罪を犯したエルフをファミリアに誘うのは間違ってるだろうか(凍結)(メインタイトル関係なし)   作:伊つき

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第11話

【バルドル・ファミリア】の本拠(ホーム)、『キャメロット』。

オラリオ北西のメインストリートに城のように聳え立つその建造物には監獄がある。

オラリオの治安を守る騎士としての役割をギルドから公認で受け持っている【バルドル・ファミリア】にはそういったギルドに渡す罪人などを一時的に拘束しておく地下施設が存在した。

リューとマリウスの戦争遊戯(ウォーゲーム)が始まる直前から終わるまでの間、ルシアはとある罰則として幽閉されていた。

そして、今日は彼女が釈放される日だ。

 

「……」

 

冷たい床に壁、空気に触れ沈黙するルシア。

遊戯(ゲーム)が終わった次の日に解放されると聞いていた彼女は黙ってその時を待っていた。

やがて、静かに誰かが近付いてくる足音が聞こえる。

それに合わせてルシアは扉付近に寄った。

 

「お務めご苦労様です」

 

自らの檻を解錠しにきた団員に無駄な仕事を増やしてしまったと反省しながら謝罪を伝える。

 

「……?」

 

だが、返事がなく不思議になって彼女は普段は閉じている瞳をゆっくりと開けた。

すると檻の前に居たのは団員ではなくレンだった。

 

「よっ、ルシア」

「何故レン様が…?」

 

率直に思ったことを尋ねた。

しっかりと彼の瞳を見つめて。

 

「知らないのか?」

「この監獄は特殊な結界によってステータスは封じられてしまうのです」

「なるほど…って凄いな」

 

結界によりルシアの千里眼も封じられてしまう。

今のルシアには世界の情勢を知ることも戦争遊戯(ウォーゲーム)の結果も、何故レンが此処に居るのかも目の前の出来事でさえ把握できない。

現に目を開けて瞳から情報を得ていることがなによりの証拠である。

 

「どうやったらそんなことができる?」

「それは教えられません。ファミリア機密ですので」

「そうか」

 

どうやらレンは監獄の結界に興味があるようで辺りを見渡しているがルシアとしてはそれは後にして欲しかった。

今はさっきの質問に答えて欲しい。

 

「それで、何故レン様はここにいらっしゃるのですか?一応他ファミリアの本拠(ホーム)への侵入は罪ですが」

「あぁ。勿論バルドルに許可は貰ってる。ま、戦争遊戯(ウォーゲーム)に勝った戦利品みたいなもんだ」

「なるほど。勝者報酬だったのですね」

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)は賭け事も同時に行われ、勝者は敗者から報酬を得る。

おそらくレンはそれで『キャメロット』の見学でもしてるのだろうとルシアは考察を立てた。

しかし、その考察は誤っている。

 

「俺が貰った報酬は別に見学じゃない」

「……!」

 

きっとそんな事でも思っているのだろうと思われたのか、考察を見抜かれルシアは内心驚く。

そんな彼女を気にも止めずにレンは本題へ移った。

 

「俺が貰う報酬はお前だ。ルシア」

「は?」

 

レンによって放たれた言葉。

対してルシアはただ硬直した。

本気で何を言ってるのか分からないといった顔で。

 

「……それは私にレン様のファミリアへの改宗(コンバーション)しろと?」

 

一拍置いて理解したルシアは冷静に尋ねた。

問いにレンは顔色一つ変えずに頷く。

 

「そうだ」

「……」

 

自然と目を細めるルシア。

表情にはレンには察することはできないルシアなりの事情があった。

しばし考えた後、彼女は結論を出す。

 

「お断りします」

「なに…?」

 

静かに放たれた一言。

内容は明確な拒否だった。

これにはレンも少し驚愕する。

 

「待て。拒否は許さん。お前は戦争遊戯(ウォーゲーム)の戦利品だ」

「分かっています。ですが、それを理解した上でお断りさせて頂きます」

「何故だ。物のように扱われているからか?」

「いえ…、神々にとって子は子であっても時には賭け事に使われるような非情に思われることはあると存じてます。私が断る理由はただの私情です」

「私情、だと?」

 

明らかにレンの表情が歪む。

それは怒りと、ただの疑問だ。

 

「その私情は教えてはくれないのか」

「はい。申し訳ありませんが。納得出来ないと言うのであれば話します」

「なら納得出来ない。話せ」

「では後日」

「はぁ!?」

 

拒否権はないというのに私情で断り、私情を話すかと思えば先延ばし。

いい加減レンも苛つきだしてきた。

だが、牢獄に居る間は見ることが許されるルシアの瞳は微塵も揺るがない。

絶対に今は話せないと固い意思が汲み取れたので嘆息してレンも諦める。

 

「分かった。また話を聞きに来る。余っ程でない限りお前を改宗(コンバーション)させることは諦めないからな」

「…はい。後日伺います」

 

相変わらずのルシアにレンは再度嘆息して手に持っていた鍵を檻の鍵穴に差し込む。

鍵を拗じるとガチャっと音を立てて解錠され、ルシアは解放された。

 

「ほらよ。バルドルから鍵は預かってたんだ。今日から自由だとよ」

「ありがとうございます」

 

檻を出たルシアはペコリと一度レンに頭を下げて金属製の廊下を歩んでいく。

レンも三度目の溜息をつきながら後を付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を遡ることルシアの解放から前夜。

つまり戦争遊戯(ウォーゲーム)の晩のことである。

対立した【レン・ファミリア】から【バルドル・ファミリア】へと勝利報酬が告げられたことにより緊急で団員達の定例会議が始まっていた。

彼等の本拠(ホーム)内で最大の面積を誇る一室。

そこで会議は開かられていた。

 

「これより第八十八回《円卓会議》を始める」

 

月に一回、名の通り円卓を囲んで各メンバーが配置されて行われる会議。

まるで王座のような座席に一人だけ腰を重く下ろしている女が放った一言によって会議は開始した。

 

「会議を始める前に一つ。今月は我らが主神の言及によって特例で期日より早めに会議を開いたことを先に謝罪する。緊急にも関わらずよくぞ集まってくれた。光の騎士達よ」

 

淡々と表情一つ変えずに謝る彼女に出席している団員は一部を除いて恐縮といった反応を見せる。

 

「我らが団長()よ…。お気になさらずとも我らは貴女様の号令とあらば何万里と離れていようと駆けつけますぞ」

 

深々とリーダー格の女に頭を垂れる円卓一の老騎士。

その白髭を揺らし、人族(ヒューマン)の男の名はガリウス・グラウェイン。

実はマリウスの義父にあたる人物でもあった。

そんな彼は女を王と呼び、すなわち彼女が【バルドル・ファミリア】団長なのだということを再認識させる。

だが、団長に敬意を表す彼とは対称的に如何にも会議自体を面倒くさそうに受け、敬意など微塵も表さない狼人(ウェアウルフ)がいた。

 

「なーにが『王』だよ!ボケるのもいい加減にしとけよ、ジジイ」

「ライオネル・モルド・レッド、貴様というやつは…!」

 

団長を信仰しているガリウス。

それを穢すライオネル。

当然ガリウスは彼に怒りを感じ、いつもの如く吠えた。

 

「この礼儀のなってない狼人(ウェアウルフ)め!王の血縁だからといって口が過ぎるぞ!」

「うるせーなぁ…。頭の硬ぇジジイが。いちいちキレてんじゃねぇよ。しかもただの養子だっての」

「なんだと貴様!!」

「黙るがよい」

 

言い合いを始めた彼等の間に団長である女性は一言だけ入れて制止を呼び掛ける。

それだけで彼女を信仰するガリウスは黙る。

が、ライオネルは睨みの視線を彼女へと移すだけであった。

 

「今は会議の時間だ。それ以外のことに時間を要したいなら終わった後にするがよい」

「おいおい、元はと言えば緊急で開くとか言い出したお前が発端だろうが!タダでさえこんなクソ怠い会議参加したくねーのによぉ…」

「貴様!いい加減にしろ!」

 

止めたというのにまた喧嘩を再開させようとする両騎士に女…リョーカは嘆息して再度ガリウスを黙らせる。

そして、ライオネルを先に片付けることが先決だと判断した。

 

「貴公らにも予定があることは理解している。その上でこちらの事情で集まってもらったことには私からも謝ろう。ここは一つ、許してはくれぬかモルドレッド卿」

「はっ、笑わせる。謝罪が伝わってこねぇな!」

「貴様…!」

 

謝罪してみたものの先程の繰り返しになる一方。

リョーカは三度目の溜息をつき、ならばと説得を試みることにした。

 

「ではモルドレッド卿。こういうのはどうであろう。余も会議は面倒である。故に此度も早く終わらせたい。貴公もそう思わぬか?」

「あ…?」

 

フッと小さな笑いを漏らしながらリョーカは敢えてライオネルが乗りそうな言い方に含みを変える。

これにはガリウスが顔を顰めたがリョーカにとってはどうでもいい。

寧ろ少し本音でもあったため、ライオネルの返答を待った。

しばらく彼女の思考を読み取ろうとしたライオネルだが、諦めて鼻を鳴らした。

 

「ふん。そういうことなら同意ってことにしといてやるよ。騒いで悪かったな、ささっと続けようぜ」

「貴公の心遣いに感謝する。では会議を再開する」

 

やっとのことで静粛した幹部一同。

彼等に向かってリョーカは議題を発表する。

 

「今回のメインは他でもない、マリーン卿についてだ」

「あぁ?ドチビ?」

「ふむ…ルシア・マリーンか…」

「……」

 

団員の幹部組らは各々の反応を見せる。

一人、マリウスだけが事情を把握しているため異なった表情をした。

 

「詳細についてはガウェン卿から伝えよう」

「はい。今日、私は新規で出来た【レン・ファミリア】との戦争遊戯(ウォーゲーム)に敗れ、主神同士で賭けていた団員を失いました。その団員が彼女…レディ・マリーンです」

 

戦争遊戯(ウォーゲーム)であった事を端的にまとめて正直に報告するマリウス。

内容を聞いた瞬間、ライオネルやガリウスだけでなく会議に居合わせた団員ら全員が驚愕する。

無理もない。寧ろ驚かない方が選択肢としてはないだろう。

驚きで口から言葉を発することが遅れた一同だが、誰よりも早く発言権を勝ち取った者が現れる。

それはルシアを鬱陶しく思うライオネルでもリョーカを信仰するガリウスでもない。

それは頭部から二本の角を生やした女。

モンスターのようにも見える鬼人といった種族のものだ。

 

「あっひゃひゃひゃ。して、ワシらの主は許容しておるのか?」

「威吹鬼…」

 

いつ喋っても愉快とでも言うように高い笑いを発言に込める鬼人の女、威吹鬼。

ニヤニヤと口を歪める彼女をリョーカは鋭い瞳で睨む。

 

「ひゃひゃ。そう睨むでない妖精の女。おっと…王様じゃったか?」

「黙れ、ゴブリン風情が」

「なんじゃと。ワシをあんな貧弱な獣と同一視するでないわ妖精の女め」

「ふん。気に食わないのならその紛らわしい角を折ってやろうか?」

「貴様…」

 

大して興味の無い団員達とは違う。

リョーカにとって唯一特別で忌み嫌う存在である威吹鬼。

二人の間に底知れぬ因縁の気迫がぶつかり合っていたが、先にリョーカが折れた。

 

「まぁいい。ゴブリン風情よ、貴様に発言を赦した覚えはないが質問に答えてやろう」

「いつまでも減らず口を叩く汚い妖精じゃな」

「言っていろ」

 

これ以上威吹鬼の相手をしていても時間の無駄だとリョーカは判断し、緊迫していた室内の団員達に対話の相手を代える。

 

「質問の答えを言おう。我らが主神バルドルはマリーン卿の改宗(コンバーション)を許可したらしい」

「なっ…!?」

「ほほう。我らが神がそんなご決断を」

 

主神が許可してるとあれば仕方なしと受け入れる幹部の団員達。

その中でライオネルは目を見開き、異議を唱えた。

 

「ちょっと待て!なんで俺は脱退できなくてチビはできるんだよ!」

 

ライオネルが激昂するのにも理由があり、彼は以前から幾度もファミリアの脱退を申し出ていたがその度に拒否されたのである。

だというのにルシアはすんなりと許可がくだった。

これにはライオネルも意見せずにはいられない。

そんな吠えるライオネルをリョーカは冷めた目付きで捉えていた。

 

「主神が許さぬ限り脱退は認められない。マリーン卿は認められた、それだけのことだ」

「……ッ!ふざけやがって。おい、ガイ!もう出るぞ。こんなクソッタレな会議参加してられるか」

「おう。分かった」

 

遂に限界を超えて幼馴染のガイ・ガラハッドを連れて席を立つライオネル。

だが、彼が立ち上がる前に彼の頬を掠める閃光があった。

ヒュッ!と音を立てて壁に穴を開けた短剣を見てライオネルはサーッと血の気が引けるのを感じる。

それと同時に今日一番に冷えた声音が発せられた。

 

「席に付け、モルドレッド卿。殺されたいのか」

「ッぁ…!」

 

リョーカの鋭い眼光。

凄まじい殺意を感じ取ったライオネルは直感でとあることを察する。

 

(逆らえば…マジで殺される…)

 

ゴクリと喉を鳴らしたことに彼は気付いていないだろう。

一緒になって冷や汗を流すガイと共に静かに席に付いた。

それからは大人しくなったものだ。

 

「他に異論があるものはいるか」

 

ライオネルも落ち着き、他のメンバーに目配せするリョーカ。

しかし、それに答える者は恐れを知らぬ鬼人でさえも居なかった。

 

「良い。では話を進める。今回の最も重要な議題は以上だ。此度の会議としては貴公等の把握と承認を得るもの。どちらも完遂したのでこの話はこれで終わりだ。後は貴公等の報告、今月の予定を聞くとしよう。なに、後者は大まかでも構わん」

 

フッと微笑み、団員達の報告を待つリョーカ。

ここからはいつもの流れで騎士風の団員等も次々と発言してくれる。

 

「ではまずは私から」

「良い。述べよ、グラウェイン卿」

「はっ。私からは特に。今月は御用とあればいつでもお呼びください!」

「把握した。貴公はダンジョン担当だったな。特に変化がないのは残念なことだ」

「はっ…申し訳ございません…」

 

それきり下がるガリウス。

リョーカはつまらそうな顔で次の者を見る。

 

「ガウェン卿か」

「はい。私からはやはり戦争遊戯(ウォーゲーム)が主です。他には――」

 

【裁定者】の二つ名を持つ人族(ヒューマン)の老騎士、ガリウス・グラウェイン。

妖精騎士(フェアリーナイト)】の二つ名を持つエルフ剣士、マリウス・ガウェン。

その後にと【聖剣士】の二つ名を持つ人族(ヒューマン)の少年剣士アルサー・ベディヴィアン、【守護者(ガーディアン)】ガイ・ガラハッド等が並ぶ。

前者二人とガイは第2級冒険者なだけのことはあり、続けて名を聞くだけで一般の冒険者なら感嘆を漏らすだろう。

アルサーも【バルドル・ファミリア】の若きルーキーでありながらその才能を既に発揮しつつあることから注目はされてきている。

そんな壮観な眺めを日常風景のように視界の端に捉えながら座るライオネルに犬人(シアンスロープ)とアマゾネスの女性は居心地の悪そうな彼に話しかける。

 

「ラ、ライオネルさん…大丈夫ですか?」

「今日も沢山怒られたねー、オネルン」

「うっせ。話し掛けんな。てか変な名前で呼ぶな」

 

犬人(シアンスロープ)の名はミリー・トーリスタ。

アマゾネスの名はレオナ・スロットル。

前者はアルサーと同じく期待のルーキー、後者はリョーカの使いっ走りである。

 

「別にいいじゃーん。減るもんじゃないしぃ?」

「単に気に入らねぇんだよ。バカゾネスは黙って王様の足でも舐めてろ」

「ひどーい」

「ライオネルさん…さすがにそれは…」

「あぁ?」

「ひっ!」

 

睨みを効かせてミリーを怯ませるとライオネルは鬱陶しそうな表情で目を瞑る。

これ以上誰とも関わりたくない、閉じた瞳がそう語っていた。

 

「あー、オネルン構ってくれなくなったー。仕方ないし順番くるまで向こうで遊ぼう?ミーちゃん」

「は、はい!私で宜しければ…!」

「よーし。れっつらごー!」

 

自由気ままなレオナがミリーを連れて遊ぼうとしたその時。

マリウスの話を聞いていたリョーカは高揚を表わす笑みを貼り付けていた。

 

「ほう。【疾風】か。面白いことを聞いた」

 

戦いに貧欲な彼女の思考は新たに見つけた相手への喜びで染まる。

伝えた本人のマリウスもしまったと思ったがそんなものにはもう目もくれてない。

今彼女の目に映るのはまだ見ぬ【疾風】だ。

 

「んー?しっぷう?」

「【疾風】。女王の次の狙いはそれか。あっひゃひゃひゃ…!」

 

また二人、興味を示す者がいることを【騎士王】、リョーカ・アーサーは知らない。




短編④
title︰適材適所

【バルドル・ファミリア】本拠(ホーム)、『キャメロット』。
地下に存在する監獄にて溜息を漏らす者がいた。

「暇だなぁ」

監獄主を任されている騎士グリフレットは基本やることはない。
結界がある限り暴れ回る囚人など居ないし、大体がすぐにギルドへと渡すことになる。
高いステイタスを持った者は結界のある『キャメロット』の監獄への長期幽閉をギルドから伝えられることはあるが、ギルドが信頼する程に結界内では問題は起きない。
小賢しい知恵を働かせる者はたまにいるがすぐに光の騎士に叩かれるのだ。
()くいうグリフレットも光の騎士の一員ではあるのだが。

「定期的に結界張るだけの役割なんて暇すぎるよなぁ。まあ憧れのファミリアなんてこんなもんか」

もはや諦めに近い伸びをして管領室のベットに横たわる。

「まず俺にあんな魔法なんて発現したのが損な役割の発端かなぁ、やっぱ」

グリフレットの魔法。
それは結界だ。
監獄の結界、効果は言わずもがなステイタスの無効。
この魔法によりグリフレットはリョーカに監獄の主を任命されることになったのだ。
要するに適材適所というわけで、グリフレットは納得がいかなかったが結界の魔法を発現してしまった運の尽きだ。
諦めるしかなかった。
そんな彼は今日も定期的に結界を再築する仕事をこなす。





短編⑤
title︰ロマンチック

「なんでかなぁ」

若騎士のアルサーが呟く。
隣に座っていたミリーはそんな同期の同僚に首を傾げた。

「どうかしたんですか?」
「いや、僕達の本拠(ホーム)の名前はなんで『キャメロット』なのかなと思ってさ」
「はぁ……考えたこともありませんけど……」

アルサーの変な疑問にミリーも一緒になって考える。
だが、後釜である彼らが分かるはずもなく答えは行き詰まった。

「そういう元来のものは後から入ってきた私達には知りませんよね」
「そうなんだよなぁ…はぁ…」

再度溜息をついて今度は項垂れるアルサー。
そんな彼にミリーは苦笑いを浮かべる。

「気になるなぁ」

アルサーという少年は気になったことはとことん知りたくなる性格で今も悩んでいた。
と、ちょうどそこへ自分より古参のマリウスが通るのをアルサーは視界に捉え、呼び止める。

「マリウスさん!」
「これはこれはアルサー、どうかしましたか?」
「はい!実は……何故本拠(ホーム)の名前が『キャメロット』なのか分からなくて悩んでたんです…。マリウスさんは知ってますか?」
本拠(ホーム)の名の由来ですか…」

突然の質問にも関わらず考え込むマリウス。
アルサーはワクワクしながら答えを待った。
やがて、マリウスが思い出したのか顔を上げる。

「アルサーは『騎士王』の英雄譚を知ってますか?」
「『騎士王』の英雄譚、ですか?えっと…名前だけは聞いたことがありますけど…」
「聖剣に選抜された騎士の王とそれに使える騎士達が聖杯を求める英雄譚です。私も間接的に聞いたので定かではないのですが我らが王が王と呼ばれる所以も【騎士王】という二つ名もそれが由来との話を聞いたことがあります」
「そうなんですか!?」
「はい」

マリウスの説明に目を輝かやかせるアルサー。
強者の風格に威圧的なリョーカではあるが部下のアルサーから見ればその背中は頼りになり、尊敬に値する逞しい団長()だ。

「それと、ここだけの話。昔団長もその英雄譚に憧れていたとか――」
「何の話をしている。ガウェン卿」
「……!?」

突如、マリウスの背筋を凍らせる冷めた声。
誰も察知することのできなかった中現れたリョーカにマリウスだけでなくアルサーとミリーも驚いた。

「だ、団長…いつの間に…」
「私もどうとかいうところからだ」
「あぁ…そうでしたか…」
「なんだ。何を安堵しているガウェン卿」
「い、いえ!なんでもありません団長()よ!」

精一杯取り作り冷や汗を流すマリウスに怪しむリョーカ。
彼女の鋭い目つきがマリウスの汗を増やしていく。

「まあいい。そんなことより訓練の相手を探していた。ガウェン卿、付き合え」
「お、仰せのままに」

頭を垂れるマリウスがリョーカに連れて行かれる一連の流れを黙って見ていたアルサーとミリーはリョーカが去って肩を力を抜いた。
同時に二人は見合って力なく笑った。

「びっくりした…」
「ですね…」
「よい事を考えた。貴公らも来い」
「「え?」」

気を抜くには早かった。
アルサーとミリーはとても後悔したのだった。
数時間後、オラリオ最強のエルフ剣士に三人の騎士がズタボロにされたのはまた別の話である。
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