はもっと広がっていたんだ」

 

「だが、それとコレとでは!」

 

「少なくとも敵じゃないんだ、信じろよ」

 

「っ!?……分かった、だがいずれは説明してもらうぞ」

 

ロックオンが宥めるとティエリアはその場を立ち去った。

歩いて行くティエリアの背中を3人は見つめていた。

 

「悪い人じゃないんだ、ただ任務に忠実すぎると言うか」

 

「アレルヤさん……」

 

「これ以上ココにいてもしょうがない。トレミーへ戻るぞ、えーーと」

 

「バナージ・リンクスです。」

 

「オーライ、アレルヤも行くぞ」

 

「わかったよ」

 

3人はそれぞれのモビルスーツへ向かう。

バナージはもう一度ユニコーンの所まで来るとアンカーに足を掛けて上昇する。

コクピットに乗り込みシートに座るとセンターコンソールに右手をかざして生体反応を読み取らせる。

 

3人から離れたティエリアは何故アロウズに情報が流れたのかを考えていた。

 

(外部に情報が漏れるようなミスはしていない。ならばどうして、内密者が居るのか?)

 

すると基地の隅で立ちすくんでいる沙滋を見つけた。

 

「そんな……」

 

悲惨な現場を見て震えているのもあるだろうが様子が少しおかしかった。

それに攻撃を受けたのだからシェルターに非難しているはずなのにココに居る。

そんな沙滋に近寄ると肩を掴んだ。

 

「どうした、何故ココに居る?」

 

「僕は……」

 

「話は後で聞く。ガンダムでトレミーへ戻るぞ」

 

そう言うと沙滋を引き連れてセラヴィーに向かう。

プトレマイオスへと帰還するガンダム、ティエリアはハッチを開け沙滋と共にコクピットから降りる。

ティエリアは無言で沙滋を人の居ない場所へと連れて行く。

何も言わないティエリアに沙滋もまた無言で付いて行くしかなかった。

通路の一角に付くと立ち止まり互いに向き合った。

 

「何をした?」

 

「僕は……」

 

「したんだな、誰だキミは?アロウズのスパイか?」

 

「ちっ違う!」

 

「訳を話してもらうぞ、沙滋クロスロード」

 

もうこれ以上黙っている事は出来なかった。

鋭く見つめるティエリアの目線が痛かった。

取りかえしの付かないことをしたことはこれ以上ない程に分かっている。

沙滋はこれまでに起きたすべてのいきさつを話した。

 

///

 

プトレマイオスは光学迷彩を展開し砂漠の景色と同化し姿を隠している。

カタロンが脱出の準備が整うまではここで基地を防衛するつもりだ。

ブリッジにいるイアン、スメラギ、バナージはスクリーンに映し出されている基地内部の様子を見ていた。

先ほどのアロウズの掃討作戦で死んでいった人が黒いシートに隠されていく。

 

「これがアロウズのやり方なんですか?」

 

「そうよ、アロウズは治安維持を掲げているけど実態は今見ているとおり。反抗する者は容赦なく平和と言う名目のもと排除されるわ」

 

「こんな事が平和に繋がる訳ありません。こんなの間違ってる」

 

「バナージ君の言うとおりよ、そして地球連邦に加盟しない国は弾圧を受けるわ。こんな事が許される訳がないわ。だから私達ソレスタルビーイングはアロウズと戦っているの」

 

「でも、だからと言って戦いで解決しようとするのも違う。ソレスタルビーイングだってやってる事は同じじゃないですか?」

 

「アナタの言いたい事は分かるわ、でも連邦議会に入って中から変えていこうとしたら時間が掛かりすぎてしまう。その間に世界は変わってしまうわ。結局私達にはこうするしか手段がないのよ」

 

「正しい事なんて何処にもないんですね」

 

「そうなのかもしれないわね。でも私達の戦いが後の世に繋がる事を信じてるわ」

 

「なら俺も信じます、自分のやるべきと感じた事を。だからユニコーンでアロウズと戦います」

 

その言葉はスメラギは驚いた、今回の件は確かに助かった。

だがこれからもアロウズと戦うとなると死が付きまとう事になる。

この少年にそれほどの意思と覚悟があるのだろうか。

 

(それにまだバナージ君の身元が詳しく分かっていない。残した家族や友達の事はいいのかしら。

私にはもう誰も残っては居ないのだけれど……)

 

それを思うと素直に歓迎は出来なかった。

 

「バナージ君、でもアナタは私達とは関係が―――」

 

「でも、こんな理不尽を許しちゃいけないんだ。それが俺とユニコーンに託された想いなんです」

 

「これは戦争なのよ、もしかしたら死ぬかもしれない。それでも―――」

 

「俺は負けません、生きて帰るんです」

 

バナージの眼差しは鋭くスメラギを見据えてた。

そしてその意思も硬い。

 

(向こうではオードリーが待っている。俺との約束を信じて待っているんだ。だから死ねない、死ぬ訳にはいかない!)

 

「本気なのね?」

 

「はい、覚悟は決めています」

 

「……分かったわ、でもその前にアナタのパイロット適正を調べさせてもらうわよ。イアン、バナージ君にシミュレーターを受けさせてあげて」

 

「あぁ、それはいいがいつするんだ?」

 

「今すぐやりましょう、いいですよねスメラギさん?」

 

「いいけれど疲れてない?戦闘が終わってそう時間も経っていないけど」

 

「大丈夫です。イアンさん、そのシミュレーターやらせてください」

 

「だとよ、そう言う訳だから連れてくぞ」

 

「えぇ、お願い」

 

スメラギが言うとイアンはブリッジの扉まで歩いて行く。

パネルを操作し扉を開けるとそれに続きバナージはイアンに付いて出て行く。

ブリッジに残ったスメラギは一人ため息を付いた。

 

「あまり賛成は出来ないけど。それにしても、本当に彼の情報がデータベースに無いのは何でなのかしら」

 

顎に右手を当ててその事について考えるスメラギ。

初めて会った時にインダストリアル7の78番街に住んでいたと言っていたがそこは工業団地だ。

この年で働いていたのだろうか、だがそれ以前に7-78番街なんて場所は存在しない。

そしてどれだけデータバンクを調べてもバナージ・リンクスのデータはなかった。

ユニコーンのデータの解析も思うように進んでおらず分からない事ばかり。

スメラギはシミュレーターのデータが送られてくるのをジッと待っていた。

 

///

 

激しい音が周囲に響く、沙滋の左の頬は赤く腫れていた。

 

「何と言う、何と言う愚かなことを!」

 

「こんな事になるなんて思っていなかった、僕はただ戦いから離れたかっただけで!こんな事に……そんなの……」

 

涙を流しティエリアに訴える、だがティエリアの眼差しは変わらなかった。

 

「彼らの命を奪ったのはキミだ!」

 

沙滋ははっと息を呑んだ。目を背けていた現実を突きつけられる。

 

「キミの愚かな振る舞いだ。自分は違う、自分には関係ない、違う世界の出来事だ。そう言う現実から目を背ける行為が無自覚な悪意となりこのような結果を招く」

 

「僕は……そんなつもりじゃ……」

 

体から力が抜けていき地面に膝を付く。

沙滋は大声を上げて涙を流した。

その声を聞いて刹那が近くからやって来る。

アザディスタンから戻ってきたばかりで状況があまり把握出来ていなかった刹那はティエリアに近づいた。

 

「ティエリア、どうした?」

 

「刹那、戻っていたのか」

 

「どうなっている、コレは?」

 

「アロウズの仕業だ、そしてその原因は彼にある」

 

泣き崩れる沙滋を見る刹那、詳しくは分からないがティエリアの言っている事は正しいのだろう。

戦いを嫌がっていた沙滋だが、もう引き返せない所に来てしまったらしい。

これもソレスタルビーイングのガンダムが武力介入して起こった歪みなのだろうか。

こうしてまた悲しみを広げてしまった。

そんな自分が彼に何と言えばいいのだろうか。

 

「沙滋・クロスロード」

 

ただ静かに名前を呟いた。

 

///

 

イアンからシミュレーターのデータがブリッジのスメラギに送られてきた。

バナージは適正は基準を上回っており取りあえずは戦力にはなる。

 

「これで少しは戦いやすくなるわね、また新しくプランを考えないと」

 

データを見て他の4人とフォーメーションを組めるように思考を巡らした。

ブリッジのコンピューターで次々と新しく戦術プランを組み立てていく。

 

「あのユニコーンのシールドにはビームを防ぐ機能がある。だから―――」

 

だがこのデータはコンピューターで測ったデータであり実際の戦闘でのバナージのニュータイプとしての能力とサイコフレームの驚異的なインターフェイスについて彼女はまだ知らない。




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